基本ノウハウ
近年、BtoBマーケティング業界で流行を見せている非対面の営業活動「インサイドセールス」。非対面の営業活動と言うとテレアポを思い浮かべる方もいるかもしれませんが、両者には違いもあり、インサイドセールス導入検討時にはその意味を正しく理解することが重要です。
そこで今回はインサイドセールスの概要や導入により期待できる効果などを解説していきます。インサイドセールスを導入すべきかどうかを判断できるように、基礎知識を学びましょう。
最初に、インサイドセールスの定義やテレアポとの違い、注目されている背景などインサイドセールスの基礎知識を解説していきます。
「インサイドセールス」とは見込み客に対して、電話やメール、SNS、Web会議システムなどを活用して非対面で行う営業活動及びその部門のことです。企業によってはクロージング(受注獲得)までインサイドセールスが担当する場合もありますが、この記事では、見込み客へ電話やメールなどでアプローチをかけ、見込み客のニーズを整理したり、関係構築をしてアポイントを取ったりといった、分業体制下のインサイドセールスについて解説します。
インサイドセールスが得た情報は、実際に商談・契約を担当する「フィールドセールス」へと引き継がれ、フィールドセールスはインサイドセールスの情報を基に商談を進めます。また、そもそもインサイドセールスがアプローチする見込み客は、商品・サービスを認知させ、興味・関心を持ってもらう役割の「マーケティング」が創出したものです。
以上、インサイドセールス・フィールドセールス・マーケティングの役割をまとめると下記の通りになります。企業によってそれぞれの担当業務は異なりますが、大まかな区分として押さえておきましょう。
インサイドセールスとテレアポは、目的や成果指標が異なります。
目的 | 成果指標 | |
---|---|---|
インサイドセールス | 「アポイントを取ること」「見込み客のニーズ把握」など企業ごとに自由に決められる | 目的に応じて異なる |
テレアポ | アポイントを取ること | アポイント獲得数 |
アポイントを取ることが目的のテレアポに対して、インサイドセールスの目的は、テレアポと同じ「アポイントを取ること」も含めて多岐に渡ります。言い換えると、テレアポは「インサイドセールスの営業方法の一つ」と言えるでしょう。
なぜインサイドセールスがよく聞かれるようになったのか。ここではインサイドセールスが注目されている背景について以下3つを解説します。
少子高齢化や働き方改革などによる影響により、企業は慢性的な人手不足に陥っています。そのため、限られた人材で効率的に営業成果を上げることが求められるようになっています。加えて、営業担当者が新規開拓~契約まですべてのプロセスを担当する営業スタイルについて、「業務量が多い」「営業成績にバラつきが出てしまう」などの課題が意識されるようにもなりました。
このような背景の下、企業はアポイント取りや顧客ニーズ把握などを担当するインサイドセールスを導入し、実際に商談を行うフィールドセールスとの分業化を進めることで、営業効率化を図り、人手不足による課題を解決しようと考え始めたのです。
THE MODELとは、株式会社セールスフォース・ジャパンの成長を支えている、インサイドセールスを含む営業プロセスの仕組み・モデルのことです。
THE MODELではセールスフォース社のような商材、サブスクリプション型モデルが採用され、相対的に導入ハードルが低いSaaS(サース)商材を題材としています。数億円規模の商材とは異なり、短期的な受注単価が低いので営業の効率化が求められます。そのため多くの見込み客に対して同時に、非対面で案件創出活動を行うインサイドセールスとの相性が良いです。このTHE MODELの流行もあり、インサイドセールスは注目を集め出しました。
新型コロナウイルス感染拡大により、対面での営業を控え、非対面での営業にシフト及び注力する企業が増えました。こうした背景の下、電話やメールなど非対面で営業活動をするインサイドセールスに注目が集まりました。インサイドセールスであれば、感染リスクを抑えながらも効果的な営業活動を継続することができます。
インサイドセールスは以下2つのパターンに分けられます。
問い合わせを受けた見込み客へアプローチするのが「SDR」、こちらから能動的に新規開拓をしていくのが「BDR」です。それぞれ詳しく解説します。
SDR(Sales Development Representative)とは、「反響型」とも呼ばれ、基本的には問い合わせを受けた見込み客を対象に営業活動を実施する手法ないし組織のことです。SDRでは、担当者が資料請求や電話問い合わせを行った見込み客へアプローチを行い、ニーズを捉えた上でアポイントを取っていきます。
BDR(Business Development Representative)とは、「新規開拓型」とも呼ばれる、営業手法ないし組織です。BDRではSDRと異なり、問い合わせや利用履歴のない新規の見込み客に対してアプローチをしていきます。ターゲット企業へ能動的に営業をかけるため、上手くいけば大きな成果が期待できる点が特徴です。
続いて、インサイドセールスを導入することで期待できる効果について解説します。下記5つのいずれかにニースを感じている方はインサイドセールス導入を積極的に検討しましょう。
インサイドセールスは、会社の中で初めて顧客と直接やり取りします。つまり、顧客の一次情報を吸い上げる部門ということです。インサイドセールスを導入すると、吸い上げた情報を基に、より有効なアプローチができるようになります。
顧客の一次情報はマーケティングやフィールドセールス双方へと共有することで、より効率的な営業活動につながります。例えば、なかなか受注できない見込み客の多くが共通のLPから来ていることが分かれば、それをマーケティング部門へ共有し、LPの改善を進められます。また、フィールドセールスへあらかじめ顧客の細かいニーズを共有しておけば、商談もスムーズに進むでしょう。
インサイドセールスは、見込み客とのやり取りに専念するため、一人の営業担当者が行うよりはるかに多くの顧客へアプローチ可能です。新規開拓~契約までを一人の営業メンバーが担当する場合、提案資料制作や商談などの業務の合間に見込み客へアプローチすることとなり、接触できる数は限られます。インサイドセールスを導入すれば、単純にアプローチできる数が増えるだけでなく、営業担当者がアプローチしなかったであろう見込み客へ接触することもあるかもしれません。
インサイドセールス導入により、見込み度の高いアポイントのみをフィールドセールスへ引き継ぐ体制を整えられるため、成約率が向上します。
従来の、一人の営業担当者がすべての営業プロセスを担うスタイルの場合、アポイントの見込み度合いに関わらず、すべてのアポイントに対応しなければいけません。こうした場合、一人の見込み客にかけられる準備時間は少なくなり、商談に失敗する割合が増えてしまいます。
一方、インサイドセールスが見込み客と関係を構築し、アポイントを質の高いものに昇華させることで、フィールドセールスの成約率向上が見込めるのです。
インサイドセールスにおいては、例えば「困っていることを相談されたら見込み度A」など、見込み客からのシグナルと対応する見込み度合いをできる限りマニュアル化したり、コミュニケーション方法をある程度標準化したりと、業務の属人化を防ぐ取り組みができます。
一方、新規開拓~契約までを一人の営業担当者が担当する場合、見込み度合いの判断や見込み客とのコミュニケーション全般がその担当者の力量に依存してしまいます。
インサイドセールスの導入は、営業の属人化に悩む企業にとって大きなメリットと言えるでしょう。
インサイドセールスは新人育成の機会及び時間を確保できるほか、サポートしやすいため、新人育成を効率的に進められます。
見込み客へのアプローチをメイン業務とするインサイドセールスは、フィールドセールスと比べて顧客とのコミュニケーションを取る機会が多く、新人に実戦経験を効率的に積んでもらえます。また、移動や準備の時間がかからないため、新人育成の時間を多く確保できるでしょう。
加えて、インサイドセールスでは、顧客とアポ取りやニーズの聞き取りなど高度なやり取りをする場合にも、隣に座るベテラン社員からサポートを受けられます。
このように機会・時間・サポートの3つの面からインサイドセールスは新人育成にメリットがあるのです。
インサイドセールスで効率的に効果を上げるためには活用ツールの導入も重要です。ここではインサイドセールスで活用される下記6つのツールを紹介します。
(1)名刺管理ツール
(2)MA
(3)SFA・CRM
(4)インサイドセールス管理ツール
(5)オンライン商談システム
(6)CTI
「名刺管理ツール」はその名の通り、紙の名刺をデジタルデータとして管理・活用するツールです。名刺管理ツールを使えば、名刺をわざわざ手入力する必要がありません。スマホのカメラやスキャナーなどで名刺をスキャンすれば、高い確度でデジタルデータとして変換・保存してくれます。名刺管理ツールの中には、名刺管理に加え、見込み度の高い顧客を発掘してくれるツールもあり、インサイドセールスで導入及び活用できます。
関連記事:名刺整理の方法は?おすすめ名刺管理アプリ5選と選び方
「MA(マーケティングオートメーション)」とは、マーケティング活動の自動化及び効率化を実現させるためのツールです。見込み客の一元管理やメールマーケティング機能、見込み度合いの可視化などの機能があります。MAを活用すれば、見込み客の興味・関心を的確に把握した上で、受注確度の高い顧客のみを適宜フィールドセールスへ引き継げます。MAについてより詳しく知りたい方は「MA(マーケティングオートメーション)とは?機能や選び方のポイントを解説」をご覧ください。
関連記事:インサイドセールスがMAフル活用のために押さえたい機能とポイント
「SFA(セールス・フォース・オートメーション)」は、営業支援システムとも呼ばれ、顧客の一元管理や案件管理、行動管理など営業を支援する機能を搭載しています。「CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)」は顧客関係管理とも呼ばれ、顧客との関係及びコミュニケーションを管理するツールです。
インサイドセールスにおいてSFA・CRMを使えば、テレアポや商談の回数、商談内容などを記録でき、スムーズかつ的確な見込み客の情報共有及び効率的な営業活動につながります。SFAについては「SFAとは? 必要性や現場に定着させるためのコツを紹介」で詳しく解説していますのでぜひご覧ください。
「インサイドセールス管理ツール」には、インサイドセールスの業務効率化を実現させる機能が備わっています。例えば、見込み客のリスト作成やタスク管理、メール一括配信機能などが挙げられます。インサイドセールス管理ツールの導入により、情報の入力漏れの防止が期待できるほか、次に何をするべきかを通知してくれるアラート機能もあるため、アプローチのし忘れを減らすことができるでしょう。
「オンライン商談システム」は、対面ではなくオンライン上で商談をするためのツールです。オンラインで商談ができるほか、商談履歴の保存や自動で議事録を作成する機能などを搭載している場合もあります。電話やメールだけでは伝えきれない商品・サービスの魅力のアピールに役立ち、受注率の改善も期待できます。
「CTI(コンピュータ・テレフォニー・インテグレーション)」は、コンピュータと電話・FAXを融合させたシステムのことです。CTIには見込み客との通話を録音できる機能や、SFA・CRMと連携する機能があります。SFA・CRMとの連携により、見込み客の見込み度合いや進捗状況により最適なタイミング・内容でアプローチをかけることも可能になります。
関連記事:CTIとは?機能・導入メリット・おすすめツール・システム紹介
最後にインサイドセールスを導入した後にぶつかりやすい課題とポイントを解説します。
課題 | 注意すべきポイント |
---|---|
マーケティング・フィールドセールスとの連携が取れない | ・全体像を明確にする・各ポジションの役割を明確化する |
顧客情報のデータが蓄積されていない | ・ツールを導入する・録音機能のある電話を設置する |
電話やメールに全く反応がない | ・初回接触を丁寧に対応する・なるべく早くフォローの連絡を入れる・見込み客の状態に合わせた情報を準備・提供する |
インサイドセールスはマーケティングがつくった見込み客にアプローチし、フィールドセールスへ引き継ぐ役割がありますが、連携面で課題が生じるケースがあります。例えば、インサイドセールスとフィールドセールスの間で見込み客の情報共有が滞り、せっかくフィールドセールスへ見込み客を引き継いだとしても、効果的なタイミングでアプローチがなされない、そもそも接触をしないケースも起こり得ます。
ここではこうした連携面での課題に直面しないために気をつけるべき以下2つのポイントを解説します。
インサイドセールスを導入した目的や課題などを共有し、インサイドセールスを含めた組織の全体像を明確にすることが大切です。
「なぜインサイドセールスを導入したのか」「導入することで何を達成したいのか」など、インサイドセールスの組織に対する立ち位置(全体像)を丁寧に整理・共有しないと、フィールドセールスから「新規見込み客のアポイントを貰えたけれど、忙しいし、優先順位は低めで対応しても良いか」などと思われてしまう懸念もあるからです。
会社全体で効率的に成果を生むためにも、全体におけるインサイドセールスの立ち位置を明確化し、会社におけるマーケティング・インサイドセールス・フィールドセールスの全体像をはっきりさせるようにしましょう。
連携面での課題へは、運用ルールを作り、マーケティング・インサイドセールス・フィールドセールス、それぞれの役割を明確化することも重要です。それぞれの役割を明確化することで、業務の重複や漏れがなくなったり、スムーズに連携できるようになったりと、それぞれの業務に集中できるようになります。会社の実情に合わせて以下のように役割分担を工夫しましょう。
部門 | 役割 |
---|---|
マーケティング | Web広告やオウンドメディアなどを通じた見込み客の創出 |
インサイドセールス | 商談・アポイントの創出 |
フィールドセールス | 商談~契約までの対応 |
2つ目の課題が「顧客情報のデータが蓄積されていない」です。インサイドセールスがより効果的なアプローチをするためには顧客情報の蓄積が重要です。ある程度の情報がないと、インサイドセールスとしてもどのようにアプローチをすれば良いのか見当がつきません。
そうは言っても、Excelやスプレッドシートでの管理では限界があります。ここではデータの蓄積に役立つ以下2つのポイントを解説します。
顧客情報のデータ蓄積に対する課題については、SFAやCRMなどのツールの導入が有効です。SFAやCRMであれば、顧客情報の一元管理ができるほか、商談の進捗及び状況などを誰でも確認できます。
録音機能のある電話を設置することも、データを蓄積するために役立ちます。録音機能のある電話を利用すれば、情報入力のときに電話内容を確認できます。また、電話内容を聞き直せば不正確な情報入力の予防につながります。
インサイドセールスを導入して電話やメールでアプローチをかけても、なかなか反応がないこともあります。顧客から反応をもらうため、以下のポイントに留意してください。
初めて見込み客とコミュニケーションを取る「初回接触」は重要です。そもそも担当者と電話でつながること自体がラッキーなことにもかかわらず、初回に丁寧な対応をせず、悪印象を持たれてしまっては2回目はありません。丁寧な対応に加え、どれだけ有益な情報を提供できるかも重要です。
見込み客からの反応がない場合、なるべく早くフォローの連絡を入れられないか、連絡のタイミングも検討しましょう。
見込み客は複数の会社を同時に比較・検討しています。その状況でフォローの連絡が遅いと、それだけで比較対象から外されてしまうリスクがあります。例えばWebサイトへのアクセスが確認できたらすぐに連絡するなど、フォローを入れる基準を設けると良いでしょう。
見込み客の状態に合わせた情報の準備・提供をすることは、反応を貰う上でも非常に重要です。例えば、情報収集している段階の見込み客へ、自社のサービスを一生懸命アピールしたところで、見込み客からは「こちらの立場に立って説明してくれない企業なんだ」と思われてしまう恐れがあります。コミュニケーションを取り、見込み客の状態を正確に把握した上で、情報を準備・提供するように心掛けましょう。
電話やメールなどを通じて営業活動をするインサイドセールス。インサイドセールスはマーケティングとフィールドセールスをつなぎ、より大きな成果を目指すために重要な立ち位置にいます。
一方、ただやみくもにインサイドセールスを導入しても、連携面や見込み客からのレスポンス面で課題が生じるケースも少なくありません。インサイドセールスの導入検討時には、そういった課題に対する対処法も併せて考えておくと良いでしょう。