基本ノウハウ

ヒアリングシートのテンプレートを営業に活用するには

ヒアリングシートのテンプレートを営業に活用するには

営業ヒアリングに利用するヒアリングシートですが、「テンプレートを何となくで決めてしまっていた」「どのような項目があればベストなのか分かっていない」という方も多いのではないでしょうか。

ヒアリングシートは単なる質問リストではなく、顧客の考えを整理していく上でも、営業が一定の水準でヒアリングを行えるようにする上でも重要なツールです。本記事では、「そもそもヒアリングの目的は何か」という観点から、ヒアリングシートに設定したい基本的な項目や活用例について解説します。

目次

1.ヒアリングシートのテンプレートを作成すべき理由

ヒアリングにあたっては、ヒアリングシートのテンプレート作成をおすすめします。本章では、特に営業活動においてテンプレートを作成すべき理由3つを解説します。

  • 優れた営業社員のノウハウを共有するため
  • 抜け漏れなく正確に情報を収集するため
  • 仮説立てと検証を効率良く行うため

優れた営業社員のノウハウを共有するため

優秀な営業社員のノウハウを落とし込んだテンプレート作成により、新人であっても顧客理解を進められるようになります。

営業活動が属人化すると、優秀な営業社員が退職してしまった場合にノウハウが失われてしまいます。顧客理解の上で重要な「ヒアリング」の行程においても同様です。優秀な営業社員がヒアリングにおけるノウハウをテンプレートにして残すことで、テンプレートを利用すれば誰でも一定の水準でヒアリングが行えるようになります。

抜け漏れなく正確に情報を収集するため

ヒアリングシートを作成することで、ヒアリングすべき情報を抜け漏れなく、正確に収集できます。

テンプレートで収集すべき情報があらかじめ分かっていれば、すべき質問をし損ねる、不要な情報のヒアリングに時間をかけてしまうといったミスを減らせます。限られた時間内で相手から必要な情報を聞き取るためには、テンプレートで問いの内容があらかじめ整理されている状態が望ましいのです。

仮説立てと検証を効率良く行うため

3つめの理由は、効率よく仮説立てと検証を行うためです。

顧客に対して仮説を持って臨み、その仮説が正しいかを検証するためにヒアリングを行うことによって、何の考えも持っていない状態で話を聞くよりも質の高いヒアリングになります。仮説立てのためには情報収集が必要であり、テンプレートがあればそういった情報の収集・整理を効率良く行えます。

2.ヒアリングシートのテンプレートに設定する項目

営業活動におけるヒアリングの目的は、「自社製品・サービスの力で『顧客の理想』を実現できるかを見極めること」です。ヒアリングシートはヒアリングを効果的に行うためのツールであるため、顧客が抱えている課題や実現したい姿を知り、その手助けができる条件がそろっているかを判断するための項目が必要です。

自社製品・サービスのソリューション(課題解決能力)が顧客に有効かを判断するためには、顧客について深く知らなければなりません。そこで、ヒアリングの場では顧客理解のため下記について確認します。

顧客理解に必要な情報内容
理想像どんな理由(目的)で、いつまでに何をどう実現したいか。
現状どのような理由(背景)で、何が起きているか。
課題「理想像」実現のために障壁となっているものは何か。

また自社製品・サービスで顧客の課題解決が可能であったとしても、「予算」や「競合の状況」などによって条件が合わず受注に至らない場合があります。そのため「受注確度はどれくらいか」といった営業活動に重要な情報もヒアリングの対象です。

受注に必要な情報内容
受注確度予算・決裁権・競合の状況。

以上のヒアリングしたい情報を漏らさず確認するために、ヒアリングシートでは下記のように質問項目を細かく設定します。

【1】理想像  : 目指したいゴール・納期・導入予定時期
【2】現状   : 顧客情報・経緯・現状
【3】課題   : 課題に感じていること・疑問・質問
【4】受注確度 : 予算・キーパーソン・競合検討状況・次のアクション

【1】理想像

顧客が理想としている状態、あるべき姿を確認する項目です。顧客が何をどのように実現したいのか、「目指したいゴール」を具体的に聞き出します。その上で「納期・導入予定時期」についてもあたりをつけられるようなヒアリングを行いましょう。

目指したいゴール

顧客が目指しているゴール、達成したい目標を尋ねます。顧客が「もっと売上を伸ばしたい」といった漠然としたゴールイメージしか持っていない場合があるため、「製品Aの売上が15%引き上がった状態」「月の新規リード獲得数が◯◯件」といった具体的な結果に置き換えられるように話を聞きましょう。

【理想像ヒアリングのポイント】
BtoBにおいては、購買担当者の立場によっても掲げる「理想」が異なる場合があります。

  • 経営者 ⇒ 会社全体の戦略・方針に関する理想
  • 部長・課長などの決裁者 ⇒ 部門全体や事業に関する理想
  • 社員の理想 ⇒ 担当業務に関する理想

「1つ上のランクの理想を見るべきである」ことを表す画像
上のランクの理想ヒアリング

ヒアリング対象の立場よりも1つランク上の「理想」について考えながらヒアリングすれば、広い視座を持って話を聞くことができます。

納期・導入予定時期

顧客が製品・サービスの導入を現時点でどの程度具体的に検討しているのか、検討しているのであれば納期はいつ頃になるかを確認します。導入予定時期によって、顧客のニーズレベルを把握できます。本格的に検討している・具体的な時期が決まっているようであれば、ニーズレベルが高く対応優先度の高い顧客です。

情報収集段階の企業の場合は、理想像を実現するスケジュール設計を手助けしましょう。自社製品・サービス導入であればどの程度の時間がかかるのかを例示することで、顧客もイメージがつきやすくなります。

【2】現状

顧客の属性情報を含め、顧客が現在どのような状況に置かれているのかを確認する項目です。基本的な「顧客情報」と、顧客が置かれている「現状」を把握します。

顧客情報

基本的な顧客情報は、ヒアリング前にWebサイトなどを利用して収集しておきます。下記のような情報です。

  • 顧客の業界情報
  • 顧客の事業内容
  • ターゲットにしている企業
  • 競合企業

外部からでは調べきれない情報については、収集した情報をもとに仮説を立て、ヒアリング中に確かめながら修正します。業界への一定の理解がなければ仮説立ては難しいため、ヒアリング中に仮説を提示できるレベルまで理解が進んでいれば、「業界について分かっていそうだ」と相手に信用してもらえるでしょう。

経緯・現状

顧客が今どのような状況にあり、そこに至る経緯に何があったかを確認します。企業によって三者三様の返答になると考えられるため、最初は問いを絞らず、相手の思うまま自由に話してもらいましょう。話の過程で特に知りたい箇所を掘り下げていけば、想定していなかった角度の話も詳しく聞き出せます。掘り下げ方としては下記のような例があります。

掘り下げる箇所確認ポイント
プロジェクトの成功・不成功の要因企業側目線(建前)と担当者自身の目線(本音)どちらの話かを見る。
担当者施策を進める際に社内がどの程度協力的か、担当者の影響力や熱意はどの程度かを確認する。
抽象度の高い曖昧な話具体的な内容を尋ねる。

【3】課題

自社製品・サービスが顧客の課題解決に貢献できるかをチェックするため、顧客の課題を掘り下げる項目です。顧客自身が「課題に感じていること」や、顧客の「疑問・質問」から課題を探ります。

課題に感じていること

顧客が課題と認識していることは何かを聞き出します。場合によっては課題が整理できていなかったり、課題を見誤っていたりするケースもあるため、これまでに得られた顧客情報を整理しながら「この顧客の正しい課題は何か」の仮説を立てましょう。

課題を探る方法の1つとして、「理想像と現状の差分」という考え方があります。課題が分からない顧客に対しては「理想像」と「現状」について話を聞き、課題を推測するようにしましょう。しかし顧客が「理想像」と「現状」についても整理できておらず、課題を導くことが困難な場合もあります。現状を整理できていないヒアリング相手であれば、上司が日頃から課題について口にしていないかなど他の人の情報を尋ねてみて、企業全体の課題を描けるようにしましょう。

疑問・質問

顧客側から受けた製品・サービスに対する疑問、質問、懸念点を記録するスペースもヒアリングシート内に設けておきます。「顧客が何を気にしているのか」の情報は、顧客のニーズを推測する上で役に立つからです。

【4】受注確度

顧客が受注に至る可能性や、今後の対応内容について確認する項目です。具体的には「予算」の状況、「キーパーソン」、「競合検討状況」をヒアリングします。また、顧客との接触が途切れてしまわないように「次のアクション」も明らかにしておきましょう。

予算

顧客の予算の見込みが立っているか、発注可能な金額の下限~上限はどの程度かなどを確認します。顧客に信用されていれば、直接尋ねても答えてもらいやすいため、商談の過程で信頼を得られるように心がけましょう。

キーパーソン

決裁フローや、意思決定の影響力が強い部門、事業を推進している人物などのキーパーソン情報は受注の上で重要です。今後のアプローチ方法にも影響するため、キーパーソンが分かった場合は接触可能かどうかも記入するようにします。

ただし顧客に「決裁権を持っているのは誰ですか」「影響力が強いのは誰ですか」と直接尋ねることは失礼にあたります。情報を得たい場合は「決裁フローについて伺えますか」と間接的に伺うようにしましょう。

競合検討状況

顧客が現在利用している、または検討を進めている他社サービスがあるかを確認します。自社製品・サービスの受注角度を推測する手がかりにできるほか、競合の存在が分かれば差別化した自社の長所を伝えるヒントになります。

次のアクション

商談後に「誰が」「いつまでに」「何を」行うかを明確にします。この部分がうやむやに終わると、日数を置く間に話が流れてしまう可能性があるからです。顧客側がアクションを行う場合は、次のアクション内容と期日を約束し、動きがない場合には営業からアプローチをかけるようにしましょう。

3.ヒアリングシートを活用するために

ヒアリングシートをうまく生かしてヒアリングの効果を高めるために、すぐに取り入れられる3つのポイントを紹介します。

  • 商談後に顧客へ送付する
  • 事前に記入を依頼する
  • 一度作った後もブラッシュアップする

商談後に顧客へ送付する

商談後に、ヒアリングシートに記録した内容を整理し「本日の商談内容まとめ」としてメールで送付しましょう。顧客との間に認識のズレが生じていた場合、間を置かずにすり合わせができるため安心です。また商談時に打ち合わせた「次のアクション」についても自然な形で共有できるため、顧客側のリマインドとしても機能します。

事前に記入を依頼する

可能であれば、商談の一週間~数日前に顧客にヒアリングシートの記入を依頼し、最低限の情報を先に記入してもらいましょう。事前に記入してもらえれば、書かれた情報を掘り下げる形で話が進むため、実際の商談でより密度の濃い話ができます。記入の時間がなかったとしても、ヒアリングシートの内容を共有しておくだけで顧客も心構えができ、話す内容を整理しておいてくれるかもしれません。

一度作った後もブラッシュアップする

ヒアリングシートは一度作成して終わりではなく、商談で得られた知見をもとにブラッシュアップしていきましょう。成約にあたって尋ねて良かった情報・うまく情報を得られた質問などのノウハウを蓄積し、ヒアリングシートに反映していくことで質の高いヒアリングシートにできます。質の高いヒアリングシートを営業部門内で共有すれば、組織の営業力の水準を高めることにもつながるでしょう。

4.まとめ

ヒアリングは「自社製品・サービスの課題解決能力が顧客の理想を達成できるか」を判断するための場であり、ヒアリングシートはその判断材料を得られる項目にする必要があります。具体的には、顧客理解のために顧客の「理想像」「現状」「課題」を把握し、自社の条件に沿うかどうかという営業的な視点で「受注角度」にも注目して項目を設定しましょう。

優れたヒアリングシートをテンプレート化して共有することで、個々の営業が抜け漏れのない正確な情報収集を行えるほか、組織の営業力の水準を高められるかもしれません。営業活動の質を高めるためにも、積極的にヒアリングシートを利用し、ブラッシュアップしていきましょう。


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BeMARKE編集部
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