Tips/寄稿

“本番で焦らない”ウェビナー開催当日の実践ノウハウ:進行・トラブル対応・アンケート回答率向上まで

“本番で焦らない”ウェビナー開催当日の実践ノウハウ:進行・トラブル対応・アンケート回答率向上まで

(前回までのあらすじ)会社から突然ウェビナーマーケティング担当を任された宇恵比奈(ウエ ヒナ)さん。前回は、ウェビナーのKPIについて学びました。
ウェビナー施策で見るべきKPIとは?~目的別に成果を追う視点を学ぼう

ウェビナーの目的を確認し、使用するツールも選び、KPIも設定した宇恵さん。ウェビナーの資料作成も終わり、いよいよウェビナー開催が近づいてきました。そこで、今回は「ウェビナー開催当日のノウハウや注意点」について先生に尋ねることにしました。

登場人物

宇恵比奈(ウエ ヒナ):プロジェクトマネジメントSaaSを提供する会社のマーケティング部所属
先生:10年以上、さまざまな業界の営業、マーケティングなど多分野で動画活用プロジェクトを支援。動画活用に関する執筆やワークショップを開催している  

目次

ウェビナー当日の進行スクリプトはどう組み立てる?

ウエヒナ:先生。いよいよウェビナーの開催が近づいてきました。スライドは完成しているのですが、開催のあいさつや資料説明、質疑応答タイムなどの進行スクリプトはどう作ればいいでしょうか?

先生:基本的なスクリプトはありますが、それをお答えする前に、今回のウェビナーが終わった後、「成功だった」と思える状態は何ですか?

ウエヒナ商談につながる問い合わせや、資料ダウンロードが発生していることですね。

先生:つまりそれには「この登壇者の話は信じられる」という「信頼」と、「より詳しく知りたい」という「行動」を設計しないといけませんね。構成の基本は4パートです。

ウェビナー進行スクリプトの基本4パート(株式会社Bizibl)|BeMARKE(ビーマーケ)

先生:これらの4パートは単なる進行時間ではなく、感情の階段でもあるんです。最初に参加者に「この登壇者は自分のことを分かってくれている」と感じさせ、中盤で「信頼できそう」と思わせ、終盤で「動こう」と決断させる。
この感情の流れを意識して設計すると、参加者の行動を導きやすくなりますよ。ウエさんのスライドはこの感情の流れに沿っていそうですか?

ウエヒナ :......もう一度、見直しておこうと思います(汗)!

アンケート回答率向上のための工夫

ウエヒナ :ウェビナー終了後にインサイドセールス担当者がウェビナー参加者に電話がしやすくなり、商談アポイント獲得率を上げるためにもアンケートはしっかり取っておきたいです。

先生:アンケート回答率を高めるには、一言で言えば、「答えたくなる理由」と「答えやすさ」の両方を設計することです。そのうえでウエさんにおたずねしますが、ウエさんが参加者の立場だったとして、どんなアンケートなら“面倒でも答えよう”と思いますか?どんな要素があると、回答する気持ちになりますか?

ウエヒナ :回答しやすいアンケートですかね……。自由記述が少ないとか。あとは特典がもらえるとか?

先生:おっしゃる通り「手間が少ない」「メリットがある」は、回答率アップの2大原則です。ではここで、実践的なテクニックを4つお伝えしますね。

1.ウェビナーの冒頭や途中で“予告”する
終了直前ではなく中盤で「最後に簡単なアンケートがあります」と先に伝える。このとき、登壇資料や使用したフレームワークのデータなど、回答特典があれば合わせて「アンケート回答者には特典があります」と伝える。

2.「あなたの声が、次回テーマを決める参考になります」と伝える
回答=貢献と感じてもらえると、回答意欲が上がる。

3. 選択式8割+自由記述2割の設計に
例えば「ウェビナーの満足度(5段階)」や「現在の課題(選択式)」など、回答しやすい設問を多くして、自由記述はできるだけ少なくする。

4. クロージング中に“今すぐ”回答してもらう時間をとる
登壇者や司会が話しながらアンケートの存在を伝えても回答率は上がらない。3分程度、アンケート回答だけをしてもらうための時間をつくる。

ウエヒナ :時間が押してしまってアンケート回答の時間がなくなるというのは避けたいですね。うまくウェビナー中に回答を途中まで記入していただくとか、いろいろ工夫はできそうです。

先生:そうですね。アンケートを後日メールで送るという方法を取る方もいますが、時間と空間をまたいでしまうと、どうしてもアンケート回答率が低くなってしまいます。また、アンケート回収の時間も長くかかってしまいます。
使用するウェビナーツールによっては、ウェビナー開催画面上にアンケートを表示して回答できる機能もあり、回答の時空間をまたがないことでアンケート回答率を高めることができますよ。

メーンの進行画面の右側にアンケート回答欄を表示させて回答率を上げる(Biziblより)(株式会社Bizibl)|BeMARKE(ビーマーケ)

【画像】メーンの進行画面の右側にアンケート回答欄を表示させて回答率を上げる(Biziblより)

参加者の心をつかむ!インタラクションの設計法

ウエヒナ :ほとんどのウェビナーツールにはQ&A機能やチャット機能などがありますが、参加者からの質問や投稿は促すべきでしょうか?

先生:参加者とのインタラクション(コミュニケーション)は、ウェビナーの成功において重要な要素です。​特に、質疑応答やチャット機能を活用することで、本当にウェビナーのテーマについて課題を持っている方や興味のある方を引き出せるわけですから、使わない手はないですよね。
それに、登壇者とのインタラクションの体験が参加者の満足度を高めます。

ウエヒナ: でも、質疑応答タイムを取っても、何も質問がないと寂しいですよね?

先生:それはウェビナーの内容が、参加者が質問したくなるような品質ではなかったのかもしれませんし、参加者のリテラシーに対して内容が難しすぎた可能性もありますからなんとも言えませんね(苦笑)。
ただ、参加者が質問しやすいように、「どんな些細なことでも構いませんので、お気軽にご質問ください」と伝えたり、匿名での質問を許可するなど、質問しやすい雰囲気づくりや質問のハードルを下げることはしておくと良いですよ。

ウエヒナ :「こんな質問するのは恥ずかしいな…」と思って遠慮されるのはもったいないので、そこは配慮してあげると良いんですね。

先生:そうですね。あと、どうしても質疑応答タイムで質問を取り上げたいなら、申し込みフォームに「質問したいこと」という項目を設けて、そこに入力された内容をあらかじめ登壇者のスライドに記載しておくという手もあります。

ウエヒナ :社内関係者がサクラとして質問するということも頭をよぎったんですが、それはやってみようと思います!
一方で、質問は来てほしいと思いつつ、参加者の方が場を荒らすような発言をしたり、質問を重ねることで、その人だけに時間を使ってしまわないかも心配です......。

先生:それはおっしゃる通りです。ZoomやBiziblなどのウェビナーツールでは、Q&A機能とチャット機能があります。チャットは主催者の検閲・許可なく全体に表示されますが、Q&A機能は、参加者が質問を投稿したあと、主催者側がそれを全体に公開するか質問者だけに回答するかを選ぶことができます。

ウエヒナ :主催者側で質問をコントロールできるなら安心ですね!

Q&A画面イメージ(主催者が質問を全体公開して返答するか、質問者だけに返答するかを選べる)(Biziblより)(株式会社Bizibl)|BeMARKE(ビーマーケ)

【画像】Q&A画面イメージ(主催者が質問を全体公開して返答するか、質問者だけに返答するかを選べる)(Biziblより)

まさかのトラブル発生!? 焦らず対応するための備え

ウエヒナ :ウェビナーでは登壇者の音声が聞こえづらかったり、社内セキュリティの関係で申し込みはできたのにウェビナーを視聴できなかったりすることがあるそうですが、これにはどう対応したらいいでしょうか?

先生:まずは事前にできることとして登壇者側のリハーサルが必要なことは言うまでもないですね。ライブで開催する場合はPCへの負荷が高まりますから、ウェビナーツールや登壇資料以外のアプリケーションやブラウザのタブなどは閉じておきましょう。
開催する場所のネットワーク環境が悪くないかの確認もしておくと安心です。ライブ配信に必要なインターネット速度の目安は、上り速度が5~6Mbps程度、安定性を求める場合は25~60Mbps程度です。「インターネット速度テスト」で検索すれば無料で確認できるので、ぜひ事前にチェックしておいてください。

「インターネット速度テスト」

ウエヒナ :人員に余裕があれば共同ホスト(スピーカー)を立てておいて、万一PCが落ちたときにでも「つなぎトーク」をしたり、資料ダウンロードを促したりできると思うので、できるだけ保険はかけておこうと思います。

先生:それは良いですね。PCが落ちるということは避けたいですが、たいていはPCの再起動で復活するので、もしものときの備えには良いでしょう。あとは、録画配信できるのであれば、その旨も伝えておくと参加者の満足度低下を抑えることができます。

ウエヒナ :主催者ではなく、参加者の環境に起因するトラブルもあると思うのですが、これにはどう対処すればいいでしょうか?

先生:セキュリティ、VPN、ファイアウォールによって、セミナーに参加できないことは大手企業や金融保険業界などを中心によく起きます。できれば事前に参加者のシステム管理者の方へ確認いただきたいですが、参加者からすれば自社のセキュリティがどうなっているかを意識せずに申し込んでしまいます。
申し込み確認メールにこの旨を記載するか、個人のモバイルWifiなど別の環境から参加することを案内するのがいいでしょう。
あとはトラブルシューティングガイドを事前に用意しておき、ウェビナー開催前や開催中にも、トラブルがあったらガイド閲覧を促すことをお勧めします。もし参加者起因のトラブルがあったとしても、自力で解決する可能性が高まりますし、「親切な運営をしてくれる主催者」という、良い印象を持ってもらうことにもつながります。

ウエヒナ :ここまで準備できれば、安心してウェビナー当日を迎えられそうです!

プログラムの開始前に、トラブルシューティングの解決先を表示させておく(Biziblより)(株式会社Bizibl)|BeMARKE(ビーマーケ)

【画像】プログラムの開始前に、トラブルシューティングの解決先を表示させておく(Biziblより)

今回の記事のまとめ

  1. 進行スクリプトは「共感→信頼→行動促進→クロージング」の流れで設計する
  2. アンケートは予告と設計で回答率が変わる
  3. 質問・チャットは積極的に促し、双方向の空気をつくる
  4. トラブルへの備えは“事前の仕組み”がカギ。参加者の不安にも先回りして安心を設計する

次回予告

今回の対話によって、ウエヒナさんは安心してウェビナー開催当日を迎えられそうです。
どのくらい申し込みがあって、どのような成果を手に入れることができたのか?
次回は、良い成果が出ていればその要因分析。悪い結果になっていればその改善方法を案内します。

BeMARKE編集部より

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