インタビュー
営業DX推進によって成長を続ける企業に、実際の取組みや課題感、成果についてお聞きする本企画。
今回は、コロナ禍をきっかけに営業スタイルを見直しデータドリブン営業への変革を行う、NIPPON EXPRESSホールディングス株式会社 専務執行役員 グローバル事業本部長 古江 忠博氏に詳しいお話を伺いました。
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NIPPON EXPRESSホールディングス株式会社 専務執行役員 グローバル事業本部長
1985年、日本通運株式会社へ入社。主に国際航空貨物業務に従事し、東京・名古屋・ロンドン・シカゴ・シドニー・香港・メキシコシティーで勤務。海外勤務歴は通算17年に及ぶ。メキシコから帰国後の2016年に関東甲信越ブロック統括部長、2018年に経営企画部長、2019年に執行役員中部ブロック地域総括兼名古屋支店長を歴任。2022年より営業戦略本部長として「データドリブン営業マネジメント変革」に取り組み、営業パーソン全員が売れるようになる仕組みを構築するため、2023年1月には、セールスイネーブルメント部を立ち上げた。2024年1月からは、グローバル事業統括責任者として、グローバルでのセールスイネーブルメントの実践に着手している。
ーー営業DXに取り組み始めるきっかけを教えてください。
当社の場合は、営業DXというよりも「営業のやり方自体」を変える必要があるということが発端です。VUCAともいわれる現在、当社が携わっている物流の分野も保護主義の台頭や企業価値評価基準の変化などの影響を受けており、これまでの営業スタイルを変える必要に迫られています。
またコロナ禍によりお客様に会えなくなったことの影響も大きい。従来の足で稼ぐ営業ができず、どうするかという議論のなかで、営業のやり方を変えようという話が出てきました。
コロナ禍で、お客様の「物流」に対する考え方や優先度が変わってきたことも、営業スタイルを変える理由のひとつに挙げられます。
これまでは、お客様のなかの「物流」の位置づけや優先度は低かった。調達や生産、商流があり、最後に物流という順番ですね。全体のコスト見直しにあたっては物流が影響を受けるという構図です。
しかしコロナ禍で飛行機が飛ばなくなり、船も思うようにまわらない。加えて国際情勢の悪化により通常の航路を通過できない。例えば60日で運べていたものが90日かかってしまうということが頻発していました。そうすると単に安ければ良いというものではない。
コストとしてとらえられていた物流が、今や経営戦略の一環としてとらえる必要が出てきたんですね。
お客様の物流のとらえ方が変わったことで、営業スタイルも変える必要がある。
今まではお客様からのお問い合わせに回答する、受け身な営業スタイルだったところを、当社から積極的にお客様の経営に関わる課題を提起する営業スタイルに変革させなければならなくなりました。
例えば他社の事例を活用しながら、お客様とともに仮説を立て課題を掘り起こし顕在化させ、その課題に対してソリューションを提案していくといった営業アプローチが求められています。
当社ではこれを「プロアクティブソリューション営業」と名付け、お客様のサプライチェーンにおけるありたい姿からバックキャストするアプローチ手法を採用しています。
「プロアクティブソリューション営業」に欠かせないのが、他社事例や今までの営業手法やノウハウなどナレッジの積み上げ、お客様との接点情報です。当社では、これらの情報がまったく可視化されていなかった。
これを営業DXツールを使って可視化し活用することで、営業生産性を向上させ営業アプローチ自体を進化させていこうという流れが、営業DX推進のきっかけであり、今まさに取り組んでいることです。