基本ノウハウ
企業の安定した成長を実現するために欠かせないのが、新規開拓です。しかし一口に新規開拓と言っても、その手法にはさまざまなものがあり、それぞれ特徴も異なっているため、適材適所の取り組みを行っていかなければなりません。ここでは、新規開拓の概要や代表的な種類・特徴などについて、詳しく解説します。
新規開拓とは、これまで取引が無かった新たな顧客を獲得するために行う営業活動のことです。新規営業や新規開拓営業などとも呼ばれ、既存顧客に対して行うルート営業の対極にある営業活動と言えるでしょう。
新規開拓の大きな強みは、新たな取引先を開拓することによる売上の増加です。今まで0円だったところから新たな売上が発生すれば、企業にとって大きなメリットとなるのは間違いありません。さらに最初の取引を成功させることによって、今後長く取引を継続してもらえる可能性も出てきます。
また新規開拓によって取引先を増やしておくことは、万が一既存顧客との取引継続ができなかった場合のリスクヘッジにも繋がります。新規開拓を行っていなければ、もしも既存顧客の一社でも取引を継続しないとなった場合、その分がそのまま損失となってしまうでしょう。
企業にとって新規開拓とは、売上を伸ばしリスクを回避する、企業経営を支える営業活動なのです。
新規開拓の手法は、企業から見込み顧客にアプローチする「アウトバウンド施策」と見込み顧客から企業にアプローチしてもらう「インバウンド施策」の2種類に大きく分けられます。ここからは、アウトバウンド施策とインバウンド施策の具体的な8つの手法の概要やメリットについて解説していきます。
アウトバウンド施策とは、企業から見込み顧客にアプローチする営業スタイルのことです。企業側が、営業リストなどから営業する相手を選びアプローチできるのが特徴です。また、企業や商品・サービスのことを認知していない相手に積極的に働きかけることで、新規顧客の開拓ができるのがメリットです。ただし、相手が必ずしも商品・サービスを必要としているわけではないため、アポイントを獲得するのが難しい傾向があります。
アウトバウンド施策には飛び込み営業やテレアポ営業、メール・DM営業、レター営業といった手法が存在します。それでは、その内容やメリットを具体的に見ていきましょう。
事前にアポイントを取りつけず、企業に直接訪問するのが飛び込み営業です。商品・サービスを知らない相手に直接アプローチできる可能性があり、対面でコミュニケーションを取りながら詳しく説明できるというメリットがあります。また、商品の実物や資料を見せながら営業できるのも特徴の一つでしょう。営業を受け入れてもらえれば、その熱意を買ってもらえたり、信頼してもらえたりする可能性もあります。このように、飛び込み営業は新規開拓のために重要な手法であると言えます。
ただし、アポイントを調整せずに訪問するため、担当者が不在であったり断られたりするケースも多々あるようです。コロナ禍では突然の訪問を快く思わない人もいるため、注意が必要でしょう。
テレアポ営業もアウトバウンド施策の代表的な手法です。営業リストから企業に電話をかけて、商品・サービスの紹介をしたり、資料送付やアポイントのきっかけをつかんだりするために行います。
直接訪問せずに電話で営業するため、飛び込み営業に比べて営業効率が良く、直接コミュニケーションを取ることで相手に必要な情報を十分に伝えられるというメリットがあります。また、電話で見込み顧客の課題をヒアリングし、課題を解決するソリューションとして商品・サービスを紹介することで、アポイント獲得の確率を高めることもできるでしょう。
一方、担当者が不在であったり断られたりするケースも少なくないため、テレアポのテクニックを磨きながら根気よく数をこなしていく姿勢が求められます。
メールやDM、見込み顧客の問い合わせフォームでアプローチする営業手法です。見込み顧客リストのメールアドレス宛に、商品・サービスの案内やアポイントメントの依頼を送ることで、アポ獲得につなげます。メールアドレスが分からない相手にはハガキのDMを送ったり、問い合わせフォームから連絡したりします。
一度に大量の相手に連絡を取ることができるので効率的ですが、直接コミュニケーションを取れないため深い話や提案はできません。相手の興味をひく件名や文面、DMの紙面づくりが重要になります。また、メールやDMを送り相手に認知してもらった上でテレアポすることで、担当者につながる可能性を高められるでしょう。
メールが一般的になる前によく行われていたのがレター営業です。担当者宛に手紙を送る営業手法で、メールや電話での営業が一般的な時代だからこそ、競合と差別化できるスタイルだとも言えます。
担当者の名前つきで手紙を出せば必ず手元に届きますし、手紙は珍しいので中身に目を通してもらえる可能性もあります。ただし、手書きの手紙の場合は作成に時間がかかるので、厳選した相手に対して効果的に使うと良いでしょう。手書きの手紙だからこそ伝わる誠意もありますので、他の施策と併用しながら活用するのをおすすめします。
インバウンド施策とは、アウトバウンド施策とは逆に、見込み顧客の方から自社にアプローチをしてもらえるようにする営業スタイルのことです。
近年はインターネットが普及し、誰もが簡単に情報を収集できる時代になっています。そのため見込み顧客は、何か課題があった際に営業担当からの情報を待つということはせず、自ら情報を集め行動を起こすようになってきています。BtoBの世界でもその傾向は顕著であり、アウトバウンド施策によってアプローチをしたタイミングで、既に見込み顧客がそれらの情報を獲得しているケースも珍しくありません。
以下に、代表的なインバウンド施策やその特徴について紹介していきましょう。
広告運用とは、看板やテレビ、Webといったさまざまな広告媒体を用いて、新規顧客を獲得する方法です。
広告運用は、広告を載せる媒体によってさまざまな層にアプローチできるのが大きな強み。例えば看板を用いれば、そのエリアで活動する人々にアプローチすることができますし、テレビのようなマスメディアを用いれば、日本全国の見込み顧客をターゲットにすることができるでしょう。一方でWeb広告などでは、年齢や性別などを絞って広告を出すこともできるため、より成約につながりやすい見込み顧客を狙うことが可能です。
自社でサイトを運営し、そこで見込み顧客の興味関心を得ることで新規開拓を行う手法が、オウンドメディア運用です。
例えば歯医者さんを探すとき、名前や住所しかHPに載せていない歯科医院と、「虫歯予防の方法」や「歯周病の危険性」、「治療のスタイル」などの情報発信をしている歯科医院とでは、どちらの方が診察してもらいたいと思えるでしょうか。
このように、見込み顧客が欲しがるであろう情報を自社サイトなどのオウンドメディアで発信することによって、検索エンジンから自社やサービスを発見してもらえたり、興味を持ってもらえたり、比較検討で優位に立てるようになったりなど、さまざまなメリットをもたらしてくれるのが、オウンドメディア運用です。
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Webやオフラインでセミナーを開催し、そこに訪れた見込み顧客に営業を行うセミナー運営という方法もあります。
セミナー運営を行えば、サービスの魅力をじっくり時間をかけて行えるのはもちろん、そもそも情報収集に熱心であったり、具体的な課題を持った人が参加するため、確度の高い見込み顧客と出会うことができ、成約の可能性を高めることができるでしょう。
セミナーの中身となるコンテンツをどうするのかはしっかりと検討しなければなりませんが、効果的なセミナーを実施できれば、新規顧客の獲得や自社やサービスの認知度向上に大きく貢献してくれるはずです。
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FacebookやTwitter、InstagramといったSNSを用い、自社アカウントによる情報発信を行ったり、SNS用の広告出稿を行うのがSNS運用です。
有益な情報を発信していけば、企業のイメージアップにつながり、ファンの増加や新規顧客への成長を期待することができるでしょう。情報発信の頻度や、発信する情報の質などにもしっかりこだわっていくことが大切です。
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アウトバウンド施策やインバウンド施策の営業で新規開拓を成功させるためには、ただやみくもにアプローチするのではなく、相手に合わせて戦略的にアプローチすることが必要不可欠です。ここからは、新規開拓を成功に導くためのポイントを紹介します。
効率的に相手と接触するためにも、見込み顧客になる可能性のある企業情報をまとめた営業リストを作成することをおすすめします。既存顧客の業界や規模といったデータなどから、受注確度の高い企業群を予測してリスト化すれば、精度の高い営業リストとなるはずです。また、リストの量が少なければすぐに枯渇して営業施策を打てなくなってしまうため、十分な量を確保することも重要です。
営業リストはただ見込み顧客の住所や電話番号を記載するのではなく、付帯情報も添えておくと効果的な営業ができるようになります。例えば名刺交換をした場所であったり、参加したセミナーの内容であったりと、一言記載しておくだけでスムーズにコミュニケーションを取れるでしょう。有効な営業リストを作るためにも適切に顧客管理を行い、営業リストを社内共有する場合も重複営業が発生しないような管理が求められます。
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新たな顧客を生み出す新規開拓は、信頼関係を一から構築しなければならないため、既存顧客に対するルート営業よりもハードルは高くなっています。
そのため、まずはしっかりと見込み顧客の情報や課題を理解するところから始めましょう。その上で、課題解決に向けて自社ができることを提案していくことが大切です。
そうしたステップを踏まず、一方的に商品やサービスを勧めても、それはただの押し売りにしかならず、成約には至りません。
見込み顧客の数だけ課題があり、それによって提案すべき解決策も異なります。相手の状況、悩みに合わせ、しっかりとカスタマイズされた提案を行うことが、新規開拓には必要不可欠です。
新規開拓営業のための具体的な施策やポイントについて解説してきました。商品・サービスを認知していない可能性のある相手にアプローチできるアウトバウンド施策と、情報収集している担当者に効果的にアプローチできるインバウンド施策を併用することで、新規開拓できる可能性が高まるでしょう。企業の売上を伸ばしてリスクを回避するためにも、戦略的な新規開拓営業を行ってください。