Tips/寄稿
(前回までのあらすじ)会社から突然ウェビナーマーケティング担当を任された宇恵比奈(ウエ ヒナ)さん。前回は、ウェビナーの申し込み者数を増やす方法を学びました。
ウェビナーの申し込みを増やす方法~集客で見落としがちな4つのポイント
学んだ方法で申し込み者数は改善できましたが、今度は参加者アンケートで新たな課題がでました。アンケートの満足度は高いものの、資料請求やデモ利用などを希望する回答が少なかったようです。そこで、今回は「自社製品への関心を高めるウェビナー構成(スライド作成)のコツ」について先生に尋ねることにしました。
宇恵比奈(ウエ ヒナ):プロジェクトマネジメントSaaSを提供する会社のマーケティング部所属
先生:10年以上、さまざまな業界の営業、マーケティングなど多分野で動画活用プロジェクトを支援。動画活用に関する執筆やワークショップを開催している。
ウエヒナ:この前のウェビナー…アンケートで参加者の満足度は高かったのですが、「自社製品に関心がある」や「資料を希望する」という回答が、すごく少なくて……
先生:それは気になりますね。まず確認ですが、今回のウェビナーの目的を教えてもらえますか?『ウェビナーのターゲット設定とテーマ選定』で伝えた、階段設計※のどの段階にあたるウェビナーだったのかを教えてください。
※ウェビナーの階段設計:認知 → 興味醸成 → 検討 → 購入 の各段階に対応した設計方法
ウエヒナ:今回は「興味醸成」の段階でした。ハウスリストの見込み客に対して、弊社が持っているノウハウや情報をたっぷり伝える「お役立ちウェビナー」を提供することで、弊社製品への興味関心を高めることを目的にしていました。
先生:ウエヒナさんの会社の製品はプロジェクトマネジメントのSaaSでしたね。ウェビナーで伝えた内容のうち、ノウハウや情報と会社や製品情報の割合や、ウェビナーにおける製品の位置づけについても教えてください。
ウエヒナ:プロジェクトの要件定義の進め方や合意形成の方法など、ノウハウが9割です。最初に簡単な会社紹介と最後に1枚だけ製品紹介をしました。位置づけというのはそんなに考えておらず、売り込み感を出したくなくて、なるべく控えめにしたかったんです。
先生:その気持ちはわかります。ただ、今の構成だとウェビナー参加者の製品関心度を高めることにはつながりにくいですね。
先生:この課題を解決するために、まず製品や情報を持っているベンダーが望む、製品を導入した顧客の理想の姿を図解してみましょう。
先生:どの企業も自社製品によって解決したい顧客の課題がありますよね。その課題を自社が持っている情報やノウハウと製品で解決し、顧客が理想とする状態を実現できているのが、ベンダーはもちろん顧客が期待していることです。
ウエヒナ:プロジェクトマネジメントの世界で言うところの「アウトカムを得ている状態」ということですね!
先生:さすがプロマネSaaSの方ですね(笑)。おっしゃる通りです。ウエヒナさんの話では、ウェビナーのなかで自社製品に関する情報は最後のスライド1枚だけということでした。これだとウェビナー参加者にはナレッジの印象だけが強く残り、製品がどのように課題解決に役立つのかがわからず、ノウハウや最新情報などを提供してくれる「いい人」で終わってしまいます。
これがウェビナーの満足度は高いのに、製品資料の送付やデモンストレーションを希望するアンケート回答が少なかった原因です。
ウエヒナ:う~ん、営業色を出さないように気をつけたことが裏目に出ちゃった感じですね……
先生:重要なのは、「ノウハウや情報」と「製品」をつなげることです。ノウハウの中に自然な流れで製品が登場し、「理想の状態を実現する手段」として位置づけるべきです。
先生:ウェビナーの冒頭から5分も10分もダラダラと会社や製品紹介を続けると離脱されてしまいますが、ウェビナーで紹介するノウハウや情報と製品がきちんと噛み合う内容になっていれば、何も問題はありません。
「噛み合う」を具体的に言えば、ノウハウや情報を最もよく生かせて、理想の状態を最も品質高く、早く、安全に、使いやすく、安くできるのが自社製品である―、という立ち位置にすることです。参加者は自然と製品の必要性を感じることができます。
ウエヒナ:この考えを資料作成に生かすにはどうすればいいですか?
先生:最も効果的なのは、ウェビナーテーマの「理想の状態」を実現するには一定の「量」や「速度」や「手順」が必要であるという原則を示すことです。
例えば、ウェビナーSaaSを提供する企業が「参加者数を増やすにはどうすればよいのか?」というウェビナーを開催するとします。このとき、次のような構成が効果的です。
ウエヒナ:これなら興味を持って見たくなりそうです!
先生:そうなんです。「知識→課題→製品」という流れをつくることで、製品紹介が“売り込み”ではなく“解決策”として受け入れられます。
先生:今の解説を実際にウェビナーで開催したときには以下の資料を用いました。抜粋したものになりますが、ウェビナー参加のデータを示し、複数回開催するコストを削減する機能を紹介したものになります。
ウエヒナ:これなら製品機能を自然な文脈で伝えられます。ウェビナーの最後に製品紹介スライドを1枚置くという構成にはなりにくいですね。
先生:そうなんです。さらに今の解説を図解するとこうなりますね。
先生: ウェビナーの資料を作成するときは、どうしても見栄えを良くすることに気をとられがちです。しかし、資料請求やデモ依頼を目的とするのであれば、資料の中でしっかりと製品の価値を伝えなければなりません。
ウエヒナさんのウェビナー資料もこの考え方を参考に改善してみてくださいね。
ウエヒナ:満足度と製品資料などを希望するアンケート回答の両立を目指してがんばります!