基本ノウハウ
マーケティングの活性化にはオンライン広告だけでなく、オフライン広告の活用も重要です。テレビCMや新聞広告以外にも多様な種類があり、それぞれ宣伝に向いている内容やターゲットなどが異なります。
本記事ではオフライン広告とは何か、オンライン広告との違いを踏まえながら解説します。種類別のメリット・デメリットや費用相場はもちろん、成功させるコツもあわせて紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。
オフライン広告とは、Webを介さずに宣伝する広告です。テレビや新聞などを含む4大マスメディアと、交通広告やチラシといったプロモーションメディアの2つに大別されます。種類の詳細は、次項の「2.オフライン広告の種類」をチェックしてみてください。
ここではオフライン広告全体に共通するメリット・デメリットを解説します。それぞれ詳しく見ていきましょう。
オフライン広告のメリットは、主に次の3つです。
近年急増しているオンライン広告の成長にはおよばないものの、上記のメリットを受けて活用する企業はまだまだ多い現状があります。実際の媒体別の広告費は、下表のようになっています。
年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 |
---|---|---|---|
総広告費 | 61,594 (---) | 67,998 (110.4%) | 71,021 (104.4%) |
オフライン広告費 | 39,304 (---) | 40,946 (103.4%) | 40,109 (98.0%) |
オンライン広告費 | 22,290 (---) | 27,052 (121.4%) | 30,912 (114.3%) |
単位:億円、()内は前年比
インターネットが発達した現代でも、サービス内容やターゲットによってはオフライン広告も利用価値が十分あるといえるでしょう。
オフライン広告のデメリットは、主に次の2つです。
特に出稿後の対応において柔軟性が乏しい点は、製品・サービスの入れ替わりやトレンド変遷が多い業界だとネックになりやすいでしょう。オフライン広告の出稿を検討する際は、宣伝内容と媒体の相性を見極めることが大切です。
オフライン広告の種類は、大きく分けると次の2つです。
ここでは各媒体の概要はもちろん、メリット・デメリットや費用相場などを解説します。
4大マスメディアに含まれるオフライン広告は、次の4つです。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
カテゴリ | 内容 |
---|---|
メリット | シニア層も含め、幅広いターゲットにリーチできる 放送広告基準の合格が必要な分、信頼性が高い 視覚と聴覚、両方の情報によりブランドイメージを浸透させやすい |
デメリット | 制作や出稿にかかるコストが高い 効果測定が難しい |
向いている内容 | 新商品の宣伝 ブランドの認知拡大 など |
費用相場 | 約100万円~1,000万円以上 (制作内容や起用タレント、放送エリアの広さによって異なる) |
テレビ広告は4大マスメディアの中でも、最も利用者が多く伝達も素早いオフライン広告です。中でもテレビCMには次の2種類があり、放送時間もそれぞれ異なります。
タイムCM | スポットCM | |
---|---|---|
放送されるタイミング | 特定の番組に付随して放送 (スポンサー契約) |
特定の時間に放送 |
放送時間 | 30秒~ | 15秒~ |
放送期間 | 6カ月(2クール) | 1週間~ |
初めてテレビ広告を出す場合は、放送期間などの自由がきくスポットCMから挑戦してみると良いでしょう。
カテゴリ | 内容 |
---|---|
メリット | 知識欲が高いユーザーへアプローチできる 出稿する新聞によってエリアを選択できる(全国あるいは特定の地域) 信頼性が非常に高く、企業イメージの向上につながりやすい |
デメリット | 利用者数が減少傾向にある 若年層へのリーチが難しい |
向いている内容 | セミナーや展示会などの情報 地域密着型サービスの宣伝 など |
費用相場 | 約10万円~200万円 (新聞の種類や掲載サイズ、位置によって異なる) |
新聞広告は、記事の途中や下部などに掲載するオフライン広告です。信頼性の高さでは、全メディアの中でトップを誇っています。※1
※1参照:日本新聞協会広告委員会|新聞オーディエンス調査(定点調査)
利用者数は減少傾向にあるものの、デジタル購読数は増加中です。今後はスマホで閲覧したときでも目を引くような、クリエイティブ面の工夫がより一層求められるでしょう。
カテゴリ | 内容 |
---|---|
メリット | ターゲット層が明確で、セグメンテーションしやすい 回読性が高く、ブランドイメージを浸透させやすい 広告スペースの種類が多く、クリエイティブ面を工夫しやすい |
デメリット | 制作や掲載にかかるコストが高い 広告の掲載まで時間がかかる |
向いている内容 | 専門的な製品やサービスの紹介 セミナーや展示会などの情報 など |
費用相場 | 約30万円~300万円 (雑誌の種類や掲載サイズ、カラー/モノクロなどによって異なる) |
雑誌広告は誌面に掲載するオフライン広告であり、読者層を踏まえた厳しい審査があります。その分ターゲット層が明確であり、効率的なリーチと効果測定が可能です。自社製品・サービスと近い業界の専門誌へ出稿できれば、確度が高い見込み顧客の獲得も期待できるでしょう。
カテゴリ | 内容 |
---|---|
メリット | 配信番組や地域などによってターゲットを絞れる ながら聴きによる刷り込み効果が期待できる 他の4大マスメディア広告より低コストで出稿できる |
デメリット | 聴覚のみの情報により、1回あたりの訴求力は小さい 効果測定が難しい |
向いている内容 | 地域密着型サービスの宣伝 既存製品やサービスの認知拡大 など |
費用相場 | 約2万円~50万円 (放送する時間や期間、地域などによって異なる) |
ラジオ広告は地域性が強く、リスナーとの関係が近いオフライン広告です。放送形態によって、以下の2つに分けられます。
カテゴリ | タイムCM(番組提供) | スポットCM |
---|---|---|
放送されるタイミング | 特定の番組に付随して放送 (スポンサー契約) 生放送内に宣伝原稿を読み上げるインフォマーシャルCMも含む |
特定の時間に放送 |
放送時間 | 20秒~ | 20秒~ |
放送期間 | 3カ月 | ニーズに合わせたレイアウトが可能 |
近年ではradikoといったインターネットラジオの普及により、スマホで簡単に受信し、気になる情報はその場で検索できるようになりました。つまりラジオ広告とWeb施策は、意外にも相性が良いということです。
刷り込み効果による第一想起も期待できるため、認知拡大やブランドイメージの定着を目指したい企業にもおすすめの手法となっています。
プロモーションメディアに含まれるオフライン広告は、次の7つです。
2023年には新型コロナウイルス感染症が5類へ移行したことにともない、以前の生活様式に戻りつつあります。その分上記のようなプロモーションメディアは外出先で目にする方が増え、潜在層へのリーチやWebサイトなどへの流入増加が予測されます。
ここでは今後の期待が大きい、各プロモーションメディアの詳細について見ていきましょう。
カテゴリ | 内容 |
---|---|
メリット | 幅広いターゲット層へリーチできる 視認性が高く、印象に残りやすい 露出機会が多く、特定の道を利用する方への刷り込み効果が高い |
デメリット | デザインによっては、周囲の風景に埋もれて訴求力が弱まる 制作や掲載のコストが高い |
向いている内容 | 企業やブランドの認知拡大 大規模イベントの宣伝 など |
費用相場 | 約30万円~300万円 (掲載場所やサイズ、期間などによって異なる) |
屋外看板は、建物の壁面や地面などに設置するオフライン広告です。近年では商業施設や駅を中心に、電子表示機器を使ったデジタルサイネージも増えています。差し替えのコストを抑えられる上、効果測定ができるシステムも組み込めるため、屋外広告の費用対効果を高めたい企業にもおすすめです。
カテゴリ | 内容 |
---|---|
メリット | 出稿エリアの絞り込みによって、セグメンテーションしやすい 閉鎖的な空間により、広告が視界に入る確率が高い 特定の交通機関や路線を使用する方への刷り込み効果が高い |
デメリット | 効果測定が難しい 掲載まで時間がかかる |
向いている内容 | 企業やブランドの認知拡大 実店舗への来店促進 など |
費用相場 | 約1万円~300万円以上 (出稿エリアや掲載形式、期間などによって異なる) |
交通広告は、以下のような公共交通機関で掲載できるオフライン広告です。
いずれも首都圏に近づくほど、広告費用は高くなります。ただし路線や掲載形式などは比較的自由に組み合わせられるため、予算を踏まえつつ交通広告会社とよく相談すると良いでしょう。
カテゴリ | 内容 |
---|---|
メリット | 新聞利用者への情報伝達が速い 新聞広告よりも低コストで出稿できる デザインやレイアウトのカスタマイズ性が高い |
デメリット | 即効性がある反面、持続性に乏しい 若年層へのリーチが難しい |
向いている内容 | 既存製品やサービスのセール情報 イベント案内 など |
費用相場 | 約3円/枚~5円/枚 (配布エリアやサイズなどによって異なる) |
折込広告は新聞配達の際に同封されているチラシであり、表現の自由度が高いオフライン広告です。ただし読者の興味を引けないと、即座に捨てられる可能性があります。そのため長期的あるいは反復効果を期待できる、他のオフライン広告と組み合わせて出稿するのも1つの方法です。
カテゴリ | 内容 |
---|---|
メリット | キーマンへ直接アプローチしやすい コピーやデザインなど送付相手によってパーソナライズ化できる 効果測定しやすい |
デメリット | 個別送付のため、配送の準備に時間と手間がかかる 住所変更があると届かない |
向いている内容 | 新製品の紹介 優待案内 など |
費用相場 | 約50円/通~100円/通 (発行部数やサイズなどによって異なる) |
DM(ダイレクトメール)は、顧客リストをもとに個別送付するオフライン広告です。特に自分宛てのものは閲覧率が75%、保存率は約40%と、他のメディアよりも高い傾向にあります。※2
※2参考:一般社団法人日本ダイレクトメール協会|DMメディア実態調査2022
DMにQRコードを添付しておくとサービスサイトなどへの流入も期待でき、効果測定も進めやすいでしょう。
カテゴリ | 内容 |
---|---|
メリット | 配布エリアを絞ることで効果測定しやすい 低コストで制作や発行ができる 割引クーポン券の掲載で興味を引きやすい |
デメリット | 出稿後の修正や変更が難しい 特典による集客効果は一時的なものになりやすい |
向いている内容 | 地域密着型サービスの宣伝 実店舗への来店促進 など |
費用相場 | 約10万円~200万円 (掲載先や配布エリアなどによって異なる) |
フリーペーパーはテイクフリーの印刷物として、コンビニや駅などに設置するオフライン広告です。媒体によって、ターゲットや相性の良い掲載内容が異なります。そのため出稿先を検討する際は、フリーペーパーのコンセプトや配布場所などを細かくリサーチすることが大切です。
カテゴリ | 内容 |
---|---|
メリット | 従業員の代わりに商品の情報を伝えられる セールやキャンペーンに合わせて記載内容を変えられる 季節感など店内の雰囲気づくりもできる |
デメリット | 効果的なPOPに仕上げるためには、相応のスキルや知識が必要になる 効果測定が難しい |
向いている内容 | 新商品のアピール 割引情報 など |
費用相場 | 約3,000円~3万円 (内製・外製、制作個数などによって異なる) |
POP(店頭広告)は、実店舗へ来店した利用者に向けて情報を伝えるオフライン広告です。目的によって、以下の3つに分けられます。
POPの種類 | 目的 |
---|---|
アウトショップ | 通りかかった方を店内へ導く |
インショップ | 店内の雰囲気づくりとともに、購買意欲を促進させる |
商品まわり | 商品の特徴やメリットをアピールし、訪問者の購買を後押しする |
オフライン広告の中でも特に低コストで制作できるため、実店舗がある場合は必ず取り入れたい手法といえます。
カテゴリ | 内容 |
---|---|
メリット | ユーザーの反応を直接確認できる 新規ユーザーや競合のユーザーとの接点を創出しやすい 競合他社の情報を収集できる |
デメリット | 差別化施策が少ないと競合他社に埋もれる可能性がある 出展や移動にかかるコストが |
その他のオフライン広告としては、イベント出展や展示会の開催などが挙げられます。自社製品やサービスと関連性が強いイベントであれば、確度の高い見込み顧客の獲得も期待できるでしょう。
ここではオフライン広告とオンライン広告の違いについて、2つの観点から解説します。
なおオンライン広告の種類や運用ポイントについて知りたい方は、こちらの記事もあわせてチェックしてみてください。
関連記事:「Web広告の7種類を解説 基礎知識や選定ポイントも紹介」
オフライン広告とオンライン広告における、運用方法・成果の違いは下表の通りです。
オフライン広告 | オンライン広告 | |
---|---|---|
費用 | 中~高 | 低~中 |
予算の調整 | △ | ◎ |
掲載内容の自由度 | △ | ○ |
露出の機会 | ○ | △ |
エリアの絞りやすさ | ◎ | ○ |
ブランディング効果 | ◎ | △ |
効果測定のしやすさ | △ | ○ |
いずれも出稿媒体によって異なり、導入のしやすさも保有するノウハウによって変わってきます。費用面だけを考えるとオンライン広告の方が取り組みやすいといえますが、成果を上げるためには運用や効果測定のスキルが必要です。
場合によっては社内だけ対応するのでなく、専門会社へのアウトソースも検討すると良いでしょう。
オフライン広告とオンライン広告は、下表のようにメリット・デメリットでも違いがあります。
オフライン広告 | オンライン広告 | |
---|---|---|
メリット | ・ネットに疎いシニア層も含め、幅広い年代に訴求できる ・エリアを絞ったアプローチ・効果測定ができる ・公共性の高さから企業イメージが向上しやすい |
・ターゲットをピンポイントで絞れるため、効率的にリーチできる ・リーチから見込み顧客の獲得、育成への導線を構築しやすい ・効果測定や施策改善といったPDCAサイクルを迅速に回せる |
デメリット | ・Webサービスを中心とした企業には向かない ・出稿後の修正や変更が難しい上、追加費用もかかる |
・効果を上げるためには専門的な知識やスキルが必要になる ・爆発的な顧客増加は見込めない |
獲得する見込み顧客の量を重視するならオフライン広告、質を高めたい場合はオンライン広告が適しているといえるでしょう。実際には量・質ともに必要なため、後述するコツにも記載しているように2つの手法を組み合わせることが大切になってきます。
オフライン広告を成功させるためには、ターゲットを明確にする以外にも次のような工夫が必要です。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
オフライン広告を成功させるためには、効果測定しやすい環境を整えることが大切です。例えば次のような工夫が挙げられます。
アンケート調査はWebサイトのお問い合わせフォームや、サービスサイトの購入画面で入力項目を設けるのも有効です。単に広告の効果だけでなく、自社製品・サービスに対する顧客の声もすくい上げられます。お問い合わせフォームの作り方について詳しく知りたい方は、こちらの記事もぜひ参考にしてみてください。
関連記事:「お問い合わせフォームの作り方を基礎から実践まで解説|無料ツールも」
オフライン広告とオンライン広告では得手不得手が異なるため、互いに補完し合うように併用するのも1つの方法です。クロスメディア戦略を展開できれば、見込み顧客の量・質ともに確保しやすくなります。
オフライン広告は不特定多数の目に触れるため、オンライン広告で着実に集めた見込み顧客を一気に顧客化できる可能性も少なくありません。集客力をより一層強化したい場合は、2つの広告形態を上手に組み合わせましょう。
オフライン広告の制作や運用を広告代理店へ依頼する場合は、実績を細かくチェックし再現性があるか確認してみてください。大企業の成功事例を前面に出し、中小企業の例が載っていない場合、成果が投じた予算の額によって左右されている可能性があるためです。
また、広告代理店にも種類があり、総合的に広告を取り扱っている場合と、得意分野に特化している場合があります。自社が利用したい形式の広告を出せる広告代理店かどうか、事前チェックが大切です。
例えば下表に挙げる広告代理店では、オフライン広告の中でも交通広告や新聞折込などに強みを持つことで知られており、中小企業の事例やインタビューも記載されています。
企業名 | 取り扱っている広告の種類 |
---|---|
株式会社キョウエイアドインターナショナル | ・交通・屋外広告 ・自治体メディア ・インストアメディア など |
株式会社オリコム | ・新聞折込 ・ダイレクト・マーケティング ・交通広告 など |
広告代理店について情報収集する際は、事例集やサンプルのダウンロードがおすすめです。また直接問い合わせると、Webサイトなどに掲載されていない実績についても教えてくれるケースがあります。
オフライン広告は多額の資金が必要な分、費用に見合った効果が得られるよう、広告代理店は慎重に選びましょう。
オフライン広告はリーチの多さや刷り込み効果などから、認知拡大やブランドイメージの浸透に大きく寄与する手法です。制作・出稿コストの高さや効果測定の困難さといったデメリットもありますが、媒体の選択や環境整備によってある程度軽減できます。
また見込み顧客の量と質、双方を求める場合はオンライン広告との併用がおすすめです。互いが持つメリットの強化やデメリットの補完で、集客力をより一層強められます。
予算を確保できる場合は、オフライン広告の出稿で新たな顧客接点を創出していきましょう。