インタビュー
Webサイトからの引き合いを増やすために、Webサイトリニューアルを実施したもののなかなか成果につながらないと悩むWeb担当者は少なくないでしょう。Webサイトリニューアルに失敗してしまう原因と対策とは何か。
今回、株式会社ゴンドラ クリエイティブ制作部 副部長 山田夏美氏に、Webサイトリニューアルが失敗する原因と対策、さらにユーザーの満足度を高めるUI設計の秘訣について詳しいお話を伺いました。
株式会社ゴンドラ クリエイティブ制作部 副部長
グラフィックの制作会社から始まり、モール系ECサイトデザイン運用(UI/UX)を経て、2021年ゴンドラ入社。主にディレクター・WEBデザイナー・グラフィックデザイナーとして、サイト制作・LP制作・バナー制作・SNS運用・メールマガジン制作・ブランディングロゴ・イベントブース・パンフレット制作など様々な業務を担当。
ーー企業がWebサイトリニューアルに失敗してしまう理由は何でしょうか。
1つ目はWebリニューアルの目的が曖昧であることです。
目的が曖昧なために、商品の購入ボタンが押しづらい、価格が掲載されていないなどお客様の行動を想像できていない設計になっているケースが散見されます。そのような設計では成果につなげることは難しいでしょう。
またトレンドのデザインや競合他社の成功事例などに影響されて、上辺だけ真似して失敗してしまうケースもあります。デザインやUI設計は、目的と合致してはじめて効果を発揮するものです。Webサイトリニューアルに取り組む前に、しっかりと目的を明確にすることが重要です。
Webサイト運営者側が伝えたいことを表現したクリエイティブでは、ユーザーの課題解決や求めることに応えることは難しいでしょう。
例えば次のような表現ではどちらがユーザーの興味を喚起できるか、分かりやすいと思います。
運営者目線では製品のすごさを伝えようとしてしまいがちですが、ユーザー目線では製品を使うことによるメリットや悩みを解決してくれるかを重視しています。
またターゲット像を大まかにイメージするだけで、ペルソナを設定していない場合も、ユーザー目線でのクリエイティブ制作ができない原因のひとつです。
Webサイトリニューアルにかかるコストを下げようとするあまり、Webサイトリニューアル後の更新がしづらい設計になっているケースをよく見ます。
例えばCMSを導入していないことで外部の専門家に更新を依頼しなくてはならない、更新のために大量の画像制作しなくてはならないなど、かえって費用が多くかかってしまうことになりかねません。
Webサイト運用を成果につなげるには、更新し続けることが大前提であるため、更新しやすい設計であることが重要です。
ーーWebサイトリニューアルを成功させるためのポイントを教えてください。
まずWebサイトリニューアルの目的を明確化することも重要です。これまでお客様のWebサイトリニューアルをご支援するなかで、目的が曖昧になっているケースをよく見ます。目的が曖昧なまま改修やデザイン変更を行っても成果につながらないでしょう。
また目的を明確にした上で、現状のボトルネックを見つけ出すことが重要です。例えば集客により流入を増やし購買につなげたい場合、次のようなケースは改善が必要です。
ユーザーの「手が止まる」場所はどこなのか分析すると良いでしょう。
ゴンドラでは、ターゲットごとに広告配信の出し分けをしている部門と制作部門が連携し、広告戦略に関する情報共有をしています。広告施策やねらいを把握した上でWebサイトを制作できるのでギャップが生まれないことが強みです。またABテストの結果をもとに、クリエイティブな観点から改善提案も行っています。
Webサイトを訪れるユーザーの年齢や、習慣、使用デバイス、商品やサービスの探し方などによって適切なUIが変わります。お客様は何を解決したいのか、どのようなタイミングでWebサイトを訪れるのかというストーリーを立てることで最適なUI設計につながるでしょう。
またWebサイト内のコピーやテキストクリエイティブでは、「ユーザーが知りたいこと」を基準に制作することが重要です。
ゴンドラでは、お客様のWebサイトを制作する際に「(自分が)ユーザーだったらどう思うか」「ユーザーだったら購入するか」という問いを常に立てながら制作を行っています。
クリエイター系の新人教育の際にも、「お客様の商品をセールスできるくらい理解を深めた上でWebサイトを制作しましょう」といわれるほどです。その結果、いわれたことだけやるのではなく積極的に改善提案ができる組織になっています。
Webサイトリニューアルは、ゴールではなくスタートであるという認識をもつことが重要です。Webサイトリニューアル後の運用を重視した設計や組織体制を構築できるか否かで、成果が左右されます。
更新頻度が高いWebサイトは、情報の新鮮さを高く保ち「賑わい」を演出することができるため、新規ユーザーの訪問数も伸びやすいでしょう。また更新頻度の高さはSEOにも効果的です。CMSを導入し、誰でも簡単に更新できる設計にするのがおすすめです。
ゴンドラでは、「ユーザーにとっての最適なUI」と「運用者にとっての効率的なUI」を分けつつ両立するUI設計を心がけています。さらにWebサイトリニューアル後のコンテンツ追加を効率的に行うためにも、UIに関するガイドラインを作成しています。
単にWebサイトリニューアルを行うだけではなく、更新・運用担当者の作業効率を考えることが重要だと考えています。
ーーゴンドラ社では実際にどのようなWebサイトリニューアル支援を行っているのでしょうか。
小売業を営む大企業であるお客様の、グループ全体のWebサイトリニューアルを複数同時にご支援した事例をご紹介します。
お客様は主に次の3つの課題を抱えていました。
オンライン上でのサービスを改善するためにも「Webサイトをどうにかしなければいけない」という思いが強いものの、何をどうしたら良いのか分からないという状態でした。
私たちは単なるWebサイトリニューアルではなく、お客様の組織体制の見直しも含めたご支援を行いました。具体的には、まずWebサイトリニューアル担当者を決め、その担当者がプロジェクトを推進するための教育や体制構築に関する提案をしています。
お客様が本当に欲しい情報を提供するためにもユーザー目線でのWebサイト構成とコンテンツ、運用方法を提案しました。ユーザーのニーズや課題を理解するためにもお客様とのヒアリングを重ねながら、ユーザーインタビューも行い、Webサイトの導線改善につなげています。
お客様ご自身で更新や運用ができる体制を整え、Webサイトリニューアル後も更新頻度を高く保つための支援を行いました。
また誰でも運用できる管理画面にもこだわりました。Webサイトリニューアル後はABテストを繰り返し、ユーザーの行動を分析して改善策を提案しています。
グループ企業全体で10数サイトをリニューアルし、PV数を大幅に伸ばすことができました。またWebサイト運用体制構築支援についても高い評価をいただいています。
ーーお客様のWebサイトリニューアルを成功させるために重要視していることは何でしょうか。
Webサイトリニューアルにおいては、目的を明確化し実現することはもちろん、お客様の満足度をいかに高められるかが重要です。お客様の満足度を高めるためには運営側の「いいたいこと・できること」を一方的に押し付けるのではなく、お客様が求めるものを分かりやすく提示し、課題解決に役立つ構成と内容にする必要があります。
そういう意味で、私たちが制作しているのは単なるWebサイトではなく「お客様が満足する体験」だといえます。
ゴンドラでは「満足する体験」を提供するために、メンバー全員が「カスタマーエンゲージメント」の意識を持ってお客様のご支援をしています。Webサイトリニューアルの先にある売上を増やすというゴールを意識し制作を行っているのです。そのためには、制作担当者であっても広告やシステム、CRMについて積極的に学び知識を増やしています。
「カスタマーエンゲージメント」=「お客様が満足する体験」を提供することで、ファン化につながると考えています。私たちがWebサイトリニューアルで目指すのは、ファンを増やすことです。
Webサイトに「1度だけ購入する人」を集めるのではなく、ファンになって2度・3度と繰り返し利用いただくことで売上向上につながります。そのためにも、ターゲットやペルソナを的確に設定しUIを設計することに注力しています。それによって社内の広告や開発、CRM担当部署と連携強化できると思います。
ゴンドラのこの支援体制ができたのは、社内の上層部から現場のメンバーまで「カスタマーエンゲージメント」の考え方が自然に浸透していることが背景にあるからです。すべての支援領域において、お客様にいわれたことだけをやるのではなく期待を超えて喜んでいただくにはどうしたら良いのか? という考えのもと、各部署が連携しながら統合型支援を行っていることがゴンドラの強みです。
これからも「120%以上の期待を超える付加価値を提供する」ということを常に意識しながら、お客様のWebサイト制作支援をしていきたいです。
ーーありがとうございました!