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ウェビナーのターゲット設定とテーマ選定~「誰に、何を伝えれば良いの?」に答えます

ウェビナーのターゲット設定とテーマ選定~「誰に、何を伝えれば良いの?」に答えます

(前回までのあらすじ)会社から突然ウェビナーマーケティング担当を任された宇恵比奈(ウエ ヒナ)さん。先生からウェビナーのメリット・デメリットや、リード獲得・育成、商談獲得など、マーケティングプロセスのどの部分にも活用できるかを学び、まずは1年間、PDCAを回しながらウェビナーマーケティングに取り組むことにしました。
ウェビナーの目的と意義~「なぜウェビナーなのか?」に答えます

実際にウェビナーに取り組むとなると、どんなテーマのウェビナーが、どのくらい必要なのかを見積もらなければなりません。そこで、今回は「ウェビナーテーマの洗い出しと施策全体の設計」について先生に尋ねることにしました。

登場人物

宇恵比奈(ウエ ヒナ):プロジェクトマネジメントSaaSを提供する会社のマーケティング部所属
先生:10年以上、さまざまな業界の営業、マーケティングなど多分野で動画活用プロジェクトを支援。動画活用に関する執筆やワークショップを開催している  

目次

ウェビナーのテーマをざっくり洗い出す

ウエヒナ:先生、ウェビナーが見込み客獲得・育成にも、商談獲得にも活用できるということは分かったんですが、具体的にどんなテーマのウェビナーをつくって、どんな順番で開催していけば良いんでしょうか?

先生:いきなり具体的なウェビナーの企画から入らないのはとても大事ですよ。
よくある失敗例として、自社製品をデモなどを交えて紹介するウェビナーを企画して、ひたすらそれだけを開催し続けるというものがあります。
でも、それだと自社製品にある程度興味関心を持っている人しか参加してくれないですよね?

ウエヒナ:おっしゃる通りです。その場合は顕在層にしか参加してもらえないですね。

先生:ハウスリストの質や量にもよりますが、顕在層しか興味を持たないウェビナーでは、いくら開催しても申込者が増えず、1~2回開催して「申込者が少ないからウェビナーはダメだ!」と、失敗の烙印を早々に押されてしまいがちです。

ウエヒナ:少ない顕在層に対していくら顕在層向けのウェビナーを開催しても、展示会や広告などでハウスリストの件数を増やしていかないと、早々にハウスリストからの申込者は枯渇しそうです。

先生:素晴らしい視点です。ウェビナーに取り組むのであれば、顕在層だけでなく、準顕在層、潜在層向けの内容も企画したラインアップをそろえた方が良いことに気づけましたね。それを実行しやすくするのが、「階段設計のフレームワーク」です。

「階段設計のフレームワーク」で見込み客の興味段階に応じたウェビナー企画を洗い出す

ウェビナーの階段設計(株式会社Bizibl)|BeMARKE(ビーマーケ)"

先生:このフレームワークでは、見込み客の興味段階を3つに分けています。自社製品のことを知っていて他社と比較するなど、具体的に検討段階に入りつつある見込み客には、「30分で徹底解説!〇〇デモウェビナー」といったテーマや、自社製品で成功している顧客の「事例紹介ウェビナー」などが有効です。それが「検討促進」段階にあたります。

ウエヒナ:これはまさに顕在層向けの、商談獲得目的のウェビナーですね。でもこの段階にたどり着いている見込み客の母数は多くなく、申込者数も少なくなると……

先生:その通りです。そこで検討促進より前段階の「興味醸成」と「認知獲得」段階でのウェビナー企画が重要になってきます。
認知獲得段階が最も母数と申込者数が多くなりやすいですが、商談・トライアルまでの距離が遠いです。テーマとしては、自社製品が属する領域のトレンドや今後の展望といった、「より広くて大きい」テーマが適しています。ウエヒナさんの会社の製品(プロジェクト管理SaaS)だと、どんなテーマが考えられそうですか?

ウエヒナ:うちの会社ですと「アジャイルとウォーターフォールのハイブリッド開発スタイル」とか「AIを活用したプロジェクト管理の動向」などでしょうか?

先生:とても分かりやすそうで、関心を集めそうなテーマですね。今の例のように、「まだその製品に興味はないものの、製品が属する領域のテーマには興味がある」、そんな人たちが認知獲得段階には多く存在します。
興味醸成段階はそこから一歩進んで、見込み客の課題解決の一手段として、自社製品を位置づけられるようなテーマで開催します。

ウエヒナさんの会社の製品であれば、「自律的なプロジェクトチームをつくるための賢いツール活用術」のような感じで、理想の業務の進め方を実現したり、課題を解決したりするノウハウを伝えつつ、そのノウハウを「より良く、早く、品質高く、やりやすくする」手段として、自社製品の機能面や非機能面の特徴をアピールするのがポイントです。

階段設計の企画の方向性(株式会社Bizibl)|BeMARKE(ビーマーケ)"

ウエヒナ:なるほど! それですと自社製品の営業色は抑えつつ、役に立つ情報を提供してくれる会社だな、と認知してもらえそうですね。うちの会社の製品はリードタイムが短い方ではないため、役に立つ情報を提供することで、見込み客との関係を構築・維持するのにも良さそうです。
それに、製品紹介ウェビナーは、話す内容が大きく変わることはないでしょうから、興味醸成や認知段階に企画リソースを割いた方が良いように思えました。

先生:ウエヒナさん、するどいです!

認知獲得、興味醸成段階のウェビナーを企画する(株式会社Bizibl)|BeMARKE(ビーマーケ)"

ウェビナーのラインアップは見込み客の「望ましい状態」の定義から逆算する

ウエヒナ:階段設計で整理すると、見込み客獲得、育成、商談獲得のどの段階でも通用するウェビナーが企画しやすくなるのが分かりました。そのうえで、必要十分なラインアップをそろえるにはどうしたら良いですか?

先生:それにはまず、自社製品を使用した顧客が「どのように業務ができていれば成功か?」という理想の状態を定義することから始めましょう。
それができたら、理想の状態を構成する、見込み客の知識や技術、社内体制などを要素分解します。そこから、それぞれの要素に必要なインプットを洗い出す。このインプットがウェビナーにあたります。このように、理想の状態から逆算して要素分解していくと、過不足のないラインアップを洗い出せます。

実際にウエヒナさんの会社のプロジェクト管理SaaSを例に考えてみましょう。まず、顧客がどのように業務をできていれば成功といえますか?

ウエヒナ:プロジェクトメンバーが誰も病むことなく、納期通りに求められた品質の成果物を納品できていれば成功ですね。

先生:では、そうした成功の定義を実現するための要素には、どういったものがありますか?

ウエヒナ:コストやスケジュール管理などのプロジェクトマネジメントの基本的な考え方や、顧客からの突然の要望や想定外の出来事が起きたときの対応方法、あとはチームマネジメントや振り返りのファシリテーションの技法など、いろいろありますね。

先生:それらの要素は一つのウェビナーで完結するものもあれば、複数のウェビナーで対応するものがあると思います。また、自社でノウハウを持っているものもあれば、ないものもあるでしょう。ない場合は、そのノウハウを持っている他社と共催したり、ゲストとして招いて登壇していただくという手もあります。

ウエヒナ:なんだか学校のカリキュラムみたいですね。

先生:それはいい例えです。実際、見込み客は「孤独な独学者」として捉えることができます。その独学を支援する教材としてウェビナーを提供することは、まさにカリキュラムを考案する行為に等しいですね。

ウェビナーを認知獲得→興味醸成→検討促進の順番で開催する

ウエヒナ:カリキュラムというメタファー(例え)でだいぶイメージをつかめたのですが、あとはそれをどのような順番で実施すれば良いでしょうか。

先生順番の決め方は大きく二つです。一つ目は階段設計の「認知獲得→興味醸成→検討促進」の順番。もう一つは、成功の定義から逆算したときの、見込み客の望ましい知識やスキルを習得する順番です。
後者については難しくありませんから、ここでは前者の理由を説明しておきましょう。「認知獲得→興味醸成→検討促進」の順番で開催するのは、単純に申込者数を最大化するためです。

ウエヒナ:検討促進段階の申込者数は最も少なくなるから、そこに参加するには、自社製品への興味や、製品の商材領域のノウハウに関心を持っている必要があるということですね。見込み客をそうした状態にするには、認知獲得→興味醸成→検討促進の順で開催するのが理にかなっています。

先生:その通り。また、この順番であらかじめスケジュールを決めて開催カレンダーを組んでおけば、認知獲得段階でウェビナーを開催した際に、興味醸成段階のウェビナーの予告をできますよね?

ウェビナーを認知獲得→興味醸成→検討促進順に開催する(株式会社Bizibl)|BeMARKE(ビーマーケ)"

ウエヒナ:そうか! ウェビナー開催中に次の階段のウェビナーを案内することで、ハウスリスト以外の集客チャネルになって、申込者数を増やせるということですね。

先生:ツールによってそれをシームレスに行えるものもありますし、チャット機能を使えばウェビナーのURLを案内できますしね。

ウェビナーから次のウェビナーを告知する(株式会社Bizibl)|BeMARKE(ビーマーケ)"

ウエヒナ:必要なウェビナーのラインアップと順番の全体像が見えてきました!

先生:ここまで整理できれば、ウェビナーを単発の施策ではなく、一貫したマーケティング戦略の一部として組み立てることができます。これで、どのタイミングでどんなウェビナーを実施すれば良いか、迷わずに進められますね。

ウエヒナ:はい! なんだかウェビナーが一本の流れとしてつながっている感じがしてきました。次は、具体的にどんな形式のウェビナーを行うべきかを考えたいです。(次回に続く)

今回の記事のまとめ

  1. ウェビナーは単独施策ではなく、見込み客の興味段階に応じたラインアップが重要
  2. 理想の顧客像から逆算し、必要な知識やスキルを洗い出してテーマを設計する
  3. ウェビナーの順番を設計し、参加者を次のステップへ誘導する仕組みをつくる

事前に開催カレンダーを決め、ウェビナー内で次のステップのウェビナーを案内することで参加者を誘導する。

次回予告

ウェビナーのラインアップと順番が見えてきたら、次に考えるべきは『どんな形式のウェビナーを実施するか』です。
講義形式? パネルディスカッション? それとも対談形式? ウェビナーの目的やターゲットに応じた最適なフォーマットを選ぶポイントについて、ウエヒナさんが先生と一緒に考えていきます。次回もお楽しみに。

【収録予定内容】
・どんな形式のウェビナーを行いますか?

>>>第3章 ウェビナーの形式とツールの選び方~「どういう形で開催すれば良いの?」に答えます

BeMARKE編集部より

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この記事を書いた人

前田 考歩
前田 考歩 | 株式会社Bizibl Technologies カスタマーサクセス

2006年よりIT、製造、教育、医療、行政、エンタメなどさまざまなテーマのプロジェクトマネジメント支援業務に従事。2014年からは動画を活用した営業、マーケティング、広報プロジェクトなどを支援。著書に『予定通り進まないプロジェクトの進め方』(宣伝会議)、『紙1枚に書くだけでうまくいく プロジェクト進行の技術が身につく本』『動画で「売れる仕組み」をつくる 認知・集客・見込客育成・販売・サポートがまるごとできるマーケティング戦略』(翔泳社)

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