基本ノウハウ
これからマーケティング活動を行っていくため、1からマーケティング計画を立てたいと考えているものの、実際どのように立てれば良いのか分からないという方も多いのではないでしょうか。
本記事ではマーケティング計画とは何か、またどのように立てるかを解説します。戦略との違いや種類のほか、無料で利用できるテンプレート、よくある失敗もあわせて紹介しています。マーケティング計画立案に活用してください。
まずはマーケティング計画とは何か、その概要を戦略との違いや種類もあわせて解説します。基礎知識を押さえておきましょう。
マーケティング計画とは、マーケティング戦略における行動を具体化し明文化することです。主な記載事項は、次の5つになります。
マーケティング計画は、実行すべき行動に集中し、売上アップなどの事業目標を達成するために作成します。チーム内の認識を統一する際に活用でき、施策実行後も適宜振り返ることで成功や失敗の要因分析にも役立ちます。
マーケティングにおける戦略と計画の違いは、下記の通りです。
そのため戦略では、主に次のような事項について設計します。
例えば認知拡大が課題であり、戦略では潜在層へのリーチを増やすために、SNS運用の開始を決定したとしましょう。計画では戦略に基づき、下記のような具体的な行動内容を記載します。
このように、マーケティングにおける戦略と計画はセットにして考えることが大切です。
マーケティング計画の代表的な種類は、下表の通りです。
マーケティング計画の種類 | 内容 |
---|---|
プロダクトに関する計画 | 自社製品・サービスの価格設定やプロモーション方法などを検討し、売上拡大を図るための計画 |
コンテンツに関する計画 | 高品質コンテンツを作成・配信し、見込み顧客の獲得・育成を進めるための計画 |
SEOに関する計画 | 自社サイトの最適化により、流入を増加させるための計画 |
ソーシャルメディアに関する計画 | SNSを活用してブランド認知度の向上や、顧客エンゲージメントの促進を図るための計画 |
ペイドメディアに関する計画 | 有料広告を活用して確度の高い見込み顧客を獲得、成約につなげるための計画 |
メールに関する計画 | メルマガなどを既存顧客や見込み顧客へ送り、関係性を構築・維持するための計画 |
四半期または年間のマーケティング計画 | 特定期間の目標やリソース配分を定め、進捗状況の監視・評価を進めるための計画 |
特に四半期や年間マーケティング計画は必ず作成し、メンバー全員が全体像を把握できる状態を整えましょう。
マーケティング計画の立て方を、7つのステップに分けて解説します。
計画のもとになる戦略は、下記に挙げるさまざまなフレームワークを活用しながら現状を分析して「マーケティング活動により何を目指すのか・何を実施するのか」の方針を固めます。
フレームワーク | 使い方 |
---|---|
PEST分析 | 自社への影響が間接的な外部環境について把握する |
5F分析 | 自社への影響が直接的な外部環境について把握する |
3C分析 | 競争環境を把握する |
VRIO分析 | 経営資源を踏まえた自社の競争力を考察する |
SWOT分析 | 市場機会や事業課題を明確化する |
STP分析 | 市場に対しての立ち位置やねらいを整理する |
4P分析 | 戦略に沿って具体的な施策を立案する |
また方針が明確になったあとは、ペルソナやカスタマージャーニーマップを作成し、KGIと取るべき施策を決定します。戦略立案の具体的な流れやコツについて知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
関連記事:「BtoBマーケティングは戦略が重要!立案に必要な要素を解説」
次に戦略で定めたKGIから、KPIを設定します。ゴールであるKGIへのステップを明確にし、施策の効果測定や改善に役立てるためです。
なお各施策におけるKPIは施策の種類やフェーズによって異なりますが、主な例は次の通りです。
例えばWebサイトであれば初期はPV数を追い、中長期的にはCVRなど、より売上に近いKPIの達成を目指します。まずは実現可能性の高いKPIから設定し、メンバーのモチベーションを維持しながら取り組める体制にしていきましょう。
【2】で決定したKPIを実現するために、施策ごとのスケジュールをカレンダーへ記載します。例えばKGIが売上5%アップの場合、KPIは次のような流れで分解し、カレンダーを埋めていきます。
展示会の参加を計画する場合は、顧客の温度感で「1カ月以内に商談化しそうな顧客はホット」「6カ月以内に商談化しそうな顧客はウォーム」のように分類して、どの顧客の名刺をどれくらい獲得するのかを想定しましょう。
過去の実績も参考にしながら整理することで、展示会期間からのおおよその商談数を予測でき、スケジュール設定に役立ちます。さらに具体的な内容について詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてチェックしてみてください。
関連記事:「BtoBマーケティングの活動計画を立てるための「3ステップ」とは?【セミナーレポート】」
【3】までに「何をどのように行うか」が明確になったため、ここで「誰が行うか」を決めます。必要に応じてチーム拡大のために人員を確保する、または外部の専門会社へアウトソースすることも検討しましょう。
また【3】までに決めた内容は、チーム内で共有し理解を得る必要があります。共通認識を持つことで、ブレのない施策実行と手戻りの削減を実現できます。
マーケティング計画の終盤には、予算の内訳と根拠を示しましょう。内訳の例は、主に次の5つです。
経営層からの合意をスムーズに得られるよう、想定される費用対効果もあわせて記載すると良いでしょう。
エグゼクティブサマリーとして、マーケティング計画の内容をシンプルにまとめます。経営層が特に関心が強い、下記の事項を中心に記載しましょう。
なおアウトソースする場合は必要性や効果についても明示し、キャッシュアウトに敏感な経営層を納得させられる内容に仕上げることが大切です。
マーケティング計画の策定後は実際の行動に移し、進捗状況や効果測定の結果を踏まえながら管理・最適化します。PDCAサイクルにより小さな改善を重ね、抽出された成功要因は他の施策や次期計画に生かすと良いでしょう。
また自社内外の状況が変わったときも、適宜変更します。特にWebマーケティングはトレンドの移り変わりが激しいため、乗り遅れによって機会を損失しないよう、常にアンテナを張っておくことが大切です。
ここでは無料でダウンロードできる、マーケティング計画のテンプレートを3つ紹介します。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
HubSpot社の『マーケティング計画書テンプレート』では、下記の項目を中心にシンプルな計画書を作成できます。
ページによっては、ヒントになるブログ記事がリンクされており、立案中に生じた疑問も早期に解決が可能です。特に初めてマーケティング計画を作成する方に、おすすめのテンプレートとなっています。
Microsoft社の『戦略的なビジネスマーケティング計画』は、Word文書のテンプレートです。主な記載項目は、以下のようになっています。
またダウンロードするだけでなく、ブラウザ上でも編集できるため、複数人で画面を共有しながら作成可能です。マーケティング計画について、メンバー内でブレインストーミングする際にも活用できるテンプレートとなっています。
BeMARKEの『KPI管理テンプレート』は、KPIの設定や進捗管理に役立つワークシートです。KPI分解と目標管理のテンプレートは、以下に挙げる3つの目的で分けられています。
本テンプレートではKPIに関連した数値の変化を一目で確認できるため、メンバー間での目標や意識の共有が可能です。マーケティング計画の作成時だけでなく、実行時にも有効活用することをおすすめします。
最後にマーケティング計画の策定でよくある失敗と、その解決策を解説します。
よくある失敗の1つが、施策の実行自体が目的になっている状態です。あくまでも目的は事業目標の達成であり、行動したこと自体に満足していては成果を上げられません。
このような事態を避けるためにも惰性で続けている施策はないか、四半期または年間マーケティング計画の策定時などにチェックしましょう。現状を踏まえて施策の必要性や優先度を確認し、時には成果の出ていない施策を思い切って停止する、別の施策へ集中して費用対効果を上げることも大切です。
計画実行の途中で予算をオーバーしているにもかかわらず、目標を達成していない状況もよくある失敗になります。解決策としては下記のような方針転換を進め、すでに獲得した見込み顧客の育成を低コストで実施し、商談化率の向上を図りましょう。
商談化率の高い見込み顧客の傾向も分析できると、新たな戦略や計画にも反映できるでしょう。
計画を立てようとしても場当たり的になってしまう原因は、目標達成のために必要な成果と施策の結びつきや予算をうまく可視化できていない点にあります。
目標に対し必要な成果、施策、予算を明文化できていない状況だと、何のために行う施策なのかの認識がズレてしまいます。すると目標達成から離れた施策に注力してしまうケースや、施策に対して必要な予算を見誤るケースなどが生じかねません。
全体を俯瞰して整理するためには、KPIツリーや年間マーケティング計画などを作成し、施策の動きやリソースなどの可視化が必要です。施策同士の連携によって相乗効果を生み売上につながるよう、時には計画の抜本的な見直しも検討しましょう。
マーケティング計画は、戦略をもとに具体的な行動指針を記したものです。施策ごとの計画はもちろん、四半期または年間といった期間別に見るものも、全体の状況把握やメンバーとの認識統一に役立ちます。
マーケティング計画の策定ではKGIからKPIを分解しつつ、具体的な施策やスケジュールなどを細かく設定します。社内だけでは対応が難しい場合は、アウトソースの可否や依頼費用なども検討が必要です。
事業目標を達成したい企業は、具体的で実現可能性の高いマーケティング計画を立案しましょう。