基本ノウハウ
BtoB、BtoCどちらのマーケティング活動でも利用されているカスタマージャーニーマップ。マーケティング担当になりたての方は、「言葉は聞いたことはあるものの、どのように進めたらいいか分からない。」「そもそもどのような意味なのか?」と疑問を持つことも多いのではないでしょうか。
この記事では、BtoBにおけるカスタマージャーニーマップの意味や注目される背景、メリット、作り方を解説します。
カスタマージャーニーマップとは、顧客が製品やサービスを購入するまでの流れを時系列で分け、その時々の行動や感情を可視化したものです。BtoB企業でもBtoC企業でも顧客を深く理解するために活用されています。まず、カスタマージャーニーマップがBtoBマーケティングで注目される背景やBtoCとの違いについて解説します。
BtoB企業でもカスタマージャーニーマップが必要となった背景として、顧客が製品やサービスを購入するまでのプロセスが多様化していることが挙げられます。インターネットの普及によって、各企業の担当者が自分で情報を集めた上で購入に至るケースも一般的になっており、付き合いのある一社の営業担当者から情報を得て購入する従来の法人営業の常識が通用しなくなっています。
顧客に自社の製品やサービスを選んでもらうためには、適切なタイミングで顧客のニーズに沿った情報提供が必要です。そこで、顧客の行動や感情を整理し、可視化できるカスタマージャーニーマップが注目されているのです。
BtoBとBtoCのカスタマージャーニーマップでは、アプローチの方法と対象となる人数が異なります。もともとBtoCで発展してきたカスタマージャーニーマップを、そのままBtoBで活用しても効果的に設計できない部分があり、その大きな要因は購買プロセスの違いにあります。
BtoCでは、製品やサービスの検討から購買までの意思決定を主に一人で行うため、意思決定のスピードが早く、感情に訴えるアプローチが有効です。一方BtoBでは、購入の意思決定に組織の合意が必要で、一つの稟議を通すのに数週間かかるケースも見られます。製品やサービスを検討する人、決裁権を持つ人、実際に利用する人など複数の人から納得してもらう必要があるため、合理的なアプローチが重視されています。
BtoB企業がカスタマージャーニーマップを作成するメリットとして以下2つが挙げられます。
購買までに長い時間がかかるBtoBマーケティングでは、顧客の求めるタイミングで適切なアプローチを続け、顧客との関係性を築くことが重要です。カスタマージャーニーマップには、顧客の置かれている状況や感情、行動などが記載されています。カスタマージャーニーマップがあると、顧客体験を向上させる施策を立案・実施しやすく、長期的な関係構築が期待できます。
カスタマージャーニーマップを作成しておくと、顧客の行動や感情を社内で共有しやすくなります。BtoBマーケティングの施策は、デザイン、システム開発、営業など多くの部署が関わります。カスタマージャーニーマップによって社内で共通認識を持てると、一貫性のある施策を講じることが可能です。また、どの施策に取り組むべきか決める際の指標にもなり、社内メンバーが納得してプロジェクトを進められます。
カスタマージャーニーマップを作成する手順について、見本を活用しながら解説します。製品やサービスによって内容は多少変わるため、自社の状況に応じて変更して使用してください。
こちらの見本と同じ「カスタマージャーニーマップ」のテンプレートが無料でダウンロードできます。ぜひお役立てください。
「BtoBのためのカスタマージャーニーマップ【無料テンプレダウンロード】ペルソナ記入方法付き」ダウンローページ
ペルソナは、実在する顧客のデータをもとに作成する架空の顧客です。BtoBマーケティングでは、企業ペルソナとキーパーソンの個人ペルソナの2つを作る必要があります。企業ペルソナと個人ペルソナに盛り込む一般的な情報は以下のものです。実態に合わないペルソナを作成すると、誤った方向に進むリスクがあります。既存の顧客情報から共通項を見つけ適切なペルソナを設定しましょう。実際に顧客に接触しているメンバーが、「こういうお客さんいるよね」と思える設定にできると理想的です。
企業ペルソナ | 個人ペルソナ |
---|---|
・企業名 ・所在地 ・業種 ・事業 ・商材 ・売上規模 ・従業員数 ・企業の雰囲気 ・事業の課題 など | ・年齢 ・性別 ・家族構成 ・趣味 ・情報収集の方法 ・所属部署 ・役職 ・業務内容 ・勤続年数 ・権限 ・業務上の課題 など |
関連記事:ペルソナの作り方とは?BtoCとBtoBマーケティングの違いまで徹底解説【無料設定シートダウンロード】
ペルソナが決まったら、顧客が購買までにどのような段階を踏むか検討します。ここでは、以下の6項目に設定していますが、段階の設定に決まったものはないので自社の製品やサービスに合ったものを設定してください。
無関心 | 製品・サービスを知らない段階 |
認知 | 製品・サービスを認知した段階 |
情報収集 | 製品・サービスについて情報収集する段階 |
比較検討 | 他の製品・サービスと比較検討した状態 |
購入 | 実際に製品・サービスを購入した状態 |
利用 | 製品・サービス購入後の状態 |
関連記事:ファネルとは?BtoBマーケティングでの活用方法を解説
段階に合わせてペルソナが自社の製品やサービスを導入するまでの流れを設定した上で、行動や感情の変化を整理します。顧客の行動に加えて、その背景にある感情を書き出すことで、効果的な施策を考えるときに役立ちます。
また、ペルソナの行動と感情から、自社が顧客と接する機会(タッチポイント)を洗い出しましょう。商談や契約のタイミングだけでなく、購買前に触れる自社のホームページや広告、メルマガなど顧客が自社に関する情報に触れる機会すべてがタッチポイントに含まれます。
ペルソナの行動や感情、タッチポイントを洗い出したら、ペルソナの悩みの解消や行動変容につながる対応策を検討します。今まで自社が行ってきた対応策に加え、実施できていなかったものの効果的と考えられる施策も洗い出した上で、実現可能なものを整理しましょう。「ペルソナがどんな体験をできれば満足するか」という視点で考えることがおすすめです。
また、STEP4の過程で、今まで行ってきた施策の中に適切なタイミングで実施できていなかったものが浮き彫りになることもあります。適切なタイミングでの実施により、顧客の課題解決につながるコンテンツになり得るので、どの段階で実施するべきか検討が必要です。
カスタマージャーニーマップは、作成方法や利用方法を誤ると期待した効果が得られない可能性があります。以下の2つのポイントに注意して作成、利用してください。
自社にだけ都合の良いペルソナを設定すると、カスタマージャーニーマップに沿って施策を講じても成果が期待できない可能性があります。ペルソナは、実在する顧客から共通項を見つけ制作するものです。実態のないペルソナでは、施策を講じても大きな効果は期待できません。既存顧客の情報から共通項を見つけ、実態に合ったペルソナの作成を心がけてください。完成したペルソナを顧客と接する機会の多い営業メンバーなどに確認してもらうと、大きなズレを防ぐことができます。
カスタマージャーニーマップを作ることに満足してしまい、作ったまま見直さないと顧客の変化に気づかず、売上や顧客満足度の低下につながります。完璧なカスタマージャーニーマップは存在しません。施策を実施したら、現実と合っていない点はないか確認し、必要があれば改善しましょう。
カスタマージャーニーマップは、顧客が製品やサービスを購入するまでの流れを時系列で分け、その時々の行動や感情を可視化したものです。作成することで、顧客の状況に合わせた効果的な施策を講じることができるようになったり、社内の意思統一ができたりといったメリットがあります。ただし、作成・活用方法を誤ると、間違った方向に進むリスクもあります。メリットを享受するため、適切なカスタマージャーニーマップの作成を目指しましょう。