インタビュー
LTV(顧客生涯価値)最大化のためにも、顧客との関係構築の方法を見直したり組織改編に着手したりする企業が増えています。顧客と長期的な関係を構築できるサービスと、そのための組織体制とはどのようなものか。
今回は株式会社ゴンドラ 取締役CSO 竹田達希氏に、ゴンドラ社が提供する統合型支援と組織づくりについて詳しくお話を伺いました。
株式会社ゴンドラ 取締役CSO(Chief Strategy Officer)
ゴンドラの前身であるパイプドビッツに新卒で入社。2016年3月のゴンドラ社立ち上げのタイミングで執行役員に就任。営業・開発・制作を中心に、会社経営・採用・教育・契約関連・企画等、幅広い領域で業務を担当。2019年5月に取締役CTOに就任。2022年6月にベスト塾ガイド事業の譲渡とともにジョイントベンチャー「株式会社DeltaX」をつくり、同社の取締役を兼任(2024/8退任)。2024年からはCSOとして事業統括を行う。
ーーこれからの時代にビジネスを成長させるために必要な考え方とは何でしょうか。
出生率の低下や少子高齢化による国内市場の縮小は、今や現実的なものとなっています。このような社会状況下では、あらゆるビジネスにおいて、顧客と長期的な関係を構築することの重要性がより高まっているといえます。
当社でも、顧客にとってより良いサービスを提供するために試行錯誤を続けるなかで、6年ほど前からビジョン経営をはじめました。
現在は「ゴンドラはカスタマーエンゲージメントの第一人者を目指します」を経営ビジョンに掲げ、アクイジションからリテンションまで一気通貫で「統合型支援」を行うことを強みとしています。「統合型支援」を打ち出すきっかけとしては、2020年に事業譲受を行い、これまでの広告代理事業に加えてCRM事業までサービス領域を広げたことが挙げられます。
「統合型支援」を事業の柱とするためにも、「統合型」と「専門性」という2軸を強化することを意識し社内の組織づくりに注力してきました。
ーーゴンドラ社の組織づくりにおける課題と具体的な取り組みについて詳しく教えてください。
当初、「統合型」としてサービスの提供範囲を広げると「専門性」が低下するという課題がありました。
これでは、専門領域に特化した他社サービスに勝てない。この状況を打破するためにも、「統合型・ゼネラリスト」と「専門型・スペシャリスト」を育成し、統合型でありながら専門性の高い組織をつくることに注力しました。
全領域を俯瞰しながら顧客へ提案を行う部門と、広告・CRM・開発など各領域に特化し専門性を高める部門に分けることで、「統合型」と「専門性」の両立を目指しています。
これらを両立させるため今も試行錯誤している段階ですが、「(メンバーへの)働きかけを続ける」「啓蒙し続ける」ことが重要だと考えています。
ただこの考え方に至るまでにはトライ&エラーの時期もありましたね。
「統合型」を打ち出す前までは、広告担当者はその他の領域を担当することはなく、特に意識することもありませんでした。
「統合型」を打ち出してからはそのような状況を変えるべく、社員一人ひとりが広告からCRMと制作、システム開発まですべての領域を担当する組織体制に切り替えました。すべての領域を学び直した上で、一人で営業活動から運用まで担当するというハードな体制でしたね。
目的は、「統合型」を一人ひとりに深く理解してもらい社内に浸透させることだったのですが、ねらい通りとはいきませんでした。一人ですべてを見ることに無理があったのと、専門性が低下してしまうのが問題でした。
そこで、「統合型・ゼネラリスト」と「専門型・スペシャリスト」に分けて組織全体で「統合型」を目指す方向にシフトしていきました。
ただ、メンバーそれぞれが各領域を学び直す機会ができたことは、無駄ではなかったと思っています。例えばシステム開発担当者が広告やCRMを学んでから、またシステム開発専任に戻ったとき、提案の質がぐっと上がったんですね。マーケティングや運用を見据えたシステム開発の提案ができているのを見ると、組織改革の効果があったと感じています。
現在ではメンバーが増えてきたこともあり、適材適所で組織体制を構築しながら「統合型」と「専門性」を両立できる環境を整えています。
ーー現在の組織体制になってから、さらに「統合型」を浸透させるためにどのような働きかけをされていますか。
メンバーには、ことあるごとに「目的と背景を明確化しよう」「課題を点ではなく線でとらえよう」と伝えています。「顧客が挙げた課題だけがすべてではない、真の課題を見極めて本質的な提案を行うように」というスタンスを徹底しています。
その点では、当社の「固定のサービスを持っていない」ことが逆に強みになると考えています。固定のサービスを持っていると営業したい気持ちが先に立ち、顧客の課題解決から遠のいてしまうことがあります。“手段先行”の提案では本質を見失ってしまい、顧客と長期的な関係を構築できません。
そのため常に「カスタマーエンゲージメント」の考え方を念頭に置き行動するように、組織に浸透させています。
ーー「統合型支援」のどのような点を強みだと考えていますか。
当社の「統合型支援」の強みは、ビジネス課題を“点”でとらえず“線”でとらえて本質的な提案ができることだと考えています。
その場の課題をピンポイントで解決できたとしても、全体を見たときにゆがみが出る可能性がある。
例えば課題ごとに異なる支援会社に依頼すると、各社の認識を合わせるためのコミュニケーションコストが大きな負担となります。また、各プロジェクトを統括し全社的な整合性をとるには、プロジェクトマネージャーを配置する必要がありますが、最適な人材を確保するのは難度が高いでしょう。
「統合型支援」では、プロジェクトマネージャーの機能も請け負いながら幅広い領域を一気に支援できることが大きな特長だといえます。
15年以上前のIT系ビジネスがまだ複雑化していなかった時代は、ピンポイントの課題解決でもそれなりに成果を出せました。しかしテクノロジーが進化した現代では、ビジネス課題全体を俯瞰しながら複合的にプロジェクトを設計しなくては成果を出しづらくなっています。そのような時代だからこそ「統合型支援」の必要性が高まっているのだと思います。
例えば、SFA導入・運用の際には一部門だけではなく部門横断的に取り組む必要がありますよね。ところが自部門しか見えていないメンバーが多く、統合的な運用に苦労するというケースは多い。それでは良いソリューションを生み出せません。
そのような状況から、我々が「統合型支援」としてプロジェクトマネージャーのような立場で部門横断的に本質的な課題解決を行うことが、今求められていると考えています。
「統合型支援」を強みとする当社が最も大切にしているのが「カスタマーエンゲージメント」の考え方です。
短期的な売上増や業務効率化によるコスト削減を実現できたとしても、本質的な課題解決ができなければ、これからビジネスを成長させていくのは難しいでしょう。
本質的な課題解決によって成果を出し続けるためにも、部門横断的な取り組みや連携が欠かせません。
当社の「統合型支援」では、社内のメンバー全員が「カスタマーエンゲージメント」を念頭において行動しているため、顧客に寄り添う本質的な提案ができるのです。
これからも「カスタマーエンゲージメント」の考え方を大切にしながら、顧客1社1社に寄り添う最高のビジネスパートナーであり続けたいと思っています。
ーーありがとうございました!