基本ノウハウ
アクセス解析を担当している、またはこれから担当することになったものの、「GA4の使い方が分からない」とお悩みではないでしょうか。
Googleアナリティクスはバージョンアップしながら進化を続けており、2012年にはUA(ユニバーサルアナリティクス)バージョンがリリースされ、2020年にはUAと並行利用できる形でGA4バージョンがリリースされました。2023年7月にUAは廃止され、GA4に一本化されます。
GA4はUAから大きく様式が変更されており、これまでUAを利用していた方にとってGA4への移行は急務であるものの、何がどう変わったのかをまだ理解しきれていないという方も多いでしょう。本記事ではGA4はUAから何が変わったのか、GA4で何ができるのかの基礎知識から、実際にGA4の使い方の具体例まで幅広く解説します。GA4の理解のために活用してください。
Googleアナリティクス4は、Googleが提供するアクセス解析ツールです。無料で利用でき、多くの企業に導入されています。本章では「GA4で何ができるのか?」「どう使うのか?」の基本を解説します。
GA4は、旧式のユニバーサルアナリティクス(UA)から大きく様式が変更されました。GA4はUAから何が変わったのでしょうか?UAからの変更点と、GA4ならではの特徴を確認しておきましょう。
UAからGA4で大きく変わった点を挙げると、下記の4つが挙げられます。
変更箇所 | UA(ユニバーサルアナリティクス) | GA4(Googleアナリティクス4) |
---|---|---|
【1】データストリーム | なし | データストリームに解析したいサイトを登録する。スマートフォンアプリとWebサイトなど、異なるチャネルのデータを登録して一括解析できる(クロスプラットフォーム測定)。 |
【2】計測単位 | Webページ単位 | イベント単位 |
【3】レポートの様式 | 既にある集計表の様式を選び、計測したいページの解析結果を表示する。 | 指標を組み合わせて集計表を作成し、指定したイベントの解析結果を表示できる。 |
【4】指標の内容 | 計測に利用する指標の定義が変わった。※詳細は後述。 |
GA4ではUAにはなかったデータストリームが追加され、データストリームをまとめたプロパティごとの解析に変わりました。
例えば企業が複数のWebサイトA・B、関連アプリA・Bを保有していた場合に、
プロパティ1:データストリーム1(WebサイトA)/データストリーム2(スマホアプリA)
プロパティ2:データストリーム3(WebサイトB)/データストリーム4(スマホアプリB)
のように登録することで、プロパティ単位でWebサイト・アプリを一括解析できます。
UAではWebページ単位であった集計方法が、GA4ではイベント単位の集計に変更されました。「このページにアクセスした/離脱したユーザーは何名」といったページビューに基づく計測であったUAから、「ユーザーはこのページからこのページへ遷移した」「ユーザーはこの経路から流入した後にCVした」といったユーザーの行動(=自社が定義したイベント)を基準とする計測に変わりました。
GA4がイベント単位の計測に変わった理由はいくつか考えられます。
1つは、過去と比べてWebサイトの仕様が変化し、ユーザーの回遊もさまざまなパターンが見られるようになったことです。従来のページビューに基づく計測ではユーザーの複雑な回遊までは追えないため、ユーザーの行動についてより理解するためには計測方法を変える必要があったのでしょう。
もう1つは、媒体の多様化です。スマートフォンやタブレットが普及したことで、ユーザーのアプリや動画コンテンツなどの利用が当たり前になっています。こうした媒体の変化に対応するためには、ユーザーの行動にフォーカスしたイベント単位の計測が向いていると考えられます。
UAでは既存のレポート(集計表)が用意されており、いくつかの集計表の中から選んで解析結果を表示していました。GA4ではディメンションと指標を組み合わせて独自の集計表を作成できるようになり、指定したイベントの解析結果を表示できるようになったため、より自由度の高い高度な分析が可能になりました。
UAで利用されていた指標の定義が、GA4で変更されました。例えば、UAではセッションの計測は0時をまたぐとリセットされて新たにカウントされていましたが、GA4では同じセッションとして扱われます。一度訪問・離脱したユーザーがセッション時間内に別の流入元から再訪問した場合も、別々のセッションとしてカウントされていたUAに対し、GA4では同じセッションとして計測されます。
その他にも定義が変更になった指標は多くあります。2章の「GA4を使いこなすための基礎知識」で解説するため、詳細はそちらで確認してください。
GA4は「自社サイト内におけるユーザーの情報・行動」を調べられます。具体的には、下記のような情報を得られます。
一方で、GA4は「自社サイト外でのユーザーの情報・行動」や「ユーザーの心理状態」は調べられません。下記のような情報は得られないため、ユーザーの行動に基づいて推測する必要があります。
GA4を最大限に活用するためには、自社にとって重要なイベント・指標は何かを考えて定義する必要があります。
GA4はUAに比べて自由度が高くなり、ユーザーの動向を詳細に追いやすくなった一方で、企業の目標に対してどのようなユーザーの行動を追いかけるのか、それをGA4上ではどのように定義するのか、さらにその解析のためのレポート形式までみずから決めなければなりません。そのため複雑で使いづらくなった部分も多く、UAからの移行で苦労する担当者の方も多くいます。
自社にとって重要なイベントを定義するにあたっては、まずはCVに至るまでの主流のユーザーの行動について仮説を立て、その検証のためにどうイベントを定義するのが最適かを考えてみると良いでしょう。
例えばBtoB企業サイトで資料請求を目標のCVとするだけでも、「ランディングページへの流入」「資料請求フォームへの遷移」「資料請求フォームのクリック」「請求完了画面の閲覧」など複数のイベントが想定されます。さらに、そのイベントを発生させるためには各ユーザーの行動をどう調査・評価すべきか、セッション、エンゲージメント率、離脱率など多くの指標について検討の余地があります。
自社が注視すべきイベント・指標は何かを考え、GA4を利用する目的を明確にして、効率的にデータを収集できるようにしましょう。
関連記事:専門家に聞く「Cookieレス時代で成果を出すためのWeb戦略とGA4活用」
GA4を使いこなすために、GA4で基本となる指標や画面構成を解説します。
下記はGA4で利用されている主な指標です。頻繁に登場するため、使用しながらでも覚えられるようにしましょう。
GA4の指標名 | 意味 |
---|---|
ユーザー | サイト訪問者数。同じ人物が複数回訪問した場合は計測されない。 |
セッション | サイト訪問回数。同じ人物が複数回訪問した場合も計測される。 |
表示回数 | サイトのページが表示された回数。ページビュー数。 |
セッションあたりの平均エンゲージメント時間 | サイト訪問⇒離脱までのセッション全体の平均時間。 |
新しいユーザー | 初めてのサイト訪問者数。 |
エンゲージのあったセッション数 | エンゲージメントが発生したセッション数。 |
閲覧開始数 | 特定ページでセッションの最初のイベントが発生した数。 |
コンバージョン | 設定したコンバージョンが発生した数。 |
イベント収益 | イベントによる収益。 |
eコマースの購入数 | eコマースで購入された回数。 |
紹介しているのは一部です。詳細はGoogleが公開している[GA4] アナリティクスのディメンションと指標を参照してください。
UAと比べて内容や定義が変わった指標について、項目別に確認しておきましょう。
エンゲージメントはGA4から新たに追加された指標です。
ユーザーが「10秒以上滞在した」「1セッションの間に2ページ以上を閲覧した」「CVを発生させた」のいずれかに当てはまった場合はエンゲージメントセッションとして集計されます。また、エンゲージメント率は下記の式で算出します。
エンゲージメント率(%) = エンゲージメントセッション数 ÷ セッション数
エンゲージメント率は高いほどユーザーによく読まれているWebサイトといえるため、向上を目指したい指標の1つです。
GA4におけるセッションは、「session_start」というイベントによって計測されます。「session_start」はデフォルトで自動収集されるため、特別な設定は必要ありません。
そのほかUAとの違いとして、下記があります。
測定条件 | UA | GA4 |
---|---|---|
セッションの最大時間 | 24時間 | 制限なし |
30分間操作がなかったときのセッションの扱い | 別セッション扱いになる | 別セッション扱いになる |
別の流入元から再訪問したときのセッションの扱い | 別セッション扱いになる | 同じセッションのまま |
日をまたいだときのセッションの扱い | 別セッション扱いになる | 同じセッションのまま |
これらの違いから、UAと比較してGA4のセッション数は減る傾向にあります。
GA4における直帰率は、エンゲージメントしなかったセッションの割合を示す指標です。
UAの直帰率の測定方法では、流入したユーザーがそのページの隅から隅までを読み込んだ後に離脱したとしても「直帰した」と数えられていました。GA4では、10秒以上滞在しページを読み込んだユーザーの行動はエンゲージメントセッションとしてカウントされ、そのページで離脱されても「直帰した」とはなりません。そのためGA4の直帰率は、より正確に「流入したが即離脱された」改善すべき指標として参考にできるようになりました。
UAの直帰率とは定義が変更されているため、UAのときと同じ見方をしないように注意が必要です。
UAの直帰率 | 流入したページを最後に離脱した(直帰した)数 ÷ そのページから始まるセッション数 × 100 |
GA4の直帰率 | 100% - エンゲージメント率 |
GA4における離脱率は、そのページを最後にユーザーが離脱した割合を示す指標です。ただし、離脱率という指標が最初から組み込まれていたUAと違い、GA4では「離脱数」に基づいて計算を行わなければ算出できません。「離脱数」は後述する「探索」ページで確認できます。
GA4では「離脱数」をセッション数で割って離脱率を出すため、UAで出されていた離脱率よりも、GA4の離脱率の方が高くなる可能性があります。
UAの離脱率 | そのページを最後に離脱した数 ÷ ページビュー数 × 100 |
GA4の離脱率 | そのページを最後に離脱した数 ÷ セッション数 × 100 |
コンバージョンは、設定したコンバージョンが発生した回数を示す指標です。
UAではセッション1回につき、何度コンバージョンしても回数は1と集計されていました。GA4では、同じセッション内で複数回のコンバージョンが発生した場合、発生した数だけ集計されるようになりました。UAよりもGA4の方がコンバージョン数が多くなり、コンバージョン率も高くなる傾向にあるといえます。
GA4ではユーザーの行動がイベントとして集計されます。「サイトを訪問した」「ページを閲覧した」「リンクをクリックした」「ページの最下層までスクロールした」などのユーザーの行動はすべてイベントとして扱われるのです。GA4でどのようなイベントを集計できるのかを理解し、自社の目的を達成するためにどのイベントを利用して計測するのが良さそうか確認しましょう。
また、イベントの設定には「イベント名」と「パラメータ」をセットで指定します(パラメータの指定が必要ないイベントもあります)。パラメータによってイベントの詳細を決定するイメージです。
イベントには下記の3種類があります。
【代表的な自動収集イベントの例】
イベント名 | 内容 | パラメータの例 |
---|---|---|
session_start | Webサイト訪問数 | - |
first_visit | Webサイト新規訪問数 | - |
page_view | Webページ閲覧数 | ・page_location(ページのURL) ・page_referrer(前のページのURL) |
scroll | Webページ(90%)スクロール数 | - |
click | 計測外リンクへのクリック | ・link_classes(リンクのクラス) ・link_domain(リンクドメイン) ・link_id (リンクID) ・link_url(リンク URL) |
view_search_result | サイト内検索数 | ・search_term |
file_download | 一般的な拡張子のファイルへのリンクのクリック | ・file_name(ファイル名) ・file_extension(ファイル拡張子) ・link_classes(リンクのclass名) ・link_domain(リンクのドメイン名) ・link_id(リンクのid名) ・link_text(クリックしたリンクのテキスト) ・link_url(リンクのURL) |
video_start | 動画の再生が開始された数 | ・video_provider(動画の提供元) ・video_title(動画のタイトル) ・video_url(動画のURL) ・video_percen(再生時間の割合) ・video_current_time(再生時間・秒) ・video_duration(動画全体の時間・秒) |
video_progress | 動画の再生時間の進捗 | 上記と同様 |
video_complete | 動画の再生が終了した数 | 上記と同様 |
user_engagement | 1秒以上閲覧された | ・engagement_time_msec |
【推奨イベントの例】
イベント名 | 内容 |
---|---|
login | ログインした数 |
view_cart | カートを閲覧した数 |
add_to_cart | カートに商品を追加した数 |
purchase | 購入を完了した数 |
sign_up | 会員登録をした数 |
推奨イベントはBtoCビジネスのECサイトなどでよく利用されます。BtoBビジネスではあまり使われませんが、会員制サイトを運用するBtoB企業であれば利用するケースもあります。推奨イベントの詳細はGoogleが公開している推奨イベントのページで確認してください。
GA4は主に4つの画面で構成されています。各画面がどういう役割を持っているのかを確認しましょう。
「ホーム」は主な指標について、集計の概要を確認できるページです。時系列でのユーザー数・コンバージョン数の推移や、過去30分間の訪問ユーザー、頻繁に閲覧しているレポートのリンクなどが表示されます。カスタマイズができないため、使える場面は限定的です。GA4を開いて最初に目に入る「扉」のような認識で問題ないでしょう。
「レポート」はGA4側で用意しているさまざまなレポートの形式で解析結果を表示できます。「レポート」に入って最初に表示される「レポートのスナップショット」では、各レポートの概要がカード形式で示されており各詳細にもすぐにアクセスできるほか、どのカードを表示するかも自由にカスタマイズできます。
注目したいのはライフサイクル>エンゲージメント>ランディングページです。ユーザーがどのコンテンツから流入しているのかを確認できるため、今後の施策が立てやすくなります。またその流入から発生しているコンバージョンも知ることができます。
ライフサイクル>集客>トラフィック獲得では、すべてのユーザーの訪問経路を調べられます。ユーザーの流入状況を掴みたいのであれば、トラフィック獲得のレポートを確認してみましょう。
【レポート内の項目】
コレクション | トピック | 内容 |
---|---|---|
レポートのスナップショット | - | 各レポートの概要をカード形式で確認できる。 |
リアルタイム | - | 現在訪問しているユーザーの集計結果を確認できる。 |
ユーザー | ユーザー属性 | ユーザーの年齢・性別・アクセス地域を確認できる。 |
テクノロジー | ユーザーが使っているデバイスやブラウザを確認できる。 | |
ライフサイクル | 集客 | ユーザー獲得:ユーザーの最初の訪問経路やサイト内行動を確認できる。 トラフィック獲得:新規・リピーターを問わずすべてのユーザーの訪問経路を確認できる。 |
エンゲージメント | イベント:各イベントが発生した回数やかかわったユーザー数を確認できる。 コンバージョン:コンバージョンとして設定したイベントに絞って確認できる。 ページとスクリーン:各ページの表示回数やユーザー数などのサイト内行動を確認できる。 ランディングページ:どのコンテンツから流入しているのかを確認できる。 |
|
収益化 | eコマース購入数、アプリ内購入:ECサイトやアプリの売上に関する状況を確認できる。 パブリッシャー広告:広告表示によって得られた収益を確認できる。 | |
維持率 | リピーターに関する情報を確認できる。 |
探索」は、「レポート」以上にさまざまな切り口から深く分析を行いたい場合に利用します。ディメンションと指標を選択することで、「レポート」では調べられない独自の集計表を作成できるのです。テンプレートも複数用意されているため、集計したいデータに応じて活用しましょう。
「探索」ではセグメント機能を利用できます。セグメント機能は特定のユーザー、イベント、セッションなどを絞り込んで集計が可能であるため、アクセス解析に役立ちます。
「広告」では、広告の分析はもちろんですが、広告以外の経路についてのアトリビューション分析を行えます。
アトリビューション分析とは、CVが発生した際のユーザーの経路だけではなく、ユーザーの過去の経路も分析してCVへの影響を評価する手法です。例えばとあるユーザーが会員登録(CV)した場合に、その日の経路は「検索流入⇒会員登録のメリットのページ⇒会員登録」であったが、実はそのユーザーが前日に「リスティング広告」からも一度流入していたとしたら、リスティング広告も会員登録に貢献した可能性があると考えられるのです。
これからGA4を使い始めようと思っている方向けに、初期設定の方法を解説します。基本的な手順のため、説明されなくても分かるという方はスキップし、4章以降を確認してください。
GA4を利用するには、Googleアカウントが必要です。Googleアカウントを持っていない場合はまず登録を行いましょう。
登録が終わった、あるいは既にGoogleアカウントを持っている場合は、「GA4アカウント開設」に進みます。Googleマーケティングプラットフォームにアクセスし、「さっそく始める」をクリックしましょう。
次に、「測定を開始」をクリックします。
移行したアカウント設定画面ではGA4のアカウント名を入力します。アカウント名は自由に設定できます。特にこだわりがないのであれば企業名でも構いません。
また、「アカウントのデータ共有設定」欄も確認し、共有したくないデータがあればチェックを外しておきましょう。次に進むと、「プロパティの設定」に移動します。
「プロパティの設定」ではプロパティ名を入力します。プロパティ名も好きに設定可能です。プロパティはアクセス解析データを表示する基本単位であるため、アクセス解析を行う予定のWebサイト名などを入力すると分かりやすいでしょう。
日本の企業であれば、レポートのタイムゾーンを「日本」、通貨を「日本円(¥)」に設定しておきます。
「ビジネスの概要」では、自社にあてはまる選択肢にチェックを入れます。「作成」を押せば、GA4のアカウント開設は完了です。
データの収集元を登録するために、データストリームを設定します。データストリームからプラットフォームを選択します。Webサイトを登録する場合は、「ウェブ」を選択しましょう。
表示された「ウェブストリームの設定」画面で、紐づけるWebサイトのURLとストリーム名を入力した後、「ストリームを作成」ボタンを押して完了です。
データ収集を行うためには、GA4のトラッキングコードを発行して計測したいWebページに埋め込む必要があります。トラッキングコードの設置には、以下の2つの方法があります。
トラッキングコードを設置した後は、計測できているかを確認しましょう。
アクセス解析を行いたいWebサイトが数ページしかなく、今後も増える予定がないようであれば、トラッキングコードをコピーして直接貼り付けるだけでも問題ありません。
トラッキングコードを直接貼り付ける場合は、GA4の左メニューの最下部にある「管理」を選び、データストリーム>対象のデータストリーム選択>ストリームの詳細画面内の「タグの実装手順を表示する」をクリックします。
「Googleタグを設置する」画面のタグをコピーして、計測したいWebページの<head>セクション内に貼り付けます。
Webサイトのコンテンツを今後も増やしていく場合、GA4以外にもタグを埋め込む形のWebサービスを利用する予定がある場合は、Googleタグマネージャー(GTM)の使用をおすすめします。
GTMはGoogleアカウントがあれば無料で利用でき、タグの設置・修正・削除を効率化できるツールです。手動でタグの埋め込みを行っていると、コンテンツが増えるにつれてどのページにどのタグを埋め込んだのかの把握が難しくなりますが、GTMなら容易に管理できます。
GTMを利用する場合は、GTMのトラッキングコードを各Webページに埋め込む必要があります。ただし、GA4のトラッキングコードがページに埋め込まれている状態だと二重計測になるため、GTMを利用する場合はGA4のトラッキングコードを除かなくてはなりません。ページ数が多いWebサイトになると想定できているなら、移行のために差し替えの手間が発生することを考慮して、最初からGTMを利用しておきましょう。
初期設定が済めばさっそくGA4を利用できますが、GA4活用のためにはぜひ追加で行っておきたい設定が3つあります。初期設定1に続いて、順番に設定していきましょう。
GA4では、ユーザーデータとイベントデータの保持期間は標準で2カ月となっています。14カ月に設定を変更しておきましょう。
管理>データ設定>データ保持>ユーザーデータとイベントデータの保持画面で「イベントデータの保持」を14カ月に変更します。
自社の社員など、関係者のアクセス情報を除いて純粋な外部からのアクセス状況を確認したい場合は、内部トラフィックの除外を行いましょう。
内部トラフィックの除外を行うには、内部トラフィックルールを作成し、そのルールを適用します。
管理>データストリーム>対象のデータストリーム選択>ストリームの詳細画面で「タグ設定を行う」をクリックします。
設定の「すべて表示」を選んでメニューを開き、「内部トラフィックの定義」を選択します。
内部トラフィックルールを作成します。複数のトラフィックルールを作る可能性も想定し、ルール名は分かりやすくしておきましょう。除外するIPアドレスの詳細を「マッチタイプ」から選択し、「値」を記入して「作成」をクリックします。
内部トラフィックルールは作成しただけでは適用されないため、適用のためにデータフィルタを作成します。管理>データ設定>データフィルタから「フィルタ作成」を選択します。
フィルタ名を記入し、フィルタオペレーションを「除外」にし、フィルタの状態を「有効」にして作成をクリックします。これでIPを除外する設定が完了しました。
GA4では指定したイベントをコンバージョン(CV)として別途設定が可能です。資料請求、会員登録など企業が獲得を目標にしているCVを設定しましょう。設定の方法としては、「入力フォーム」と「サンクスページ」を用意し、「サンクスページ」の閲覧イベントをCVに設定するなどの方法があります。
まずはCVのもととなるイベントを設定します。イベントは2章で述べた通り「イベント名」と「イベントパラメータ」がセットになっており、例えば特定のページの閲覧を設定したいときは「イベント名:page_view(ページの閲覧行動)」「イベントパラメータ:page_location(ページの場所を示すURL)」で設定が可能です。
管理>イベントを選択します。
「イベントを作成」を選択します。
イベントの作成画面が開いたら、作成をクリックします。
カスタムイベントを設定します。パラメータ、演算子、値を入力します。
複数の条件を組み合わせてコンバージョン設定とする場合は、「条件を追加」をクリックし、同様に追加設定を行います。入力が完了したら「作成」をクリックします。
イベント名
event_name:page_view
イベントパラメータ
page_location(コンバージョンにしたいページのURL)
イベントが設定できたら、そのイベントをコンバージョンイベントに指定します。
管理>コンバージョン>新しいコンバージョンイベントをクリックします。
新しいイベント名に、作成したイベント名を入力します。コンバージョンイベントが作成できました。
設定が完了したらテストを行い、計測が行われているかまで確認しましょう。なお、時間が経てばイベントはコンバージョンイベント一覧内に表示されるようになり、「コンバージョンとしてマークを付ける」をオンにするだけで設定できます。今回は新規に作成したイベントをすぐにコンバージョンイベントに設定するための手順です。
GA4のデータ収集を開始できたら、最初は数値に慣れるためにもレポート機能の確認から始めてみましょう。ただし、何の目的も持たずにレポートをただ開いても、数値を眺めるだけで終わってしまいます。大切なのは、レポートを確認する前にまず自分なりの仮説を持ち、その検証のためにGA4を利用することです。
「リスティング広告と自然検索流入では、リスティング広告経由の方がCVが多いのではないか?」「問い合わせが急に増加したのは、URLつきで自社製品がSNSに取り上げられた影響ではないか?」などの仮説を持って、その仮説検証にどのレポートを確認すれば良いかを考えるのです。こうした判断ができるようになれば、GA4の用途は大きく広がります。まずは標準レポートで数値を確認するところから始め、徐々に応用的に利用できるようになりましょう。
仮説立ての方法については、「新任マーケティング担当者が押さえておきたいサイト分析の基本」にも記述しているため参考にしてください。
以上の考え方を踏まえた上で、GA4で特に押さえておきたい下記標準レポートを確認します。
「トラフィック獲得」は、すべてのユーザーの流入経路を確認できるレポートです。
どのチャネルからユーザーが流入しているのか、参照元や内訳を調べられます。「今週の流入が増えたのは、新しく始めた広告が影響しているのでは?」など、流入数が増えたときの原因特定に利用できます。
参照箇所:レポート>集客>トラフィック獲得
流入チャネルの表記が何を指しているのかについても覚えておきましょう。
【GA4で確認できるチャネルの例】
チャネル | 内容 |
---|---|
Organic Search | 検索エンジンの検索 |
Paid Search | 検索エンジンの広告 |
Paid video | Youtubeの広告 |
Paid Social | SNS広告 |
Organic Social | SNSの広告以外のリンク |
Display | ディスプレイ広告 |
Affiliates | アフィリエイトサイトのリンク |
Direct | URLじか打ち・ブックマークなど |
Referral | 外部サイトのリンク |
Eメールのリンク |
上記は簡素化した説明です。詳細はGoogleが公開しているデフォルトチャネルグループの説明を参照してください。
「ランディングページ」は、ユーザーが最初に訪問したコンテンツは何かを確認できるレポートです。また、各コンテンツからCVにつながった数も確認できるため、コンテンツのCV貢献度も測れます。
標準ではすべてのコンバージョンの数値が表示されていますが、絞り込みも可能です。「この期間でセッション数の増加に貢献したコンテンツはどれか」「特定のコンバージョンに大きく影響したコンテンツはどれか」などを調べられます。
参照箇所:レポート>ライフサイクル>エンゲージメント>ランディングページ
【レポートの利用イメージ】
先週と比べて急に自社サイトの流入数が増加傾向にあり、原因を特定しようとした場合で考えてみましょう。「最近になってSNSの投稿を始めたからそれが理由だろうか?」と考え、前項で解説した「トラフィック獲得」を、日時を今週に指定して参照します。
すると、実際にはSNSからの流入はあまりなく、「Organic Search」(自然検索)が飛躍的に伸びていることが分かりました。そこで「ランディングページ」を参照し、どのコンテンツのセッション数が伸びているかを確認してみると、先週に公開したばかりの記事が多くセッションを獲得していました。公開した記事が数日で検索順位の1位を獲得し、セッション数の増加につながっていたことが分かりました。
「ページとスクリーン」は、すべてのページの閲覧数、CV数などを確認できるため、自社サイトの現状を把握したいときに便利なレポートです。
「どのページに人気があるのか?」「新たに作成したページはどれくらいセッションを獲得できたのか?」などを調べる上で役に立ちます。検索窓を利用してページを指定できるため、特定のページについて流入数やCV数の伸びを先月と比較したい場合なども利用できるでしょう。
参照箇所:レポート>ライフサイクル>エンゲージメント>ページとスクリーン
「ページとスクリーン」は、言葉の意味としてはページ(Webサイトのページ)とスクリーン(アプリの画面)を指しており、この画面では以下のような情報を一気に確認できます。
【各ページ/スクリーンの情報】
なお、ディメンションの切り替えによって下記4つのパターンの表示が可能です。Webサイトのみ保有している企業であれば、Webサイトの情報を「ページタイトル」「ページパス」「コンテンツグループ」のいずれの表示にするかで決めると良いでしょう。
ページタイトルとスクリーンクラス | Webサイトであればtitleタグの名称が、アプリであればスクリーンクラスが表示される。 |
ページパスとスクリーンクラス | Webサイトであればドメイン以降が、アプリであればスクリーンクラスが表示される。 |
ページタイトルとスクリーン名 | Webサイトであればtitleタグの名称が、アプリであればスクリーン名が表示される。 |
コンテンツグループ | Webサイトであれば作成したコンテンツグループが表示される(コンテンツグループの作成にはGTMなどの利用が必要)。 |
「コンバージョン」は、コンバージョンとして設定したイベントのみの集計データを確認できるレポートです。
コンバージョンイベントの発生数を一覧で確認できるため、「この1月で起きたコンバージョンイベントは、資料ダウンロードとセミナー申し込みのどちらが多かったか?」などのCVの成果を調べられます。
参照箇所:レポート>ライフサイクル>エンゲージメント>コンバージョン
各イベント名をクリックすると詳細が表示され、コンバージョンごとの流入経路を確認できます。多くのコンバージョンにつながった経路を知りたい場合に役に立ちます。
標準レポートの次は、探索機能を使って指標とディメンションをかけあわせ、自由にレポートを作成してみましょう。
レポート機能では各レポートで確認できるデータの内容が決まっていますが、探索機能を利用すれば自社が確認したいデータのレポートを自由に作成できます。探索機能の基本的な使い方を把握しておきましょう。
探索の画面を開いたら、利用するレポートのテンプレートを選択します。
テンプレートは下記のような種類があります。どのようにデータを分析したいかに応じて選びましょう。今回は「空白」テンプレートを利用します。
空白テンプレートでは、「変数」欄に集計に利用したい項目をストックしておき、「タブの設定」欄でレポートで利用する内容を具体的に決定します。
「変数」欄のセグメントにストックした項目は「タブの設定」欄のセグメントの比較・行・列・値で選択できるようになります。今回はディメンションにストックした「新規/既存」「年齢」「デバイスカテゴリ」の3つから、行・列に指定する項目を選びます。
行に「年齢」、列に「デバイスカテゴリ」、値に「セッション」を設定して、デバイス別・年齢別のセッション数を確認できる集計表を作成できました。
セグメントを設定すれば、特定のセッションやユーザーのみの集計ができます。例えば「資料ダウンロードのコンバージョンを発生させたユーザー」をセグメントとし、そのセグメントの閲覧情報を絞り込むといった使い方が可能です。
設定できるセグメントには以下の3種類があります。どのセグメントを選ぶかによって集計結果に差が出るため、調査したい内容に応じて適切なセグメントを選択する必要があります。
【セグメントのタイプ】
例えば「とあるユーザーがサイトに5回訪問し、3回目と4回目のみ資料ダウンロード(CV)した」という状況を想定した場合、各セグメントタイプの集計範囲は以下のようになります。
セッションセグメント:ユーザーが訪問した5回のうち指定した条件(今回は資料ダウンロードのCV)のセッションのみカウントする⇒集計範囲はCVした訪問2回分のユーザーの行動
ユーザーセグメント:ユーザーが訪問した5回をカウントする⇒集計範囲は訪問5回分のユーザーの行動
イベントセグメント:発生したイベントのみカウントする⇒集計範囲はCVの行動のみ
セグメントを設定するには、探索>変数欄のセグメント+をクリックします。
今回は「セッションセグメント」を選択します。
セグメント名を入力し、セグメントの条件を追加します。
今回は「コンバージョンのあったセッション」について絞り込むことにし、条件にディメンション>コンバージョンイベント、フィルタに「完全一致」「true」を指定します。
「保存して適用」でセグメントが作成できました。
GA4を使いこなすために、課題解決のため探索機能を利用する例を紹介します。
ユーザーがどのような経路でCVに至っているのかを調べられれば、ユーザーの行動を分析でき、今後のWebサイト改善にも役立てられます。
CVに至った経路を調べるには、探索機能から「経路データ探索」を利用する方法があります。経路データ探索では、CVから遡ってユーザーの行動経路を一覧にして確認できるため、ユーザーの行動をより具体的に把握できます。
探索>テンプレートから経路データ探索レポートを開き、「最初からやり直す」をクリックします。
「始点」「終点」を選ぶ画面が表示されるため、終点をクリックし、CVに設定しているイベント名またはページタイトルを選択します。
表示されたイベント名・タイトル名など各項目をクリックするたびに枝分かれし、ユーザーの行動経路が遡って表示されます。終点のCVにたどりつくまでに、ユーザーがどのようなコンテンツを経たのかを確認できます。日付指定やセグメントを活用すれば、より詳細な分析が可能です。
サイトの歩留まり率をチェックしたい場合は、探索>目標到達プロセスデータ探索を利用してみましょう。この機能を利用すれば、指定したチェックポイントに対してユーザーが通過した数・割合を可視化できます。
探索>目標到達プロセスデータ>タブの設計欄のステップ右横の鉛筆マークをクリックします。
チェックポイントを編集する画面が開きます。最初から各ステップに記入されている情報は、適宜削除・編集して利用しましょう。
今回は「初回訪問のユーザーが記事コンテンツを閲覧後に会員登録を行った数」の推移を確認します。
ステップ1を「初回訪問」としてfirst_visitを設定後、ステップ2を「記事閲覧」としpage_viewを指定します。パラメータにはpage_location:記事コンテンツの共通URLを「含む」で指定しました。この際、ステップ1からステップ2に移るまでの制限時間を指定しておくことで、「初回訪問から数日後に記事閲覧を行った場合」などの意図しない状況を結果から除くことができます。
同様に、ステップ3を「資料請求」とし、資料請求後のサンクスページURLと制限時間を入力して設定します。最後に「適用」をクリックして完了です。
各チェックポイントの通過率が確認できます。画像のレポートでは、記事閲覧から資料請求の間に課題がありそうだと判断できます。改善施策を行った後に、期間を指定してデータを比較し、施策がうまくいったかを確認してみましょう。
GA4のUAからの変更点、GA4の基礎知識、初期設定の方法、活用の例を解説しました。GA4を最大限に活用するためには、自社が注目すべき重要なイベントと指標の定義を行い、GA4を利用する目的を明確にすることが大切です。GA4を活用して自社の現状を把握し、Webマーケティングや営業活動の戦略策定に生かしましょう。