基本ノウハウ
広報担当者の重要な業務の1つが、プレスリリースの作成です。より魅力的で興味を引きつけられるプレスリリースを作成することで、多くのメディアに取り上げられ、生活者やクライアント、株主などへ周知させられます。では、メディアに掲載されるプレスリリースはどのように作成すれば良いのでしょうか。今回はプレスリリースの書き方について、書き方のポイントからメディアに掲載されるコツまで、具体例を交えて解説します。
ビジネスメールに一定の型があるように、プレスリリースにも基本的な型があります。以下がプレスリリースの基本構成をまとめた簡易的なテンプレート画像です。
ここではプレスリリースの基本構成を押さえておきましょう。
プレスリリースの冒頭には、「報道関係者各位」「プレスリリース」という文言に加えて、「日付(発信日)」「発信者」を記載しましょう。これらはビジネスメール冒頭の「いつも大変お世話になっております。」と同様に、プレスリリースの定型であるため、必要以上に加筆する必要はありません。
プレスリリースの内容を魅力的に伝えるタイトルを記載します。日々多くのプレスリリースに目を通すメディア関係者に本文を読んでもらうためには、まずタイトルで興味を持ってもらわなければなりません。一方で、インパクトを重視しすぎた結果、誇大表現にならないようには気をつけましょう。
タイトルの次に読まれるのがリード文です。リード文ではプレスリリースの要約として、リリース内容を端的に伝えます。リード文を読むだけで内容を把握できるように、簡潔にかつ分かりやすい記述を意識しましょう。
リード文の内容をより詳しく記載するのが本文です。本文には、例えば新サービスの案内であれば、サービスの概要および特徴、リリースに至った背景、今後の展望などをまとめます。画像やグラフ、動画なども活用して、視覚的にも読みやすくするのがポイントです。
文末には、プレスリリースに興味を持ったメディア関係者向けに、プレスリリースに関する問い合わせ先を添えます。内容としては、会社概要(社名・所在地・代表者など)、担当者名、連絡先電話番号、メールアドレスは必須で載せましょう。
より魅力的かつ分かりやすいプレスリリースを書くためのポイントを6つ解説します。
プレスリリースでは購入や利用を促したり、ことさらに特徴を強調したりといった広告表現は使わないようにしましょう。あくまでプレスリリースの役割は、メディア関係者が記事を書くための材料となる「事実」を伝えるためだからです。そのほか、広告ではよく使われる「すてきな」「すばらしい」といった形容表現も、判断するのはあくまで読み手のため、使用は避けましょう。
プレスリリースには、専門用語はなるべく使わず、業界外の人間でも分かる平易な言葉で記載しましょう。読み手は、必ずしも自社の業界に詳しい方とは限りません。そのため専門用語が多発するプレスリリースの場合、その時点で「理解が難しい」と判断され、そこから読まれない可能性もあるためです。専門用語を使わなければならない場合も読み手の立場に立ち、用語説明を付け加えたり、注釈を付けたりするなどの工夫をしましょう。
タイトルは、メディア関係者にプレスリリースの中身を読んでもらえるかどうかを左右する、重要な要素です。そのため読み手の興味を引きつける、簡潔でインパクトのあるタイトルにすることが大切です。
・【10周年記念】1週間限定 ファーストフード店□□が最大20%割引「○○フェア」開催!
【ポイント】「1週間限定」という期間限定感のあるフレーズと、「20%」という具体的な数字を入れている
・ 日本初 AIを活用したプレスリリース制作サービスをローンチ
【ポイント】「日本初」というインパクトのあるフレーズを使用している
ただし「日本初」や「世界初」といったフレーズは、インパクトはありますが、根拠の明示が必要になる点は頭に入れておきましょう。
本文・リード文は5W3H+1Fを活用して書くことで、情報をより具体的かつ漏れなく伝えることができます。
・ Who:誰が(どの企業が)
・ What:何を(何に取り組んだのか)
・ When:いつ(開始日や実施期間はいつなのか)
・ Where:どこで(どこで実施したのか)
・ Why:なぜ(なぜ取り組んだのか、目的や背景)
・ How:どのように(特徴は何か)
・ How much:いくら(金額はいくらか)
・ How many:いくつ(数量はいくつか)
・ Future:展望(今後の展望はどうなのか)
忙しいメディア関係者にも、負担なくかつ内容を整理しながら読んでもらえるように、5W3H+1Fを意識して文章を記載しましょう。
グラフ・図解といった画像や動画、箇条書きなどを活用して、いかに視覚的に読みやすくするのかもプレスリリースのポイントです。画像や動画などを適宜挿入することで、イメージを視覚的に伝えて、読み手の理解を促すことができます。逆に文章の羅列だけでは、読み手に「読みにくい」という印象を与えてしまうため、注意しましょう。なお「動画の用意は難しい」という場合でも、箇条書きや表組みを用いることで、視覚的に読みやすいレイアウトに近づけられます。
より説得力の高いプレスリリースにするためには、内容を裏付ける数字データや背景を添えることが大切です。数字データとは例えば、売上・販売実績や入場者数、市場規模などを指します。
以下のプレスリリースでは、環境や人に配慮した商品である「エシカル商品」について、流通額の推移が3年で約4倍になったことのほか、エシカル消費に対するメーカーの実態調査を円グラフで示しています。
参照:PR TIMES「【エシカルレポート2022】人気のエシカル商品ランキングTOP10発表 流通額3年で約4倍 エシカル商品販売メーカー7割が販売拡大に意欲的」
以下は、新入社員の育成サポートサービスの開始を伝えるプレスリリースです。サービス開発の社会的背景として、若手社員の離職問題を調査結果の引用と共に紹介しています。
参照:PR TIMES『大規模調査で見えた新入社員が経験する4つの壁 乗り越えるための育成プラン「ファーストキャリアコース」を開発』
とくに数字データについてはメディア関係者も記事に取り上げやすいため、意識して差し込みましょう。
プレスリリースの目的は、各種メディアにプレスリリースを掲載してもらうことで、多くの人に広く周知してもらうことです。また広告ではなく、記事として取り上げてもらうことで、商品やサービスへの信用度が増す効果も期待できます。ここではプレスリリースがメディアに取り上げられる4つのコツを解説します。
プレスリリースはできれば火曜・水曜・木曜日のいずれかの曜日に配信しましょう。これはメディア関係者の多くが土日休みであり、業務がたまりがちな週明け月曜日および翌週に仕事を持ち越したくない金曜日は、プレスリリースをチェックする時間とリソースが相対的に少ない可能性があるためです。なお配信する時間帯については、朝および午後イチの業務が落ち着き始める「10時~11時台」もしくは「14時~15時台」がおすすめです。
メディアはトレンドに沿ったネタやニュース性の高いネタを求めています。したがって、プレスリリースの内容もトレンドやニュース性を意識することで、メディアに取り上げられる可能性が高まります。
逆にすでに競合他社が取り組んでおり、多くの人に周知されているようなネタは、メディアにとっては取り上げる意義が薄いと判断されてしまうでしょう。その意味で、現在のトレンドは何なのか、競合他社の動向はどうなのか、アンテナを張って注視しておくことが大切です。
メディアに取り上げられる可能性を高めるために、プレスリリースはリリース内容と親和性の高いメディアへ優先して送付しましょう。親和性の高さは、例えば同業界のプレスリリースをよく取り上げているかどうか、似た内容のプレスリリースを掲載しているかどうか、などをチェックし判断します。さらに親和性の高いメディアの中でも、プレスリリースを周知したい読者層を抱えるメディアから優先的に送付する方が効率的でしょう。
メディアが記事として取り上げたときに、読者のためになる内容になっているか意識するとよいでしょう。読者が知りたいような調査結果や、お得情報、日本初の商品やサービスなどの情報になっているかどうか、読者目線で考えるのがおすすめです。
プレスリリースの3つの具体例をポイントと共に見ていきましょう。
以下は、卸事業やカフェ、ホステルなどを展開する株式会社アミナコレクションによる、施設のリニューアルオープンに関するプレスリリースです。
参照:PR TIMES『【ココロもカラダもととのえる】鎌倉の新たなお浄めスポット!買い物・体験・足湯が一つになった「お浄めミュージアム 鎌倉」が誕生』
ポイントは、画像をふんだんに使い、視覚的に分かりやすい内容になっていることです。またリニューアルポイントを箇条書きで示した上で、順に各ポイントを解説している点も、読み手としては情報が整理されているため、読みやすさを感じることでしょう。
以下は、アパレルブランドを運営している株式会社フクダによる、新商品の干し芋「moymo(モイモ)」発売に関するプレスリリースです。
参照:PR TIMES『おいも持ってゴー!やさしい甘みの癒やしのおやつ、持ち歩くほしいも「moymo」発売!』
ポイントは、「おいも持ってゴー!」や「持ち歩くほしいも」といった興味が引きつけられるタイトルです。読み手の「何だろう?知りたいな」という好奇心をくすぐるフレーズを用いています。
また本文についてもただ商品を説明するだけでなく、オリジナルキャラクターの紹介に加え、なぜアパレルブランドがmoymo(モイモ)の販売を始めたのか、その背景まで説明することでmoymo(モイモ)に関する多角的な情報を掲示している点もポイントです。
以下は、amazing collegeによる、2023年4月開校予定の小学校「アメージングカレッジ」の開校および児童募集に関するプレスリリースです。
参照:PR TIMES『日本初!子どもが創る小学校「アメージングカレッジ」2023年4月、埼玉県東松山市に開校!』
ポイントは学校のコンセプトを魅力的に伝えていること。画像だけでなく動画も挿入することで、文章だけでは伝わらない、学校の特徴を読み手に訴求しています。またタイトルに「日本初!」というニュース性を盛り込んでいる点もポイントです。
最後にプレスリリースの書き方を学ぶ方法を2つ紹介します。
プレスリリースの書き方を学べるセミナーや講座を受講で学ぶ方法があります。セミナーや講座では、例えばメディア関係者がぜひ取り上げたいと感じるポイントを、プロの講師から学べます。「プレスリリース 書き方 講座」「プレスリリース 書き方 セミナー」などのキーワードで検索すれば、いくつか候補を見つけられるでしょう。
動画サイトでもプレスリリースの書き方について学べます。例えば、YouTubeチャンネル「広報PR大学・坂本宗之祐」では、元読売新聞社会部記者の坂本宗之祐氏が、プレスリリースの基本的な書き方やメディア関係者の目に留まらないプレスリリースの特徴などを解説しています。その他にも、決して多くはありませんが、プレスリリースの書き方を配信している動画はいくつかありますので、気になる動画でプレスリリースの書き方を学んでみても良いでしょう。
プレスリリースはタイトルやリード文、お問い合わせ先など5つの要素で構成されます。書き方としては、広告表現は使わずに、動画や画像を活用しながら、数字データ・社会的背景を差し込むことなどがポイントです。
またプレスリリースはメディアに取り上げられてこそ、その真価を発揮します。魅力的な内容にするのはもちろん、戦略的に配信日や送り先を選び、よりメディアに掲載されるように工夫してみてはいかがでしょうか。