インタビュー
近年、国内市場が縮小するなか、LTV(顧客生涯価値)向上に取り組む企業も多いでしょう。そのひとつの手法としてファンマーケティングに注目が集まっています。
今回は株式会社ゴンドラのCRM本部 副本部長 黒川僚一氏と営業本部 副本部長 沖田匠氏に、ファンマーケティングを成果につなげるポイントをお聞きしました。
株式会社ゴンドラ CRM本部 副本部長/CRMプランニング部長
ネットベンチャー企業で新規事業立ち上げを経験後、2020年4月より株式会社ゴンドラに入社。 約20年間、一貫して金融、消費財メーカー、小売ECなどの大手クライアント様を中心に、CRMのコンサルティングから運用支援、サイト開発・運用を行う。 顧客インサイト分析、ペルソナ/カスタマージャーニー策定、マーケティングオートメーションのプロデュース、ディレクション、運用業務までを幅広く手がける。
株式会社ゴンドラ 営業本部 副本部長
大手出版社営業~大手代理店でのプランニング業務を経て、2021年10月に株式会社ゴンドラに入社。約20年間に渡り、ブランディングやマーケティング領域におけるコミュニケーションのプランニング及び営業支援を行う。担当クライアントは自動車や化粧品を中心とした消費財メーカー、運送業、旅行業、不動産業など幅広く担当。パーチェスファネルにおける上位部分やブランディング領域におけるコミュニケーションプラニングコンサルを手掛ける。
ーーファンマーケティングが注目される理由をどのようにとらえていますか。
黒川氏:国内の人口減少と少子高齢化による市場全体の縮小という課題があります。そのような市場環境のなか、新規顧客を獲得し続けるのは難しいといえます。
そこで中長期にわたり顧客との信頼関係を築き、ロイヤルティを向上させることを重視する傾向が顕著になってきました。その手法としてファンマーケティングのニーズが高まっています。
沖田氏:ファンマーケティングは、2000年初頭にブログが出てきた頃から注目されるようになり、SNSの隆盛とともに発展してきました。テクノロジーの進化も相まって、自社商品のファンを可視化し定量的に分析できるようになったことがマーケティングを加速させました。
マスメディアの発信が主だった時代と比べて現在は、情報発信元が多様でユーザーの趣味嗜好も細分化しています。“圧倒的なヒット商品”が生まれづらい反面、ユーザー目線では、細かいニーズに即した商品やサービス、情報を得やすい状況になったといえます。
そのような状況からファンマーケティングでは、いかに熱量の高いファンコミュニティをつくり、その輪を広げていくかがカギになります。そのためにも、ファンのニーズをいち早くキャッチし応え続けていくことが重要です。
黒川氏:当社では「ファン」を次の4段階に分けています。
商品やブランドの「機能・スペック」だけでなく、「世界観に対する共感や愛着」が高いほどコアなファンであると考えています。
当社では、こうした熱量の高いファンを育成・増加させ、そのニーズを把握しプロモーションや商品開発に生かしていく取り組み全体を、ファンマーケティングと定義しています。
ーーファンマーケティングを成果につなげるポイントを教えてください。
沖田氏:まずは「現状を把握する」ことが重要だと思っています。
自社商品のファンとなる方はどのような属性でどのような市場に存在するのか。また商品を認知するきっかけや選定の理由は何か、ということを調査し把握することが欠かせません。
ファンマーケティング実施前に、いかにファンの解像度を高め、現状把握できるかがその後の成果を左右します。
例えば「商品名や存在は知っている」という“ファン以前”の状態から、「商品の良さを自発的に発信をしていく」ほどの“熱量”を持ったファンになっていただくには、“熱量”の変化をできるだけ把握しながら、最適な施策を実施する必要があります。
どれだけの熱量を持ったファンが、どのように分布しているのか把握することが大切です。
黒川氏:ファンマーケティングを成功させるには、「最初のファンづくり」が重要です。
ファンマーケティングに欠かせない、ロイヤルカスタマーやアンバサダー、エバンジェリストと呼ばれる熱量の高いファンと関係構築・維持できるかは、「最初のファンづくり」にかかっています。
「最初のファン」をつくるには、商品のブランドを立ち上げたら、まず「自社が目指すべき姿」を決めることがポイントです。「目指すべき姿」から逆算してターゲットを設定し、適切なチャネルやメッセージを選定する、といったように進めると良いでしょう。
沖田氏:「最初のファンづくり」における第一の評価ポイントは、「商品のブランド想起ができているか」どうか、ですね。
ブランド想起とは、顧客が「◯◯(イメージ)といえば△△(商品名)」と連想できている状態のことです。ブランド想起ができてはじめて、次のステップに進めるといえます。
そのため「自社が目指すべき姿」を決める際に、どのような「ブランド想起」を得たいのかを明確化することが重要です。「ブランド想起」の方向性を顧客に理解いただき浸透させることで、継続的な購買やファン化につながると思います。
沖田氏:3つ目のポイントは「顧客の声に耳を傾ける」ことです。
定量的な調査に加えて、ユーザーインタビューやSNSの投稿など定性的な調査によって、顧客のリアルな声やニーズをキャッチすることが重要です。
どのような話題やテーマが顧客に響くのかを把握することで、商品に対する興味・関心度合いをはかり、マーケティング施策やプロモーション内容の改善につなげられます。
当社の支援事例としては、顧客によるXの投稿内容からリアルな声やニーズをつかみ、プロモーションの参考にしました。それぞれの商品活用法や活用シーン、コメントや感想に注目することで、プロモーションを盛り上げさらなるファン化につなげています。
また顧客やフォロワー向けの定性的なアンケートでは、商品に対する「こうだったら良いな」という声も集めています。
黒川氏:当社の強みは、顧客情報をデータとして管理・分析できることです。
データ分析によって顧客理解を深め、課題を探っています。その上で顧客課題を解決するための最適なソリューションは何か検討を重ね、データに基づくプランニングと提案を行っています。
これができるのは、顧客の個人情報を厳重に管理できるセキュリティルームと運用体制を整備しているからです。
顧客起点のサービス提供が求められる現在のビジネス環境において、データに基づいてファンマーケティングをご支援できるのは、大きな特長といえると思います。
ーーゴンドラ社の統合型支援のメリットをどのようにとらえていますか。
黒川氏:当社は「統合型支援」として、ファンマーケティングのご支援以外にも、広告やCRM、制作や開発と複合的なサービスを展開し、顧客の多様なニーズに幅広く対応しています。
統合型支援では、営業本部が各事業領域を包括的に見ながら横串を通せるのが特長です。
例えば顧客のCRM領域をご支援する際に、追加で広告に関するご相談をいただいた場合も、当社はすぐに社内の広告チームに相談し、最適な提案ができるのです。
多くのIT企業では分業化を進めた結果、サイロ化が課題になっています。縦割り組織で部門間コミュニケーションが希薄なケースも少なくないでしょう。
対して、当社は顧客を起点とした組織横断的なサービスを提供できることが強みです。
この統合型支援体制によって、(マーケティング・ファネルにおける)アクイジションからリテンションまでワンストップでご支援できることは、顧客にとっても大きなメリットがあると考えています。
例えば広告、制作、CRMをそれぞれ異なる支援会社に依頼する場合、3社とコミュニケーションを取りながら全体の整合性を保つのは、かなりの労力がかかります。これらを1社にまとめることでコミュニケーションコストを削減できるでしょう。
ーー今後の展望を教えてください。
沖田氏:当社ではサービスやプロダクトの型を押し出すというより、“顧客ありき”で、その課題に対して一歩先から二歩先を見据えた提案を行い、新しい価値を提供していくことを強みとしています。
今後も、顧客の「ありたい姿・理想の形」に合わせて、より最適なソリューションを提供していきたいですね。例えばパーソナライズ化した商品を開発し販売していくという理想に対して、まずは既存商品のマーケティングを強化する、といったように。
顧客のサービスや製品において「ありたい姿・理想の形」を定義した上で、そこから逆算して今やることを明確化しマーケティング支援していく、ということに注力していきたいです。
黒川氏:ファンマーケティングは中長期的な視点で取り組む必要があります。そのなかでファンのあらゆるデータをストックし、効果を可視化して施策を改善し続けることが成功のカギといえます。
当社の統合型支援であれば、これを実現できます。
これからは、ファンを育成し増やすことにとどまらずに、そのファンベースを軸に商品開発までを一気通貫でご支援することを目指しています。
ーーありがとうございました!