基本ノウハウ

BtoBマーケティングとは?全体像がつかめる図解と実践的なフレームワークで分かりやすく解説

BtoBマーケティングとは?全体像がつかめる図解と実践的なフレームワークで分かりやすく解説

日本のBtoB企業は、製造部門への投資に比べるとマーケティングへの投資や研究があまり盛んではないとされてきましたが、時代の流れを受けマーケティングへの投資が加熱しています。そんな中で、自社も競合他社に後れを取らないようBtoBマーケティングに着手したいと考えているものの、BtoBマーケティングはBtoCマーケティングとどのように違うのか、具体的に何をどうすることなのか、どう始めれば良いのかが分からないという方も多いのではないでしょうか。

本記事では、BtoBマーケティングとは何かの概要から、BtoBマーケティングの代表的な2つの手法について、また個別の具体的な施策、始め方について紹介していきます。本記事を参考にBtoBマーケティングの全体像を把握し、着手のための参考に活用してください。

目次

1.BtoBマーケティングとは? 

BtoBマーケティングはBtoBビジネスにおけるマーケティング活動全般を指す言葉であり、具体的にどのような活動を指すかは人によって認識が異なる場合があります。まずBtoBマーケティングとは何かの基本を押さえておきましょう。

BtoBマーケティングの定義

BtoBマーケティングとは「BtoB市場においてターゲットの求めるニーズを理解し、ニーズに対する解決策を提供し、効率的に利益を上げるしくみを作ること」です。具体的には、「自社が顧客に提供すべき価値は何か」を踏まえた戦略により、効率の良い商談創出や営業組織の仕組み化を目指す取り組みといえます。

BtoB企業の営業活動では、電話やメールなどを利用してアポを獲得し、企業を訪問し、商談・クロージングにつなげていくといったプロセスを踏みます。しかしこの従来の営業スタイルは、効率や再現性の面でさまざまな課題があります。

具体的には、電話や訪問に時間を取られるため1日にアプローチできる数に限りがある、ニーズが不明な相手へのアプローチのためなかなか商談や受注につながらないといった状況が挙げられるでしょう。また、営業全体の話でいえば、受注できるかどうかが営業個人のスキルに偏っていて再現性がなく、優秀な営業社員が辞めてしまったときに一気に営業組織の生産性を落としてしまうことなども挙げられます。

これらの課題を解決するために、BtoBマーケティングでは主に下記の方針に従った施策を実施し、売上拡大を目指すのです。

  • 顧客との関係構築・維持によって継続的な商談創出の道筋を作る
  • 営業社員の力量に左右されないシステムづくりによって属人化を解消する
  • 業務を効率化して組織の生産性を向上させる

BtoBマーケティング実施前・実施後のイメージ

BtoCマーケティングとの違い

BtoBマーケティングとBtoCマーケティングでは、適切とされている戦略や施策が異なります。なぜならBtoB事業(企業間の取引)とBtoC事業(企業と消費者間の取引)では、購買に至るまでの意思決定の流れや条件が異なるためです。

BtoB事業とBtoC事業の特徴の違いが下表です。

分類 BtoB事業 BtoC事業
ターゲット 企業 個人消費者
購買単価 高い 低い
購買者と利用者 違う 同じ
購買に関わる人数 複数人 1人
購買の目的 企業の課題解決 感情(衝動を含む)・個人の課題解決
検討期間 長い 短い

以上を踏まえて、BtoBマーケティングとBtoCマーケティングの施策の違いを確認しておきましょう。

ターゲット・顧客数・購買単価

BtoBマーケティングはターゲットが企業であり、購買単価や一社あたりの取引金額が高額になる傾向があります。企業規模や商材によりますが、数社のみの顧客で事業が成立している場合もあります。

一方、BtoCマーケティングはターゲットが個人消費者であり、商材にもよりますが数百万~数千万人といった数のユーザーが顧客になりえます。個人消費者のため、企業と比べると購買単価や取引金額も少額になる傾向にあります。

このためBtoBマーケティングは取引金額の大きい顧客と良い関係を長期的に築く施策が重要になり、BtoCマーケティングでは大勢の認知獲得をねらうマス広告などのプロモーション施策が有力な手法とされています。

購買者と利用者・購買に関わる人数

BtoBビジネスとBtoCビジネスの購買にかかわる人数の違い

企業における意思決定は組織で行われます。例えば企業が製品を導入しようとするとき、企業内には「①利用者である現場の社員」「②製品選定に関わる窓口の社員」「③購買の意思決定を担う役職者」がいます。

企業によって①~③の人物の関係性や発言力は異なるため一概にはいえませんが、「①現場の社員」がいくら製品を利用したいと感じていても、「③役職者」が費用対効果の面から却下するといったケースはよくあるでしょう。

BtoBマーケティングでは、企業で「どのような流れで意思決定が行われているか」を理解した上で、決裁フローにおける各担当者を説得し信頼を得る必要があります。利用者よりも購買の意思決定者や決裁者に対する訴求の方が重要な場合もあります。

一方、BtoCマーケティングの場合は基本的に購買者と利用者が同じであるため、製品の企画から販売まで一貫した利用者に対するプロモーションが有効であるといえるでしょう。

購買の目的

企業は自社の課題解決を目的として商品を購入します。このため企業の利益になると合理的に判断できない限り購買には至らず、購買に至るまでにも社内で十分な調査や審議が必要になります。

一方、消費者の購買目的は「自身の課題解決のため」以外に「欲しいと思った」などの感情に起因することも多く、衝動買いなども発生します。

以上からBtoBマーケティングでは製品がいかに企業の利益になるかを示す合理的で客観性のある説明が必要であり、BtoCマーケティングでは消費者の感情に訴えかけるプロモーション施策がより有効とされています。

検討期間

BtoB事業は製品単価が高額になりやすく、購買に関わる人数が多いこともあって検討期間が長期になりがちです。購買が決定するまでに数ヶ月以上、長いと1年以上かかるケースもあります。

BtoC事業でも不動産や高級車など高額の製品の場合は検討期間が長引く場合がありますが、生活用品などであれば基本的には見た瞬間に即決されるか、長くとも数日程度で購買の意思決定が行われます。

このためBtoBマーケティングでは、長い検討期間の中で顧客との接触が途切れないよう、BtoCマーケティングよりも顧客を長期間フォローし続けるための体制を作る必要性が大きいといえます。

2.BtoBマーケティングの2タイプの手法

BtoBマーケティングは、大きく分けて2つの手法があります。1つが「デマンドジェネレーション」、もう1つが「ABM」です。本章では、この2つの手法について解説します。

【手法1】デマンドジェネレーション

デマンドジェネレーションとは「リード(見込み顧客)の収集・育成・絞り込みを中心に据えたマーケティング活動」を指します。「BtoBマーケティング」という言葉から想像されることが多いのはこちらの手法です。下図は、デマンドジェネレーションの流れを表しています。

デマンドジェネレーションの基本の流れ

デマンドジェネレーションでは、まず多くの見込み顧客の情報を集め、その見込み顧客との関係を築いて自社製品・サービスに対する関心や購買意欲を高め、その中から受注確度の高い見込み顧客を営業に渡して案件創出を図ります。具体的には、次の3つのフェーズを通し、見込み顧客の情報を営業に引き継ぐのです。

  1. 見込み顧客の獲得(リードジェネレーション)
  2. 見込み顧客の育成(リードナーチャリング)
  3. 見込み顧客の絞り込み(リードクオリフィケーション)

デマンドジェネレーションの手法を実践すれば、「まだまだ客」(今購入の必要性も意思もない見込み顧客)と関係を築き、「まだまだ客」を「今すぐ客」(購入の必要性も意思もある見込み顧客)に成長させられる可能性があります。

「今すぐ客」は今まさに製品・サービスが必要であり購買を検討している、企業にとって最も欲しい、受注に結びつきやすい見込み顧客です。しかし、割合としては全体のうちのほんの数%しかおらず、競合他社との奪い合いになります。

売上拡大のためには長期的な目線を持ち、「まだまだ客」のうちから接触して関係を構築することが重要なのです。

まだまだ客を今すぐ客に成長させる

見込み顧客と良好な関係が築けていれば、見込み顧客に「◯◯の課題を解決したい」といったニーズが生まれたときいち早く気づき、「解決策として自社製品・サービスはどうか」と最適なタイミングで自社から提案を行うことも可能になります。

デマンドジェネレーションについては、下記の記事でも詳しく解説しています。

関連記事:デマンドジェネレーションとは?リードジェネレーションをはじめとする3つの要素を解説

リードの獲得(リードジェネレーション)

リード獲得はデマンドジェネレーションの最初のステップであり、「見込み顧客の情報を獲得する」段階です。なるべく多くのリードを獲得し、アプローチできる数を増やすことが目的です。

リードは、基本的には見込み顧客の氏名、企業名、部署名、役職名、連絡先(メールアドレス・電話番号など)などがそろった個人情報を指します。リード獲得のために、具体的には下記のような手段があります。

【リード獲得の前段階として認知度を高める・集客を増やす】

  • Web広告
  • マス広告
  • SEO
  • SNS運用


【リードを獲得する】


【個人情報入力のハードルを下げる】

  • EFO

個々の施策の詳細は「4.BtoBマーケティングの15の施策例」で後述しています。

関連記事:リードジェネレーションとは?手法やナーチャリングとの関係も解説

リードの育成(リードナーチャリング)

リード育成はデマンドジェネレーションの2番目のステップで、「見込み顧客と関係を構築し維持する」段階です。見込み顧客に継続的に接触する、または接触される過程で製品・サービスへの関心を高めることを目的とします。

見込み顧客と関係を構築・維持する手段としては、メールやセミナー、コンテンツなどを通して有益な情報発信を行い、見込み顧客にアクセスしてもらうやり方などがあります。見込み顧客が自社のコンテンツは役に立つと考えて高頻度に接触してくれるようになれば、自社に対する信頼感が醸成され、商談につながりやすくなることが期待できます。

また、関係性が途切れないように、定期的に見込み顧客と接触するポイントを持つことも重要です。メールマガジンや定期的な架電は、現在は取引の意思がない企業であっても自社の名前を印象付け、その後のアプローチに影響します。

リード育成のために、主に下記のような手段があります。

【見込み顧客と関係を築く】


【見込み顧客との関係を維持する】

関連記事:BtoBマーケティングにおけるナーチャリングとは?重要視される背景や代表的な手法を紹介

リードの絞り込み(リードクオリフィケーション)

リードの絞り込みはデマンドジェネレーションの3番目のステップで、「育成したリードの中から受注の可能性の高いリードを絞り込む」段階です。

受注の可能性が高い見込み顧客を絞り込み、優先的に営業に渡すことによって受注率を高められ、商談活動を効率化できます。絞り込みの方法は、基本的に「スコアリング」を用います。

スコアリングとは、見込み顧客の属性や行動に応じて点数をつけ、一定の点数以上に達した場合に、購買意欲の高い「ホットリード」であると判断する方法です。具体的には、「ターゲットの◯◯業界の企業である」「決裁権を持つ役職者である」などの属性条件に応じて◯点、「特定の資料をダウンロードした」「問い合わせを行った」などの行動条件に対して◯点といったように個別に点数を設定し、加算していきます。

スコアリングを行う際には、スコアリング機能を持つMAなどのツールを利用するやり方が一般的です。リードを絞り込んだら、リードを営業に渡して対応を引き継ぎます。

関連記事:リードクオリフィケーションとは?成果を出す手順やポイントをマーケティングのプロが解説!

商談・受注

渡されたリード情報をもとに、営業社員が見込み顧客に対して架電・メールなどを利用してアポイントを獲得し、商談に移行します。

先のリード育成段階における定期架電・メールや、このアポイント獲得作業をインサイドセールス(内勤営業)が専任で担当する場合もあります。

契約継続の取り組み

受注が決まれば、その後は取引を可能な限り長く続けてもらうための取り組みを実施します。主に「顧客満足度を高めて継続利用してもらう手法」と「追加の提案で売上を最大化する手法」があります。

具体的には、下記のような手段です。

【顧客の満足度を高める】

  • カスタマーサクセス
  • FAQサイトの整備
  • ユーザーコミュニティ


【追加の提案をする】

【手法2】ABM

ABMとは、ターゲットに設定した顧客(=アカウント)の売上最大化を目指すマーケティング活動全般を指します。あらかじめアプローチする重点顧客を選び、その顧客と長期的な関係を築くことによって売上拡大を図るのです。

下図は、ABMの基本の流れです。

ABMの基本の流れ

ABMはデマンドジェネレーションのように多数の新規顧客の中から受注を増やしていくやり方ではなく、自社にとって取引額が大きいと考えられる大口の既存顧客や、同じレベルの大口の新規顧客をねらいます。また、デマンドジェネレーションのようにマーケティングと営業を明確に切り分けず、マーケティングと営業を連携させた取り組みを行うのです。

ABMは自社の限られたリソースを大口顧客に対する施策に集中させられるため、見込みのない顧客に対して不必要なアプローチを続けてしまう可能性を減らし、効率的に成果を上げやすいメリットがあります。

関連記事:【入門】ABMとは?必要性が高まる理由やメリット、進め方からツール活用まで分かりやすく解説

対象アカウントの設定

どの企業(=アカウント)をターゲットにするのかを設定する作業を行う段階です。

まず社内の顧客データや経営戦略などの情報を整理した上で、企業を選定します。選定基準としては、現時点で取引額の大きい企業や、将来的に大きな取引を継続的に見込める企業などが挙げられます。

チームの組成

ターゲットにする企業を決めたら、アプローチする上で中心となって動くプロジェクトチームを組成します。

ABMは特定のターゲットに対し、個別に用意した戦略でアプローチします。戦略に基づき一貫性のある施策を実行するためには、各部署が各自で動くのではなく、プロジェクトチームが責任を持って調整に動く必要があるのです。

アカウントプランの作成・実行

ABMにおいて最終的な売上目標はいくらか、具体的にどのようなスケジュール感で誰が何を実行するのか、ターゲットの社内の組織図やアプローチすべき相手など、取るべき戦略をまとめたアカウントプランを作成します。アカウントプランを作成したら、スケジュールに合わせ施策を実行します。

関連記事:ABMに必須のアカウントプランの作り方|基礎からテンプレートまで解説

どちらの手法を実施するべきか

デマンドジェネレーションとABMのどちらの手法がより有効であるかは、企業によって異なります。下記は、2つの手法を比較した図解と表です。

デマンドジェネレーションとABMの比較

【デマンドジェネレーション・ABMが向いている事業タイプ】

事業タイプ デマンドジェネレーション ABM
戦略 多数の新規顧客の開拓 大口顧客との取引開始・継続・売上拡大
ターゲット企業の数 多い 少ない
ターゲット企業の規模 小さい~大きい 大きい
商材の単価 低い~高い 高い

デマンドジェネレーションは新規顧客の開拓のため、多くの見込み顧客をまず集め、契約できる見込み顧客を徐々に絞り込んでいきます。一方のABMは、大口顧客にねらいを定め、その中で取引を拡大していく戦略です。

決まったプロダクトの商材を扱っておりアップセル・クロスセルが行いづらい企業や、一社あたりの取引金額が小さい企業の場合は、売上拡大のために大量の新規顧客が必要になり、多くの見込み顧客と接触・契約する必要があります。このため、デマンドジェネレーションの手法が向いているでしょう。一社あたりの取引金額が低い企業の場合、ABMの実施によるリソース集中が費用対効果に見合わない可能性もあります。

反対に、ターゲットの数が限られている企業の場合は、デマンドジェネレーションで1からリードを育成する手間をかけるよりも、目星をつけた相手に直接アプローチを仕掛けられるABMの手法が効率的です。

ただし、ABMはターゲットとする企業の選定や戦略立案のために豊富な顧客データが必要です。企業の情報がない場合は、デマンドジェネレーションのようにリード情報の収集から始めてデータを蓄積するか、別途リストを購入するなどして顧客データを用意する必要があります。

デマンドジェネレーションとABMは対立する手法ではなく、企業によっては2つの手法どちらも採用しているケースも多くあります。どちらか一方ではなく、自社にとって最適なBtoBマーケティングのあり方を検討しましょう。

3.BtoBマーケティングの基本的な流れ【4ステップ】

BtoBマーケティングを実施する上では、基本的に下記の4つのステップを辿ります。各ステップで何を行うのか確認しておきましょう。

  • 【ステップ1】調査・分析
  • 【ステップ2】戦略設計
  • 【ステップ3】計画策定・実施
  • 【ステップ4】効果測定・改善
BtoBマーケティングの基本的な流れ【4ステップ】
BtoBマーケティングの基本的な流れ【4ステップ】

【ステップ1】調査・分析

BtoBマーケティングを行うにあたって、まずフレームワークなどを利用しながら調査・分析を行い現状を把握します。現状を把握する目的は、マーケティング戦略の方針を固めるために「市場の状況を知ること」「自社の課題を発見すること」が挙げられます。

PEST分析でマクロ環境を整理する

PEST分析は「Politics(政治)」「Economy(経済)」「Society(社会)」「Technology(技術)」の4つについて、自分たちでは関与できない世の中の動向(マクロ環境)を分析するフレームワークです。

マーケティング戦略の立案は中長期的な視野を持って行う必要があり、現在のみならず未来に起こり得る環境の変化や問題をあらかじめ押さえておくことで、その影響について考慮した戦略を立てられます。主に新規事業を始める際に役に立つでしょう。

PEST分析で整理する要素としては、下表のような例が挙げられます。

PEST
Politics(政治) 法律、税制、政権の方針、国際情勢など
Economy(経済) 株価などの景気動向、物価指数、賃金など
Society(社会) 人口動態、価値観、流行、世論の変化など
Technology(技術) 技術革新、特許など

例えばマーケティングに影響を与える大きな出来事として、2022年の4月に「個人情報保護法」の改正がありました。戦略立案にあたってこうした変化を反映できていない場合、計画に支障を来すことになります。PEST分析によってマクロ環境を把握し、自社にとってどのような課題がありそうかを押さえておきましょう。

3C分析でミクロ環境を整理する

3C分析

3C分析は「Customer(市場・顧客)」「Competitor(競合)」「Comapany(自社)」の3つについて、自分たちが一部関与できる周辺の現状(ミクロ環境)を整理するフレームワークです。

自社が置かれている状況を整理した上で、マーケティング戦略の方向性を決めるために利用します。3Cの要素を埋めるためにどのような調査内容・方法を取るかは、下表のような例が挙げられます。

3C 調査内容の例 調査方法の例
Customer
(市場・顧客)
・市場規模
・トレンド
・顧客が抱えている課題
・ユーザーニーズ
ユーザーインタビュー、受注分析、営業からヒアリング、調査会社の利用など
Competitor
(競合)
・競合の業績
・サービス・コンテンツの自社との差異
競合の洗い出し、競合のサービス・コンテンツのチェック、競合調査ができるツールの利用
Company
(自社)
・年間売上額
・自社の案件化率、商談率、受注率、失注率など
・自社サイトの流入状況
・現状の施策
顧客データの整備、アクセス解析ツールの利用、営業プロセスの見直し

3C分析により、競合と自社の差分や、顧客のニーズは何か、顧客のニーズに対して自社はどの程度対応できているかなどが整理できます。

関連記事:【具体例付き】3C分析とは?目的・やり方を分かりやすく解説

SWOT分析でマーケティング課題を発見する

SWOT分析

SWOT分析は「Strengths(強み)」「Weaknesses(弱み)」「Opportunities(機会)」「Threats(脅威)」という区分で、自社の内部環境と外部環境を整理するフレームワークです。PEST分析や3C分析によって整理した情報をもとに分析を行います。

SWOT分析はマーケティング戦略立案にあたって、既存事業の改善点や新規事業のリスクを分析でき、課題の発見に役立ちます。SWOTに各要素を当てはめていきましょう。

SWOT 環境 内容
Strength
(強み)
内部環境 3C分析に基づき内部環境の中で自社の強みとなる要素を抽出
Weakness
(弱み)
3C分析に基づき内部環境の中で自社の弱みとなる要素を抽出
Opportunity
(機会)
外部環境 PEST分析に基づき外部環境の中から自社にとってプラスになる要素を抽出
Threat
(脅威)
PEST分析に基づき外部環境の中から自社にとってマイナスになる要素を抽出

SWOTの要素を埋めて分析し、割り出した課題の仮説について「どのように解決していくか」がBtoBマーケティング戦略を考える上での土台となります。

関連記事:SWOT分析のやり方とは?効果的に実施するためのポイントや事例を紹介

【ステップ2】戦略設計

ステップ1の調査を経て導き出した「マーケティング課題」を解決するために、BtoBマーケティングの戦略を設計します。具体的には、下記のような5W1Hの項目の大枠を定めます。

5W1H 戦略設計で決めること 検討内容の例
Why
(なぜ)
戦略設計の目的、達成すべき目標、解決すべき課題 何のために行うのか
Who
(誰に)
ターゲットとする顧客は誰か 業界、規模、地理的位置、ニーズ、ターゲットとなる企業の特性など
What
(何を)
提供する価値は何か 製品・サービス、顧客にとっての価値
Where
(どこで)
接点はどこか オンライン、オフライン、タッチポイント
When
(いつ)
いつのタイミングで実施するか 業界のトレンド、季節性、顧客の購買サイクル
How
(どのように)
どのように実行するのか マーケティング手法、チャネル、予算

また、取るべき戦略は自社のビジネスモデルによって異なるため、自社のビジネスモデルのタイプを理解した上で検討する必要があります。自社のビジネスモデル自体を整理できていない方は、下記の記事もあわせて確認してください。

関連記事:取るべき施策が分かるBtoBマーケティング8パターンの戦略

BtoBマーケティングの目的を決める

「なぜ」BtoBマーケティングを行うのか目的(KGI)を設定します。KGIは具体的な数値目標に落とし込みましょう。

  • 商談創出率を◯%伸ばし、年間の売上額◯万円を達成する
  • アップセル・クロスセル含めた既存顧客の売上を◯%伸ばし、年間の売上額◯万円を達成する

目的と同時に、「自社はBtoBマーケティングによって何を解決しようとしているのか」と解決すべき課題についても明文化しておきます。今後個別の施策が増えていったときに方針がぶれないようにするためです。

STP分析で市場・ターゲット・提供価値を明確にする

STP分析は「Segmentation(セグメンテーション)」「Targeting(ターゲティング)」「Positioning(ポジショニング)」の3つのステップを経て、市場に対しての自社の向き合い方を考える、または現在どのように向き合っているかを整理するフレームワークです。

STP分析によって自社がねらう市場・ターゲットを明確化し、「誰に」「何の価値を届けるのか」を決定します。

STP分析の工程

STP分析の各ステップについて、どのような切り口で行うかは企業によって異なります。下表の判断軸の例を参考に考えてみてください。

STP 内容 判断軸の例
Segmentation
(セグメンテーション)
市場を細分化する 業種、企業規模、地理、各企業の行動方針、社風、利用頻度など
Targeting
(ターゲティング)
細分化したセグメントを選びターゲティングする 売上が得られる市場か、成長性があるか、強い競合がいないかなど
Positioning
(ポジショニング)
選んだセグメントのなかで競合他社と比較し自社にしかないポジションを決める 機能、コスト、デザイン、事業の継続性など

STP分析を行うと、競合と比較しての自社の立ち位置がポジショニングマップによって可視化され、「自社は誰にどんな価値を提供する(している)のか」「このポジションにあることを今後どのように生かしていくか」の観点から戦略を考えられるようになります。

関連記事:【具体例付き】BtoBのSTP分析とは?やり方や注意点を徹底解説

ターゲットからペルソナを作成する

STP分析でターゲットが明確になったら、さらに見込み顧客のペルソナを作成します。

BtoBにおけるペルソナの例
BtoBにおけるペルソナの例

ペルソナとは自社製品・サービスを利用する架空のユーザー像です。業種や職種、役職、年齢、価値観などを実在する人物のように作りこみます。ペルソナができあがったら、そのペルソナが実際に購買活動を行う場合を想定して施策を考えます。これにより社内のターゲットイメージを統一して施策に一貫性を持たせられるほか、顧客の視点に立った施策を考えやすくなります。

関連記事:「BtoBマーケティングでもペルソナを作成しよう!設定の重要性と方法を解説

カスタマージャーニーマップを作成する

ペルソナが完成したら、カスタマージャーニーマップにペルソナの購買行動を落とし込みます。

カスタマージャーニーマップは、顧客が製品・サービスを購入するまでの行動や感情の変遷を可視化したマップです。カスタマージャーニーマップによって顧客視点での購買プロセスが明確になり、自社が現在行っている施策も一覧化できます。このとき、顧客視点の購買プロセスとは別に自社の営業プロセスも可視化しておきましょう。

見込み顧客の購買段階に沿って「いつ」「どこで」施策を実施すべきなのか、「どのように」情報を提供すれば顧客の態度変容を促せるのかを考え、自社が取るべき施策と提供のタイミングを検討します。

カスタマージャーニーマップの例
カスタマージャーニーマップの例

関連記事:BtoBにおけるカスタマージャーニーマップとは?【無料テンプレ配布中】ペルソナ記入方法付き

【ステップ3】計画策定・実施

戦略に基づき、必要な人員・予算・スケジュール・具体的なアクション(施策)を個別に決めていきます。

ただし、必要な施策を洗い出したとしても、予算や人的リソースの問題がありすべてを実行できないケースもあります。BtoBマーケティングを初めて行うのであれば、まず計画を短いスパンで策定し、売上につながりやすそうな施策から優先的に着手して、短期に結果を出すことを意識してみましょう。目に見える実績があれば、追加の予算や人員確保を働きかけやすくなり、他の施策の実行にもつなげられます。

4Pで具体定期なアクションを考える

4Pは、戦略に基づいて製品や価格、流通チャネル、広告施策などを具体的なアクションに落とし込むために利用するフレームワークです。4Pの観点で考えることで、ぬけもれなく施策を検討できます。

4P 内容
Product
(製品)
製品・サービスを通じて提供できる価値 機能、サイズ、種類、分量、保証、アフターサービスなど
Price
(価格)
製品・サービスを提供する価格 単価、手数料、月額料金など
Place
(流通・販路)
製品・サービスを届けるまでの流通や販路 営業、サービスサイト、ECサイトなど
Promotion
(販売促進)
製品・サービスの価値を適切に伝え顧客に態度変容を促す施策 マス広告、Web広告など

自社の製品・サービスの4Pを整理して、「P」間で矛盾が生じないよう整合性を取りながら、施策としてどのようなアクションを行うか具体的に決めていきましょう。よく似た概念として、顧客視点から施策を検討する4Cもあります。

4Pと4Cの比較

関連記事:【マーケター必見】マーケティングの王道「4P分析」!事例や使い方を解説

KPIを設定する

実行する施策が定まったら、KGIを達成するためのKPI(中間数値目標)を具体的に設定します。ツリー状にして記述を整理すると、どの施策がどの目標に結びついているのかを可視化でき、その後の改善策なども検討しやすいでしょう。

KPIツリーの例

マーケティング計画を立て実行する

設定したKPIを達成するために必要な期間などを逆算し、スケジュールを考えます。以下のような手順でマーケティング計画を立て、実行します。

  • マーケティングカレンダーに落とし込む
  • 責任者とチームメンバーを割り当てる
  • 予算の内訳と根拠を明示する
  • エグゼクティブサマリーを作成する
  • 計画内容の管理・最適化を進める

マーケティング計画に関する詳細は下記の記事も確認してください。

関連記事:【テンプレート付き】マーケティング計画とは?戦略との違いから具体的な立て方まで解説

【ステップ4】効果測定・改善

施策を実施後、結果を評価し、十分な成果が出ていない施策については改善を繰り返すことでPDCAを回します。マーケティング施策の評価は、下記2点を意識しましょう。

  • 費用対効果
  • 目標に対しての施策の貢献度合い

BtoBマーケティングは「この方法を取ればどのような企業もうまくいく」といった正解はなく、最終的には自社にとって最適な形のマーケティング手法を見つけなければなりません。自社の成功パターンを確立するためにも、スピーディにPDCAを回すことが大切です。

PDCAサイクル

また、Webを利用したマーケティング施策の場合、ユーザーのWeb上での行動を成果としてとらえます。施策を行った結果、自社サイトの月間流入数が300人から3000人に増加したとしたら大きな成果といえますが、この成果を計測するためには計測のためのアクセス解析ツール導入が必要です。

施策を行う前に、効果測定が行える状態になっているか、PDCAが回せる状態になっているかを確認しましょう。Web施策の場合は、ユーザーの行動を計測して正確な成果を算出するために、無料で利用できるGA4やGoogleサーチコンソールなどのツール導入をあらかじめ行っておきましょう。

関連記事:【初心者向け】アクセス解析で分かることとは?進め方からコツまで解説

4.BtoBマーケティングの施策で成果を上げる3つのポイント

  • 「誰に(Who)何を(What)伝えるのか」を明確にする
  • 施策に一貫性を持たせる
  • 顧客との関係性を維持する

「誰に(Who)何を(What)伝えるのか」を明確にする

マーケティング施策で最も重要なのは、顧客とのコミュニケーションです。どのような人にどのようなメッセージを伝えることが最も商品の価値を伝えられるのか、選んでもらえるのかを考え尽くす必要があります。つまり「顧客理解の後に、適切なマーケティング施策を選択する」という順序でなければなりません。

BtoBマーケティングを始めようとするとき、最初からサイトの改善や広告運用などの施策ありきで改善を図ろうとしてしまう場合があります。しかし、「誰に(Who)何を(What)伝えるのか」が明確になっていないまま施策を進めても、一貫性がなく場当たり的な施策になってしまうでしょう。

関連記事:マーケティングに欠かせない顧客理解 重要性や方法を徹底解説

メッセージに一貫性を持たせる

BtoBマーケティングでは単一の施策で売上にインパクトを与えることは難しく、集客やリード獲得に効果があるもの、休眠顧客を掘り起こすもの、営業活動を効率化するものなど、役割別に異なる施策を組み合わせて戦略を設計しなければなりません。

しかし、マーケティング活動が活発化し社内での役割分担が進んだ結果、広告やWebサイト、メールマガジンなど、施策によって発信する内容や方向性がバラバラになってしまうことがあります。これでは見込み顧客に正しく商品の良さや強みを伝えられません。それぞれの施策の役割を理解して分担しながらも、「誰に何を伝えようとしているか」の意思統一を行い、メッセージに一貫性を持たせましょう

対応策として、ペルソナの作成やカスタマージャーニーマップの作成がおすすめです。

関連記事:ペルソナの作り方とは?徹底解説【無料設定シートダウンロード】

顧客との関係性を維持する

BtoBマーケティングでは、検討期間が長期にわたりやすいこと、一社あたりの取引金額が大きいことなどから、新規顧客の創出と同時に顧客との関係性の維持が重要です。

BtoBマーケティングに注力する企業が増えた結果、営業担当が個別に保有していた名刺のデータ化が進み、各社で保有するハウスリストの数も飛躍的に伸びました。そのため、営業担当が個別に連絡・訪問していた受注前の顧客との関係性維持を、従来通りに人力で丁寧に行うことが難しくなっています。

顧客との関係性維持を図るためには、顧客にとって有益なコンテンツを定期的に更新し、人を介さずともコンテンツを通して顧客の自発的な課題解決を助ける方法や、人力で行っていた定期的なメールでのフォローをMA(マーケティングオートメーション)などのツールを利用して効率化する方法があります。

5.BtoBマーケティングの施策例15選

BtoBマーケティングの代表的な施策を一覧化しました。各施策について、どのような役割を持っている施策なのか確認しておきましょう。

BtoBマーケティングの全体像
BtoBマーケティングの全体像

さらに施策について知りたい場合は、下記の記事もあわせて参照してください。

関連記事:BtoBマーケティングの手法32選!課題に合わせた活用方法も紹介

【1】Webサイト

BtoBマーケティングの施策のハブとして機能し、見込み顧客の受け皿になるのがWebサイトです。

Webサイトは検索エンジン、Web広告、SNS、展示会など、自社と接触した見込み顧客の流入先になります。見込み顧客が調べ物をするとき、自社製品・サービスについて調べるとき、商談や相見積もりを行うとき、いずれにおいてもWebサイトが閲覧されます。Webサイトの構築・充実はBtoBマーケティングにおける最優先課題であるといえるでしょう。

Webサイトが持つ機能

BtoBマーケティングにおいては、Webサイトの目標を「CV数(リード獲得数)」「商談創出数」に設定することが一般的です。

Webサイトの新規制作やリニューアルを検討する場合は、ターゲット像(売上につながる見込み顧客像)を明確にした上で、ターゲット像に基づく集客施策やコンテンツ設計を行いましょう。ターゲット像に沿ったコンテンツづくりや集客施策を行わないと、集客に成功してもWebサイトの構成やUIの問題によりリード獲得につながらなかったり、リードは獲得できても商談につながらないといった問題が生じる可能性があります。

Webサイトにはさまざまな種類があり、自社の戦略によって構築するWebサイトのタイプも異なります。詳細は下記の記事を確認してください。

関連記事:Webサイトの種類は?用途と目的・運用のポイントまで5分で徹底解説

【2】コンテンツSEO

コンテンツSEOは「顧客の悩みを解決する良質なコンテンツ」をWebサイト上で発信することにより検索エンジンからの高評価・検索上位の表示をねらい、流入数の増加を目指す施策です。

Googleなどの検索エンジンの検索結果で、自社サイトをより上位に表示させるための施策全般をSEOといいます。多くの検索エンジンは、ユーザーの知りたいことに答えている質の高いコンテンツを評価します。

またBtoB事業では、取引先を選定する場合に「企業への信頼感」が重要視されます。自社の専門性を生かした独自のノウハウをコンテンツとして発信すれば、市場や顧客に新たな「気づき」を与え、自社に対する信頼感の醸成につながるでしょう。

コンテンツSEOには、このほかにも以下のようなメリットがあります。

  • コンテンツを一度掲載すれば、そのキーワードで検索する人がいる限り半永久的に流入を期待できる
  • 掲載を止めれば流入が途絶えてしまうWeb広告と比較すると、長い目で見た場合に費用対効果が高い
  • 検索を経て自社のコンテンツにたどり着いた人が、将来的にサービスの利用を検討した場合に、「見たことがある会社だ」と思ってもらえれば購入につながりやすくなる

コンテンツSEOは始めたばかりのときは評価を得るまでに半年ほどかかるため、即効性は期待せず、中長期的に取り組むことが大切です。

コンテンツSEOに関して、さらに詳しく知りたい方はこちらの記事がおすすめです。

関連記事:コンテンツSEOとは?概要・メリット・作り方の手順を徹底解説

【3】Web広告

Web広告はWeb上でテキストや画像、動画などの広告を表示し、自社サイトへの流入や製品・サービスの認知拡大のために利用する施策です。

一口に広告といっても、その種類は多岐にわたります。代表的なものでは、Webサイトに表示されるディスプレイ広告や、検索エンジンに連動したリスティング広告、過去にサイトを訪れた人をターゲットにしたリターゲティング広告、SNSに表示されるSNS広告などがあります。

消費者向けの消耗品などを扱うBtoC事業とは違って、BtoB事業の場合は製品・サービスを利用する対象者が限られるため、投資対効果の観点からも配信媒体や条件を絞りやすいWeb広告が有効です。

例えばリスティング広告を利用すると、検索キーワード(ユーザーが悩みや課題の解決策を調べるために検索にかけるワード)と連動させた広告を表示できるため、BtoB企業でも始めやすい施策といえます。

Web広告に関しては、こちらの記事も参考にしてください。

関連記事:Web広告の7種類を解説 基礎知識や選定ポイントも紹介

【4】マス広告

マス広告とは、マスメディア(新聞・雑誌・テレビ・ラジオ)に掲載する広告です。

多くの人に届くがゆえ、顧客が限定されるBtoB企業ではあまり検討されてきませんでしたが、昨今はテレビCMにおいて投資対効果をシミュレーションするサービスが増えてきたこともあり、利用が増えています。Web広告と比べると費用が高くなる傾向にありますが、より幅広い人の目に触れるため知名度の向上が期待できます。

企業において意思決定者の年齢層が高いケースや、大企業向けの商品で多くの人に認知されることで社内決裁が進みやすくなるケースでは、マス広告への投資を選ぶ企業が増加傾向です。業界が成熟していない新興市場も、検索やSNSで能動的に情報収集をする人が少ないため、マス広告で市場そのものを作るアプローチを取るスタートアップも増えつつあります。

マス広告への投資は予算が厳しい、または一度広告の効果を小規模でテストしたいというニーズから、ビジネスマンが移動に使うタクシーや電車、バスといった場所に掲示する交通広告の利用も増えています。

【5】SNS運用

SNS運用は、市場からの認知・信頼獲得やWebサイトへの集客を目的に実施される施策です。SNSをBtoBマーケティングに利用する場合は、業界や商材の特徴、運用目的などに応じて適切なSNSを選択する必要があります。

SNSによってユーザーの属性や行動の傾向は異なっています。例えばX(旧:Twitter)はSaaSなどIT業界の企業が利用することが多く、その拡散性の高さや気軽さが人気です。Instagramは画像中心のメディアのため、BtoB業界の中でもクリエイティブ系の企業や消費者向け製品の部品メーカーなどの情報発信で多く使われる傾向にあります。

SNSが採用活動で使われることも一般化しつつあります。Facebookは企業の公式ページ開設が過去に流行したこともあり、採用情報なども含めた公式情報の発信によく利用されているSNSです。Facebookは実名で個人情報を登録している人が多いSNSでもあるため、ターゲティングの精度が高く、ホワイトペーパーやセミナー集客を目的にした広告運用にも多く活用されています。

SNS活用に関して、具体例でさらに詳しく知りたい方はこちらの記事がおすすめです。

関連記事:BtoB企業こそSNS活用を!顧客のLTV向上を実現するSNSマーケティング戦略とは【セミナーレポート】

【6】プレスリリース

プレスリリースは新商品の発表や調査レポートの発行をメディア向けのリリースにまとめ、プレスリリース配信サービスに掲載したり、メディアに直接アプローチしたりすることで記事化を狙い、市場から認知や信頼の獲得を目指す施策です。

企業によっては広報部門が担当するケースもありますが、マーケティング部門が知名度の向上やソートリーダーシップ(業界の第一人者となる活動)のためにプレスリリースを戦略的に活用するケースも増えています。

無料または非常に小さい金額で配信できるため、セミナー開催などに合わせて試しにやってみて損はない施策の1つといえるでしょう。

プレスリリースに関しては、こちらの記事で掲載されるコツまで解説しています。

関連記事:【ポイントは6つ!】プレスリリースの書き方は?具体例や掲載されるコツまで紹介!

【7】展示会・イベント

展示会・イベントへの出展は、自社製品・サービスの認知度の拡大と、名刺交換による大量のリード獲得を目指す施策です。

専門性の高い展示会の場合、自社の業界に興味を持っている人が訪れるため、名刺交換によって多くの見込み顧客の獲得が期待できます。また、ITの活用に慣れずWebでの情報収集をしていない人であっても、展示会のようなリアルの現場には頻繁に足を運んでいるケースがあります。こうした層に対しても、展示会での訴求が有効です。

展示会に出展する際には、何を出展の目標とするのか、何を指標として達成度を測るのかについてあらかじめ明確にしておきましょう。成果を測る指標としては、名刺の獲得枚数、来場者のアンケート記入数、商談創出数などが一般的です。

ただし、展示会に訪れる見込み顧客のうち「今すぐに商品の購入をしたい・検討している」という顧客の数はそう多くないケースが多いため、獲得したリードに対して継続的なフォローを実施し、商談化につなげていく方法までセットで検討する必要があります。

関連記事:展示会の事前準備で必要なことは?出展までのスケジュールを徹底解説!

【8】LP(ランディングページ)

LPは、Web広告をクリックした際の遷移先として設定されることが多い、縦長1枚もののWebページを設置してCV(コンバージョン)につなげる施策です。

一般にWebサイトは複数のページで構成され、ユーザーの課題や興味に応じて最適なコンテンツに向かえるようにサイトマップを設計しますが、LPは最短でCVに向かわせるためにリンク要素を少なくし、1枚のストーリーを読み込ませる構成が一般的です。

LPは単体のWebページであるためSEOで大きな成果を上げることが難しく、LPを多くの人に閲覧してもらえるように流入施策を別途行います。具体的には、リスティング広告やSNS広告を始めとするWeb広告や、メールからLPに誘導する方法があります。

タッチポイントごと、または広告クリエイティブごとに合わせたストーリーを設計したLPとし、「まさに自分の課題を解決するための商品だ」と思わせることが重要です。

LPに初めて取り組まれる方には、こちらの記事がおすすめです。

関連記事:【初心者向け】LPの簡単な作り方|無料ツールや依頼相場も解説

【9】アクセス解析

Webサイトのアクセス解析はマーケティングの効果測定により課題を発見し、今後の改善につなげていく施策です。各種マーケティング施策の投資対効果を高める上で、定期的に実施すべき施策といえます。

自然検索流入を多く獲得できているキーワードは何か、流入したユーザーがよく見ているコンテンツは何か、CVに至るまで多く利用されている経路は何か。ユーザーの行動を定量的に分析しながらUIやコンテンツを改善し、流入したユーザーが高確率でCVに至るような、リード獲得・商談創出に寄与するWebサイトを目指しましょう。

アクセス解析にはツールの利用がおすすめです。無料で利用できる代表的なアクセス解析のツールとしては、Googleアナリティクス4があります。アクセス解析ツールの詳細は、下記の記事を参考にしてください。

関連記事:アクセス解析ツールを使うと何が分かる?解析の目的や実施方法、ツールを紹介

【10】ホワイトペーパー

ホワイトペーパーは、 市場調査や技術情報、商品やサービスの導入・比較事例といった、見込み顧客の課題解決に有益となる情報をまとめた資料です。

新規の見込み顧客がホワイトペーパーをダウンロードする際には、名前や住所、メールアドレスなどのリード情報のフォーム入力が条件である場合が多く、リード獲得の施策として用いることが一般的です。

また、見込み顧客の購買意欲の段階に応じて、「サービスの基礎知識」「サービスの導入事例」「複数サービスの比較・検討資料」などさまざまなホワイトペーパーを準備しておくことで、見込み顧客の次のアクションを促したり、そのときの見込み顧客にとって関心の高いテーマを推察したりする手段としても利用されています。

ホワイトペーパーに関して制作手順まで知りたい方はこちらの記事がおすすめです。

関連記事:ホワイトペーパーとは?目的・テーマ・制作手順を解説

【11】メールマガジン

メールマガジンは、顧客にとって有益な内容のメールを定期的に配信することで、長い購買プロセスにおいて顧客との関係性を維持し、忘れずにいてもらうための施策です。

メールの配信により、メールのタイトルや送信者の名前が顧客の目に定期的に触れるだけでも、全く配信を行わない場合と比べて自社を記憶に留めてもらいやすくなります。また、メールの開封やメール内リンクのクリックが行われた場合、その行動の変化をツールを利用して計測できるため、顧客のニーズを推測し今後のアプローチを行う上での参考にできます。

ただし、ユーザーにとって価値のある情報を、適切な頻度で提供できなければ、ユーザーにブロックされたり、迷惑メールに分類されたりする場合があります。メールマガジンはユーザーの許可なく配信できないため、メールアドレスを取得する際にはメールマガジンの受信許可(オプトイン)を取得しましょう。

メールマガジン運用を成功させるために、下記の記事も参考にしてください。

関連記事:メルマガ配信とは?開封率の高いメールマガジンの作り方やテンプレートまで徹底解説

【12】インサイドセールス

インサイドセールスとは、見込み顧客のもとを直接訪ねるのではなく、電話やビデオ通話、メール、チャットなどを用いて、リモートで行う営業活動です。

Salesforce社が実践する分業型の営業体制を解説した書籍「THE MODEL」で有名になった手法です。営業リストに沿ってただテレアポを行う組織ではなく、見込み顧客に個別の情報提供を実施する過程で、課題が顕在化している(製品・サービスを購入する理由がある)見込み顧客を判定し、外勤営業(フィールドセールス)にヒアリング情報と共に引き継ぐ役割を担います。

インサイドセールスは、従来の営業が担っていた仕事のうち「接触・関係構築・案件創出」を担当し、「商談・クロージング」を行うフィールドセールスと役割を分担します。営業プロセスの潤滑油として機能し、営業の効率化を実現するのです。

関連記事:インサイドセールスとは?テレアポとの違い、導入の効果を解説

【13】セミナー・ウェビナー

セミナー・ウェビナーは課題テーマに興味を持つ見込み顧客のリード獲得や、課題解決の指南による信頼獲得につなげる施策です。

コンサルティングなど、担当者のノウハウそのものが商材である事業においては以前から王道の施策です。昨今では製造業やソフトウェアビジネスにおいても、新しい価値提供のため、市場を啓蒙する施策として実施される傾向にあります。

また、2020年以降の新型コロナウイルス感染拡大にともない、Web上でセミナーを実施する「ウェビナー」の実施も増加しています。セミナーの場合は会場の確保や準備に大きなコストがかかりますが、ウェビナーは比較的低コストで行える上、移動時間を考慮しなくて良いため主催者・参加者双方にとって手軽であり、人気の施策となっています。

関連記事:ウェビナー運営は何をする?うまくいく運営のコツ7つ解説!【188名集客成功事例配布中】

【14】SFA分析

SFA分析は営業活動のデータを分析し、営業の振る舞いやコンテンツのメッセージの改善を図る施策です。

SFA(Sales Force Automation)は、営業活動のデータを蓄積・分析できる営業支援のツールです。SFAを導入し、営業社員が日々の営業活動に関する情報を入力することで、自社の営業データを一箇所に集約できます。蓄積したデータを分析すれば、営業がうまくいった要因・失敗した要因は何なのか、どこにボトルネックがあるのかなどを把握し、営業活動の改善に利用できます。

分析の軸としては、以下が挙げられます。

  • 顧客の属性
  • 接触したチャネル
  • 商談時に伝えた提案内容
  • 商品
  • 営業担当者
  • 受注・失注の結果

分析の結果、明らかになった課題については、営業部門内だけではなく、マーケティング領域の担当者にも共有し、必要に応じてWebサイトや広告の見せ方を変更するなどのアプローチによって改善する必要があるでしょう。

SFAの導入をこれから検討される方には、こちらの記事がおすすめです。

関連記事:SFA導入に失敗しないため、4つのよくある事例から対処法を学ぼう

自社が導入すべき適切なSFAは何かを知りたい方は、下記の記事を確認してください。

関連記事:最新SFA/CRM(営業支援ツール)営業タイプ別おすすめ13選!【比較表つき】

【15】セールスイネーブルメント

セールスイネーブルメントは、成果を出せる営業社員を輩出し続ける人材育成の仕組みづくりにより、営業組織の生産性を高める施策です。

具体的には、社内研修を充実させ、営業社員の受注率の向上や新人営業の早期戦力化を目指します。他にも、SFA分析により明らかになった営業課題を解決するために、営業資料の制作や改善など、「どのような営業社員でも同じ働きができる」ための仕組みづくりを行います。

過去の営業活動は個人の力量に成果が左右されていましたが、セールスイネーブルメントはこれまで蓄積した営業データ分析による「勝ち筋」の発見や、その「勝ち筋」を再現する施策によって、「誰もが売れる組織」を目指す取り組みであるといえます。

関連記事:セールスイネーブルメントとは? 注目される背景や期待できる効果を解説

6.【初心者向け】BtoBマーケティングの始め方

BtoBマーケティングを始めたいが、前述した手順通りの進め方では難しい場合、市場調査やフレームワークの利用などでハードルが高いと感じる場合に、社内ですぐに着手できる方法を紹介します。

「取りあえず何から始めたら良いか」を悩んでいる方は、本章を参考に戦略立案・施策実行につなげていきましょう。

自社のボトルネックを把握する

自社の営業活動において「どこがうまくいっていないのか?」を見つけ出せれば、BtoBマーケティングで該当する箇所の改善を図れます。このボトルネックとなっている部分がどこかを探しましょう。

ただし、ボトルネックを探すためには「自社の営業プロセス」が可視化されている必要があります。可視化できていない企業は、自社の営業プロセスを可視化するところから始めましょう。

営業プロセスを可視化する

関連記事:営業プロセスとは?見える化するメリットから設計・見直しのコツ8選!

営業プロセスを可視化できたら、「リード獲得・リード育成・商談・その後の支援」などの過程でどこがうまくいっていないのかを、数値の推移を見ながら分析します。

ユーザーの行動仮説を立て取るべき施策を考える

ペルソナとカスタマージャーニーマップを作り、ユーザーの行動の仮説を立てて取る施策を具体化します。

顧客の購買プロセスの段階に、営業プロセスを分析して見つけたボトルネックの箇所を重ねあわせて、該当する箇所についての改善案を時間をかけて設計してみましょう。この際に改善後の数値目標も設定していきます。

購買プロセスと営業プロセスの改善案を出す

関連記事:取るべき施策が分かる!BtoBマーケティングの基礎固め【セミナーレポート】

受注分析で「勝ち筋」を見つける

これまで受注に成功した個別の案件についてデータを分析し、「なぜうまくいったのか?」を言語化します。思いつく限り書き出してから、重要度の高いと思われる要因を3つほど選んでみましょう。

個別の案件を受注できた際にその成功要因を分析できれば、製品・サービスや営業チームの強みを見つけ、受注までのパターンを「勝ち筋」として蓄積できます。「勝ち筋」が分かれば、どの営業が対応しても「勝ち筋」を再現できるようにするための施策を検討できます。

勝ち筋の発見

また、受注できた顧客データの分析結果を反映すれば、精度の高いペルソナを作成できます。ペルソナ・カスタマージャーニーマップを作成して顧客の購買プロセスを整理しましょう。

関連記事:受注分析で「勝ち筋」を見つけるには?分析の必要性やポイントを解説

7.IT発展によりBtoBマーケティングが重要度を増す理由

BtoBビジネスにおいてマーケティングが重要視されるようになった理由は大きく3つあります。

  • 従来の「足で稼ぐ」営業活動が限界を迎えている
  • 顧客の購買活動が変化している
  • インバウンド施策への転換が必要になっている

従来の「足で稼ぐ」営業活動が限界を迎えている

日本経済の長引く不況により企業が投資に慎重になり、また人口も減少傾向にあるため、営業先に頻繁に通って商品を売り込む「足で稼ぐ」営業活動が限界を迎えつつあります。

少子高齢化が進んだ結果、人手が不足し、大量のテレアポや訪問営業などの「数に頼った施策」では成果を出しづらくなっています。また、かつては一度契約した製品・サービスについて乗り換えが起きることはまれでしたが、Webが発達してからは再度の比較・検討が行いやすくなり、より良いサービスや製品があれば乗り換えられてしまうケースも増えています。

特にソフトウェア業界においては、購入時にまとまった金額がかかる買い切り型から、毎月少額の課金をするサブスクリプション型を採用するSaaSが主流になりつつあり、乗り換えやすさに拍車をかけています。営業担当の視点でいう顧客離反のリスクが高まっているのです。

こうした時流の変化もあり、現在の取引先が今後も永続的に契約を続けてくれるかも不透明な状況となっています。BtoBマーケティングに着手して生産性を高める競合企業が増えるなか、「足で稼ぐ」営業活動を続けていては、今後の売上の拡大も難しくなるおそれがあります。このため、BtoBマーケティングによる営業プロセスの見直しが注目されているのです。

顧客の購買活動が変化している

消費者が飲食店を選ぶ際に食べログやGoogleマップで検索・情報収集をしてお店を選ぶ行動は一般的ですが、ビジネス上の取引先選定においても同様の行動が一般化しています。

アメリカの調査会社コーポレートエグゼクティブボードが発表したレポートによると、BtoBビジネスでは顧客の購買プロセスの57%が営業担当者に会う前にすでに終わっている※1、と明らかにされました。アメリカと日本では商慣習が違うため一概に同じとは言えませんが、Webを中心とした情報収集により、顧客が自らの調査で商品を絞り込んでしまっているケースは多いと考えられます。

BtoBビジネスにおいて取引先を選定する意思決定プロセス

※1参照:Think with Google「B2B マーケティングにおけるデジタルの進化」より

※gartnerから該当レポートはすでに削除されています。

このため企業は、顧客が製品・サービスの検討を始めるより前の時点で接触し、顧客と関係を築いておく必要があります。こうした「ニーズが芽生える前の段階で見込み顧客に接触・関係構築を図る」取り組みは、顧客に1対1で個別に対応する従来の営業手法では難しく、BtoBマーケティングによって仕組みを整える必要があるのです。

インバウンド施策への転換が必要になっている

BtoB事業の取引先選定において、自らWebで収集した情報で取引先を比較検討する顧客が増えた結果、アウトバウンド施策が通用しづらくなっています。アウトバウンド施策とは、見込み顧客リストに営業が自ら働きかける手法で、具体的にはテレアポや飛び込み営業などが該当します。

Web活用が進む前は、アウトバウンド施策による営業の情報提供は企業にとって貴重でした。しかし、企業の担当者が簡単に情報収集できるようになったことで、不要なタイミングでのテレアポや飛び込み営業は歓迎されなくなりました。

アウトバウンド施策が通用しにくくなった調査結果
アウトバウンド施策が通用しにくくなった調査結果

トライベック・ブランド戦略研究所の「BtoBサイト調査2022年」によると、仕事上の製品・サービスの情報源として、「企業のWebサイトから」が66.7%と1位になっており、従来型の「営業員・技術員からのオフラインでの説明」を超える結果になっています。

従来の営業手法から脱するためには、「インターネットやイベントなどを活用して市場や顧客にとって有益な情報発信を行い、認知や信頼を獲得することで、顧客から自社にアプローチがあるように促す」インバウンド施策への転換が重要になっているのです。

8.まとめ

BtoBマーケティングの概要や、実施手順、具体的な施策について紹介してきました。 新たなツールの登場や、世の中の動きを受け、BtoBマーケティグの手法も徐々に変わっていきます。 その時々のトレンドを押さえながら、効果的なBtoBマーケティングを展開してください。


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この記事を書いた人

山下 航希
山下 航希 | BeMARKEナビゲーター

コンテンツマーケティングを軸にしたリード獲得をベースに、営業体制のDXコンサルティングを主導。エンタープライズ企業のマーケティング体制整備の実績あり。

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