Tips/寄稿
ウェビナーは、BtoBにおける有力な商談獲得チャネルとして注目されている一方で、企画・集客・開催までの工程が多く、社内調整も必要になるため、「ハードルが高そう」と感じて着手をためらう企業が非常に多い施策です。さらに、やると決めたとしても、インハウスで実行すべきか、外部に委託すべきか、そしてどの代行会社を選ぶべきかという判断に悩まれるケースも少なくありません。
そこで本記事では、これまでに240社以上のウェビナー支援を行ってきた株式会社ENVYの立場から、以下の4点を整理して解説します。
【この記事でわかること】
・そもそもウェビナーはやるべき施策なのか
・ウェビナー施策を稟議で通すには?社内を動かす2つの視点
・ウェビナーを外部に委託すべきかどうか
・ウェビナー代行会社の選び方と社内稟議の通し方
ウェビナーを「気になっているけど踏み出せない施策」から、「成果につながる現実的な選択肢」へと変えていくための判断材料として、ぜひご活用ください。
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コンサル会社の新規開拓を成功させるウェビナー活用法|成功事例から学ぶ集客・受注のポイント
そもそも、「ウェビナーに取り組むべきかどうか」で悩んでいる企業も、一定数存在します。商談につながる手段として注目はしているものの、「成果が見込めるならやりたいが、構成や準備が分からない」と踏み出せずにいる、という声は少なくありません。
ウェビナー施策の導入を判断する際、重要な視点となるのが「中間地点」としての活用です。広告、比較サイト、アウトバウンドなどから直接「無料相談」や「商談」へ誘導する場合、リードの質が安定せず、確度の低い商談が増えがちです。
一方で、これらの導線の中間にウェビナーを設置することで、リードを教育(ナーチャリング)する機会が生まれます。その結果、商談時の理解度や温度感が高まり、受注率の向上につながります。さらに、ウェビナーは無料相談と比べて参加の心理的ハードルが低く、集客がしやすいというメリットがあります。
また、ウェビナーを通じて価値提供や課題の明確化ができれば、その後の商談がスムーズに進み、営業効率も大幅に向上します。
つまり、資料請求やアウトバウンド経由の商談の質に課題を感じている企業にとって、ウェビナーを「中間地点」として設計するは、合理的かつ成果につながりやすい選択といえるでしょう。
ウェビナーを導入する際、最初の関門となるのが「社内稟議をどう通すか」です。稟議を通すためには、次の2つの視点からの説明が有効です。
この2軸を押さえて社内に伝えることで、説得力のある稟議資料を作成できます。
社内でウェビナー施策の稟議を通すために最も重要なのは、成果の見込みを数値で具体的に示すことです。
ウェビナーは、参加者数、商談化率、受注率などの指標から逆算することで、1回の開催で期待できる売上やROIを事前に試算できます。
主要業種別の成果シミュレーションを、ENVY社が実施したウェビナー施策の平均値をもとにご紹介します(参加者30名を想定)
参加者数 | 商談化率 | 商談数 | 受注率 | 受注数 | |
---|---|---|---|---|---|
コンサルティング | 30名 | 15% | 4-5件 | 80-90% | 3-4件 |
社外顧問(士業・中小企業診断士) | 30名 | 15% | 4-5件 | 80-90% | 3-4件 |
BPO | 30名 | 20% | 6件 | 80-90% | 5件 |
SaaS | 30名 | 25% | 7-8件 | 80-90% | 6件 |
法人研修 | 30名 | 25% | 7-8件 | 80-90% | 6件 |
FC加盟説明会 | 30名 | 10% | 3件 | 70-80% | 2件 |
たとえば、採用代行(RPO)サービスのウェビナー実施に100万円を投資した場合、5件の受注が見込まれ、LTVが100万円であれば売上は500万円となります。このときのROIは以下のように算出できます。
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ROI(%)=(売上 − 費用)÷ 費用 × 100
=(500万円 − 100万円)÷ 100万円 × 100 = 400%
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ROIが300〜400%以上見込める場合、十分に投資に見合う施策といえ、社内での合意も得やすくなります。さらに、構成資料や登壇録画はすべて自社の営業資産として蓄積でき、アーカイブ配信や営業資料として繰り返し活用できます。
仮に単発の開催で受注に至らなかった場合でも、中長期的な案件獲得の基盤として活用できるため、短期的な成果と中長期的な資産形成の両面から、稟議通過の根拠として提示できます。
ウェビナー施策がもたらすもう一つの重要な価値は、営業組織の分断を解消し、部門間の連携を強化できることです。
多くの営業組織では、マーケティング・インサイドセールス(IS)・フィールドセールス(FS)が異なるKPIを持っています。マーケティングはリード数、ISは商談数、FSは受注数というように、評価指数が異なるため、全体最適ではなく部分最適を追求する傾向が生じます。
たとえばIS部門は商談数がKPIのため、質より量を優先したリードををFSに引き継ぎがちです。その結果、「なぜこの案件を商談にしたのか?」という不満が現場で生まれ、部門間のすれ違いや摩擦が発生しますます。
こうした営業組織の分断をを解消する手段として有効なのが、ウェビナーの活用です。
マーケティング部門は「リード数」ではなく、「ウェビナー参加者」という質の高い指標をKPIに設定することで、より精度の高い集客が可能になります。
IS部門は、ウェビナー参加者という質の高いリードにアプローチできるため、見込み客からの拒否感が少なく、心理的・業務的な負担が軽減されます。その結果、商談化率が向上し、KPI達成に向けた取り組みもより前向きになります。
FS部門にとっても、すでに教育・情報提供を受けた見込み客と商談できるため、ヒアリングから提案までのプロセスが短縮され、成約率が向上します。実際、ウェビナーを経由した商談では、初回の面談で即決となるケースも珍しくありません。
このように、ウェビナーは各部門の活動を効果的に連携させ、営業組織全体で一貫性のあるプロセスを構築できます。組織内のボトルネックを解消し、「部分最適」から「全体最適」への転換を実現できる施策です。
定量的なROIだけでなく、組織全体のプロセス改善という定性的な価値においても、ウェビナーは社内稟議を通すための説得力のある視点といえるでしょう。
ウェビナーを実施することが決まったとしても、「自社で内製すべきか」「外部に委託すべきか」で悩む企業も多いのではないでしょうか。
ウェビナーは単なる登壇で完結するものではありません。企画から集客、運営まで、実に多岐にわたる業務が必要となる施策です。
参考記事:【チェックリスト付】ウェビナー開催の完全ガイド!企画・集客・運営時のコツを大公開(b-pos)
これらの業務をすべて自社で担うことは容易ではありません。特に初めての実施やリソースが限られている場合には、段階的な内製化を目指しつつ、部分的に外部支援を活用する「ハイブリッド型」の運用が、成果と効率の両立において現実的な選択となります。
以下では、ウェビナーを内製する場合と外部に委託する場合のメリット・デメリットについて整理します。
こうして見ると、各フェーズにおける内製・外注には、それぞれ明確なメリットとデメリットが存在することがわかります。
初めてウェビナーに取り組む場合や、過去に成果が出なかった経験がある場合には、外部の専門パートナーに依頼することで、構成の失敗や無駄な工数を防ぎ、商談獲得という目的に直結したウェビナーを実現しやすくなります。
一方で、過去の開催経験がある、または社内に一定のノウハウや人材が揃っている場合は、内製で進めることでコスト効率の良い運用ができるケースもあります。
とはいえ、いきなりすべてを内製で完結させるのは難易度が高いため、まずは負担の大きい業務のみを外注し、成功パターンやナレッジを吸収しながら、徐々に内製化を進めていくといったハイブリッド型のアプローチが、現実的かつ成果につながりやすい選択肢です。
「ウェビナーを始めたいが、どの代行会社を選ぶべきか分からない」
「社内稟議をどう通せばいいのかも不安」
そんな悩みをよく聞きます。ここでは、成果につながる代行会社の見極め方と、社内を納得させる稟議の通し方を、整理しました。
ウェビナーを外部に委託する際、代行会社の選定は成果を大きく左右します。表面的な実績や営業トークだけでなく、自社との相性が良いパートナーかどうかを、以下の3つの観点から慎重に見極めることが重要です。
選定の第一のポイントは、自社と類似した業界・事業規模で実績があるかどうかです。たとえ実績が豊富でも、大手企業や有名企業のケースばかりでは、自社での再現性が低くなる可能性があります。
なぜなら、大手企業の場合、既存の知名度やブランド力によって自然と集客や受注につながりやすく、代行会社の施策効果正確に測れないことがあるためです。
一方、中小企業は限られたリソースの中で成果を出す必要があるため、ターゲットの絞り込み、構成設計、育成シナリオなどの工夫が求めらます。そうした条件下で成果を出している事例があるかは、自社での再現性を見極める上で大きな手がかりになります。
特に注意が必要なのは、BtoC・個人事業主向けウェビナーの実績しかない会社です。煽り文句や演出で申込数を集めるスタイルは、BtoBに求められる信頼性を構築していくプロセスとは相性が悪く、法人営業においてはブランドイメージのマイナスなど、むしろリスクとなることもあります。
自社と同じような業界、商材単価、顧客属性、検討フローを持つ企業での成功実績があるか。実績紹介や事例ページ、商談時の提案内容を通じて、具体的に確認することが重要です。
2つめのポイントは、実務経験に加えて、専門的なナレッジの深さを見極めることが重要です。具体的な判断基準として、以下の観点が挙げられます。
営業トークや表面的な資料からは判断が難しい「知見の深さ」は、継続的な情報発信に表われます。自社の知見を積極的に発信している会社は、社内のナレッジ管理も充実しており、支援の質も高い傾向にあります。
ウェビナーは単なる施策ではなく、見込み客との重要な出会いの場です。そのため、成果にこだわり抜けるパートナーかどうかを、情報発信の質と深さから慎重に判断することが大切です。
3つ目の、企画力や実績だけでなく「細やかな配慮が行き届いているか」も、極めて重要な評価ポイントです。
多くの企業が商談時のプレゼンや提案力に注目しがちですが、実際の運用では、それ以上に「伴走姿勢」や「連絡時の気遣い」「事前準備の丁寧さ」といった細部の対応・品質が、ウェビナー参加者への印象と成果を左右します。
これらは一見些細なことに見えますが、実際のウェビナー運営では「参加者にどう感じてもらえるか」というユーザー体験の質に直結します。代行会社は、申込から参加までの一連の体験を代わりに設計・運用する立場にあるため、対応の粗さや無神経さは、そのまま自社ブランドの毀損リスクにつながります。
だからこそ、「どれだけ親身に、誠実に寄り添ってくれるか」という視点で、提案フェーズからのやり取りを観察することが大切です。実務の質は、こうした姿勢に滲み出るものです。
ウェビナーの外部委託を検討する際に最も重要なのが、社内稟議での承認です。稟議を通すためには、定量的な根拠と定性的なメリットの両方を明確に示すことが不可欠です。
以下の3つの視点から整理することで、決裁者からの理解と同意を得やすくなります。
社内稟議を通す上で最も説得力があるのは、投資対効果(ROI)の可視化です。つまり、費用に対してどれだけの成果が見込めるのかを明確に示すことです。
特に意思決定層は「他社でどれだけの成果が出ているのか」「当社で実施して本当に売上につながるのか」という視点で判断します。そのため、類似業界・同規模の企業での成果実績を示し、再現性のある施策であることを実証するのが効果的です。
そのためには、類似事例における商談化率と成約率を基準とし、1開催あたりの想定売上とROIを逆算することで、具体的な投資対効果を示すことができます。
例えば、以下のようなシミュレーションが可能です。
参加者数 | 商談化率 | 商談数 | 受注率 | 受注数 |
---|---|---|---|---|
30名 | 15% | 4〜5件 | 80〜90% | 3〜4件 |
顧客単価 | 想定売上 | 想定費用 | ROI(投資対効果) |
---|---|---|---|
240万円 | 720〜960万円 | 100万円 | 620〜860% |
このように成果の期待値を定量的に可視化することで、社内の意思決定者から納得を得やすくなります。特にマーケティング部門以外の営業部門予算や経営判断が関わる場合、具体的なシミュレーションの提示が重要な説得材料となります。
ウェビナー施策は、単なるリード獲得手法ではなく、営業プロセスの最適化・組織ナレッジの資産化・経営リソースの効率化など、会社全体に波及する定性的な価値を持っています。定量的な投資対効果だけでなく、以下のような定性的な側面もあわせて提示することで、稟議が通りやすくなります。
ウェビナーを営業プロセスの起点とすることで、マーケティング部門・インサイドセールス・フィールドセールス間の役割分担が明確になり、KPIの分断や属人的な運用を解消できます。その結果、組織全体で効率的に商談から受注までのプロセスを進められる体制が整います。
ウェビナー施策を導入することで、確度の高い見込み客だけを商談に呼び込むことが可能になります。これにより、アウトバウンド営業でありがちな「検討違いな相手」や「値下げ前提の交渉」が大幅に減少します。
また、ウェビナー経由のリードは、事前の情報提供や教育により、十分な理解と関心を持った状態で商談に臨むため、スムーズな対話が可能です。特に経営者自身が登壇する場合は、共感度の高いリードが集まり、価値観の合う相手との商談に絞れるため、意思決定がより円滑に進みます。
実際、ウェビナー経由の商談では決裁者が同席するケースが多いため、初回面談での即決も珍しくありません。担当者や事業責任者を介した長期の稟議プロセスが不要となり、営業活動の精神的・時間的な負荷が大幅に軽減され、経営者自身も柔軟な時間活用が可能になります。
一度作成したスライドや録画コンテンツは、アーカイブ配信やオンデマンド活用で長期的な再活用が可能です。さらに、他事業部や他サービスへの横展開により、単発の施策ではなく、包括的なマーケティング戦略として発展させることができます。
ウェビナー代行にかかる費用を稟議で通す際に重要なのは、「なぜその金額を払う価値があるのか」を明確に説明することです。
まず、よくある誤解として「社内でやれば費用が抑えられる」という認識がありますが、実際には企画・構成・集客設計・スライド制作・運営準備・開催後のフォローまで、対応すべき業務は多岐にわたります。こうした工程を自社のリソースだけで担おうとすると、必要工数が当初の想定を大きく上回ることも珍しくありません。また、ノウハウ不足によって成果が出ず、試行錯誤を繰り返すことで、余分な工数や機会損失が発生するリスクも高まります。
そのため、費用の妥当性は単なる価格比較ではなく、成果に直結する構成力・運用力に対していくら払うかという視点で評価する必要があります。
加えて、同業他社との価格比較や、他社サービスとの機能・成果比較を表で示すことで、社内説得力を高めることができます。価格だけでなく、支援範囲、過去実績、納品物の質といった観点も含めたプロコン(Pros & Cons)資料を活用すれば、より客観的な判断材料として機能します。
稟議通過のためには、「内製でかかる隠れコスト」「失敗のリスク」「支援の中身の違い」を明確にし、金額の安さではなく成果を上げる力に対しての投資であることを丁寧に説明することがポイントです。
本記事では、ウェビナー施策を社内で検討・導入する際に押さえるべきポイントを、以下の4つの視点から解説しました。
上記の観点をチェックリスト的に整理していくことで、「本当にやるべきか」「内製か外注か」「どの会社に依頼すべきか」といった判断がスムーズになります。
「準備が大変そう」「成果が読めない」と感じていたウェビナーを、自信を持って提案・実行するための一歩として、ぜひ本記事をご活用ください。