基本ノウハウ
Webサイトの効果測定では、アクセス解析による定量データの整理・分析が大切です。しかしWeb担当者になって間もない方は、「アクセス解析では何が分かるのか」「どのように進めれば良いのか」など疑問があるでしょう。
本記事ではアクセス解析で分かることをユーザー像や利用状況、流入経路という3つのポイントを踏まえて解説します。進め方やコツも、あわせて紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。
アクセス解析では、主にユーザーの属性・行動に関する次の3つについてのデータを取得できます。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
アクセス解析では属性やアクセス環境など、ユーザー像が分かります。具体的な内容は、下表の通りです。
分かること | 意味 | 例 |
---|---|---|
属性 | ユーザーが持っている性質や特徴 | ・年代 ・性別 ・地域 など |
アクセス環境 | Webサイトの閲覧で使用している環境 | ・デバイス ・OS ・解像度 など |
ユーザー像は新規コンテンツの制作やリニューアルだけでなく、Webマーケティング戦略の立案・見直し時の参考になります。例えば訪問が多い属性向けのコンテンツを増やすと、PV数やCV数の増加が期待できるでしょう。
またアクセス環境の把握は、ユーザビリティの高いWebサイト制作で欠かせません。スマホからの閲覧が極端に少ない場合、表示スピードやレイアウトのズレなどによって見にくいWebサイトになっている可能性があります。
特に近年では、モバイルフレンドリーが検索順位に影響する評価指標の1つになっており、Googleも強く推奨しているところです。※1
※1出典:Google Developers|モバイルサイトとモバイルファーストインデックスに関するおすすめの方法
Webサイトのアクセス解析後は、デバイス問わず使いやすくなるよう改善していく必要があります。
アクセス解析で分かることの2つ目として挙げられるのが、ユーザーの利用状況です。具体的には、次の3つが分かります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
アクセス解析では、ユーザーの訪問・閲覧状況に関するデータを取得できます。
分かること | 意味 |
---|---|
PV(ページビュー)数 | ユーザーが閲覧したページの総数 |
セッション数 | ユーザーのWebサイト訪問数 |
UU(ユニークユーザー)数 | Webサイトにアクセスしたユーザーの実数※2 |
LP(ランディングページ) | ユーザーが最初に閲覧したページ |
※2 デバイスの違いも反映(ユーザー1でもパソコンとスマホで閲覧すればUU数は2)
例えば1ユーザー(UU数1)の動きを見た下図の場合、各指標は次のように算出可能です。
また下図の場合、各指標は次のようになります。
ただし、Googleの有名なアクセス解析ツールであるGoogleアナリティクス4(GA4)には、スマートフォン・PC・スマホアプリをまたいで同一のユーザー数を測定できるクロスプラットフォーム測定もあります。複数のデバイス利用によるユーザーの重複が気になる場合は利用してみると良いでしょう。
またユーザーの訪問・閲覧状況に関する指標の違いについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてチェックしてみてください。
関連記事:「セッション数とは?UU数・PV数との違いや計測のルール、確認方法を解説」
アクセス解析では、ユーザーの滞在状況に関するデータを取得できます。
分かること | 意味 |
---|---|
滞在時間 | ページに滞在した時間 |
平均セッション時間 | 1セッションあたりの平均滞在時間 |
直帰率 | LPの閲覧後、アクションせずに離脱した(エンゲージメントしなかった)ユーザーの割合 |
なお離脱として扱われる状況は、主に次の3つです。
ちなみに過去のGoogleアナリティクス(UA)では離脱の直前に閲覧していたページは滞在時間として計測されていませんでしたが、GA4では計測されるようになっています。
このほかにもUAとGA4で定義の異なる部分があります。違いなどを確認したい場合は、下記の記事を参照してください。
関連記事:「これから始めるGA4の使い方!基礎・初期設定の手順・実践例まで解説」
アクセス解析では、Webサイト運営で最終的に目指すCVの状況が分かります。
分かること | 意味 |
---|---|
CV数 | コンバージョン(資料請求、問い合わせ、サービス申し込みなど企業が成果として設定したユーザーのアクション)が発生した数 |
CVR(コンバージョン率) | Webサイトあるいはページに訪れたユーザーのうちコンバージョンが発生した割合 |
CVRの計算方法は、次の通りです。
CV数÷PV数×100=CVR
例えば特定のページにおけるPV数100、CV数が5の場合は次のように計算できます。
CV数÷PV数×100
=5÷100×100
=5%
ただしアクセス解析では自動でCVRを算出してくれるため、手間がかかりません。
なおWebサイト運用直後は、PV数など変化が見えやすいものをKPIにします。PV数がある程度確保できるようになってきたら、CVRをKPIの1つとして定期的に確認しサイト改善へ生かすと良いでしょう。
アクセス解析で分かることの3つ目として挙げられるのが、下表にあるようなユーザーの流入経路です。
チャネルの種類 | 流入元 |
---|---|
Organic Search(オーガニックサーチ) | 検索エンジン |
Paid Search(ペイドサーチ) | 検索連動型広告 |
Display(ディスプレイ) | ディスプレイ広告 |
Direct(ダイレクト) | URLの直接入力やお気に入り登録(ブックマーク) |
Refarral(リファラル) | 外部サイト |
Social(ソーシャル) | TwitterやInstagramなどのSNS |
Email(イーメール) | メルマガ |
流入の多いチャネルが判別できれば、施策を集中させることで費用対効果のさらなる向上も期待できます。またアクセス解析では、どのような言葉を入力して検索したのかという検索クエリの判別も可能です。流入の多い語句が分かれば、コンテンツやWeb広告のキーワード設定に生かせます。
検索クエリについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もぜひ参考にしてみてください。
関連記事:「検索クエリとは?種類や調べ方を解説|SEOや広告での活用例も」
アクセス解析の結果から分かることは、主に次の3つです。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
アクセス解析では、新規施策や変更点の効果を観察できます。例えば次に挙げるような施策を実行したあとは、効果測定として必ずアクセス解析をチェックしたいところです。
より鮮度の高い結果を見たいとき、アクセス解析にGoogleアナリティクスを利用しているなら「レポート→リアルタイム」で確認すると良いでしょう。手軽かつ迅速に施策の効果を観測できます。流入経路やCV数も閲覧できるため、特にサイト改善後やキャンペーン展開時は利用してみてください。
アクセス解析で分かった指標は、組み合わせて分析することで現状の課題が見えてきます。よくある課題が、次の3つです。
上記のような課題を早期に発見すれば、改善策もより素早く実行できます。結果として損失防止や成果向上へつながり、CVなどWebサイトにおける目標を達成しやすくなるといえるでしょう。
アクセス解析は自社サイトの課題だけでなく、着手すべき改善策のヒントも得られます。例えば前述の課題に対する改善策としては、下表のようなものが挙げられるでしょう。
PV数が少ない | ・メルマガやSNSなど他のWebマーケティング施策と連携強化し、露出機会を増やす など |
PV数はあるものの直帰率が高い | ・コンテンツ内容の質を高める ・どのデバイスでも見やすいようにレスポンシブ対応にする など |
滞在時間は長いもののCVRが低い | ・CTAまでの導線を分かりやすくする ・LPO/EFOを見直す など |
アクセス解析の進め方は、次の通りです。
アクセス解析はGoogleアナリティクスやGoogleサーチコンソールなど、無料のツールでもできます。ただし二重計測や自社IPのカウントは避け、正確に計測できるよう環境を整えることが大切です。各ステップの詳細や便利なツールについて知りたい方は、こちらの記事もあわせてチェックしてみてください。
関連記事:「アクセス解析ツールを使うと何が分かる?解析の目的や実施方法、ツールを紹介」
アクセス解析を行う際のコツは、次の3つです。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
アクセス解析では全体の把握から詳細の確認と順を追って進めることで、手戻りが減り効率的に進められます。全体像の把握では、主に次の3つを見ると良いでしょう。
また詳細の確認では時間帯や曜日、季節といった時間軸の変化を追うことも大切です。一定期間のサイクルで見るのはもちろん、施策の追加・変更前後も確認すると効果を測定しやすくなります。アクセス解析の結果、奏功していると判断できた施策は他のページにも反映し、Webサイト全体の成果を上げていきましょう。
アクセス解析を進める際は、外的要因の影響も加味することが大切になります。PV数などの増加は自社で実行した施策の効果以外にも、社会情勢などの影響もあり得るためです。
例えばパンデミック(社会的要因)や、5Gの普及(技術的要因)が分かりやすいでしょう。これらの外的要因は検索エンジンやSNSを利用する時間が増え、流入増加に影響したケースも少なくありません。
なお外的要因の影響は、PEST分析を利用して整理するのがおすすめです。Webマーケティングにおける分析方法を詳しく知りたい方は、こちらの記事もぜひ参考にしてみてください。
関連記事:「【具体例付き】Webマーケティングの分析手法9選|進め方も解説」
アクセス解析の結果をより正確にとらえたい場合は、Googleアナリティクスのユーザーエクスプローラーを利用しましょう。ユーザーごとに付与される固有IDを識別し「誰が、いつ、どのページにアクセスしたか」を特定できるようになります。
ユーザーエクスプローラーでは、次のような合間を置いたアクセスも1人のユーザーとして計測可能です。
セッションやUUだけでは途切れ途切れになってしまうユーザーの行動も、線としてとらえられるようになります。ただしユーザーエクスプローラーは、GDPR(一般データ保護規則)に抵触する機能です。EU圏内でサービスを行う場合は、事前の許可が必要なため注意しましょう。
アクセス解析で分かることは大きく分けるとユーザーの全体像や利用状況、流入経路の3つです。これらのデータから、現状の課題や改善策のヒントを得られます。
より正確なアクセス解析結果を得たい場合は、計測前の環境整備や目標設定が大切です。外的要因の把握やユーザーエクスプローラーの利用も、計測結果に対する理解を深めてくれます。
Webサイトの成果を最大限引き出したい方は、アクセス解析と分析の精度を高めていきましょう。