Tips/寄稿
上司:「ウチのサイト、そろそろリニューアルを考えておいて」
あなた:「……で、具体的に何を変えればよいですか?」
「見た目が古い」「スマホで読みにくい」「競合に見劣りする」――。
こうした曖昧な違和感だけを根拠に、Webリニューアルを進めても思ったような成果は出ません。肝心なのは、その違和感の裏にある本質的な問題や構造的な課題を特定することです。
このコラムでは、BtoBサイトのリニューアルを成功に導くための「現状診断」の視点と「問いの設計」について解説。実際に自己診断を行う際のチェック項目も紹介します。
BtoB企業がWebサイトの改善を検討し始めるとき、最初に感じるのは「問い合わせが減った」「直帰率が高い」といった数値やユーザー行動の変化といった現象(違和感)です。しかし、これらの現象をそのまま原因と結び付けることは、真因の誤認につながります。
そこで重要なのは、「現象」と「その背後にある構造的要因」を区別して捉える視点です。たとえば、下記のような観点が考えられます。
現象(違和感)例 | 確認したい主な観点(例) |
---|---|
問い合わせ数が減った | ターゲットがずれていないか、CTA導線の有無や配置・文言、流入チャネルの質の変化、市場需要の変化(季節性・外部要因) |
直帰率が増えた | ページ速度、情報構成の不明瞭さ |
検索流入が伸びない | コンテンツ品質(EEAT*)、被リンク状況、検索アルゴリズムの更新、競合のコンテンツ強化 |
回遊が少ない | 内部リンク設計、ユーザー導線のシナリオ設計の不備 |
スマホ離脱が多い | ファーストビューの設計不足、フォームの最適性 |
※EEAT:Googleの「検索品質評価ガイドライン」に提示されているコンテンツの品質評価基準「Experience(経験)、Expertise(専門性)、Authoritativeness(権威性)、 Trustworthiness(信頼性)」
これらはあくまで観点の一例です。実際の診断では、自社の事業モデルやターゲット特性に照らして、観点を取捨選択し、優先順位をつけることが大切です。
問い合わせの減少や直帰率上昇は、あくまで「現象」にすぎません。
成果につなげるためには、次のような4段階で整理することが大切です。
段階 | 定義 | 例(問い合わせ減少を起点に) |
---|---|---|
現象(違和感) | 可視化された数値・事象 | 問い合わせ数が3カ月連続で減少 |
問題 | あるべき姿(目標・基準)とのギャップ | Web経由の商談が目標比60% |
課題 | 問題の背景にある要因に基づいた「解決すべきテーマ」 | 顧客の検討を支援する情報の不足(比較材料・事例・価格理解など) |
アクション | 課題解決の具体的施策 | 業界別事例の拡充、料金ポリシーの明確化、FAQ再編) |
こうして分解して整理すると、全体リニューアルが必要か、部分的な改善で十分かを冷静に判断しやすくなります(詳細後述)。また、課題設定が的確であれば、限られた施策でもCVRや商談化率など成果指標の改善が期待できます。
現状を把握するために大切なのは、まず「事実」を観測することです。ここでは、自己診断の入り口として3つの観点を整理しました。自社のビジネスに合わせて取捨選択してみてください。
ねらい:誰に何を提供するのかが明確で、必要な情報が不足していないかを確認。
ねらい:離脱を生む摩擦要因(遅さ・迷い・不安)を取り除けているかを確認。
ねらい:測定→学習→意思決定の循環が機能しているかを確認。
3つの領域について、ホワイトペーパーではさらに詳しく解説しています。
「戦略・コンテンツ面(12項目)」「UX・技術面(10項目)」「集客・成果指標面(10項目)」合計32項目のチェックリストで確認してみてください。
診断によって明らかになるのはあくまで「事実」です。大切なのは、その事実をどう解釈し、解くべきテーマ(課題)に落としこむかです。
ここでは、そのための手順を紹介します。
課題は、問題の背景要因に基づいた「解決すべきテーマ」で表す。
例:
✕「事例記事を3本追加」 → 〇「比較検討を支援する情報が不足している」
✕「CTAボタンを赤に変更」 → 〇「主要導線で意思決定のきっかけが不明確」
✕「LPを1本追加制作」 → 〇「検索意図と訴求が不一致で流入を生かせていない」
✕「PageSpeedを90点に」 → 〇「表示遅延がフォーム到達前の離脱を誘発している」
KPIの変化と、主要導線・検索意図・フォーム離脱などの行動データをセットで確認する。
小さな改善を短期間で検証し、学びを次に生かす。
こうした手順を踏むことで「何を、どの範囲で、どの順で」取り組むかの輪郭が見えます。
自己診断を通じて改善点が見えてきても、必ずしも全体リニューアルが妥当とは限りません。部分的な改善で十分なケースも多くあります。次の3つの判断基準を参考にしてみてください。
例:ターゲットとサイト訪問者が乖離している/ブランドの専門性が正しく伝わらない/新製品・注力領域の扱いが不明確。
例:重要導線のクリック率が著しく低い/情報の分類が破綻している/CMSの運用負荷・セキュリティリスクが高い。
例:コンテンツ構成・導線・表現・CMS運用など複数領域に課題が広く分布し、個別修正では整合性が保てない
これらに該当する場合は、部分改善ではなかなか整合性を保てず、全体リニューアルの必要性が高いサインと捉えることができます。
社内だけで課題整理と優先順位づけを進めると、どうしても視点や情報が偏りがちです。その結果、判断の質やスピードが落ちてしまうこともあります。外部の診断を取り入れることで、次のようなメリットが得られます。
外部の視点を取り入れることで、改善の優先度を明確化し、根拠ある判断が可能になります。
例えば、私たち株式会社リスペクトは「Webサイト診断」を通じて、第三者の視点から現状と改善余地を整理する支援を行っています。
など、貴社の目的や事業背景に沿って現状を可視化し、リニューアル判断や改善計画の土台づくりをお手伝いします。
BtoBサイトのリニューアルで重要なのは、見た目の刷新やトレンドの追随ではありません。まずは「何を解決すべきか」を明確に捉える――すなわち、問いを設計することです。また、リニューアル自体は目的ではなく、成果を出すための手段です。次の順で進めると、学びを積み重ねながら成果を出せます。
このプロセスを実行することで、戦略的リニューアルの本質に近づけます。
貴社のWebサイトも、「何のために」「誰に対して」「何を提供しているのか」――を改めて問い直すことから始めてみませんか?