Tips/寄稿

ウェビナー開催後の商談獲得率を高めるには?~ “成果につながる”アプローチ設計のコツ

ウェビナー開催後の商談獲得率を高めるには?~ “成果につながる”アプローチ設計のコツ

(前回までのあらすじ)会社から突然ウェビナーマーケティング担当を任された宇恵比奈(ウエ ヒナ)さん。前回は、自社製品への関心を高めるウェビナー構成(スライド作成)のコツを学びました。
参加者の関心を高め、行動を促すウェビナー構成~ノウハウ提供と製品紹介の最適バランスとは?

ウェビナーを何度か開催し、一定数の参加者は集められるようになったものの、なかなか商談アポイントを獲得できません。せっかく手間をかけて企画したウェビナーの成果が、商談につながらないのはなぜなのか?
今回はインサイドセールス担当の印西堂 静流(インサイドウ セイル)と一緒に、「ウェビナー開催後の商談獲得」について先生に尋ねることにしました。

登場人物

宇恵比奈(ウエ ヒナ):プロジェクトマネジメントSaaSを提供する会社のマーケティング部所属
先生:10年以上、さまざまな業界の営業、マーケティングなど多分野で動画活用プロジェクトを支援。動画活用に関する執筆やワークショップを開催している。

★新登場
印西堂 静流(インサイドウ セイル)

宇恵比奈と同じ会社のインサイドセールス担当。ウエヒナたちマーケティングチームと連携しながら、ウェビナー参加者からの商談創出を目指している。落ち着いた口調と丁寧な対応で、社内外からの信頼も厚い。ときおり見せる古風な言い回しや格言めいた一言が、場をやわらかく包み込む。

目次

商談につながらない理由を“プロセス”で分解する

ウエヒナ:先生、困りました……。この3カ月、毎月ウェビナーを開催して、参加者は多かったんですが、商談アポイントが全然取れなかったんです。

印西堂:そうなのです…。リストに電話をしても出てもらえず、やっと電話がつながっても「まだ情報収集段階だから」とお断りされてしまいますの。

先生:そうでしたか、それはもったいないですね。ウェビナー参加者から商談獲得するにはいくつかのプロセスと要因があります。まずは全体像を整理しましょうか。

ウェビナーの商談獲得までのプロセスと要因(株式会社Bizibl)|BeMARKE(ビーマーケ)

先生:商談に至るまでのプロセスを、ウェビナー参加→アンケート回答→架電リスト作成→架電→着電というプロセスに分けています。
この中で「どこがボトルネックか」を見極めれば、打ち手が明確になります。

たとえば、

  • 電話がつながらない → 架電の回数やタイミングが適切か?
  • つながっても断られる → 優先順位づけ(ホットリード判定)が適切か?

ウエヒナ:こうしてプロセスで分けて考えると、改善のヒントが見えてきそうです。

先生:電話がつながったとしても、できるだけ商談獲得の可能性の高い参加者につながった方がいいので、架電対象の優先順位をつけるうえではアンケート回答率が高い参加者が良いと判断できます。

ウエヒナ:なるほど。こうやって分解をしていけば、どこに手を打てば良いかがわかりやすいですね!

“架電のルール化”で、接続率と商談化を引き上げる

先生:そうですね。では各要因の指標についても解説しましょう。まず着電率を見てください。この30%という数値は会社の代表番号ではなく、個人の氏名や電話番号がわかっている状態で架電をしたときのものです。在宅勤務が多ければこの数値は低くなりますが、一つの目安としてください。

かけるべき人に早く、必要な回数分かける(株式会社Bizibl)|BeMARKE(ビーマーケ)

先生:着電率30%ということは、1人のウェビナー参加者に電話をかけてつながるには3~4回の架電が必要ということです。5回かけてもつながらなければ意図的に避けられていると考えて良いので、他の参加者に架電したりメールフォローに切り替えるなどして、貴重なインサイドセールスのリソースを最適化したほうが良いですね。印西堂さんのチームでは架電回数のルールは決めていますか?

印西堂:いえ…、そこは各自の判断に任せていましたわ…

先生:であれば今後は架電回数を決めてルール化した方が良いですね。
同じようにルール化すべきなのが架電するスピードです。ある調査では、ウェビナー「終了直後」の記憶残存率は90%以上で、24時間後になると記憶残存率は70%以上、72時間後では40%未満という報告があります。

印西堂:鉄は熱いうちに打て。でも執着は手放せ、ということですわね。

先生:そういうことです。言わずもがなですが、早く電話するにはルールはもとより、ウェビナーの開催日時を予めインサイドセールスチームに共有し、架電できる人数と時間を確保して、ウェビナー開催後にすぐに架電できる体制をつくっておくことも大切ですね。

ホットリードに優先対応する仕組みをつくる

先生:スピードと回数のルールを決めたら、次は「誰からかけるか?」を見直しましょう。ウエヒナさんは印西堂さんにどのようなリストを渡して、印西堂さんはそのリストに対してどのように架電していますか?

ウエヒナ:参加者の役職や企業の売上、製品への興味度などが入力されたアンケート回答などを入れたリストをまるっと渡していました。

印西堂:わたくしたちはそれをチームの人数分で割って架電していましたわ。

先生:それでは、商談につながりやすい“ホットリード”の機会を逃している可能性がありますね。
着電率30%という数値を先に出しましたが、いくら早く架電してつながったとしても、商談アポイントが取れる可能性の低い方では意味がありません。商談アポイントを獲得できる可能性の高い人とつながりたいわけですから、優先順位をつける必要があります。

では、どんな人を優先的にフォローすべきなのか? これはインサイドセールスやフィールドセールスの能力や体制、製品などによってさまざまですが、一例として

  • ウェビナー参加中や参加後に資料ダウンロードをした
  • 会社のホームページに問い合わせをした
  • アンケートで「サービスについて興味がある」と回答した

など、いわゆるホットリードを対象にすべきです。

商談獲得可能性の高い方からかける(株式会社Bizibl)|BeMARKE(ビーマーケ)

先生:ウェビナーマーケティングを支援するBiziblの自主調査では、ある月の商談獲得率が5%でした。その内訳をホットリードとコールドリードに分けて比べたところ、前者は架電対象社数20社に対しアポ獲得数が8件で、獲得率は40%。後者は架電対象社数388社に対しアポ獲得数が13件で、獲得率は3.3%でした。

ホットリードとコールドリードの商談獲得の違い(株式会社Bizibl)|BeMARKE(ビーマーケ)
リード区分架電社数アポ獲得数獲得率
ホットリード20社8件40%
コールドリード388社13件3.3%

ウエヒナ:こうやって比較すると「誰から電話すべきか」が一目瞭然ですね!

先生:注意してほしいのは、これはあくまで1つの事例であるという点です。ホットリードの設定基準や、ウェビナーの種類が自社製品の紹介ウェビナーなのか、製品紹介がほとんどない業界のトレンド紹介ウェビナーなのかによってもアポ獲得率は変わります。
目指すべきアポ獲得率は、ウェビナー施策に取り組む中で検証しながら、適宜チューニングして設定するようにしましょう。

印西堂:あくまで他社様の指標。鵜呑みにするわけにはいきませんわ。

アンケート設計と会話内容を“個別最適化”せよ

先生:さて、優先的に架電する人を定義したとしても、どんな人に対しても同じ内容の話をしていてはいけません。相手がどんな興味を持っているか、どんな課題を抱えているか――それを理解せずに話すのは、相手からの不信を招いてしまいます。

ウエヒナ:たしかに自分がウェビナー参加したり資料ダウンロードした後にかかってくる電話を受けても、「これテンプレだな」と感じることがけっこうあります。

先生:そうですよね。これが初めてのウェビナー参加ならまだしも、2回目3回目の参加の場合、相手をガッカリさせてしまいます。そうさせないためにもアンケート回答内容やCRMに記録されている情報を参照すべきです。余裕があれば相手の会社のホームページを見るなどしてもいいですね。

相手の状況に「個別化」した内容で話す(株式会社Bizibl)|BeMARKE(ビーマーケ)

印西堂:個別化したお話をするにはできるだけ多くの情報が必要ですわ。そうするとアンケートの設問数が多くなって、参加者の方が回答しなくなるのではなくて?

先生:その通りです。アンケートの設問数が増えるほど回答率が下がります。回答率を下げないためには必要十分な設問数にすること、回答特典などを用意するといった打ち手があります。

ただ、回答率が高かったとしても、参加者が電話されるのを嫌がって、本当はサービスに興味があるのに「興味がない」と回答することがありますよね。
そうした事態を回避するための心理的ハードルを下げるようなアンケート設計の工夫も必要です。これについてはあらためて詳しく説明しましょう。

個別化と優先順位づけにはアンケートが不可欠(株式会社Bizibl)|BeMARKE(ビーマーケ)

今回の記事のまとめ

  1. ウェビナー後の商談獲得には、架電プロセス(スピード・回数・優先順位)を明確に設計する必要がある。
  2. 参加者全員に一律アプローチするのではなく、ホットリードを見極めて優先的に対応することで商談獲得率は大幅に向上する。
  3. アンケート設計と架電内容の個別最適化により、参加者の関心や温度感に寄り添った信頼性の高いコミュニケーションが可能になる。

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