基本ノウハウ
マーケティングではフレームワークを活用すると、効率的に顧客情報や購買行動を整理できます。それはWebマーケティングにおいても同様です。しかし、「具体的にどのような進め方をすれば良いか分からない」「どのフレームワークが役立つのか」などの疑問がある方も多いでしょう。
本記事ではWebマーケティング分析の進め方や、具体的な手法を解説します。Web広告やWebサイトの分析例も、あわせて紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。
まずはWebマーケティング分析の進め方を、5つのステップに分けて解説します。
そもそもWebマーケティングとは何か、基礎知識や流れについて詳しく知りたい方はこちらの記事もあわせてチェックしてみてください。
関連記事:「Webマーケティングとは?進め方のコツから役立つ本・資格まで徹底解説【未経験・初心者マーケター必見】」
Webマーケティング分析を始める前に、KGIやKPIといった目標を明確にしましょう。目標があいまいだと着目すべき情報が見極められず、効果測定や分析が誤った方向に進みかねません。
KGIは大抵の場合、事業の最終到達点として売上目標を設定します。またKPIは、KGIを達成するために必要な要素として定めるものです。
KPIは施策や進み具合によって異なりますが、主に次のようなものが設定されます。
ただし施策のスタート時点からCVをKPIにすると、なかなか成果が目に見えず途中で諦めてしまいやすいでしょう。そのためWebマーケティングを始めて間もない頃は、PV数や訪問数を中心に分析することをおすすめします。
KGI・KPIの設定について詳しく知りたい方は、こちらの記事もぜひ参考にしてみてください。
関連記事:「KGIとKPIの違いは?設定方法や目標達成のポイントも解説」
Webマーケティング分析を効率的に進めるためには、次のようなツールの活用が必須です。
ツールを活用すれば情報の見える化はもちろん、各部門が持つデータの一元管理もできます。多様な情報が集まる分、より精度の高い分析も可能です。Webマーケティングに役立つツールについて詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてチェックしてみてください。
関連記事:「【2023最新】SEOツールおすすめ14選!無料ツールからBtoB企業向けツールをご紹介」
関連記事:「MAとSFA/CRMの違いとは?各ツールの役割と活用場面を解説」
次に先ほど挙げたツールを使って、分析に使う情報を集めましょう。また次のような方法も、顧客の声や最新トレンドなどを調べる上で有効です。
社内情報は関連する従業員に直接聞くと、デスクリサーチだけでは得られないリアルな情報を聞ける可能性があります。自社のWebマーケティングにおける強みや課題などを再発見する機会にもなるため、労を惜しまず足を運んでみてください。
ここで実際にフレームワークを活用しながら、情報を整理します。複数の手法を組み合わせると、より多面的で精度の高いWebマーケティング分析が可能です。具体的な分析方法は、次項の「2.Webマーケティングの分析手法9選」を参考にしてみてください。
なお分析機会は競合や市場の変化を逃さないためにも、定期的に設けると良いでしょう。またWebマーケティングは、施策ごとに効果が出るまでの期間が異なります。そのため分析スパンは、施策によって変えることも大切です。
分析結果をもとに、実現可能性の高い改善策を検討・実行します。ただし施策の方向性や内容を一気に変えるものだと、リスクが大きくなりがちです。着実に成果を上げるためにもスモールスタート、かつPDCAを回しながら少しずつ改善しましょう。
なお新しい施策を実行した前後の変化は、ツールのレポーティング機能などを活用して記録に残すことをおすすめします。事実ベースで他部門や上長と話ができるため、より建設的な議論が可能になるためです。また記録を見比べることで、経時的な変化にも気づきやすくなるでしょう。
ここでは戦略立案の流れに沿って、Webマーケティング分析に役立つフレームワークを9つ解説します。
なおBtoB企業が押さえておきたい分析手法について知りたい方は、こちらの資料もあわせてチェックしてみてください。
関連記事:「【現役BtoBマーケターが厳選!】現場で本当に役立つフレームワーク10選を無料ダウンロード」
PEST分析とは、自社への影響が間接的なマクロ環境を分析するフレームワークです。分析項目は、次の4つになります。
例えばWeb広告のPEST分析をすると、下表の通りです。
分析項目 | 分析の例 | |
---|---|---|
政治(Politics) | プライバシー保護を重視する動き | GDPR(一般データ保護規則)違反によりフランスがGoogleに対し約62億円の罰金命令※1 |
経済(Econommy) | 広告費の伸びが右肩上がり | 2022年のWeb広告費は3兆円越えと、全マスメディアの広告費の中でトップ※2 |
社会(Society) | 検索はブラウザからSNSへ | 若年層を中心にTwitterやYouTubeなどから情報収集する人が増えている |
技術(Technology) | 5Gエリアの拡大 | 通信速度が格段に上がり、動画を使ったWeb広告の追い風になっている |
※1出典:ITmediaNEWS|Google、フランス当局からGDPR違反で5000万ユーロの罰金
※2出典:株式会社電通|2022年日本の広告費
上記のような内容は自社への影響が直近では少ないとはいえ、将来的には大きな影響を与える可能性があります。特にWebマーケティングはトレンドが変化しやすいため、先を見越した戦略立案のためにもPEST分析は必ず実施しておきましょう。
5F分析とは、自社の脅威となりうる影響が直接的なミクロ環境を分析するフレームワークになります。分析項目と内容の例は、下表の通りです。
分析項目 | 分析内容 | 分析内容の例 |
---|---|---|
競合の脅威 | 自社の売上に影響する可能性がある競合の強さ | ・シェア率 ・ブランド性 ・資本力 など |
代替品の脅威 | 自社製品・サービスに取って代わる可能性がある他社製品・サービス | ・競合の類似製品/サービス ・他業界の類似製品/サービス など |
新規参入の脅威 | 自社の売上に影響する可能性がある新規参入者の有無や程度 | ・新規参入の可能性がある企業 ・参入衝撃の高さ など |
買い手の脅威 | 買い手(顧客)が持つ交渉力の強さ | ・買い手が有利となる状態の有無 (情報量、関係性など) |
売り手の脅威 | 売り手(原材料などの仕入れ先)が持つ交渉力の強さ | ・売り手が有利となる状態の有無 (仕入れコスト、取引先の数など) |
5F分析は顕在化している情報だけでなく、潜在的なものも網羅的に調査・分析するとより効果的な戦略立案に役立ちます。どちらかというとマーケティング全体の分析に近い内容ですが、Web施策を考える上でも把握しておくと方向性のブレが少なくなるでしょう。
VRIO分析とは、経済資源などの内部環境を分析するフレームワークです。分析項目は、次の4つになります。
VRIO分析は事業工程を細分化し情報を整理する、バリューチェーン分析の中で実行されるケースも少なくありません。
VRIO分析も5F分析と同様に、マーケティング全体の戦略とWeb施策の方向性を合致させる上で把握しておきたいところです。分析方法や流れについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もぜひ参考にしてみてください。
関連記事:「バリューチェーン分析とは?メリットや分析のやり方を解説」
ファネル分析とは、見込み顧客の行動や人数を分析するフレームワークです。分析項目は、次の4つになります。
また購入後の行動も踏まえたダブルファネルで分析する際は、上記に次の3つが加わります。
Webマーケティングにおけるファネル分析は、主にCVを妨げている原因について仮説検証をする際に役立ちます。例えば認知の段階に原因があると仮定した場合、Web広告の出稿やSNS運用の強化といった改善策を検討できるでしょう。
ファネルの種類やBtoBでの活用方法について詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてチェックしてみてください。
関連記事:「ファネルとは?BtoBマーケティングでの活用方法を解説」
RFM分析とは、顧客の購買行動を分析するフレームワークです。分析項目は、次の3つになります。
最近購入しており回数が多く、金額も大きい方は優良顧客と判断でき、アプローチを強化するとより多くの売上を生み出してくれるでしょう。逆に成果につながりにくい顧客へのWebマーケティング施策を減らすことで、コスト削減も可能になります。
なおRFM分析は、売上分析の1つです。他の手法についても知りたい方はこちらの記事もぜひ参考にしてみてください。
関連記事:「売上分析7つの手法・フレームワークから簡単エクセルでの分析方法まで紹介!」
3C分析とは、自社や自社を取り巻く環境を分析するフレームワークです。分析項目は、次の3つになります。
Webマーケティングにおいて3C分析が役立つ場面は、特にターゲットの選定です。例えば競合がカバーしていない顧客層が見つかれば、優位性が高い新たなWeb施策を検討できます。また顧客の属性や行動から、ウェビナーやSNSなど接点を持ちやすいところはどこか見極めることも可能です。
3C分析のやり方や進める際のコツを知りたい方は、こちらの記事もあわせてチェックしてみてください。
関連記事:「【具体例付き】3C分析とは?目的・やり方を分かりやすく解説」
SWOT分析とは他の分析手法で集めた情報をもとに、内部環境・外部環境を整理するフレームワークです。分析項目は、次の4つになります。
上記のうち、最も取り組みやすいのは強みを生かす戦略です。しかし長期的に安定した売上を上げるためには、弱みを強みに変える施策も必要になってきます。その際役立つのが、クロスSWOT分析です。
各要素を掛け合わせて分析することで、リスクを最小限にしつつ攻めと守り両方の戦略を立てられます。SWOT分析のやり方や効果的に実施するためのポイントについて知りたい方は、こちらの記事もあわせてチェックしてみてください。
関連記事:「SWOT分析のやり方とは?効果的に実施するためのポイントや事例を紹介」
STP分析とは戦略を立案するにあたり、自社の立ち位置やターゲットを明確化するフレームワークです。分析項目は、次の3つになります。
STP分析はその性質上、マーケティング全体の戦略立案はもちろん、3C分析と同様にWeb施策のターゲット選定にも役立ちます。STP分析の進め方や注意点について詳しく知りたい方は、こちらの記事もぜひ参考にしてみてください。
関連記事:「【具体例付き】BtoBのSTP分析とは?やり方や注意点を徹底解説」
4P分析とはSTP分析で立案した戦略をもとに、具体的な施策を検討する際に役立つフレームワークです。分析項目は、次の4つになります。
特にWebマーケティングが関わってくるのが、販促や広告です。自社製品・サービスの強みや顧客層など、他の分析手法で明らかになった情報をもとに施策を検討します。
なお4P分析は売り手視点が中心となっているため、顧客の心に刺さるWebマーケティングを展開するためには4Cという買い手視点も大切になってきます。4P分析の進め方や4Cとの違いについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてチェックしてみてください。
関連記事:「【マーケター必見】マーケティングの王道「4P分析」!事例や使い方を解説」
最後にWebマーケティングの分析例を2つ解説します。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
KPIの例 | ・CTR ・CVR ・CPM ・CPC ・CPA など |
分析に役立つツール | ・Googleアナリティクス ・Googleサーチコンソール ・Googleキーワードプランナー など |
例えばWeb広告のCTRがなかなか上がらない場合です。ツールから得られた情報や3C分析などから、そもそもWeb広告がターゲットに届いていなかった、あるいは訴求ポイントがズレていたとしましょう。この場合次のような改善策が考えられます。
広告は他のものに比べると、即効性があるWebマーケティング施策です。その分、分析を進める体制を出稿前に整えておくことが大切になります。
KPIの例 | ・PV数 ・UU数 ・訪問数 ・滞在時間 ・CVR など |
分析に役立つツール | ・Googleアナリティクス ・ヒートマップ など |
例えばCVRがなかなか上がらない場合です。ファネル分析などから、見込み顧客が興味・関心から比較・検討段階へ上がらず離脱するケースが多かったとしましょう。またSWOT分析などから、競合他社にはない独自のノウハウが強みであった場合、次のような改善策が考えられます。
WebサイトはWeb広告よりも効果が出るまでに時間がかかる分、中長期的な視点での分析と改善策の実行が必要です。また確実にCVRを上げるためにも、LPOやEFOの見直しも同時に進めたいところといえます。LPOやEFOについて詳しく知りたい方は、下記の記事もぜひ参考にしてみてください。
関連記事:「【具体例付き】LPOとは?基本的な流れや便利ツール、対策まで解説」
関連記事:「EFOとは?BtoB企業での必要性や対策の例を解説|役立つツールも」
Webマーケティング分析は、目標を明確にした上でツールの選定や情報収集を進めることが必要になります。Web施策によって効果測定すべきタイミングは異なりますが、いずれも変化を見逃さないよう定期的に行いたいところです。
また分析内容の整理には、3C分析をはじめとしたフレームワークが役立ちます。アプローチすべきターゲットや自社製品・サービスの強みなどが分かり、より効果的なWeb施策の展開が可能です。
分析と改善策の実行を繰り返しながら、Webマーケティングの成果を上げていきましょう。