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リード獲得・商談・受注を一度に完結できる「ウェビナーマーケティング」のススメ

リード獲得・商談・受注を一度に完結できる「ウェビナーマーケティング」のススメ

人脈や紹介に依存した営業スタイルは、どうしても属人的で再現性がなく、拡大にも時間がかかります。加えて、毎回の交流会や個別訪問にかかる工数も無視できません。とはいえ、テレアポや営業代行、広告などの施策も「コストが高い割に商談につながらない」と感じている企業も多いのではないでしょうか。
株式会社ENVYでは、こうしたお悩みを抱える企業向けに、ウェビナーマーケティング代行サービス「セミナーBPO」を提供しています。これまでに240社以上、3,500回を超えるウェビナー開催を支援してきました。

本記事では、これらの支援事例から得た、ウェビナーを活用して「リード獲得から商談、受注まで」を一括で実現する方法を解説。複数の決裁者に同時にアプローチできる「営業ツールとしてのウェビナー」の活用法をご紹介します。

関連記事:コンサル会社の新規開拓を成功させるウェビナー活用法|成功事例から学ぶ集客・受注のポイント

目次

ウェビナーマーケティングをおすすめする3つの理由

「紹介頼みの営業に限界を感じている」「広告や営業代行を試しても成果が安定しない」
そんな悩みを持つ経営者やマーケティング担当者が、次の一手として注目しているのが「ウェビナーマーケティング」です。ウェビナーは、単なるセミナーではありません。うまく設計すれば、営業トークを資産として仕組み化し、自社の社長をはじめとした影響力が強い人材をアサインさせなくても見込み客と出会え、会う前から信頼されている状態をつくることができます。

ここでは、特に中小企業や専門性の高いサービスにこそ効果を発揮する「ウェビナーマーケティングをおすすめする3つの理由」をご紹介します。

  • 社長の営業トークを「仕組み化」できる
  • 社長が動かなくても「新しい出会いの場」がつくれる
  • 「会う前から信頼されている状態」をつくれる
ウェビナーマーケティングをおすすめする3つの理由(株式会社ENVY)|BeMARKE(ビーマーケ)

社長の営業トークを「仕組み化」できる

企業ブランド、商品ブランドがそれほど強くないBtoB中小企業や専門性の高いサービスを販売しているスタートアップなどでは、紹介や人脈に頼った営業をしていると、どうしても影響力が強い社長本人が動く必要があります。「トップセールス」で成果をあげている(あげていた)企業でも、「社長のように商談ができれば」と思う営業担当者は少なくないでしょう。社長が、どんな順番で話すのか、どの表現で信頼を得るのか。それらは経験や感覚に支えられており、他の人が真似しようとしても簡単には再現できません。

そこで有効なのが「ウェビナーマーケティング」です。

一度、社長自身が登壇するウェビナーを設計し、企画・スライド・トーク内容までをしっかり整えておけば、その録画を営業ツールとして繰り返し活用できます。何度でも、どの見込み客にも、同じ品質で社長の営業トークを届けることが可能になります。
つまり、社長の「売れる話し方」を録画という形で資産化し、時間にも場所にも縛られず使い回せるようになるのです。個人のスキルに依存した営業から脱却し、再現性のある仕組みに変えていけます

社長が動かなくても「新しい出会いの場」がつくれる

「トップセールス」の会社の営業は、1社1社に時間をかけて足を運び、信頼関係を築きながら商談に進めるスタイルが主流でした。経営者交流会や会食、ゴルフなどを通じての関係構築は、効果はあるものの、時間も体力も限界があります。

ウェビナーマーケティングは、そうした人と会うという行為を、効率化・仕組み化できる手段です。登壇するだけで、自社に興味を持った20人以上の見込み客と一度に接点を持つことができ、1対1ではなく「1対多」の形式で提案が可能になります。参加者は、あらかじめ興味を持って時間を確保してくれているため、話を聞く姿勢も整っており、営業としての前提条件も整った状態でスタートできます。

移動や会食に時間を使わずとも、わずか1時間でこれまでの3倍以上の営業機会をつくることができる。つまり、社長が動かなくても、新しい出会いの場を仕組みとしてつくり続けられるようになるのです。

「会う前から信頼されている状態」をつくれる

テレアポや飛び込み営業といったアウトバウンド型の手法は、相手に興味がない状態から会話を始めるため、断られることが前提となりがちで、営業担当者にとっての負担も大きい手法です。
その点、ウェビナーマーケティングはインバウンド営業を実現できます。自社のサービスやテーマに関心を持った見込み客が、自ら参加を希望してくれるため、最初から前向きな姿勢で話を聞いてもらえます。

また、ウェビナーは単なる資料や広告以上に企業の考えや価値観を深く伝えることができ、「この会社なら信頼できそう」と感じてもらいやすいのも特徴です。いきなりのDMや電話ではなく、ウェビナーを通じて価値観に共感してもらった上で「もっと詳しく知りたい」と相談が来る。この流れは、紹介営業に近い信頼関係を再現していると言えます。

Web施策の経験がなくても、丁寧に話すことで、誠実さや専門性が伝わりやすく、自然と信頼を得やすい設計になっているため、対面営業を得意としてきた経営者でも無理なく取り組めます。さらに、ウェビナーは紹介営業と違って属人化せず、集客数・参加率・商談率・成約率などをKPIとして定量的に管理・改善できるのも大きな強みです。

 参考記事:ウェビナー開催におけるKPIとは?KPIの具体例と平均値、改善方法まで徹底解説(b-pos)

実際、株式会社ENVYが支援したBtoB企業では、ウェビナー参加者のうち約20〜30%が商談(個別相談)に進み、その商談では成約率80%超という高い成果を上げています。これは、紹介営業に近い信頼されている状態をウェビナー上で再現できているからこそ実現している数字です。

ウェビナーマーケティングとは何か?

ウェビナーマーケティングとは、「認知」から「意思決定」までの購買プロセスを一つの施策でカバーできる、非常に効率的なBtoBマーケティング手法です。
SEOや広告、コンテンツ制作など複数の施策を組み合わせなければ成果に結びつきにくい従来のマーケティングと比べて、ウェビナーは一つの場で見込み客との信頼関係を構築し、商談へとつなげることができます。

ここでは、ウェビナーマーケティングがなぜBtoBにおいて有効なのか、その全体像を解説します。

購買プロセス

購買プロセス(株式会社ENVY)|BeMARKE(ビーマーケ)

購買プロセスとは、ユーザーが商品やサービスを導入するまでの一連の流れを指し、「認知」「興味・関心」「理解」「比較・検討」「意思決定」という5つのフェーズに分けられます。

最初の「認知」は、ユーザーが自分の課題に気づき、何かヒントがないかと検索を始める段階です。その後の「興味・関心」では、見つけた情報の中から気になるサービスに興味を持ち、さらに詳しく調べるようになります。
「理解」の段階では、サービス紹介の資料や導入事例などを通じて、その内容や特徴をより深く知ろうとします。そして「比較・検討」では、他社サービスと比べたり、口コミや評判をチェックしながら、自分に合った選択肢を探していきます。
最後の「意思決定」では、集めた情報をもとに導入するサービスを決め、実際に行動に移す、という流れになります。これらの段階を一つずつ踏んでいくことで、ユーザーは納得感を持って購買に至るのです。

例えば、「ウェビナーマーケティング」に興味を持ったユーザーが、ウェビナー開催代行サービスの導入に至るまでの行動を見てみましょう。

購買プロセス(株式会社ENVY)|BeMARKE(ビーマーケ)

はじめに、ユーザーは「ウェビナー 開催方法」や「ウェビナー 集客」などのキーワードで検索し、情報を探し始めます(認知)。次に、検索結果に表示された記事や広告、YouTube動画などに目を通す中で、「ウェビナーを外注できるサービスがある」と知り、その選択肢に関心を持つようになります(興味・関心)。

その後、実際にサービス紹介の資料をダウンロードしたり、導入事例の記事を読むことで、自社に合いそうかどうかを具体的にイメージし始めます(理解)。さらに、他の代行サービスとも比較したり、ネット上の口コミや評判を確認しながら、自分たちにとって最適な選択肢はどれかを慎重に検討します(比較・検討)。最終的には、気になる数社と打ち合わせを行い、詳細を聞いた上で、自社に最もフィットすると感じたサービスを選び、導入を決定します(意思決定)。

このように、ユーザーの行動は段階を踏んで進んでいくのです。

BtoBマーケティングとは

BtoBマーケティングとは(株式会社ENVY)|BeMARKE(ビーマーケ)

実際に導入へとつなげるためには、それぞれのフェーズに応じた情報やきっかけを、適切なタイミングで提供することが重要です。BtoBマーケティングでは、この購買プロセスの各フェーズの中で、いかに自社とユーザーとの“接点”を増やせるかが成果を左右します。つまり、「ユーザーがどんな行動をとるのか」をあらかじめ想定し、その行動の中に自社の情報が自然と入り込むように設計していくことが、マーケティング施策の根幹になります。単に広告を打つ、ウェビナーを開催する、オウンドメディアを構築するなどはうまくいきません。

例えば、ユーザーが最初に課題解決のヒントを探す「認知」のフェーズでは、検索エンジンやWeb広告との接点が中心になるため、SEO対策や広告出稿が主な施策となります。「興味・関心」のフェーズでは、ユーザーがより深く情報を調べるようになるため、オウンドメディアの記事やYouTube動画、ホワイトペーパー、ウェビナーなどが効果的です。「理解」のフェーズでは、サービス紹介資料や導入事例、ウェビナーコンテンツなどを通じて、ユーザーに自社の提供価値をしっかりと伝える必要があります。「比較・検討」のフェーズでは、他社との違いや導入後のイメージを明確にしてもらうために、比較サイトや比較記事、営業資料、デモ、体験会、そして具体的な活用シーンを伝えるウェビナーが有効な接点になります。そして、最後の「意思決定」のフェーズでは、商談や個別相談といった対話の場が中心となり、ここでユーザーの不安や疑問を解消し、導入を後押しします。

このように、BtoBマーケティングではユーザーの行動に合わせて施策を設計し、それぞれのフェーズに適した情報接点を用意しておくことが、成果につながる鍵となります。

ウェビナーマーケティングとは

ウェビナーマーケティングとは(株式会社ENVY)|BeMARKE(ビーマーケ)

BtoBマーケティングの購買プロセスの5つのフェーズそれぞれで接点を持とうとすると、SEO対策や広告運用、オウンドメディアの運営、資料作成、比較記事の制作、商談対応など、複数の施策を組み合わせて設計・運用しなければならず、かなりの工数と時間がかかります。しかも、これらの施策は分業体制や専門的なノウハウが求められることが多く、初めてBtoBマーケティングに取り組む企業にとってはハードルが高いのも実情です。

そこで注目したいのが、ウェビナーマーケティングです。ウェビナーは、一つの施策で「認知」から「意思決定」までのすべてのフェーズをカバーできる、非常に効率的なアプローチです。

例えば、「認知」フェーズではSEOやWeb広告を通じてウェビナーの申し込みページを露出させることで、課題を持つユーザーに見つけてもらえます。「興味・関心」フェーズでは、ユーザーが関心を持って参加しているため、ウェビナー冒頭でテーマに関連するノウハウや業界情報を伝えることで信頼を築けます。「理解」のフェーズでは、自社サービスの仕組みや実績について丁寧に紹介し、ユーザーの理解を深めることが可能です。さらに、「比較・検討」のフェーズでは、導入事例や他社との違い、サービス導入によって得られる効果などを説明することで、選ばれる理由を伝えることができます。そして最後の「意思決定」フェーズでは、ウェビナー終了後に個別相談や商談へとスムーズにつなげることができ、受注に直結しやすい構造になっています。

このように、ウェビナーは各フェーズで必要とされる要素を1つの施策内に組み込めるため、初めてBtoBマーケティングに取り組む企業にとっては、最小限のリソースで最大の成果を目指せる、非常に効率の良い手法だと言えます。

ウェビナーマーケティングの見落とされがちな効果

ウェビナーには十分に活用されていない2つの重要な効果があります。1つは「情報の伝達力が高い」こと、もう1つは「競合と比較されにくい」ということです。

効果1:情報の伝達力が高い

Webマーケティングを始めても、記事や広告からすぐに商談につながることは多くありません。ようやく商談になっても、情報収集目的や他社と比較するためだけに来たような温度の低い相手が多く、なかなか前に進まないこともあります。

原因のひとつは、自社の強みや違いが十分に伝わっていないことです。
どんな専門性があり、どんな実績や考え方があるのか。資料や広告だけでは伝えられる情報に限界があります。

その点、ウェビナーでは、登壇者の話し方や表情、スライド、事例、ストーリーなどを通じて、会社の考え方やノウハウを立体的に伝えることができます。さらに、参加者の質問にその場で答えることで、理解も深まります。
短い広告や動画と違い、ある程度の時間をかけてリアルタイムで伝えられるため、情報の密度と説得力が高く、他の手段では伝えきれない価値までしっかり届けることができます。

効果2:競合と比較されにくい

サービスを導入する際、多くの企業は他社との比較検討を行います。比較されるのは価格や機能、サポート内容などの条件面が中心で、その比較では自社より優れている競合が存在することもあります。こうした条件比較は、Webサイトのチェックや資料請求~吟味の段階でほぼ完結しており、商談で印象をひっくり返すのは簡単ではありません。

ですが、ウェビナーには、そうした条件比較とは別の軸で印象を深める力があります。
ウェビナーでは、サービスの説明だけでなく、なぜこの事業をやっているのか、どんな想いでこのサービスを届けているのかといった会社の背景やストーリーを直接伝えることができます。これは、商談の短い時間や資料だけではなかなか表現しきれない部分です。

登壇者が自分の言葉で語ることで、視聴者はその企業に対して共感や信頼を感じやすくなります。「スペックでは他社が上かもしれないけれど、この会社にお願いしたい」と思わせる、納得ではなく共感による判断が生まれます。
もちろん、比較検討自体がなくなるわけではありませんが、ウェビナーを通じて単なる数字や機能では測れない価値が伝われば、選ばれる理由が明確になります。

なぜ、多くの企業がウェビナーマーケティングに踏み出せないのか?

ウェビナーマーケティングの効果や特徴について、ここまで詳しく解説してきました。しかし、多くの企業がその価値を理解しながらも、導入には踏み切れていないのが現実です。
実際、大手企業でもウェビナーを効果的に活用できているのはごく一部に限られ、中小企業においてはさらに少数派。つまり、まだまだ「やりたくてもやれていない企業」が圧倒的多数なのです。

では、なぜこれほど有効な手法にもかかわらず、導入が進まないのでしょうか? その背景には、多くの企業が共通して抱える「心理的なハードル」があります。

なぜ、多くの企業がウェビナーマーケティングに踏み出せないのか?(株式会社ENVY)|BeMARKE(ビーマーケ)

理由1:ウェビナー=大変そう

ウェビナーを検討する企業の多くが、最初に感じるのは「準備が大変そう」という心理的ハードルです。企画、スライドや台本の作成、配信環境の整備、告知やリマインドなど、やるべきことが多く、社内にナレッジがないと一気にハードルが上がります。

「何を話せばいいのか」「どこで告知すれば人が来るのか」「そもそもうちの業種で集客できるのか」など、初歩的な疑問が積み重なり、準備が進まないまま止まってしまうケースも少なくありません。
「せっかく準備しても誰も来なかったら…」という不安から、社内の実施許可が下りず、検討段階で見送られることも多くあります。やったことがないからこそ、手間や失敗リスクばかりが気になり、一歩を踏み出せない企業が多いのです。

実際に、組織変革コンサルティングを手がけるB社も同じような課題を抱えていました。これまでは紹介や経営者交流会を中心に、会食や商談を重ねて受注していましたが、他社依存の営業体制に限界を感じ、ウェビナーという手法に関心を持つようになりました。ただ、「スライドを作る時間がない」「登壇に自信がない」「誰に案内を出せば良いのか分からない」といった不安が先に立ち、なかなか実施に踏み出せなかったといいます。

理由2:成果の出るイメージが湧かない

これまで紹介や会食など、信頼関係をじっくり築いた上で受注してきた企業ほど、「画面越しの説明だけで契約に至る」というイメージが持てず、導入に踏み切れないケースが少なくありません。特に中小企業では、「うちの規模や業種でも通用するのか?」という声も多く聞かれます。

実際、私たちが調査した400社以上のウェビナー施策では、参加者のうち商談につながった割合が10%未満にとどまるケースが大半でした。つまり、大多数の企業は、せっかくウェビナーを実施しても思うような成果が出せていないのです。

実際に、SEOツールを提供するSaaS企業のD社も、同じような課題を抱えていました。B社はこれまで、Google広告や資料請求サイト、オウンドメディア運営企業へのテレアポなどで新規開拓を進めてきましたが、1件ずつ説明する営業に限界を感じていました。トライアル説明の効率化を模索する中で、ウェビナーマーケティングの可能性に気づきます。他社がまだ手を付けていない今こそ差別化のチャンスと感じた一方で、「本当に受注につながるのか」「画面越しで魅力が伝わるのか」といった不安から、なかなか開催に踏み切れずにいました。

理由3:人前で話すことに抵抗がある

普段の打ち合わせや交流会では問題なく話せる人でも、「カメラの前で1対多に話す」となると緊張してしまうという声は少なくありません。
「うまく話せないかも」「伝わっているか分からない」「自分の話に価値があるのか不安」といった気持ちは、登壇に慣れていない方ほど強く感じやすいものです。さらにオンラインでは相手の反応が見えにくく、「一方的に話しているだけで不安になる」というケースもよくあります。

実際に、訪問介護のフランチャイズ展開を行うF社も、同じような不安を抱えていました。それまでは資料請求サイトやFacebook広告からの問い合わせに対し、1件ずつ電話で対応する地道な営業を続けていましたが、加盟検討者の理解が浅く、商談効率に課題を感じていました。そこで、加盟説明会をオンラインで実施しようと考えたものの、「講義形式で一方的に話すこと」に強い抵抗があり、なかなか実行に移せずにいたのです。

ウェビナーを営業チャネルとして活用しきれている企業が少ないからこそ

このように「準備が大変そう」「成果が出る気がしない」「人前で話すのが不安」といった心理的ハードルから、多くの企業がウェビナーに踏み出せずにいます。実際、今もなおウェビナーを営業チャネルとして活用しきれている企業はごく一部です。

だからこそ、いまこのタイミングで取り組めば、競合に先んじて市場に存在感を示すことができます。他社がまだ手を出していないからこそ得られる優位性が、ウェビナーにはあるのです。そして何より、これらのハードルは「正しい戦略」で設計すれば、確実に乗り越えることができます。次は、成果につながるウェビナーの考え方と進め方について、具体的にご紹介します。

ウェビナーマーケティングの正しい戦略

ウェビナーマーケティングは、正しい戦略を取れるかどうかで、成功と失敗に大きく分かれます。特に、大手企業と中小企業では、目指すゴールも、取るべき施策もまったく異なります。

ここではまず、大手と中小の戦略の違いを整理したうえで、ターゲット設定、企画、集客といった具体的な施策の違いまで詳しく解説していきます。

大手企業と中小企業のウェビナー戦略の違い

大手企業と中小企業のウェビナー戦略の違い(株式会社ENVY)|BeMARKE(ビーマーケ)

ウェビナー施策に取り組む際は、自社の規模やリソースに応じた戦い方を選ぶ必要があります。大手企業と中小企業では、目的もアプローチも大きく異なります。

まず、大手企業は市場の中で「真っ先に思い出される存在」になることを目指します。豊富なブランド力や資金力を生かし、広告や制作にも積極的に投資できるため、幅広いターゲットに対して認知を拡大していく戦略を取ります。ウェビナーもリード数を最大化するための施策として位置づけられます。

一方、中小企業は営業効率を高めることが最優先課題となります。
限られた人員と予算で運営するため、狙うターゲットを絞り、少人数でも確実に商談・受注に結びつける設計が求められます。ウェビナーの目的は、リードの量を追うことではなく、成約率を高めることにあります。

違いをまとめると、次のようになります。

大手企業中小企業
ウェビナーの目的市場での第一想起を狙う営業効率を高め成約率を上げる
リソースブランド認知・資金・人材が豊富限られた人員と予算で運営
アプローチ方法顧客接点を広げ、多様な層へ訴求顕在層に絞り、ピンポイントで訴求
成果指標リード数の最大化成約率の最大化

このように、自社の規模や状況に応じたウェビナー戦略を選ぶことが、成果を上げるための第一歩となります。

大手企業と中小企業のウェビナー施策比較

大手企業と中小企業のウェビナー施策比較(株式会社ENVY)|BeMARKE(ビーマーケ)

ウェビナー施策では、企業規模によって取るべきアプローチが大きく異なります。
豊富なリソースを活かして広く市場にアプローチする大手企業と、限られたリソースで効率的に成果を狙う中小企業とでは、施策の設計そのものが違います。

特に違いが大きく表れるのが、次の三つのポイントです。

  • ターゲット設定
  • 企画(コンテンツ設計)
  • 集客(リード獲得方法)

大手企業は、幅広い層に対して接点を持ち、リード数を最大化するために施策を設計していきます。一方、中小企業は、限られたターゲットに対してピンポイントに訴求し、成約率を最大化するために施策を組み立てる必要があります。

施策【1】ターゲット設定

施策【1】ターゲット設定(株式会社ENVY)|BeMARKE(ビーマーケ)

ウェビナー施策において最初に取り組むべきはターゲット設定です。
大手企業の場合、まずは顧客属性を整理し、全体像を把握することが求められます。これまでの顧客データや事例、インタビューをもとに、「業種」「抱えていた課題」「接点」「導入理由」といった情報を幅広く集め、購買プロセスを俯瞰して整理していきます。

例えば、大手の組織開発コンサルティング会社A社(東京)では、過去の顧客情報を体系的にまとめることで、ターゲットとなる層の傾向を把握し、幅広い層への訴求設計を可能にしました。

A社の顧客属性整理例
属性1属性2属性3属性4
顧客属性建設業・不動産業、10〜299名福祉施設、100〜200名飲食、40〜99名IT開発、300〜1,000名
抱えていた課題属人的経営、ワンマン、評価制度不備、人材採用難、組織崩壊リスクワンマン体制、行動管理不全、スタッフのモチベ低下人手不足、ワンマン経営、属人化、採用困難成長による組織統制不全、マネジメント体系不足
実現したいこと組織の仕組み化、公正な評価制度、人材確保、離職防止、組織成長自律型組織転換、行動基準明確化、経営参画意識向上組織の自立、採用改善、現場主導型体制組織運営標準化、幹部育成、経営基盤強化
サービスを知ったきっかけ紹介広告YouTube、広告紹介、広告
導入理由属人的経営脱却、組織運営の仕組み作り医療・福祉現場の組織力・人材定着向上リソース不足解消、社長依存脱却大規模組織に体系立ったマネジメント導入

一方、中小企業は、さらに精度の高いターゲット設定が必要になります。
直近で受注につながった代表的な顧客3社をピックアップし、「業種」「抱えていた課題」「接点」「導入理由」の4項目を丁寧に整理します。加えて、商談録画をチーム全体で確認し、顧客が反応したポイントや言葉を共有・すり合わせていきます。この作業を通じて、ターゲット像を一枚の絵として描けるレベルまで具体化し、施策のブレを防ぐことが重要です。

中小企業は、さらに精度の高いターゲット設定が必要に(株式会社ENVY)|BeMARKE(ビーマーケ)

実際に、組織変革コンサルティングを手がける中小企業B社(兵庫)でも、ターゲットを深く掘り下げたことで、メッセージや企画の一貫性が高まり、成果につながりました。

補足)中小企業が大手企業のウェビナー戦略を真似した失敗例

組織変革コンサルティング会社B社は、ウェビナーマーケティングに取り組むにあたり、ベンチマーク先として大手組織開発コンサルティング会社A社の戦略を参考にしました。
A社にならって、複数のウェビナーを制作し、広告費をかけて幅広い層への集客を試みました。

しかし結果は想定と大きく異なりました。30万円以上をMeta広告に投じたにもかかわらず、集客できたのはわずか14名。しかも役職者が中心だったにもかかわらず、商談には一件も至りませんでした。ウェビナー内容も情報量を重視した設計でしたが、参加者の関心を引くことはできても、具体的なニーズ喚起や商談への誘導にはつながりませんでした。

潤沢なリードを獲得し、長期的にナーチャリングできる体制がある大手とは異なり、中小企業には、ターゲットを絞り込み、限られた接点を確実に商談へとつなげる設計が求められます。リソースが限られる中小企業にとっては、「リードの量」ではなく「成約率」を高める戦略こそが最も重要なのです。

施策【2】企画(コンテンツ設計)

施策【2】企画(コンテンツ設計)(株式会社ENVY)|BeMARKE(ビーマーケ)

次に重要なのは、企画(コンテンツ設計)です。
大手企業が取るべき企画の施策は、複数のテーマを大量に作成し、市場全体に届けることです。制作チームを活用して、年間を通じて多様なウェビナーを展開し、市場での認知度を高めていきます。ターゲット設定で整理した顧客属性に合わせて仮説を立て、幅広いテーマのウェビナーを開催しながら反応を検証し、リード数を最大化するアプローチです。

例えば、SEOツールを提供する大手SaaS企業C社(東京)では、オウンドメディア立ち上げ層向け、SEOツール乗り換え検討層向け、記事上位表示に悩む層向けといった複数のニーズに応じてウェビナーを企画し、毎月10本以上のウェビナーを開催する体制を構築しています。

企画(コンテンツ設計)株式会社ENVY)|BeMARKE(ビーマーケ)

一方、中小企業が取るべき企画の施策は、たった一人に深く刺さる企画を作ることです。
精度高く、狭い層に絞り込んで届ける設計が求められます。ターゲット設定で整理した見込み客が共感するテーマに絞り込み、超具体的な内容に仕上げることで、成約率を高めていきます。

例えば、SEOツールを提供する中小SaaS企業D社(秋田)は、大手との競争を避け、これからオウンドメディアを立ち上げたいと考えている層にターゲットを絞りました。そして「オウンドメディアを活用したインバウンドセールス体制の作り方」というテーマに絞ったウェビナーを設計し、導入意欲の高い層を狙うことで、成約率22%超を実現しています。

補足)中小企業が大手企業のウェビナー戦略を真似した失敗例

SEOツールを提供する中小SaaS企業D社は、ウェビナー施策に取り組むにあたり、大手SaaS企業C社の戦略を参考にしました。C社と同じように幅広いターゲット層を想定し、複数のテーマでウェビナーを大量に企画・開催しました。

しかし、施策を重ねる中で課題が明らかになりました。開催本数を増やしても集客には苦戦し、参加者が集まった場合でも、ニーズが分散していたため商談化にはほとんどつながりませんでした。

中小企業が成果を出すためには、ターゲットを絞り込み、狭く深く響くコンテンツ設計を徹底することが重要なのです。

施策【3】集客(リード獲得方法)

施策【3】集客(リード獲得方法)(株式会社ENVY)|BeMARKE(ビーマーケ)

最後に、集客(リード獲得方法)についてです。
大手企業が取るべき集客施策は、潤沢な広告費を活用して告知を強化することです。SNS広告やセミナー告知サイト、有料資料請求サイトなどに広く出稿し、リードの質よりも量を重視して大量に獲得していきます。商談につながらなかったリードについても、マーケティングオートメーション(MA)を活用し、中長期的なナーチャリングで受注につなげる設計を取ります。また、大手同士でカンファレンスや共催ウェビナーを実施し、互いのリードを共有する取り組みも有効です。

例えば、買取のフランチャイズ展開を行う大手E社(東京)は、Meta広告や各種集客サイトへの広告出稿を最大限活用し、毎月1,000件以上のリードを獲得していました。加盟説明会の成約率は3%程度でしたが、リード数に支えられて毎月30件の新規加盟に成功し、投資対効果も5~6倍を維持していました。

一方、中小企業が取るべき集客施策は、リードの量ではなく質を重視することです。もっとも確度の高い集客手段は、自社のハウスリストを活用することです。ハウスリストとは、これまでに接点を持った見込み客リストだけでなく、SNSのフォロワーや既存の人脈も含まれます。中小企業の場合、ハウスリストが十分でないケースも多いため、SNSでの告知や、知り合いの経営者に協力してもらって告知を広げる方法【下画像】も有効です。

SNSでの告知や、知り合いの経営者に協力してもらって告知を広げる方法(株式会社ENVY)|BeMARKE(ビーマーケ)

例えば、訪問介護のフランチャイズ事業を行う中小F社(福岡)は、SNSでのウェビナー告知に加え、知り合い経営者にFacebook、LinkedIn、Xなどで拡散してもらう形で集客を行い、興味関心の高い質の高い見込み客を集めることに成功していました。その結果、FC加盟説明会(ウェビナー)の成約率は14%を超えていました。(※FC加盟説明会の成約率は3%ほどが平均値)

こうした方法は、紹介営業に比べてスピード感があり、効率的に人脈を活用できる集客手法です。

補足)中小企業が大手企業のウェビナー戦略を真似した失敗例

訪問介護のフランチャイズ事業を展開する中小企業F社は、加盟店拡大を目指して大手企業の集客戦略を参考にしました。Meta広告を活用して加盟説明会(ウェビナー)への集客を行い、さらにフランチャイズ資料請求サイトにも掲載して新規リードを獲得する施策に取り組みました。

しかし、結果は期待とは大きく異なりました。資料請求サイト経由で集めたリードは、一括請求が中心だったため、こちらから架電しても「資料請求した記憶がない」という反応が多く、商談に発展しにくい状況が続きました。また、加盟説明会を実施できたとしても、大手フランチャイズとの比較で知名度が劣るため、最終的に加盟に至るケースはほとんどありませんでした。

新規リードを量で集めるモデルは、大手企業のようにブランド力やリソースを持つ企業にこそ適した戦略です。
F社のような中小企業にとっては、リードの量ではなく、質を重視し、関心度の高い見込み客に絞って接点を持つ設計が重要なのです。

よくある質問

最後にウェビナーに関するよくある質問をまとめました。

【質問】無料ウェビナーvs.有料ウェビナーどっちにすべき?

結論としては、無料でのウェビナー開催をおすすめします。参加費だけでは集客コストを回収できないためです。
弊社で同じ内容のウェビナーを「無料」と「3,000円の有料」の2パターンで比較実験を行いました。結果、無料ウェビナーのCPA(1リードあたりの広告費)は約1万円だったのに対し、有料ウェビナーは2万円を超えました。参加費を差し引いても、有料の方が1リードあたり7,000円のコスト増となりました。

また、有料ウェビナーで商品やサービスの案内をすると、参加者の期待とのギャップからクレームに発展するケースもあります。広告経由での個人情報入力という心理的負担がすでにある中で、さらに参加費を求めるには、相当魅力的なテーマ設定が必要になります。

ウェビナーは単体での収益化を目指すのではなく、開催後の商談や受注を見据えた設計が基本となります。集客のハードルと費用対効果を考えると、まずは無料開催からスタートすることを強くお勧めします。

【質問】ウェビナーが不向きな商材や失敗する条件は?

ウェビナーが不向きな商材や失敗する条件は?(株式会社ENVY)|BeMARKE(ビーマーケ)

ウェビナーはすべての商材に適しているわけではありません。成果が出にくい商材や、効果的ではない進め方には、いくつかの特徴があります。

まず、ウェビナーに不向きな商材として、以下のようなものが挙げられます。

  • 個別対応が前提の受託型サービス(例:システム開発、アプリ開発)
  • 価格帯が極端に低い商材(例:月額5,000円のHP制作や保守管理など)
  • 市場で第一想起が取られているサービス(例:Zoom、TimeRex、freeeなど)
  • 比較検討されやすいBtoBの有形商材(例:コピー機などのオフィス用品)
  • BtoC向けの物販商材(例:太陽光パネル、ウォーターサーバー、不動産など)

これらの商材は、ウェビナーで価値を伝える前に価格や認知度で判断されやすく、ウェビナー施策との相性があまりよくありません。

ウェビナーが失敗してしまう進め方

次に、失敗しやすい進め方について説明します。

1回の開催で成果が出なかったからといって、すぐに諦めるのは早計です。特にゼロから自力で企画・構成・集客を行う場合は、効果的な営業ツールとして確立するまでに試行錯誤が必要です。実際、弊社でも最初の5回は受注ゼロという結果でした。
そのため、まずは広告費を抑えて小規模なテストから始めることをお勧めします。あるいは、初期段階でプロに依頼し、成果に直結する形で設計してもらったうえで、広告などで展開していく方法が効果的です。

ウェビナーは「やれば成果が出る」ものではありません。「正しい商材」と「正しい設計」の両方が揃って初めて、効果的な営業ツールとなるのです。

【質問】内製化と外注はどちらがお勧め?

ウェビナー運営の方法は、大きく「内製化」と「外注」の2つがあります。成果を最短で出すためには、「内製化を視野に入れた外注」がベストな選択です。なぜなら、ウェビナーは単なるプレゼンではなく、営業成果につなげるための設計された仕組みだからです。ゼロからの内製化は時間とコストがかかりすぎてしまいます。

そこで、以下のステップを推奨します。

  • 初期は企画設計から運営まで一貫して支援してくれる専門家に依頼
  • ノウハウを蓄積しながら、段階的に内製化を進める

このアプローチなら、早期に成果を出しながら、将来的な自走も実現できます。

まとめ

本記事では、ウェビナーマーケティングをおすすめする3つの理由から、正しい戦略まで、具体的な事例を交えて解説してきました。

一見ハードルが高く敬遠されがちなウェビナーマーケティングですが、実はそれを効果的に活用できている企業はまだ少数派です。だからこそ、営業ツールとしてウェビナーマーケティングを展開することで、競合他社との明確な差別化が可能になります。本記事でご紹介した事例のように、ウェビナーを通じて見込み客から相談が自然と舞い込んでくる体制づくりの一助となれば幸いです。

BeMARKE編集部より

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この記事を書いた人

宮津 駿
宮津 駿 | 株式会社ENVY 代表取締役

関西大学理工学部在学中にWeb制作やECサイト運営を手掛ける。卒業後も事業を拡大し、ウェビナー施策に本格的に着手。初期には成果が出ず苦労するも、他社ウェビナーの徹底分析や海外でのプレゼンテーション研修を経て独自のメソッドを確立。現在は株式会社ENVYの代表取締役としてBtoB向けウェビナー代行サービス「セミナーBPO」を展開中。200社を超える企業支援と3,500回以上の開催代行を通じ、成約率20-30%を実現し、クライアントの成長と収益拡大に貢献している。
X(旧Twitter)アカウント:https://x.com/s_miyatsu

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