セミナーレポート
BeMARKEは2022年12月15日に「BtoB企業のための、2023年を見据えた最新リード獲得施策総まとめ」と題した5社共催セミナーを開催しました。本セミナーでは、BtoBビジネスにおけるWeb活用を先導してきた企業様を登壇者にお迎えして、それぞれSEO、広告運用、SNS活用、Web改善、ウェビナー運用の5つのテーマで語っていただきました。
株式会社イルグルムのマーケティング部 課長 辻子 龍太郎 氏には、「成果につながる広告運用とは?多様化・複雑化を極めるBtoBマーケティングの最前線」と題して広告運用について講演いただきました。BtoB企業を取り巻く環境の変化、Cookie規制の変遷とデータ計測への影響、そしてBtoBマーケティングの成果の最大化に必要なデータ分析の注意点を解説しています。
【登壇者】
辻子 龍太郎 氏(株式会社イルグルム マーケティング部 課長)
株式会社イルグルムに入社後、EC、BtoB、人材など100社様以上のアドエビス導入後の支援を担当。その後、アドエビスのプロモーションを担当し、月間広告費を1/3削減、リード数を3倍に伸ばす。
辻子 龍太郎 氏 : はじめに、「BtoB企業を取り巻く環境の変化」について解説します。
購買プロセスの変化を示すデータとして、「顧客の67%が、営業と接触する前にオンライン上の情報で購買意思を固めている」というデータがあります。3人に2人は、オンライン上で自ら情報収集して、ツールやサービスを使うか否かの意思を固めていることになります。
その理由の1つが、販売プロセスの変化です。
以前は、リード獲得から受注までを営業が担当していました。ところがデジタル時代においては、リード獲得からリード育成まではマーケティングチーム、アポイント以降は営業チームというように、各プロセスにおける役割分担が進んでいます。アポイントに関しては、インサイドセールスの部署が担うこともあります。
そんななか、「コロナ前と比較して効果が上がった施策」を見ると、上から順に「オンラインセミナー(ウェビナー)」「ダイレクトメール」「オンライン広告」「SEO」「オウンドメディア」といった施策が並んでいます。
BtoB企業のマーケティングフローを見ると、ほとんどの企業において、セールスチームにリードをパスする前段階でマーケティングチームがさまざまな施策を展開しています。
「認知」の段階では、オンライン広告やオウンドメディア、SEOといったオンライン施策と並行して、イベントや展示会などのオフラインでの施策も展開しています。このような施策を通してリードを獲得した上で、リードをセールスチームにパスするモデルを採用している企業が多いのではないでしょうか。
このように、BtoB企業を取り巻く環境の変化として次の3つが挙げられます。
これら3つの変化を踏まえた上で、広告運用の成果を最大化するために重要なポイントを解説します。
広告運用の成果を最大化する上で重要なことは、オンラインとオフラインを融合させたコミュニケーションとその効果の見える化です。
オンラインとオフラインを融合させたコミュニケーションを実施している企業は多いと思います。しかし、その効果の見える化について「完璧にできている」と自信を持って言える企業は少ないのではないでしょうか。
効果の見える化が難しい理由は次の2つです。
現代のデータ取得における問題点は、Cookie規制が加速していることです。
なお、Cookieには1st Party Cookieと3rd Party Cookieの2種類がありますが、規制が加速している対象は3rd Party Cookieです。例えば、サイトに埋め込んだGoogle広告から発行されるCookieなどが対象になります。
Cookie規制は、2017年のApple社によるITP機能の実装を皮切りに、欧州やカリフォルニア州といった国家や州レベルの法律による規制が始まりました。Apple以外にも、Googleなどが規制を発表しています。今後さらに厳しくなるでしょう。
では、Cookie規制が進むととデータ計測にどのような影響があるのでしょうか。
例えば、ユーザーAが「アドエビス」というワードを検索し、表示されたリスティング広告をクリックしたとします。すると、ランディングページに飛んだタイミングで、広告のサーバーからユーザーAのブラウザにCookieが表示されます。
これまでは、ユーザーAがこのCookie情報を持ったまま資料請求などをすると、「コンバージョンがあった」というコンバージョンデータとCookieデータの両方がサーバーに送られていました。Cookieというキーで、「ユーザーAがこの広告をクリックしてコンバージョンしました」というデータがレポーティングされていたわけです。
ところが、仮にこのCookieが3rd Party Cookieとして制限対象になると、付与された時点で即時削除されてしまいます。
削除された状態でコンバージョンしても、「コンバージョンが発生した」というデータ自体は広告のサーバーに送られます。しかし、「広告をクリックした人がコンバージョンしたかどうか」は分かりません。
したがって、3rd Party Cookieを使ってCookieを付与している媒体なら、実際はコンバージョンが1件発生していても「広告のクリックは1件発生したけれどコンバージョンは0件でした」とレポーティングされてしまうのです。
このように、Cookieが規制されると「コンバージョンが正しく計測されない」という事態が発生してしまいます。
当社では、iPhone10台を使って実際の影響を調査しました。それぞれのiPhoneでSafariブラウザを開いて「アドエビス」の広告をクリックし、1日経過してからコンバージョンした際に、管理画面に何件コンバージョンされるのかを調査したのです。
すると、10件コンバージョンしたうち4件しか反映されませんでした。
このケースでは、6件のコンバージョンが正しく計測されませんでした。せっかく大事な広告予算を投資して広告を出しても、計測されなければCPIが悪く見えますし、正しく投資をしていても「この施策は奏功しなかった」と判断されてしまうかもしれません。
Cookieの規制は、知らないうちにマーケティング活動を侵食します。コンバージョンデータが欠損した状態でPDCAを回している可能性が高いからです。
したがって、まずは正確なデータを蓄積できる環境整備が重要です。正確なデータをもとに、スピーディにPDCAを回していきましょう。
続いて、環境を整えた上でどのようなデータ分析を行えば成果を最大化できるかを説明します。
当社では、マーケティングの成果と売上情報をつなげてPDCAを回すことが重要だと考えています。
こちらは、一般的なマーケティングファネルです。
「顧客獲得」におけるCV(コンバージョン)が、BtoBマーケティングにおけるリード獲得になります。リード獲得後は、アポイントの獲得から契約という流れがオーソドックスな流れです。
リード獲得に至るまでに、リスティング広告やSEOなどの施策を行います。その過程で、さまざまなマーケティングツールを活用して集めたレポートなどのリード情報を蓄積します。インサイドセールスチームがいる場合は、電話やメールの結果やアポイントの結果などの情報も集まります。
さらに、その後営業において集まって来る顧客情報や売上情報は、基幹システムやCRMで管理している企業が多いと思います。
このマーケティングファネルのリード獲得までとそれ以降を色分けした理由は、多くの企業でマーケティングのデータと基幹システム・CRMのデータが分断された状態だからです。
当社もかつては、赤色の部分は「アドエビス」で管理、青色の部分は「Salesforce」で管理という状態で、データが分断されていました。
データが分断されていると、どのマーケティング施策がどれだけのリードを獲得したかは分かっても、その先の「LTVの高いお客様や成約いただいたお客様がどのマーケティング施策から来られたのか」が分かりません。そうすると、どこに投資し、何を改善すれば売上が伸びるのか不明なままです。
その結果、「施策別の費用対効果が分からない」と悩むことになります。数字を報告しても、「で、いくら売上につながったの?」「今の予算は本当に適正なの?」といった質問に回答できません。
ひいては、今まで以上の予算の確保が難しくなります。「新しい施策でリードを獲得して、そこから売上につなげるぞ」と意気込んでも、それを実証できなければ新施策のための予算を確保できず、リードも伸ばせないという悪循環に陥ってしまいます。
このため、マーケティングのデータと基幹システム・CRMのデータをしっかりとひも付けることが、成果の最大化に必要なデータ分析となります。
これは、データの分断を打破するためのアウトプットのイメージです。ここではメディア別に分けています。
リードの獲得からアポイントに何件つながったか、成約には何件つながったのか、メディアごとに一気通貫で確認できるレポートです。
例えば「Facebook」を見ると、コンバージョンは高い一方で、他媒体と比べて成約はあまり伸びていません。コンバージョンだけ見ると高いかもしれませんが、成約のデータに照らすと、「Facebookへの予算投資は抑制して他に投資しよう」という判断ができます。
このように、成約につながっている施策やLTV(継続率)の高いお客様をもたらす施策を把握できるため、改善点の検討や予算投資の意思決定を行いやすくなります。
どの施策がどれだけの売上を作っているのかを可視化できますし、施策の有効性が伝わりやすいため、予算を確保しやすくなります。
こちらは、SBペイメントサービス様の事例です。このような形で、施策に投資した結果、リード数だけでなく受注につながった件数や売上までも可視化しつつ、メディアごとに分けて成果を把握できる仕組みを整えておられます。
ここまで、「データが信用できなくなる時代への対応」と「BtoBマーケティングの成果最大化に必要なデータ分析」について解説してきました。
Cookieの規制が進んでいる昨今、BtoBマーケティングにおいても少なからず影響があります。まずは正確なデータを蓄積できる環境を構築しましょう。
さらに、売上や利益、事業成長などの事業目標から逆算したデータを用いてPDCAを回すことも重要です。マーケティングのデータと売上情報・顧客情報などのデータが分断されている場合は、これらのデータを相互にひも付けて分析しましょう。
株式会社イルグルム https://www.yrglm.co.jp/
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■対象:サービス紹介がメインのプログラムではなく、BtoBマーケター向けにナレッジやノウハウを紹介する内容の今後開催予定セミナー。
※サンプル:https://be-marke.jp/categories/seminar-report
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