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交通広告の基礎知識と活用法とは?新戦略への第一歩

交通広告の基礎知識と活用法とは?新戦略への第一歩

交通広告は、公共交通機関や関連する施設に設置する広告です。「Web広告でいまいち成果が出ておらず、代替手段として交通広告を検討している」「製品の良いプロモーション方法を探しているなかで交通広告を知ったけれど、交通広告を選択すべきか判断できず困っている」という方も多いのではないでしょうか。

本記事では交通広告とは何かの基礎知識から、活用事例までを詳しく紹介します。

目次

1.交通広告とは

交通広告は、公共交通機関や関連する施設に掲示される広告の総称です。電車やバス、タクシーなどの車内に見られる広告はもちろん、交通機関の施設である駅内の看板やポスターなども含まれます。デジタルサイネージの浸透により、アナログ広告だけでなく動画や音声を用いた表現も増加しました。

交通広告はターゲットに合わせ、エリアを絞って広告を出すことが可能です。また交通機関に掲示される広告であるため、決まった時刻・シチュエーションに繰り返し利用者の視界に入りやすく、利用者の記憶に定着しやすいプロモーション方法であるといえるでしょう。

ビジネスパーソンは、出勤の際に電車やバスを、出張などの移動の際にタクシーを利用するケースが多くあります。交通広告はBtoC企業だけではなくBtoB企業にも有力な手法なのです。

2.交通広告の4つのメリット

交通広告は、以下のようなメリットがあります。

  • 接触頻度が多い
  • 広告が自然と目に入る
  • エリアを絞って広告を出せる
  • 信頼感を得られる

接触頻度が多い

交通広告は、交通機関の利用客を対象にした広告です。特に電車やバスなどは通勤・通学に頻繁に利用されるため、同一の利用者が何度も広告を目にする機会が多く、「刷り込み効果」が期待できます。繰り返し広告を目にすることで企業名や商品名が乗客の記憶に定着すれば、必要にかられたとき、自社商品・サービスを思い出してもらいやすくなります。

広告が自然と目に入る

電車・バス・タクシーなどの交通機関を利用している間、乗客は限られたスペースの中で一定時間を過ごすことになるため、車内の広告が自然と目に入りやすい環境といえます。交通広告は乗客から視認されやすい、「強制視認性」が高い広告です。

また、交通広告は自然と乗客の目に入りやすいものの、内容を注視する・しないは乗客が自分の意思で判断できます。一部のWeb広告では強制的にポップアップ表示がされたり、次の画面に進むために動画の視聴が必要になったりとユーザー体験を阻害する場合がありますが、日常に溶け込む交通広告はこのような煩わしさを与えずに済むため、嫌悪感を持たれにくい点もメリットです。

エリアを絞って広告を出せる

交通広告はターゲット層が集まりやすい特定のエリアに絞って広告を出せるため、決まったエリアの利用客に繰り返し訴求できます。

例えば学校が近くにあるA駅に学生が集まりやすいとすると、学生を対象としたビジネスをしているならA駅への広告は有力なプロモーションになるといった判断ができます。他にも特定地域にターゲット層である業界・業種のオフィスが多い場合には、オフィス周辺エリアのタクシーに広告を出すことで認知度を高めようとするなど、ターゲットに応じた戦略を立てられます。

信頼感を得られる

交通広告により、企業や製品・サービスに対する信頼感の向上が期待できます。広告掲載を請け負っている交通機関は、独自の審査基準を設けて広告内容や広告主の信頼性を審査しています。審査を通過し、公共交通機関に広告が掲示されること自体が、その企業やサービスに対する一定の信頼につながるのです。

さらに、公共色が強い電車やバスの広告は、広告の実施自体が「金銭的な余裕がある、儲かっている」=「商品・サービスの人気が高い」という印象をユーザーに与える効果もあります。これらの理由から、多くの企業が交通広告を信頼性向上の一手段として活用しています。

3.交通広告の種類

交通広告にはさまざまな種類があります。特に代表的な交通広告である下記4つについて解説します。

  • 駅広告
  • 電車広告
  • バス広告
  • タクシー広告

駅広告

「駅広告」は、駅の施設内外に展開する広告です。壁面を利用した大型ポスターやデジタルサイネージなど、さまざまな形態の広告が利用されています。該当の駅を通勤・通学に利用している利用客や、駅近辺の施設の利用者がターゲットです。

駅広告は交通広告の中でも空間の広さを生かした展開がしやすく、大きな広告や柱巻き広告であれば見る人にインパクトを与えられます。また路線の多い大都市の駅であれば利用者数も多いため、より多くの人数からの認知を期待できます。

人気のある駅の場合は広告枠が取りづらい点や、駅という特性上急いでいる人も多く必ずしも広告が読まれるとは限らない点には注意が必要です。

駅広告の種類 内容
駅看板広告(サインボード) 長期の掲出ができる看板広告。
デジタルサイネージ モニターで映す映像広告。
設置箇所は壁面や柱、通路など複数ある。
駅貼りポスター 駅構内の壁面などに設置されるポスターの広告。
並べて貼ることで印象を強められる。
柱巻き広告 駅構内の柱にシートを巻きつける形で設置される広告。
立体的な表現ができる。
フラッグ広告 天井から吊り下げたり、柱に結びつけたりして設置される布・ビニール・ポスターなどの広告。
自動改札ステッカー広告 自動改札機の一部分に設置する広告。
路線の利用者が必ず通るため繰り返し目にしやすい。
フロア広告 施設の床にシートを貼り付けて設置する広告。
大型ボード広告 壁面などを利用し設置する大型の広告。
駅内外で設置できインパクトを残せる。

電車広告

電車広告の一覧

電車広告とは、電車の車両内外に設置される広告です。一般の乗車客や沿線に住む人々をターゲットにしています。電車広告は駅や電車の公共性から信頼感も高く、企業のブランド形成に役立ちます。

特定の路線に絞って広告が出せる車内広告や、季節ごとのキャンペーンに応じた広告なども増えつつあり、柔軟な活用が期待されています。

車内で一定の広告スペースを確保しようとすると予算が高くなる点や、細かい区間や車両の指定がしづらい点、乗客がスマホを見ていることが多く、広告がどこまで見られているかが把握しにくい点などには注意が必要です。

電車広告の種類 内容
中づり広告 天井から吊り下げるポスター広告。
広い範囲から見えやすい。
車内ビジョン広告(デジタルサイネージ) モニターで映す映像広告。
電車広告の中でも目立ち、視認されやすい。
ステッカー ドア横やドアガラスなどに設置する小型の広告。
ドア横ポスター ドア横に設置するポスター。
乗客の目線の高さにあるため乗り降りする際に認知されやすい。
まど上・ドア上ポスター 網棚の上部やドアの上部に設置するポスター広告。
車体広告(車体ラッピング) 車体の一部に設置する広告。
通学・通勤目的の利用者へのブランディングやキャンペーン宣伝に向く。

バス広告

バス広告の一覧

バス広告とは、バスの車内や車体、バス停などを利用した広告です。日々のバスの利用客や地域の住民など特定のターゲットに繰り返し訴求できる特性があり、地域密着型のビジネスや地元住民への知名度向上を目指す場合に特に効果的です。バス利用者は60代以上の高齢層が多く、高齢層を対象としたプロモーションにも向いているでしょう。

大きなバスの車体を利用した広告は視認性が高く、デザインを工夫すればバスの乗客だけではなく通行人に大きなインパクトを残せます。

駅広告や電車広告などと比較するとリーチできる人数に限りがある点や、走るルートが決まっており細かいエリアのセグメントができない点には注意が必要です。

バス広告の種類 場所 内容
H棒(運転席後部ポスター) 車内 運転席の後部にあるポスター。
車内から視認されやすい。
まど上ポスター 窓の上のスペースを利用して設置するポスター。
バス広告の中でもスタンダード。
側吊ポスター 窓ガラスに吊り下げるポスター。
立ったときの目線の高さにあるため視認されやすい。
ステッカー 主に窓に貼り付ける小型の広告。
アナウンス広告 車内放送に付随して流す音声広告。
停留所周辺の店舗案内などで利用されるケースが多い。
ボディ側面・後部 車外 バスの側面及び後部に掲示する広告。
車両が移動することで広範囲に露出できる。
ラッピング広告 バス全体を1つのデザインでまとめた広告。
視覚的インパクトが大きい。
アンドンポール広告 バス停 バス停に掲示される広告。
バスの到着を待つ人々に訴求できる。

タクシー広告

タクシー広告の一覧

タクシー広告とは、タクシーの車内や車体を用いた広告です。車内に設置されたデジタルサイネージやステッカー、車体のラッピングなどで乗客や通行人へのプロモーションを行います。タクシーは電車やバスといった交通機関と比べても閉鎖的な空間に置かれるため、特に広告に長時間触れやすい環境であるといえます。

タクシーを日頃から利用するような富裕層やビジネスパーソンに対し訴求できるため、高単価商品やBtoBサービスを扱う企業にとって特に相性が良いでしょう。また、台数や大まかなエリアを指定できるため、広告を出す範囲をコントロールしやすい点も魅力です。

広範囲を走行するタクシーの性質上、細かいエリアのセグメンテーションが難しい点や、他の交通広告よりも輸送人員が少なく一度に大規模なプロモーションを行うには向かない点には注意が必要です。

タクシー広告 場所 内容
アイキャッチステッカー 車内 運転席の防犯ボードに貼るステッカー広告。乗客に視認されやすい。
アドケース 運転席・助手席後部に取り付けられる小型のケース。広告のリーフレットを配布できる。
スーパーステッカー リアウィンドウ(後方ガラス)に取り付けるステッカー広告。後続車のドライバーに訴求できる。
サイドウィンドウステッカー ドアの窓などに貼られるステッカー広告。
デジタルサイネージ タクシー内に設置されるデジタル広告。映像コンテンツで訴求力が高い。
ドアステッカー タクシーの車内のドア部分に貼られる小型ステッカー広告。
ラッピング 車外 タクシーのドア4枚分を利用した広告。視認性が高い。
ボディステッカー タクシーのボディに貼り付けるステッカー広告。ラッピングよりも低コスト。

4.交通広告利用の注意点

交通広告は自社の認知度向上やブランディングにつなげられる有力な手法ですが、あらかじめ把握しておくべき注意点があります。利用にあたっては下記2点を押さえておきましょう。

  • 効果の測定が難しい
  • 掲載までに時間がかかる

効果の測定が難しい

交通広告は、広告を見た人数や頻度などの詳細なデータの収集が難しく、効果測定しづらい点に課題があります。例えば広告を出稿して売上が伸びた場合、Web広告であればどれだけの人数が広告をクリックしたか、そこから問い合わせに辿り着いた人は何名かまで素早く可視化できます。そのため売上への影響度を推測しやすく、課題がある場合には改善策も立てやすくなっています。一方で交通広告の場合は、何名が実際に広告を見たのか、広告がどれくらい購買活動に影響を与えたのかについては、アンケート調査を利用したり、顧客から直接聞き取ったりなど別途調査しなければなりません。

近頃では交通広告でも効果測定を行えるように、広告にQRコードを掲載してWebサービスと連動させているケースや、カメラ、センサー、GPS、携帯キャリアなどを利用して人の流れや注目時間を分析するケースもあります。ただし、これらの手法を用いるには追加の費用や工数がかかり、Web広告ほど手軽ではない点に注意しましょう。

掲載までに時間がかかる

交通広告はWeb広告などと比較すると掲載までに時間がかかり、申し込みから掲載までに約2週間から1ヵ月程度の時間が必要とされています。交通広告は公共性の高いメディアであり、掲載する内容に対する審査が必要になるためです。審査は掲載物の内容やデザインの可否、掲載企業の信頼性など多面的な要素から判断されます。

また、掲載する媒体の種類や必要な工程数によっても、掲載までの時間は変動します。特に車体広告などの特定の媒体では、掲載開始の約2ヵ月前までに申し込み・デザインの提出が必要となる場合もあるなど、早いタイミングで手続きを開始しなければならないケースもあります。

企業が交通広告を利用する際には、あらかじめ時間的な余裕を持って計画し、審査の厳格さを理解した上での利用が大切です。

5.交通広告にかかる費用

交通広告の費用は掲出先や媒体によって大きく異なり、一律には言えません。詳細は各代理店に問い合わせが必要になりますが、主に以下のような費用がかかります。

  1. 広告枠(広告の場所・種類・期間により変動)
  2. デザイン・制作費
  3. 代理店の手数料

広告枠(広告の場所・種類・数・期間により変動)

交通広告を出すには広告主が設けているいわゆる「広告枠」の購入が必要であり、この「広告枠」の料金は設置する場所(特定の地域、路線、駅、設置箇所など)によって大きく左右されます。基本的には大都市エリアになるほど、また露出の量が多い場合ほどかかる費用も高額になります。

例えば乗降車数の多い山手線の場合、中吊り広告でシングル199万円(7日間・800枚)です。これが中央線快速になると、同じ中吊り広告でもシングル85万円(7日間・850枚)と、金額に大きな差が出ていることが分かります(参考:株式会社ジェイアール東日本企画サイト「メディアガイドオンライン」)。

デザイン・制作費

広告を出すためには、広告枠だけではなく広告のデザイン・制作費も必要です。制作費は広告の種類(紙・デジタルのどちらか)、サイズ、制作を依頼する会社をどこにするか、制作会社に企画段階から入ってもらうかなどの状況によっても大きく変動します。一般的には制作に数十万~数百万円程度の金額を要するでしょう。広告の内容を企画段階から依頼するか、制作のみ依頼するかなど社内体制に応じてあらかじめ検討しておきましょう。

広告代理店の費用

交通広告は各交通機関が指定する指定代理店を通す必要があり、依頼の際にはマージンとして手数料やサービス料を支払います。出稿料の20%ほどが多いといわれますが、企業によっては別の料金形態を採用している場合もあります。まずはどの代理店を選ぶべきか、見積依頼を出すなどして検討しましょう。ただし、広告を出したい媒体・エリアによっては選択の余地があまりないケースもあります。

6.【目的別】交通広告の活用方法

交通広告を実施する主な目的としては、「ブランディング」「新製品・サービスの認知拡大」「イベント告知」などが挙げられるでしょう。これらの目的別に、交通広告をどのように活用すれば良いか事例を交えて解説します。交通広告の出稿を検討している方は参考にしてみてください。

SNSとの合わせ技でブランディング

交通広告は企業の認知度を向上させるだけでなく、ターゲットに刺さるタイミング・場所・デザインにこだわることでブランディングになります。

優れたデザインの駅内広告をタイミング・場所を図って掲出することで、ターゲットの心を動かし、広告の写真がSNSにあげられて話題となったケースもあります。人事労務管理サービスを提供しているSmartHRでは、新型コロナウイルスが流行し始めた時期に「テレワークが始まった。ハンコを押すために出社した」という文言の駅広告を出したところSNSで話題になり、CM並の反響があったことを明かしています。多くの会社員が非効率だと考えているだろう「仕事あるある」を端的に表した言葉が共感を呼んだのです。思わずSNSに写真をあげたくなるようなインパクトのある文言や写真を利用した交通広告であれば、オフライン上での接点のみならず、オンライン上にまで認知を拡大し企業のイメージアップやブランディングにつなげられるでしょう。

製品・サービスの認知拡大から受注への「入り口」に

交通広告は、製品・サービスの認知度を高められるほか、広告と連動した営業活動によって受注拡大へとつなげられます。

法人向けECプラットフォーム「ecforce」を提供するSUPER STUDIOは、タクシーのデジタルサイネージ広告によって認知を拡大し、配信1ヶ月でリード数を2倍に増やしました。さらに、なかやまきんに君を起用し名画とコラボレーションした第二弾のタクシー広告はSNSでの反響も大きく、公開後に契約件数が昨年比で3倍にまで増加したことを明かしています。スタートアップで製品・サービスが広く知られていないなか、印象的なタクシー広告によって一気に知名度を伸ばし、CMと連動した営業手法を取るなどの戦略で受注数の増加に成功したのです。

交通広告によって単独でプロモーションをして終わりではなく、反響を受注につなげていくために他の施策と密に連携することによって、単なる認知の拡大のみに終わらず、受注拡大へとつなげられるでしょう。

周知する必要があるイベントの告知

交通広告は、特定の対象者に焦点を当てたイベント告知にも向いています。特に駅・電車・バスは通勤や通学の手段として毎日利用されるため認知されやすく、開催日までに「いつ」「どこで」「何が行われるのか」を知ってもらう必要があるイベントと相性が良いといえます。

BtoC事業では公開日が決まっている映画の宣伝や期間限定キャンペーンの告知、BtoB事業では展示会やオフラインイベント開催の告知などに交通広告がよく利用されています。さらに、イベントの雰囲気を擬似的に味わえるようなクリエイティブであれば、単なる告知のみに留まらず、ターゲットの「行ってみたい」という意欲を喚起して集客数の増加につなげられるでしょう。

7.まとめ

本記事では、交通広告の概要、メリット、種類、注意点、そして活用方法について詳しく解説しました。

交通広告とは、公共交通機関やその施設に掲示される広告です。メリットとして接触頻度の高さ、自然に視界に入る特性、特定エリアに広告を絞り込める点、そして広告が提供する信頼感が挙げられます。交通広告は駅広告、電車広告、バス広告、タクシー広告などさまざまな種類があり、その中からビジネスの目的やニーズに応じた選択が可能です。一方で、効果の測定が難しい点や掲載までの時間がかかるといった課題も存在しますが、それらを理解した上で対策を講じることが求められます。

交通広告はその特性を理解し、適切に活用すれば大きな成果を得られるでしょう。本記事を参考に、交通広告を活用してみてください。


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この記事を書いた人

野坂 早希
野坂 早希 | ライター

文章での価値創出に関心があり、製造業から転身後、BeMARKE編集部でBtoBマーケティングを専門に年間およそ70本の記事執筆・編集を担当。「読者に分かりやすく品質の高い記事を届けること」をモットーに日々制作に励んでいる。

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