インタビュー

セールスフォース×キーエンス出身者が語る「成果を出す営業組織」-仕組みと作り方-【前編】

セールスフォース×キーエンス出身者が語る「成果を出す営業組織」-仕組みと作り方-【前編】

日本の法人営業の生産性はなぜ低いのか――。2021年2月にマッキンゼー&カンパニーが発表したレポート*によると、日本企業の営業一人あたりの売上高が低い大きな要因として、営業一人ひとりの役割が明確化されていない、受注後の顧客対応に営業が大きく関わる必要があるなどを挙げている。こうした課題は長年指摘されてきていたものの、さまざまな理由から解決への糸口をつかみきれない企業が多く存在する。

なぜ、このような状況が起きているのか。また、一方で営業生産性の高い企業はどのような営業組織をつくり実践しているのか。セールスフォースとキーエンスという「成果を出す営業組織」の出身者による対談からヒントを見出したい。
【聞き手:BeMARKE事業責任者・山下航希、取材・執筆:BeMARKE編集部、撮影:細野瑠衣】

プロフィール

山下貴宏(やました・たかひろ)
株式会社R-Square & Company 代表取締役CEO
 法政大学卒業後、日本ヒューレット・パッカードにて法人営業、船井総合研究所を経てマーサージャパンに入社。人事制度設計、組織人材開発のコンサルティングに従事。その後セールスフォース・ドットコム入社。セールス・イネーブルメント本部長としてイネーブルメント部門の規模を4倍に拡張、グローバルトップの営業生産性を実現。2019年同社を退社しセールス・イネーブルメントに特化したスタートアップR-Square & Companyを立ち上げ。大手から中堅企業まで数々の企業のイネーブルメント組織構築に尽力。ATD Sales Enablement Certificationを取得、イネーブルメント分野の日本での第一人者として講演実績も多数。著書に「セールス・イネーブルメント 世界最先端の営業組織の作り方」(かんき出版)、「トップセールスだけに頼らない組織を作る 実践セールス・イネーブルメント ―データを活用した必勝パターンの設計から、育成施策・ナレッジ活用、効果検証まで―」(翔泳社)
R-Square & Company:https://www.r2-company.com/

田尻望(たじり・のぞむ)
株式会社カクシン 代表取締役CEO
 京都市生まれ。2008年大阪大学卒業後、株式会社キーエンスにてコンサルティングエンジニアとして、重要顧客を担当。大手システム会社の業務システム構築支援をはじめ、年30社に及ぶシステム制作サポートを手掛けた経験が「最小の人とコストで最大の付加価値を創出する」ミッション、世界一のイノベーションを生むコンサルティングセールス、ファクトベースでの高収益コンサルティングの基礎となっている。その後独立、年商10億円~2,000億円規模の企業の経営戦略コンサルティングを行い、2.5か月で月1億円、年10億円超の利益改善などを達成する企業を次々と輩出している。2021年に書籍「構造が成果を創る~価値を構築するストラクチャリング思考と手法~」(中央経済社)を出版。2022年発刊の『付加価値のつくりかた 一番大切なのに誰も教えてくれなかった仕事の本質』は8.4万部を突破。
カクシン:http://kakushin.biz

目次

画像:特別対談「セールスフォース×キーエンス出身者が語る 成果を出す営業組織-仕組みと作り方-」で語る株式会社カクシン代表取締役CEO田尻望氏(左)と 株式会社R-Square & Company代表取締役CEO山下貴宏氏(中央)
今回の対談はBeMARKEを運営する株式会社アジタスのオフィスで行われた。株式会社カクシン代表取締役CEO田尻望氏(左)と 株式会社R-Square & Company代表取締役CEO山下貴宏氏(中央)

BtoB企業の営業組織開発、人材育成についていま起きている課題とは

――さまざまな企業の経営支援、コンサルティングをされていますが、いまどのような課題や悩みの相談を受けることが多いのでしょうか?

山下貴宏氏(以下、山下氏):BtoBで全般的に多いのが一部の営業に依存してしまうのを是正して会社全体として売上が伸ばせるような仕組みを持ちたいというもの、もう1つは比較的大手企業に多い悩みとして売り方の変化、つまり営業スタイルを変えていきたいという相談が多いです。

前者はこれまでずっと言われてきたことだと思いますが、ハイパフォーマーの暗黙知を形式知化して組織としての営業力強化を図っていきたいという話です。人材流動化が激しい最近は、転職や異動が発生しても耐えうる強い組織を作っていきたいという声はますます増えています。後者については、大手企業に多いです。しっかりとした事業領域があり安定的に既存の売り上げを確保していく必要がありますが、それだけだとなかなか中長期的な成長は難しく、新しい領域、新事業、新製品に広げていきたい。一方、すぐに営業の人たちが売れるようになるかと言うとそうではないことが多いですよね。

今までやってきた売り方を「では次、これまでと全く別のアプローチでやってください」というのはなかなか難しい。そこをどの営業でもしっかりと会社の方針に沿って売れるようにしてほしいと。そこの仕組み化をイネーブルメントというアプローチでご支援するケースが非常に多いですね。

――田尻さんはいかがですか?

田尻望氏(以下、田尻氏):同じですね。僕らは「2:6:2」や「2:3:3:2」というふうに言っていますが、結局上の2割は売れるけど、下の8割はおおよそ売れない。「みんなが売れるにはどうしたら良いんだと」というところから始まって、そこに加わってやり方や仕組み化するのにどうしたら良いのかという悩みが多いですね。

山下氏:営業の活動は属人化しがち、ということ自体は昔からあったんですけど、多分ずっとそのままになってきていて、いよいよ環境変化にともなってもうなんとかしなければいけないというのが今のBtoBの営業組織が直面している状況。もう放置できないと。

――営業一人ひとりによって、実力差がありすぎて暗黙知になっているというのは、おそらく読者からすると「そんなの昔からで、とは言っても変えられない」という悩みを持っているかと思います。お二人はこの課題をどうやって解決されているんですか?

ここから先は会員限定記事となります

記事を読むには無料の会員登録が必要です。

この記事を書いた人

BeMARKE編集部
BeMARKE編集部

BeMARKE(ビーマーケ)は、BtoBマーケティングの課題解決メディアです。 BtoBマーケティングのあらゆる局面に新しい気づきを提供し、リアルで使える「ノウハウ」を発信します。

SNS:XYouTube

著者の最新記事

もっと読む >

あわせて読みたい