基本ノウハウ
リードナーチャリングは、顧客との信頼関係を築き、長期的な関係へと発展させていくために不可欠な取り組みです。この記事では、BtoBマーケティングにおけるリードナーチャリングの重要性とメリットについて解説した上で、実際のステップ、代表的な手法を紹介します。リードナーチャリングの基本と実践方法を理解し、自社のBtoBマーケティング戦略に生かしましょう。
リードナーチャリングとは、見込み顧客(リード)に対して継続的に役立つ情報を発信し、自社との関係を維持するための取り組みです。一般的には「見込み顧客を育成する取り組み」ともいわれますが、BtoBビジネスにおいて、課題が顕在化していない見込み顧客にいくら情報を提供しても「今すぐ買いたい」と思わせることは難しいでしょう。
リードナーチャリングの目的は「育成する」というより、見込み顧客に「覚え続けてもらう」ことだと理解する方がスムーズな実行につなげやすいかもしれません。例えば、営業担当者が名刺を獲得してからメールや電話、訪問などを繰り返して関係を維持し、地道に契約につなげる行為も一種のリードナーチャリングといえます。WebやMAが発展し、こうした活動を効率化できるようになったことで、BtoBマーケティング施策の1つとして改めて注目されているのです。
リードナーチャリングと関連する用語として、リードジェネレーションとリードクオリフィケーションが挙げられます。リードジェネレーションは見込み顧客を獲得する活動をいいます。一方、リードクオリフィケーションは受注につながる可能性の高い見込み顧客を抽出する取り組みです。リードナーチャリングはこれらの間に位置しており、マーケティング・営業活動において重要な役割を果たします。
BtoB企業がリードナーチャリングに取り組むべき理由として、以下の3つが挙げられます。
インターネットの普及によって、企業の担当者は自ら情報収集し、購入検討前に多くのリサーチを行うようになりました。収集した情報をもとに、目星をつけた企業へ直接問い合わせるケースが増えています。こうした変化によって企業へ飛び込みで営業をかける機会は損なわれつつありますが、一方で有益な情報を継続的に発信することで自社を知ってもらえるチャンスにつながるともいえるでしょう。
リードナーチャリングに取り組むと、見込み顧客が商品やサービスを必要とした段階で第一想起してもらえる可能性が高まります。BtoBビジネスは購買に至るまでの期間が長いため、商品・サービスが必要とされたときに「あそこがいいかもしれない」と思い出してもらえるよう、継続して接点を持つことが重要です。
従来の営業による直接的なフォローに加え、メルマガやセミナーなどによって中長期的な関係を築いていれば、上司からの急な指示で商品・サービスの導入を急いで進めなければならないなど、突発的にニーズが顕在化したときでも選択肢に入りやすくなります。
リードナーチャリングの次のステップに、確度の高い見込み顧客を絞り込むリードクオリフィケーションがあります。見込み顧客の行動に点数をつけるスコアリングを行った上で、その中から一定のスコアに達した見込み顧客を抽出し、営業へ引き渡す活動です。
メルマガの開封率やセミナーへの参加回数などがスコアの指標となるため、リードナーチャリングを展開して見込み顧客の行動を追う必要があるのです。
リードナーチャリングのメリットとして、大きく以下の3つを挙げられます。
リードナーチャリングを通じて、企業は定期的に見込み顧客に接触し、彼らのニーズや関心に合わせた情報を提供できます。見込み顧客との信頼関係を築けるだけでなく、自社の商品やサービスへの理解を深めさせることで、購買への意思決定をスムーズに進めやすくなります。
リードナーチャリングを行い、見込み顧客の反応や行動を追跡することで、どのタイプのコンテンツが最も効果的か、どんな施策に反応があるかといった具体的なデータが蓄積されていきます。このデータは、マーケティング戦略をより効果的に計画・実行するための基盤となるでしょう。見込み顧客の行動パターンを分析することで、購入までのプロセスや傾向をより深く理解でき、マーケティング活動の最適化にもつなげやすくなります。
リードナーチャリングでは、自社に蓄積されたコンテンツを活用して効果的なマーケティング活動を行えます。例えば、ブログ記事、ホワイトペーパー、ウェビナーなど、過去に利用した資料を見込み顧客に提供することで、新たなコンテンツを一から制作する手間を省きつつ、価値ある情報を広く提供できます。
リードナーチャリングの具体的な進め方について、ステップごとに解説します。
リードナーチャリングを行う上で基本となるのが見込み顧客のリスト整理と一元管理です。リストを作成しなければ、見込み顧客へ効果的にアプローチできません。名刺やフォームからの問い合わせなど、これまで収集した見込み顧客の情報を、重複や取りこぼしがないよう整理し、担当者が一元管理しましょう。
次に、見込み顧客の属性や行動パターンにもとづいて、誰にどんな情報を提供すればいいのか仮説を立てましょう。例えば、資料をダウンロードした一般社員には実務で役立つ情報、役職者には経営戦略に関する情報など、分類ごとに適切だと思われる内容を想定します。他にも、セミナーに申し込みをした人には特別メルマガを送るといったアプローチが考えられます。状況別にカスタマージャーニーを作成して情報設計をすれば、仮説の精度を高めることができるでしょう。
仮説立てが終わったら、実際に見込み顧客のニーズや関心に合ったコンテンツを制作します。コンテンツは、ブログ記事、ホワイトペーパー、ウェビナーなどさまざまな種類があります。見込み顧客の疑問や課題の解決を目的としたコンテンツを制作することで、自社への関心を持ってもらいやすくなるでしょう。カスタマージャーニーを参照しながら、幅広い見込み顧客の興味を引くため多様なコンテンツを用意し、Eメール、DM、SNS、Webサイトなど、適切なチャネルを通じて発信します。
施策実行後は、必ず効果測定を行いましょう。Eメールの開封率、Webサイトへの訪問者数、資料ダウンロード数、問い合わせほかセミナー・ウェビナー申し込みの数などを指標にします。データを分析してどのコンテンツやチャネルが効果的だったかを評価し、必要に応じて改善も加えながら今後の施策に反映させます。実行、分析、改善を繰り返しながら、リードナーチャリングの成果を徐々に上げていきましょう。
リードナーチャリングは、以下に挙げるような手法を複合的に組み合わせて実施することで効率化でき、営業部門の負担を軽減できます。ここでは、リードナーチャリングの代表的な手法を5つご紹介します。
見込み顧客の課題解決につながるテーマの記事を作ると、見込み顧客に「この会社は良い情報を提供してくれる」というイメージを持ってもらえます。商品・サービスの導入事例や自社の持つノウハウを解説する記事などがリードナーチャリングに有効です。メルマガや電話を通して紹介すれば、営業が訪問せずとも課題を解決できるケースもあるでしょう。また、検索エンジンで上位に表示されるようになれば、リード獲得にも貢献します。
メルマガは自社の見込み顧客リストに対して定期的にメールを送る手法です。メルマガには、課題解決につながる記事コンテンツやセミナー・ウェビナーの開催情報などを記載します。見込み顧客にとって有益な情報を発信し続けなければ、配信を停止される可能性があるため、開封率やクリック率を見て、読みたくなるタイトルへの変更、文面の改善、配信時間・頻度の調整などが必要です。
また、見込み顧客のアクションに応じて段階的に配信するステップメールや、属性・興味関心で見込み顧客を分類して配信するセグメントメールを組み合わせることも有効です。
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郵送DMは、展示会やイベントの案内、商品カタログなどを直接送付するオフラインのリードナーチャリング方法です。メールより自由にレイアウトでき、視覚的に多くの情報を届けられるため、顧客の興味を惹きつけやすくなっています。現物を郵送するため、リストの担当者宛に送付すれば、メールよりも手に取ってもらえる可能性が高くなる点もメリットです。
セミナー・ウェビナーは、見込み顧客が抱える課題の解決策や自社の商品・サービスの活用事例などのテーマで開催します。メールやオウンドメディアといったテキストベースの手法よりも詳細にメッセージを伝えられる点がメリットです。また、質疑応答の時間を設けておくと、疑問の即時解消や、見込み顧客の置かれている状況に合った情報提供が可能となり、信頼を得やすいでしょう。
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見込み顧客と電話でコミュニケーションを取る方法もリードナーチャリングに有効です。インサイドセールスの活動の一部でもあります。見込み顧客に手当たり次第かけるのではなく、お問い合わせやセミナーへの参加など購買意欲が高まっていると思われる行動を取っている見込み顧客に対して架電します。直接会話する中で、見込み顧客の悩みをヒアリングしたり、課題解決につながるコンテンツを紹介したりできます。ただし、商品やサービスを売り込み過ぎるとかえって悪い印象を与えかねないため注意してください。
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リードナーチャリングを効果的に行うためには、見込み顧客の行動を追跡した上で、管理・分析する必要があります。そこで活用できるのがMAやSFA・CRMといったツールです。ここでは、それぞれのツールがリードナーチャリングにどう活用できるのかお伝えします。
MA(Marketing Automation)とは、マーケティング活動の一部を自動化するツールです。見込み顧客のリストを自動で管理し、属性や過去の行動履歴から見込み顧客をスコアリングする機能が備わっています。見込み顧客の興味関心度合いに合わせて、メールマガジンやセミナー情報を自動で提供してくれ、メール業務の効率化も可能です。ただし、導入するだけでは自動化できず、目的やリソースを整理し、シナリオ設計をした上で適切に運用する必要があります。
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SFA(Sales Force Automation)やCRM(Customer Relationship Management)は、顧客情報や営業活動を蓄積・分析するツールです。基本的な顧客情報からサイト内での行動履歴、商談履歴、アプローチ結果まで、顧客のあらゆる情報を一元管理でき、部署間の情報共有に役立ちます。蓄積したデータの分析を見れば、顧客のニーズや状況を把握できるため、適切なタイミングで接触しやすくなります。
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BtoBマーケティングにおけるリードナーチャリングとは、見込み顧客への継続的なフォローを通して、関係を維持するための活動です。BtoBでは意思決定に時間がかかるため、中長期的なフォローが欠かせません。インターネットの普及に加え、MAやSFA・CRMといったツールが発展したことで効率的にナーチャリングを実施できるようになったため、リードを活用しきれていないと感じる方は積極的に取り組むと良いでしょう。