基本ノウハウ
マーケティング分野で頻出の指標であるKGIとKPI。「なんとなく聞いたことがあるけれど、違いがはっきり分からない」というマーケティング担当者もいらっしゃるのではないでしょうか。
どちらもマーケティングで効率的に成果を出すためには押さえておきたい指標です。「これまでのように成果を上げられていない」と悩む担当者はこの記事でKGIとKPIの違いを理解し、実際に活用するための基礎知識を学びましょう。
KGIとKPIの違いは、「KGIが最終目標であるのに対し、KPIはKGIを達成するための中間目標である」という点です。
そもそもKGI(Key Goal Indicator)とは企業やチーム、個人の活動における最終的な目標(ゴール)を定量的に示した指標です。一方、KPI(Key Performance Indicators)は、KGIを達成するためのプロセスを定量的に評価する指標です。「KGI=最終目標」「KPI=中間目標」と言えます。
KGIとKPIの関係を図式化したものです。図のように「KGI(最終目標)の下にいくつものKPI(中間目標)が設定され、KPI達成の先にKGI達成がある」という構図になります。KGIとKPIの関係について、具体例を見てみましょう。
【KGI】
売上10%増・業界シェア2%拡大
【KPI】
・受注件数10%増
・受注率10%増
・商談数15%増
・リード(見込み客)数 15%増
・セッション数 20%増
上記の例では、売上10%増・業界シェア2%拡大というKGIを達成するために、中間目標として受注件数や商談数、セッション数などを上げるというKPIを設定しています。このときKGIとKPIは、定量的に評価ができるように数値化できるものにすることがポイントです。なお、KGI及びKPIは企業単位だけでなく、部署やチーム、個人における特定の活動にも適用できます。
KGIとKPIを設定するにあたり、それぞれの目的を明確にすることが大切です。KGI・KPIの設定はあくまで目的を達成するための手段にすぎません。しかし、目的を明確化しておかないと、手段であるKGIとKPIの設定自体が目的化されてしまう恐れがあります。ここでは下記2つの目的を解説します。
「月間売上100万円」をKGIに設定すれば、KPIを「アポイント件数20件」や「訪問件数50件」など具体的に設定することができ、ゴールへのステップ及びやるべきことが明確になります。
一方、KGIを設定しなければ、そもそも目指すべきゴールが分からず、最適な施策を打つことができません。またKGIを設定したとしてもKPIを設定しなければ、効果的な施策を打てず、最終目標達成までに多くの時間がかかってしまいます。
KGI・KPIは定量的な数値で設定するため、どこにどのような改善点があるのかを明確に分析し、改善策を講じることができるようになります。
例えば、BtoBマーケティングにおいて「月間売上3,000万円」をKGI、「Webサイトアクセス数月20万件」「資料ダウンロード数月500件」をKPIに設定したとしましょう。このうち、資料ダウンロード数は達成できたものの、アクセス数が未達に終わった場合、「広告を打つなどアクセス数を増やす対策をすることで、資料ダウンロード数をさらに増加させ、KGIを達成する」という施策を講じることも考えられます。
適切なKGIとKPIを設定するためには適切な設定方法を押さえる必要があります。ここではKGI・KPIを設定する際の、下記の3ステップについて解説します。
【1】KGIを設定する
【2】KPIの項目を設定する
【3】KPIの数値を設定する
企業全体あるいは部署・チームなどの最終目標=KGIを設定します。このときに「業界内で存在感を高める」「顧客満足を向上させる」など、抽象的なKGIではなく、定量的なKGIを設定することが重要です。
<KGIの例(企業全体の場合)>
・売上高5%増
・営業利益10%増
・市場シェア5%増
また、KGIはある程度の「実現性」を持つものとし、いつまでに達成するのか「期限」も設けるようにしましょう。
KGIを達成するための中間目標であるKPIの項目を設定しましょう。ポイントは、モレなく、ダブりなくKGIの下にKPIをぶら下げるように設定をすることです。
例えば、「売上を前期比150%増加」というKGIに対し、「継続率を2%改善する」「アポイント率を10%向上」などのKPIがあります。KPIを細かく落とし込むことで、現場は具体的にすべきことを把握しやすくなるでしょう。
また「生涯顧客価値を上げる」や「新規顧客を増やす」という「KSF(Key Success Factor)」も記載されています。KSFはKGI達成のために何が必要なのかを示す成功要因です。一方、KPIはKSFで導き出した指標を実現するために立てる「継続率を2%改善する」「アポイント率を10%向上」などの具体的な指標になります。
KPIの具体的な数値を設定しましょう。KPIもKGIの設定時と同様にいつまでに達成するのか、期限を設けるようにします。KPIの数値を設定する際は、KGIから逆算して数字を設定することが重要です。
例えば、KGIを「売上高10%アップ」に設定した場合、「売上高=(新規顧客数+既存顧客数)×受注単価(客単価)」のように分解し、どれくらいの数字であればKGIを達成できるのか、それぞれの数値を計算して、現実的な数字を設定するようにします。KGIを分解した上でKPIの数値に落とし込んでいくことで、現場も具体的な目標を持ちやすくなります。
KGI・KPIを設定及び達成するためのポイント・注意点を4つ解説します。
・具体的な数値を設定する
・KPIに紐づくアクションも設定する
・特定のKPIに固執しない
・状況を見える化する
KGIもKPIも達成するために設定するものです。上記ポイントを踏まえて、達成確率を上げつつ、より適切なKGI・KPIを設けられるようにしましょう。
繰り返しになりますが、KGIとKPIは「具体的な数値」を設定するようにします。具体的な数値でなければ、正確な進捗率の共有や施策の効果検証などが上手くいかない可能性があります。
「年間売上3,000万円」「提案数月10件」など数値で目標を設定すれば、進捗率を数値で示すことができ、人によって認識がズレることはありません。また、どの数値が足りないのかも一目瞭然のため、適切な改善策を講じることができます。
KPIは設定するだけで終わらせず、KPIを達成するために取るべきアクションも併せて設定しましょう。
例えば、「提案数月10件」や「受注率5%アップ」をKPIに定めた場合、提案数や受注率を上げるためのアクションとして、「提案資料を1日1つ作成する」や「テレアポ1日10件する」などを設定します。KPIに紐づくアクションの積み重ねがKPIの達成、さらにKGI達成へとつながっていくのです。
KPIに紐付く具体的かつ現実的なアクションを設定すると、現場もやるべきことが整理できるほか、施策が上手くいかなかったときにどのアクションを改善すべきか効果検証できるようになります。
数あるKPIの中から特定のKPIだけに固執するのはやめましょう。かえって悪い結果が出てしまうリスクがあります。例えば、新規顧客への「提案」というKPIに固執するあまり、既存客のフォローが疎かになり、結果としてKGIである「売上げアップ」から遠ざかってしまうケースも考えられます。
KGIは複数のKPIを達成してこそ、実現できるゴールです。特定のKPIだけを追い求めるのではなく、俯瞰的に考え行動することが大切です。
数値化したKPIは見える化して、常にモニタリングできる状況が望ましいです。見える化をすれば、案件の進捗率やKPIの達成率などを確認しつつ、スピーディーに施策の変更や改善ができるからです。
見える化する方法はSFAやMAなどを使うと効率的です。ツールを使えば、案件別の進捗率をメンバー間で簡単に共有できます。なお、ツールの導入がすぐには難しければ、ホワイトボードに適宜進捗率・達成率を書いてメンバーへ共有する方法もあります。
KGIとKPIの設定はBtoBマーケティングに以下のような影響をもたらします。
受注額のみを目標に設定しても、特別に価格が高く意思決定に時間がかかるBtoB製品の場合、初回接触から受注までに長い時間がかかるため、進捗の可視化が難しく、マーケティングや営業の管理者が有効な手立てを検討できないことがあります。
そこでKGIを受注額に設定し、中間目標(KPI)としてアポ数やリード獲得数などを設定することで進捗が可視化され、必要なマーケティング施策や営業の行動指針をデータに基づいて判断できるようになるのです。また、PDCAサイクルも回しやすくなり、随時軌道修正もできます。このようにKGIとKPIの設定は、より効果的なBtoBマーケティングを実施するのに必要不可欠と言えます。
KGIとKPIの違いは「KGI=最終目標、KPI=中間目標」でした。KPIの達成がひいてはKGIの達成につながります。KGI・KPIともに効率的かつ効果的なBtoBマーケティングを行うのに有効な指標です。KGIとKPIの違いを理解して適宜ツールも活用しながら、これまでより一歩進んだマーケティングを講じてみてはいかがでしょうか。