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BtoBマーケティングでもペルソナを作成しよう!設定の重要性と方法を解説

BtoBマーケティングでもペルソナを作成しよう!設定の重要性と方法を解説

ペルソナ実在するかのようにプロフィールを作り込まれた架空の顧客像を指し、BtoBマーケティングでも広く活用されています。ペルソナは関係者の意思統一に有効で、マーケティングの戦略設計においても重要な役割を果たすのです。しかし、ペルソナの設定にはある程度の工数がかかるため、「どうしてペルソナを作らなければならないのか」と疑問に感じる方や、「BtoBマーケティングでのペルソナはどう設定すれば良いのか」など作成方法が分からないという方も多いでしょう。

本記事では、BtoBマーケティングにおけるペルソナの重要性や、設定のポイント・手順を解説します。また、ペルソナ設定に時間を割けない方向けに、簡易的なペルソナ設定の方法も紹介します。本記事を参考にペルソナを設定し、戦略設計に活用してください。

目次

1.BtoB事業のペルソナとは?

ペルソナはプロフィールを作り込まれた架空の顧客像を指します。

ペルソナはターゲットと混同される場合がありますが、両者は別物です。ターゲットは企業がねらう市場のセグメントを指し、ペルソナはそのセグメント内にいる代表的な人物像をイメージして実在人物かのようにプロフィールを作り込みます。ペルソナに関するBtoC事業のペルソナの作り方も含めた詳細は、「ペルソナの作り方とは?徹底解説【無料設定シートダウンロード】」の記事を参照してください。

本章では、BtoB事業におけるペルソナの特徴と重要性について解説します。

BtoB事業におけるペルソナの特徴

BtoC事業におけるペルソナは「消費者」を想定するため個人情報のみで構成するのに対し、BtoB事業におけるペルソナは「企業」を相手にするため、基本的には企業情報と購買担当者の個人情報の2つを設定します。

また、個人情報も仕事関係の情報に絞られ、BtoC事業のペルソナと比べると趣味や家族構成などの情報は設定しないケースも多くなっています。これは、BtoC事業の場合は消費者の感情が大きく購買に影響するためターゲットのライフスタイルが重要である一方、BtoB事業の場合は「自社の課題解決に役立つかどうか」が購買の判断基準であるため、ターゲットの生活習慣までは必要ないとするケースが多いためです。

BtoB事業のペルソナの例
BtoB事業のペルソナの例

画像のBtoB事業のペルソナの例では、個人情報としてユーザーの架空の名前・年齢・性別・職歴に加え、どのような性格で、現在抱えている課題は何かについてを設定しています。「どのような性格で」はBtoB事業のペルソナとしては不要に思えるかもしれませんが、ユーザーの行動イメージを可視化するため、またチームがペルソナ像を想起しやすくするために設定しています。

すべてのペルソナで同様に設定すべきというわけではなく、企業によって適切なペルソナの形は異なるため、ペルソナづくりの過程で自社に合ったペルソナの形を探していきましょう。

なぜペルソナ作成が重要なのか

ペルソナの作成は、自社製品・サービスを「誰に」届けようとしているのかを鮮明にします。

例えば、「20代、女性、会社員」というターゲットだけでプロジェクトを進めようとしても、該当する人々の数は膨大であり、業界・業種・職種も価値観も全く違います。新卒で仕事を覚え始めたばかりの22歳の女性と、7年勤務して後輩に仕事を教えている29歳の女性のどちらも「20代、女性、会社員」に該当しますが、仮に2人が同じ職業であったとしても課題感や日々必要としている情報は異なるはずです。抽象的なイメージに基づいたペルソナなき戦略設計は、誰にも刺さらない製品・サービスやコンテンツ、プロモーションを生んでしまう可能性があります。

「〇〇さん、女性、28歳、株式会社△△、マーケティング部所属、展示会への出展とメールマガジンの運用とWebサイトの管理更新が主な業務、展示会以外の新たな接触チャネルの創出に課題を感じているが多忙のため動けていない」といったように、一人の人物をイメージできるように詳細に作り込むことで、「誰に」届けるためのプロジェクトであるかを鮮明にし、社内で共通認識を持って施策を行えるようになるのです。

2.BtoBマーケティングにおけるペルソナのメリット

自社の商品やサービスの代表的なユーザー像であるペルソナは、BtoCマーケティングの領域だけではなくBtoBマーケティングにおいても以下のようなメリットがあります。

  • 顧客理解を深められる
  • 一貫性のあるマーケティング施策を講じられる
  • 施策に関わる人との認識を揃えられる

顧客理解を深められる

ペルソナは設定する過程でユーザーに関する情報を多く収集する必要があるため、顧客理解を深められます。ペルソナは架空の顧客像ですが、作成にあたっては実態から乖離しないようにする必要があるため、常に最新の情報収集が欠かせません。自社製品・サービスの代表的な顧客像を模索するなかで、市場やニーズへの理解も同時に深められるほか、顧客を理解しようとするチームの意識も育めるでしょう。

一貫性のあるマーケティング施策を講じられる

ペルソナを設定しておくと、ユーザーのニーズにマッチした、一貫性のある施策を講じやすくなります。商品やサービスの開発、価格の設定、プロモーション方法など、BtoBマーケティングのあらゆる場面をペルソナの視点に立って考えられるようになるためです。

施策に関わる人との認識を揃えられる

ペルソナを共有しておくことで、社内のメンバーに加え、マーケティング支援会社のような一緒にプロジェクトを進める社外のメンバーとも認識を揃えやすくなります。BtoB事業では、BtoC事業よりもユーザーのイメージがしにくく、ペルソナを設定していないとメンバー間で認識に差が生まれやすくなっています。ペルソナで共通認識を形成できれば、コミュニケーションがスムーズになったり、施策の方向性のブレが生じにくくなったりといった効果が期待できます。

3.BtoBマーケティングでペルソナを設定するポイント

BtoB企業がペルソナを設定するときの4つのポイントについて解説します。

  • 実際の顧客からペルソナを考える
  • チームでペルソナを作成する
  • 定期的にブラッシュアップを図る
  • 複数のペルソナを用意する

実際の顧客からペルソナを考える

ペルソナを考えるとき、実際の顧客を参考にすることがおすすめです。ペルソナが自社の理想像になってしまうと、マーケティング施策を講じても大きな成果が期待できません。SFA・CRMにある顧客データやアンケート結果を分析し、顧客の課題感や関心ごとに関する情報を営業からヒアリングするなどして、実際の顧客の特徴をつかみながら設定しましょう。

ヒアリングのコツとして、顧客は一般的に複数の課題を抱えているため、「優先的に解決したい課題は何か」「どのようにその優先順位を決めているのか」なども聞き出すようにします。また、顧客が自社が抱えている真の課題に気づいていないケースもあるため、「なぜそうなったのか」を繰り返し尋ねて話を掘り下げていくと真の課題を見つけやすくなります。

ただし、スタートアップ企業やSFA・CRMを導入できていない企業は、顧客データが少ないため、初めから実態に即したペルソナの設定は困難です。仮説をもとにペルソナを設定した後、顧客と接触してデータを集めつつ分析し、ペルソナを改善していく必要があります。

チームでペルソナを作成する

ペルソナは1人だけで作成するのではなく、チームや他部署なども巻き込んで作成しましょう。せっかくペルソナを作成しても使われないといったケースは多くの企業に見られ、原因として「実態に即しておらず現場の社員から拒否される」「ペルソナの有効性について理解を得られていない」などが挙げられます。ペルソナ作成時にチームに対して協力を仰ぎ、現場の意見も反映しながら「自分ごと」としてペルソナに携わってもらうことで、作成したペルソナが利用されやすいようにする必要があります。

定期的にブラッシュアップを図る

ペルソナは1度作成して終わりではなく、定期的にブラッシュアップを図ります。状況にもよりますが、3カ月から半年に1回見直しの期間を設けると良いでしょう。一度作成してみたペルソナが実態から離れていたり、時間の経過につれて環境が変化し顧客像が変わったりといった状況がありえるためです。ペルソナはあくまでマーケティングで成果を上げるために利用するツールであり、作ることがゴールではありません。最新の情報を反映し、常に使えるペルソナを意識しましょう。

場合に応じて複数のペルソナを用意する

ペルソナは、場合に応じて複数作成すると効果的です。例えばABMのように売上の大きい特定企業へのアプローチを行う場合、商談担当者、決裁者、実際の使用者など役職ごとに複数のペルソナを設定しておくことで個別にアプローチ方法を検討できます。

また、自社製品・サービスを利用して解決できる課題が複数ある場合には、課題ごとにペルソナを作成することで対応策を整理できるでしょう。

ただし複数のペルソナ作成が必須なわけではありません。複数のペルソナ作成は時間がかかり、運用にも工数を要します。企業のマーケティング戦略にもよるため、必要に応じて選択するようにしましょう。

4.BtoB事業のペルソナを設定する4つのステップ

ペルソナの設定には大きく分けて4つのステップがあります。

  • 【STEP1】自社だけが提供できる価値を定義する
  • 【STEP2】ペルソナの土台となる情報を収集する
  • 【STEP3】企業情報を設定する
  • 【STEP4】個人情報を設定する

ただし、ペルソナの設定には時間がかかります。特に最初の2つのステップは調査・分析に多くの工数が必要です。十分な顧客データがあり、長期的なマーケティング戦略を検討する場合は以下の手順に沿ってペルソナを設計するのがおすすめです。一方で、短期施策のペルソナを設定する場合は5章の「短時間で簡易的なペルソナを作る方法」をご覧ください。

【STEP1】自社だけが提供できる価値を定義する

自社だけが提供できる価値は何か、自社の強みが何かを3C分析、SWOT分析、VRIO分析などのフレームワークを利用して整理しましょう。自社が何を提供でき、どんな人・企業の悩みを解決できるのかを明確にすれば、より適切なペルソナを設定しやすくなります。

【STEP2】ペルソナの土台となる情報を収集する

ペルソナ設定の土台にするユーザーの情報を収集します。収集する情報の例として、下記が挙げられます。

  • 企業の属性(業種・業界、事業内容、商材、売上高、従業員数など)
  • 社員の属性(年齢、性別、職種、役職、スキル、社歴、年収など)
  • 自社/競合製品・サービスの利用状況
  • 企業が抱えている課題
  • 社員が抱えている課題
  • 企業の社風・経営理念
  • 日々の情報収集の方法

情報の収集方法は、主に以下の3つです。BtoB事業の場合はBtoC事業ほどの収集数は見込めないものの、1名の意見であっても深掘りし仮説立てを行うことでペルソナの精度を高められます。質を重視した情報収集がおすすめです。

顧客の意見を直接収集する

自社の既存顧客・見込み顧客に対しインタビューやアンケート、ユーザーテストなどを実施して情報を収集します。3つの中で最も優先度が高い手法です。ペルソナの作成を担当しているのがマーケターの場合は、営業の商談に同行するなどして顧客から直接ヒアリングの機会を得ることで顧客の解像度を上げられるでしょう。自社内で実施が難しい場合は、外部の調査会社に依頼する方法もあります。

顧客とじかに接するチームにヒアリングを行う

営業部門やカスタマーサクセス部門など、顧客と接触する機会の多い人に顧客に関するヒアリングを実施します。顧客から直接インタビューを行おうとしてもなかなか協力を取り付けられない場合は、まず社内で得られる情報を整理すると良いでしょう。

蓄積した定量データを参考にする

SFA(営業支援システム)やCRM(顧客管理システム)などのツールに蓄積したデータを利用し、顧客の属性情報・行動情報を分析します。分析の結果顧客の傾向がつかめれば、その情報をペルソナに反映しより実態に近いペルソナを作成できます。

【STEP3】企業情報を設定する

個人ペルソナの人物像をより具体的にするため、企業ペルソナを設定します。このとき、売上高の多い複数の既存顧客の情報を掛け合わせて考えることがおすすめです。企業ペルソナは以下に挙げる項目から設定されることが一般的です。

  • 業界
  • 事業内容
  • 商材
  • 従業員数
  • 売上高 など

ちなみに、BtoCビジネスではユーザーの属性情報を「デモグラフィック」と呼ぶのに対し、BtoBビジネスでは企業の属性情報を「ファーモグラフィック」と呼びます。

【STEP4】個人情報を設定する

企業ペルソナの中で、最初に接触する担当者の個人ペルソナを設定します。個人ペルソナで設定する項目は以下のとおりです。

  • 名前
  • 年齢
  • 性別
  • 所属部署
  • ポジション
  • 決裁権
  • 業務の情報収集手段
  • 業務上の課題 など

BtoBビジネスで特に重要なのは所属部署、ポジション、決裁権、業務上の課題です。これらは、施策の意思決定に大きな影響を与えます。例えば、業務上の課題はコンテンツで狙うクエリに影響し、所属部署やポジションは、展示会とWeb広告どちらからの接触を狙うかなどを考える上で役立ちます。

また、個人ペルソナが出来上がったら、実際に顧客に接する営業社員に見せて意見を求めることで、より実態に近いペルソナを設定できます。

5.データ不足でも簡易的にペルソナを設定する3つのステップ

短時間で簡易的なペルソナを設定するステップとして以下が挙げられます。

【1】ペルソナの項目を設定する
【2】プロジェクトに関わるメンバーに項目を埋めてもらう
【3】一番イメージに近いものを話し合いながらブラッシュアップする


まずは最低限必要になりそうなペルソナの項目を決定し、プロジェクトに関わるメンバー数人にペルソナを作ってもらいます。このとき、営業社員から実際の顧客の課題や特徴を共有してもらったり、ペルソナの活用方法やゴールを共有したりすると、スムーズに作業できます。出来上がった複数のペルソナの中から、一番イメージに近いペルソナを選び、話し合いながらブラッシュアップ、修正して簡易的なペルソナを決定します。

短期施策に取り組む時や顧客のデータが集まっていない場合、4章で紹介した方法では精度の高いペルソナを設定するのは難しいでしょう。仮説をもとに簡易的なペルソナを設計した上で施策に取り組み、集まったデータから実態に即したものに段々と改良することで、精度の高いペルソナを作り上げられます。

まとめ

BtoBマーケティングにおいて、ペルソナの設定は一貫性のある施策の展開や経験者の意思統一に大きく貢献します。ペルソナが自社の自分勝手な理想像とならないよう、保有する顧客データを分析したり、顧客と接している社員にヒアリングしたりして、実際のお客様に限りなく近いものを目指しましょう。ただし、スタートアップ企業やデータを保有していない企業は、まず簡易的にペルソナを作り、段々と改善してペルソナを作る必要があります。


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BeMARKE編集部
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