インタビュー
BtoB広告を運用するものの、その成果を正確に分析し改善するのが難しいと感じるマーケターや広告担当者は少なくないでしょう。集客で終わらせず“真の成果”につなげるコツとは何か。
今回、株式会社ゴンドラ 執行役員 広告本部長 瀧本宏之氏に、BtoB広告を成功に導くためのポイントとゴンドラ社での広告支援事例についてお聞きしました。
株式会社ゴンドラ 執行役員 広告本部長
ウェブ広告黎明期(2000年前後)からインターネット関連ビジネスに関わり、プログラミングやWEB制作、WEBサービス立ち上げなど様々な経験を積む。特にWEB広告については、運用型広告、アフィリエイト広告、その他DSPなど運用業務を経験。主な実績としては金融系案件(銀行、保険など)が多い。
ーーBtoB広告運用を成果につなげるのが難しいといわれる理由は何でしょうか。
理由として挙げられるのは次の3つです。
1つ目の理由「直接アプローチできる媒体の限界」とは、BtoB広告の運用において法人をターゲットにした媒体は限られており、効果的なターゲティングが難しいということです。広告運用担当者には、ターゲットとなる企業の担当者や決裁者を正しくターゲティングするスキルや知識が求められるでしょう。
2つ目の理由「リードタイムが長い」とは、BtoB広告ではコンバージョンまでのリードタイムが長くなることが多く、即断即決が難しい場合が多いということです。BtoB企業では製品購買までの検討期間が長くフローが何段階にもわたるため、広告の効果を評価するのが難しいといえます。
3つ目の理由は、「リード(例:資料請求)から最終的な成果(例:法人契約)までの追跡が難しく、広告媒体や施策の評価が困難」ということが挙げられます。リードの獲得数だけを追っていると、実際の成果を見逃すことがあります。「真の成果」を追うには、オフラインのコンバージョンも含めて評価することが重要です。
ーー瀧本さんがお客様の広告運用支援を行うなかで、広告施策を成果につなげるコツは何だとお考えでしょうか。
まず、ターゲットとなる企業の担当者や決裁者を“人”ベースでターゲティングすることが重要です。BtoB企業といっても、“人”が事業を行っています。ターゲットとなる人物がどこでどのような行動をしているか、細かくイメージすることが大切です。
例えば決裁権を持つ役職者であれば、平日の日中にタクシーで移動する機会が多い可能性があります。アプローチ手法としてはタクシー広告が効果的だろう、というように、ターゲットの行動を細かくイメージし最適なタッチポイントを見つける必要があります。
またお客様の事業に対する理解を深めることも欠かせません。コンサルタントからマーケター、運用者まですべての広告運用関係者が、お客様の事業を理解しターゲットの解像度を上げることが大切です。
また対面でのコミュニケーション機会を増やすことで、細かいニーズや課題をキャッチするのも効果的です。
リスティング広告などの「刈り取り施策」だけに頼らず、中長期的な広告戦略を立てることが重要です。なぜなら、ブランド認知の有無を問わず顕在層の獲得をねらうこの手法は、競合他社も実施している確率が高く、すぐに頭打ちになるためです。
そのため刈り取り施策だけでなく、4W1H(いつ・どこで・誰に・何を・どのように)を意識し、中長期的なスパンでさまざまな広告施策を打つ必要があります。
現代人はさまざまなデバイスで多くのメディアに触れているため、「この施策だけやっていれば良い」「施策の正解」がない状態といえます。そんななか、これから広告運用を成果につなげるには「ターゲットやユーザーの意識にどれだけ入り込めるか?」という観点でターゲットを深く理解し分析することが欠かせないと思います。
リード獲得数のみを追いかけるのではなく、リード獲得後のデータを分析し、質の高いリードを見極めることが重要です。
リードの質にこだわるメリットは、リード獲得後のコストを押さえられることです。例えば年商1,000億円以上の企業向けの商材であるのに小規模事業社のリードばかり獲得しているケースがあります。それではリード獲得目標数を達成したとしても受注につながらず、追加の広告施策を実施しなくてはなりません。
リードの質を高めるためにも、お客様の事業理解を深めターゲットの解像度を向上させる必要があります。
ーーゴンドラ社では、具体的にどのような広告運用支援を行っているのでしょうか。
株式会社ゴンドラの広告運用支援事例として、「経理・請求業務支援クラウドサービス」を法人向けに提供している企業様へのご支援内容をご紹介します。
「経理・請求業務支援クラウドサービス」は、コロナ禍にテレワークが増えたことや、インボイス制度や電帳法などの法改正により、近年急速にその需要が高まっています。一方、同業他社との競争が激化しているという背景がありました。
お客様の課題は主に次の2点でした。
「経理・請求業務支援クラウドサービス」は、一度導入すると他社サービスに乗り換えるのが容易ではないという特性があります。そのため広告運用にあたっては以下の3点を重視し、戦略を考えました。
そして私たちは、運用型Web広告に加えてSNS広告や交通広告などマルチチャネルでの広告戦略を実施することにしました。
まずサービスを知っている顕在層向けには、キーワードや興味関心度合いで絞り込める運用型広告を実施しました。また潜在層向けには認知を広げるために、ディスプレイ広告やSNS広告、交通広告施策を組み合わせて実施しました。例えばタクシー広告やエレベーター広告など、決裁者にリーチできる広告手法を取り入れました。
それぞれの施策の効果を入念に分析するとともに、定期的にお客様と意見交換の場を設け、その意見をもとに改善を繰り返しターゲットの意欲醸成につながるクリエイティブを磨き上げていきました。
また広告の効果を最大化するため、リード情報と広告媒体の情報を紐付け、質の良いリードを獲得できるよう予算の配分や手法を変えるなどPDCAを回す運用を行いました。
ゴンドラ社が広告運用支援を開始してから、コンバージョン数は150%以上増加させ、CPAを最大60%まで引き下げることができました。
ーーゴンドラ社では、これまでもマルチチャネルでの広告戦略を強みとしてご支援されていたのでしょうか。
ゴンドラ社では「お客様の課題を解決するために必要な施策はすべて実施する」という考えのもと、サービスを提供しています。お客様起点のサービスを心がけているため、「このサービスに強みがある」「この領域のみサポートしている」といったようにサービスの幅を限定しないのが特長です。そのため、結果的にマルチチャネルになっているというのが正しい表現だと思いますね。
ご支援にあたっては、お客様の事業理解が最も重要だと考え、メンバーにもことあるごとに伝えています。手法にこだわるよりも、いかにお客様の事業やサービスを理解していくかが重要です。
そのためにも、お客様とお会いし対話することを大切にしています。「レポートだけ送って終わり」という関係性ではなく、オンラインも活用しながら、直接お会いできる際には施策に対する温度感を確かめるということを心がけています。
それによって自社サービスの質を向上させるきっかけを得られるのも利点ですね。お客様への提案内容にもより力が入るという効果があります。
広告運用をご支援している立場として、お客様へのヒアリングを重視しながらも、お客様の想定を超えるような効果的な提案をすることが重要だと思っています。
ターゲットへアプローチする手法は、実はお客様も気づいていない意外なやり方が効果的な場合があります。広告運用支援の立場だからこそ気付ける手法を提案することを常に意識しています。
ーー集客だけで終わらせず、お客様の“真の成果”につなげるためには何が必要だと考えますか。
ゴンドラ社では、お客様とその先にいらっしゃるユーザー様との関係性を“単なるコンバージョン”ではなく“長期的なファンづくりのスタート地点”としてとらえています。
リード獲得からユーザーのファン化・リピーター化までを一気通貫でご支援することで、お客様の利益に直結する「真のコンバージョン」を追い求めることができると考えています。
例えば、これまで効果のないと判断していた広告手法が、実はユーザーの認知向上や意欲醸成の重要な広告だったということもあるでしょう。
ただここまでの流れは「アトリビューションコンバージョン」という考え方で、広告界ではこれまでも重要視されていました。
これからの広告運用では「カスタマーエンゲージメント」の考えのもと、オフラインの成果(Cookieでは追えない、契約行為や、その後の利用実績などの成果)も含めたPDCAサイクルをまわし、広告効果を最大化することが求められるようになるでしょう。
オフラインの成果を追うには、広告とCRM(顧客関係管理ツール)を組み合わせて施策を実行する必要があります。
ただ広告とCRMを組み合わせて成果を出すには、2つのハードルが存在します。1つ目は、お客様の組織内で集客担当者とCRM担当者は別であるケースが多いことです。2つ目は、広告領域とCRM領域を合わせて支援を行う広告代理店が少ないことが挙げられます。
CRMはお客様の個人情報を扱うため、その運用ノウハウを持っているところが少ないのが実情です。そんななか、ゴンドラ社はCRM事業を数10年行っており、CRMのノウハウを持った上で広告支援も行う稀有な事業社なのです。
まだ、すべての情報をシームレスに一元管理するには改善が必要な段階です。
これからも「コンバージョンデータをどのように取得・連携し、どのように可視化するのか」「それぞれをつなぎ合わせどのように運用するのか」ということを、お客様起点で試行錯誤しながら一気通貫でご支援していきたいと考えています。
ーーありがとうございました!