インタビュー
営業DX推進が叫ばれるなか、業界をリードする企業はどのように営業DXを推進し成果につなげているのでしょうか。人材派遣や人材紹介ビジネスを主力とするパーソルホールディングス株式会社は、2018年に法人マーケティング室を立ち上げ営業DX推進を図った結果、前年比で売上6倍・受注率1.5倍を達成し、2021年には『NIKKEI BtoBマーケティングアワード2021大賞』を受賞し話題となりました。
本記事では法人マーケティング室の室長としてデジタルマーケティングを牽引している繁田佳典さんに、「営業DX推進の壁を乗り越える秘訣は何か」をテーマに、推進における障壁・課題や組織づくりのポイントなどをお話いただきました。
パーソルホールディングス株式会社 グループ営業本部 営業企画部 法人マーケティング室 室長
2008年、株式会社インテリジェンス(現パーソルキャリア株式会社)に入社。求人広告サービスanの代理店営業や営業企画、マネジメントを経て2019年にパーソルホールディングス株式会社に転籍。 マーケティングオートメーションやインサイドセールスを活用したグループのデジタルマーケティングを牽引。
――所属されている法人マーケティング室について、また繁田さんがどのような役割をされているのかを教えてください。
パーソルホールディングスは純粋持株会社で、国内だけで38の会社があります。私はグループ営業本部の営業企画部法人マーケティング室に在籍しています。
営業はどうしても自身の担当サービス提案が中心になりがちで、横の事業との連携が希薄になるケースがあります。特にナショナルクライアントといわれる大企業のお客様は、課題が複雑で1個の商材では解決できない場合も多い。そういったときは「このサービスとこのサービスを組み合わせましょう」という複合的な提案が必要です。営業企画部は、会社同士の情報連携を進めてシナジー効果を高めることや、営業行為だけではなくデータ活用やマーケティングについても推進する役割を持っています。
営業企画部は、大きく分けて3つのことに取り組んでいます。1つが社内の情報を連携させるためのシステムづくりです。例えば、パーソル内で営業が名刺交換を行うとスクラッチ開発した名刺管理システムに必ず名刺を登録することになっています。また、お客様が各事業会社でどの程度取引を行っているのかについて、売上情報を共有するツールを管理・運用しています。
2つめが社内のお客様の相互紹介促進です。「このお客様は◯◯に困っているが、解決できる会社はないか」と横の会社に問いかける仕組みや機能、文化を作っています。
3つめが私が現在室長を務めている法人マーケティング室の法人マーケティング業務です。例を挙げると、登録された名刺情報などに基づき、テンプスタッフという事務派遣会社のお客様に、また別のdoda(デューダ)という会社の中途採用のメールを送るなど、シナジーを生み出すための取り組みを行っています。
営業企画部は「いかに顧客に多角的な提案がなされる構造を作り上げるか」をミッションとしており、数字を追って実際に営業を行うのは各事業会社の営業の方々です。
――法人マーケティング室が立ち上がる以前は、どういった役職に就かれていたのですか。
私はもともとパーソルキャリアという子会社に、2008年から10年以上在籍していました。当時は「an」というアルバイト向けの求人情報サービスに携わっており、営業や営業企画、営業企画のマネージャーを経て2019年にホールディングスの方に転籍したのです。
転籍前から、体系化こそしていなかったものの、「コールセンターを運営しよう」「お客様にメルマガを打ちたいから企画しよう」といった「マーケティングらしきこと」は実践していました。ただ、自分が法人マーケティングをやっているという認識ではなかった。営業企画の仕事も、お客様の新規開拓のために優先順位を決めるといった、ある意味で法人マーケティングに近い思考で行っていたため、ジョブチェンジの感覚もあまりありませんでした。
――営業DX推進を始める前、どのような課題感があったのでしょうか。
課題の1つに、営業生産性の頭打ちがありました。当社は国内での売上が8000億円ほどあって、営業が数千人くらいいます。割り算すれば1人あたりの営業生産性が出るのですが、その数字はもう長い間変わっておらず、サービスによってはやや下がってさえいるような状態なのです。