BeMARKEが語る
「企業間取引(BtoBマーケティング)の歩み寄りを文化にし、あらゆる分断を解消する。」
これはBeMARKEが掲げるミッションです。本記事では、BeMARKEナビゲーター山下航希が、BtoBマーケティングにおいて生まれている分断をどのように捉えているか説明し、歩み寄りのために必要な顧客理解の方法、そしてその実践の中で重要なソリューションコンテンツについて解説します。
BtoBマーケティングでは、2つの場面で分断が発生しています。1つ目が顧客との分断、2つ目が社内での分断、特にマーケティング部門の後工程を担う営業部門との分断です。それぞれの場面で、次に説明するような分断が発生しています。
顧客が求める体験と、マーケターが提供している体験に齟齬が発生していることがあります。例えば、以下のような状態です。
これは顧客視点で考えると、以下のように言い換えられます。
自らが顧客として情報収集している際に感じるこのような煩わしさを、自社の見込み顧客に対して引き起こしているケースはよくあるはずです。
社内でも分断が発生しています。基本的にマーケティング部門が見込み顧客の獲得やアポ獲得までを担い、それ以降の行程は営業部門に引き継ぐことが多いでしょう。引き継がれた営業部門に、以下のように思われている可能性があります。
ここまで明確に文句を言わなくとも、内心困っている、齟齬が発生している企業は多く存在するのではないでしょうか。
これまでに述べてきたようなBtoBマーケティングにおける分断は、顧客理解をおろそかにしたままKPIマネジメントに挑戦していることが原因です。
マーケティングフローの効率化をしていく過程で、関わるメンバーを増やし、業務を分担してマニュアル化を進めると、各工程での数字管理が必要になります。工場の生産フローを整えるように、期間内での目標を定めて各部門が自分たちの目標達成に集中できるようにすることは確かに当然やるべきことと言えます。
しかし細かいKPI管理を進めると発生しがちなのが、近視眼的な目標達成、自分たちの目標達成を第一に考えてしまう状況です。本来は部門を越えた最終目標の達成のために、後工程の状況に合わせて最適なパスを送ることが重要ですが、組織が大きくなるとそのような複雑な目標管理意識を浸透させるのは困難です。自分の目標だけを達成すれば良いと考えてしまうメンバーがいたり、スキルが伴わず視野が狭くなってしまったりするメンバーが生まれるのは、簡単には避けられません。
先に述べたような近視眼的な目標意識が生まれてしまう状態は、マーケティングのフローが、工場の生産フローとは異なる特徴を持つが故に発生しています。工場で取り扱うのは形のある物体であり規格が定まっているので、次行程に引き渡せる合格基準も、時間当たりの処理数も明確に定めることができます。つまり目標を設定しやすく、それに対する達成度も評価しやすいと言えます。
一方マーケティングフローで取り扱うのは顧客です。一つとして同じ課題や状況の顧客はおらず、言ってしまえば毎回イレギュラーの対応を続けます。次行程にパスする品質も、明確に数値で定められるものではありません。属人的で場面に依存した目標管理にならざるを得ません。
これまで説明してきたBtoBマーケティングにおける分断を埋め、協力しながら組織全体での成果をあげ続けていくにはどうすべきなのでしょうか。ここからは、鍵となる顧客理解について解説します。
デメリットが多いのでBtoBマーケティングの分業をやめるかといえば、それは不可能なはずです。ある程度の組織規模や見込み顧客の規模を超えると分業した方が効率的なのは間違いのないことです。大切なのは、次の工程に引き渡す”規格”の理解なのではないでしょうか。つまり、「どのような顧客であれば確度が高いと言えるのか」をはじめとした顧客理解です。
前提として、BtoB企業の顧客理解の深さにおいて、マーケティング担当者が営業担当者に勝ることは稀です。それはBtoBの売買のフロー上仕方ない部分が大きいです。BtoBの売買は基本的に営業担当者が仲介しています。顧客に関する全ての情報が営業担当者に集約されてしまうので、当然顧客に関する最も多くの情報を持っているのも営業担当者ということになります。
これまで説明したような、マーケターの顧客理解不足の問題を解決する方法としてよく採用されているのが、一度営業を経験してからマーケティング部門へ異動させる方法です。確かに有効ではありますが、注意点もあります。
よくありがちだがうまくいかないのが、マーケティングを任せる営業担当者を、数字上の営業成績だけで選ぶことです。販売額が1位であっても、イコール顧客解像度が高い人というわけではありません。ここで選抜すべきは、いわゆるソリューションコンテンツを作るのが得意な人です。
協力しながら組織全体での成果をあげ続けていくための鍵は顧客理解であり、そして顧客理解の深さにはソリューションコンテンツの制作スキルが関係すると述べました。ここからは、ソリューションコンテンツについてより深掘りして解説します。
ソリューションコンテンツを理解するにあたり、前提となるソリューションセリングについてご説明します。
製品やサービス単体の外見的スペックを説明する営業手法ではなく、複数の製品やサービスを組み合わせて顧客の抱えている課題を解決することを目指す営業手法。顧客がまだ気づいていない課題の啓蒙から解決手法の指導、そして自社商材がなぜそれを解決できるのかの企画提案までを行うため、提案型営業とも呼ばれる。
BtoBマーケティングにおいてこのようなソリューションセリングが必要とされるようになったのは以下のような背景からです。
上記で説明したようなソリューションセリングの考え方をコンテンツ制作に落とし込んだのが、ソリューションコンテンツです。自社の製品ではなくお客様の課題解決がコンテンツの主語として構成されており、顧客はこれを読み解くことで擬似的にソリューション営業の対応を体験できます。例えば「課題診断」、「よくある課題と解決策集」や「事例解説」などとしてコンテンツにまとめられ公開されることが多いです。
営業が靴底をすり減らしてひたすらに訪問してなんぼの時代は遠い昔となり、あらゆる産業でソリューション提案ができる人材が必要とされています。そしてこのようなソリューション提案のスキルは、今や現場営業担当者だけでなく、プロモーション担当者や商品企画担当者にも同じく求められています。
モノやサービスがあふれる中で、そして先行きが予測できない時代で、市場や顧客に自社の商材が受け入れられるためには、顧客の潜在課題を深く理解してそれを解決できるサービスを市場に届けることが必要なのではないでしょうか。このようなスキルを分かりやすくBtoB企業が実践する方法が、Web上でのソリューションコンテンツの発信と市場からのフィードバックを得ての改善のサイクルなのだと考えます。
BtoBマーケティングにおける分業化が進むにつれて、どうしても細かいKPIマネジメントやそれを達成するためのテクニック論が先行してしまいがちです。しかし、BtoCに比べて市場規模が小さいからこそ、もっと一人ひとりの見込み顧客に真摯に向き合うべきなのではないでしょうか。それぞれの顧客のバックグラウンドも想定した理解を進め、理解を元にコンテンツを通して発信し、市場からの反応を元に改善をし続ける。このような企業が増えていくことが、BtoBマーケティング全体に歩み寄りをもたらすと考えています。