基本ノウハウ
近年、日本のBtoBマーケティングで「デマンドジェネレーション」という言葉をよく耳にするようになりました。簡単にいえば「営業案件の創出」という意味なのですが、その詳しい内容を理解している人はそう多くありません。ここでは、デマンドジェネレーションの詳しい意味や構成要素、現在注目されている背景について紹介していきます。この記事を参考に、デマンドジェネレーションを実践して効率的な営業やマーケティングを実現してください。
本章ではデマンドジェネレーションの意味や、BtoBマーケティングにおいてなぜ重要なのかといった基本を解説します。
デマンドジェネレーションとは、営業案件を創出するためのマーケティングのしくみです。大きく分けて「リードジェネレーション(見込み顧客の獲得)」「リードナーチャリング(見込み顧客の育成)」「リードクオリフィケーション(見込み顧客の絞り込み)」の3つのフェーズから成り立っています。
デマンドジェネレーションでは、3つのフェーズを経て受注確度の高い新規の見込み顧客をより多く獲得し、効率的に受注につなげることを目的とします。
デマンドジェネレーションは、BtoBマーケティングに取り組む上で有効であると考えられ、重要視されている手法です。
日本のBtoBマーケティングは、セミナーや展示会、オウンドメディア、SNS、メルマガなどさまざまなチャネルを複数の部門で運用しているケースがよく見られます。しかし、「一体どのチャネルが売上に貢献しているのか?」が明らかになっておらず、判断も極めて難しいという状況に陥っている企業も散見されます。
実は、1990年代のアメリカのBtoBマーケティングでも、日本と同じような課題が発生していました。その状況を打破するために、リードジェネレーションやリードナーチャリング、リードクオリフィケーションという3つのマーケティング活動を包括的にまとめたデマンドジェネレーションという概念が生み出されました。デマンドジェネレーションにより、見込み顧客の動きや状況を総合的にとらえたマーケティング戦略を実践できるようになったのです。
デマンドジェネレーションの実施には、下記のメリットがあります。
デマンドジェネレーションは、営業活動を効率化し、成果につながらないアプローチを削減できます。
従来の営業活動では、営業社員はテレアポや訪問営業といったアプローチによって見込み顧客と接触し、ニーズがありそうな見込み顧客がいれば商談につなげていました。しかし、「とにかく接触してみる」という手法であるため、まったく見込みのない相手へ提案を行うなどの無駄なアプローチが発生していました。
デマンドジェネレーションでは、自社の業界・業種に関心がある見込み顧客から自らリード情報を提供してもらうようなしくみづくりができます。また、見込み顧客の属性や行動から受注確度を判断し、「受注が見込めそうだ」と判断できた見込み顧客の情報のみを営業が引き継ぐため、成果につながらないアプローチを削減できます。
デマンドジェネレーションによってマーケティングチームがリードの獲得・育成・絞り込みを行えば、営業はこれまで費やしていた企業分析や訪問など業務に関する負担を減らし、商談などの重要な業務にリソースを集中できます。また、マーケティングチームがデマンドジェネレーションを通じて獲得したデータによって顧客理解が進めば、より見込み顧客のニーズに沿った提案が可能になり、受注率の向上も期待できます。
デマンドジェネレーションは、まだニーズを自覚していない新規の見込み顧客に接触し、関係構築を図って購買意欲を醸成していく施策でもあるため、営業に継続的に案件を供給できます。
製品・サービスについてニーズがあり購買を検討している「今すぐ客」は全体の数%といわれており、競合他社との奪い合いになります。まだニーズも購入の意思もない「まだまだ客」に早期から接触して関係を築けば、「いますぐ客」に成長させられる可能性があり、新規の営業案件の創出につながります。
マーケティング部門が行う一連の業務全般を指すデマンドジェネレーションですが、その中身は大きく3つの要素に分けられます。
デマンドジェネレーションを構成する3つの要素は以下の通りです。
デマンドジェネレーションの最初のステップとなるのが、リードジェネレーション(見込み顧客の獲得)です。リードジェネレーションでは、主に以下のようなリード(見込み顧客)情報をなるべく多く収集し、【2】リードナーチャリングのステップに引き継ぐことを目的とします。
リードジェネレーションの施策は、目的別に2つに分類できます。1つめはリード情報を獲得するための直接的な施策です。この施策がなければリード獲得に至らないため、最も重要な施策といえます。2つめは集客を図るなどリード獲得を補助する施策です。リードジェネレーションでは、基本的にこの2種類の施策をセットで行う必要があります。
分類 | 施策名 | 内容 |
---|---|---|
リードを獲得する施策 | 問い合わせフォーム | お問い合わせ・資料請求のフォームにリード情報の入力を促す |
ホワイトペーパー | ユーザーにとって役に立つ資料(ホワイトペーパー)のDLと引き換えにリード情報の入力を促す | |
展示会 | 展示会に出展または参加し名刺交換を行う | |
メールマガジン | メールマガジンの登録と引き換えにリード情報の入力を促す | |
ウェビナー・セミナー | ウェビナーの参加登録と引き換えにリード情報の入力を促す | |
資料掲載ポータルサイト | 外部サイトに自社の資料掲載を依頼し、DLされた際に料金を支払ってリード情報を受け取る | |
リードを獲得を補助する施策 | Web広告 | Web広告を利用してサイトに集客を図る Web広告を利用してホワイトペーパーDLやウェビナー参加に誘導する |
オフライン広告 | オフライン広告を利用して認知度の向上を図りサイトへの集客につなげる | |
SEO | 自然検索流入の増加による集客を図る | |
SNS運用 | SNSを運用しサイトへの集客を図る | |
EFO | 入力フォームを改善しフォーム入力中の離脱を防ぐ |
また、リードジェネレーションにおいてはリード獲得数の追求はもちろん大切ですが、獲得したリード情報の管理も大切です。同一の企業は名寄せをしたり、業種やエリアごとに分類したり、獲得時の情報を記録しておいたりなど、リード情報を精査しておくことで次の「リードナーチャリング」ステップの取り組みを効率化できます。
関連記事:「リードジェネレーションとは?具体的な手法と実施のポイントも解説」
デマンドジェネレーションの次のステップは、リードナーチャリング(見込み顧客の育成)です。リードジェネレーションで獲得した見込み顧客は、すぐに案件が発生して顧客へと発展するケースもありますが、すべてがそうなるわけではありません。ある程度時間がたってからニーズが発生したり、自社が新たなサービスを発表したことで本格的に検討してもらえたりなど、後々案件が生まれることも少なくないでしょう。
そうしたニーズが生まれたときに、見込み顧客から必ず声をかけてもらえるように関係性を築いていくのが、このリードナーチャリングです。定期的にメールを送ったり、DMで最新情報を届けたり、見込み顧客とのコミュニケーションを継続していく必要があります。
リードナーチャリングの施策も、目的別に主に2つに分類できます。1つめは自社製品・サービスに対して見込み顧客の興味関心を高める施策、2つめは見込み顧客と定期的に接触し自社が忘れられないよう関係を構築するための施策です。ただしどの施策も比重が異なるだけで、両方の要素を兼ねています。
分類 | 施策名 | 内容 |
---|---|---|
自社製品・サービスへの興味関心を高める施策 | コンテンツマーケティング | 見込み顧客にとって役に立つコンテンツを継続的に発信し見込み顧客のファン化を促す |
ホワイトペーパー | 見込み顧客の悩みや課題解決に応えるホワイトペーパーを公開し信頼感を醸成する | |
ウェビナー・セミナー | 見込み顧客にお悩み解決や「気づき」を与えるウェビナーやセミナーを開催し信頼感を醸成する | |
ステップメール | 見込み顧客の行動を起点に決まったスケジュール・回数で自動的にメール配信し段階的に興味関心を高める | |
関係を構築するための施策 | メールマガジン | 見込み顧客にとって役に立つ内容のメールを定期的に配信する |
インサイドセールス | インサイドセールス(内勤営業)が見込み顧客に対して定期的にメールや電話を行う | |
SNS運用 | 見込み顧客にとって役に立つ発信を継続的に行う |
関連記事:「BtoBマーケティングにおけるナーチャリングとは?重要視される背景や代表的な手法を紹介」
デマンドジェネレーションの最終ステップが、リードクオリフィケーションです。これは見込み顧客リストの中から、最も案件につながる見込みの高い顧客を絞り込む作業を指します。
例えば、毎週送付しているメルマガを毎回開封してリンクをクリックしている見込み顧客と、過去に一度しか開封したことのない見込み顧客であれば、前者の方が案件につながる可能性が高いと見なせます。この2社に同じだけ手間をかけたアプローチをとるのは効率的ではありません。見込み度の高い前者のような企業には、優先的に手厚いアプローチをかけていくことを目指し、見込み顧客を絞り込んでいくのがリードクオリフィケーションです。
絞り込みの作業では、見込み顧客のアクションや属性などによって点数をつけ、スコアリングしていきます。企業の属性情報と行動情報に基づき、自社で条件別に点数を設定し、定めた数値を超えた対象を優先度の高い見込み顧客であるとみなすのです。
情報の分類 | スコアリングの例 |
---|---|
属性情報 |
ターゲットとしている業界の企業であれば◯点 決裁権を持つ役職者であれば◯点 |
行動情報 |
メールマガジン内のURLをクリックしたら◯点 資料請求を行ったら◯点 |
この条件をどう設定するかによってスコアリングの質が左右され、その後の営業活動やマーケティング活動に影響するため、綿密にスコアをチューニングしていきましょう。絞り込んだ見込み顧客の情報は営業に引き継ぎ、案件化を図ります。
手動でのスコアリングも不可能ではありませんが、大量の見込み顧客に対して行うのは現実的ではないため、リードクオリフィケーションを実施する場合はスコアリング機能をそなえたMAなどのツールを利用しましょう。MAの利用については4章で詳しく解説しています。
関連記事:「リードクオリフィケーションとは?成果を出す手順やポイントをマーケティングのプロが解説!」
リサイクルはうまくいかなかったリードを再度デマンドジェネレーションの流れに戻し受注につなげようとする施策です。
失注したリード、商談を進めていたが途中でやり取りが途絶え接点を失った休眠リード、アプローチしたが応答がないままのリードなど、デマンドジェネレーションの過程では多くのリードがさまざまな理由でアプローチ対象から外れていきます。こうしたリードに再度アプローチをかけ案件化できれば、新規の見込み顧客を集める手間を減らし、より効率的なデマンドジェネレーションが実現します。
リサイクルを実施する際は、一度接触を図ったリードがなぜデマンドジェネレーションの流れから外れることになったのか原因を調べます。原因別にリードを分類し、アプローチ方法を変えて対応しましょう。
原因 | 対応方法 |
---|---|
連絡が取れない | 自社の認知を高める施策を実施する |
接触した時点では見込み顧客にニーズがなかった | リードナーチャリング施策(自社製品・サービスへの興味関心を高める施策)を実施し購買意欲を醸成する |
製品への関心は高いが購買タイミングではなかった | リードナーチャリング施策(関係を構築するための施策)を実施し購買タイミングを察知する |
検討が長期化している | 様子伺いのメールや電話を実施する |
競合の製品を購入した | 自社が選ばれなかった理由のヒアリングを行い、各施策に反映 |
デマンドジェネレーションにおいては、マーケティング活動を支援するツールであるMAが役に立ちます。MAをどのように利用できるのか、MAを導入するならどう選定すべきかについて解説します。
MA(Marketing Automation)はマーケティングを支援するさまざまな機能をそなえたツールで、デマンドジェネレーションの工程において力を発揮します。下表では、デマンドジェネレーションの工程別に活用できるMAの基本機能をまとめています。
工程 | MAの機能名 | 機能の内容 |
---|---|---|
リードジェネレーション | リード管理 | リードの情報を蓄積・一元管理する |
フォーム作成 |
入力フォームを作成する 入力されたリード情報はデータベースに自動登録され管理できる |
|
LP作成 | 見込み顧客の流入・CVを促すLP(ランディングページ)を作成する | |
リードナーチャリング | メール配信 |
大量のメールを配信する セグメントメール配信、メルマガ配信、ステップメール配信を行う |
ウェビナー管理 |
ウェビナーの配信ページや入力フォーム、申込み状況、アンケートなどを管理する 参加したリードの情報はデータベースにひもづけられる |
|
トラッキング |
リードの自社サイト内の行動履歴などを解析する 行動履歴からナーチャリング施策に活用できる |
|
リードクオリフィケーション | スコアリング | リードの属性情報・行動情報にもとづいて点数をつけ一定値を超えた場合に通知する |
その他 | システム連携 | SFA/CRM、BIツールなど他ツールと連携させてリード情報の引き継ぎや解析を行う |
ただし、MAによって搭載している機能は異なるため、導入を検討する際は必要な機能があるかどうか必ず確認しておきましょう。
関連記事:
「MAを活用したリードナーチャリングの流れを徹底解説」
「MAのリードスコアリングとは?メリットや運用時の注意点を解説」
MAはデマンドジェネレーションの工程を効率化する上で役立ちますが、特にどの工程に強みがあるかはサービスによって異なるため、自社がどの工程を特に強化したいのかによって選定するMAも変わります。まずは自社のマーケティング・営業の流れを洗い出し、課題がどの段階にあるのかを特定しましょう。
また、MAを選ぶ際に特におすすめしたい条件は下記の3つです。
特に自社内で既にSFA/CRMを使用しているケースでは、連携機能がないとマーケティング部門・営業部門で別個にリードを管理することになり一元管理が難しくなります。営業部門への引き継ぎをスムーズに行うためにも、連携機能は重視しましょう。
そのほか、MA選定のための詳細は下記の記事を参考にしてください。
関連記事:「BtoB事業者のMAの選び方とは?【無料】MA機能比較表25選ダウンロード!」
デマンドジェネレーションの概要や構成要素について解説してきました。現在、効率的な営業活動やマーケティング活動ができていないと悩んでいるBtoB企業の方は、ぜひアメリカが課題解決に生かしてきたデマンドジェネレーションを取り入れてみてください。そうすることで、質の高い見込み顧客を創出することができ、効率的な営業活動やアプローチが実現できるでしょう。
また、デマンドジェネレーションの実行に活用できるMAの選定について、「自社に合ったMAが分からない」とお悩みの方は、BeMARKEのナビゲーターに無料で相談が可能です。ぜひご活用ください。