基本ノウハウ
営業活動で案件を受注できた際に、なぜ受注できたのかを突き詰めて考えたことはありますか?受注要因の分析を通して「勝ち筋」を見つけ有効な戦略を蓄積することは、営業活動を効率化する上で重要です。
この記事では、受注分析の概要から、売上分析・失注分析との違い、受注分析が必要な理由、実施のポイントを紹介します。本記事を参考に受注分析の方法を身に付け、ぜひ成約件数のアップにつなげてください。
受注分析には、業種や企業規模で定量的な情報を分析するマクロな視点と、個別の案件の受注要因を分析するミクロな視点の2つがあります。この記事では、後者であるミクロな視点における受注分析について紹介します。
分類 | マクロな視点 | ミクロな視点 |
---|---|---|
受注分析の対象 | 業種・企業規模など定量的な情報の分析(=売上分析) | 個別案件の受注要因の分析 |
受注分析の目的 | 目標設定・戦略立案 | 勝ち筋の発見 |
実施者 | 営業部長またはそれ以上のクラス | 営業社員・育成担当の営業課長 |
ミクロな視点における受注分析とは、個別の案件を受注できた際にその成功要因を分析し、自身またはチームの強みを見つけ、受注までのパターンを戦略として蓄積していく方法です。営業社員または社員を育成するマネージャーなどが、受注分析によって営業活動における「勝ち筋」を見つけ、業務効率化や成約件数のアップにつなげるねらいがあります。
対するマクロな視点における受注分析は「売上分析」と同義で、営業部長以上クラスの方が売上目標の設定のために実施する場合がほとんどです。
受注分析と混同されやすい手法に、「売上分析」と「失注分析」があります。それぞれの概要について簡単に紹介します。
受注分析が個別案件の受注について分析するのに対して、売上分析は事業や会社全体の売上を分析する手法です。商品やチャネル別、顧客別など細分化した項目を比較・検討することにより現状を把握し、今後の具体的な売上目標を定める際に用いられることが一般的です。
単に集計結果を確認するだけにとどまらず、傾向を分析しある企業群に絞って集中的にマーケティングを行うなど、効率的に売上最大化を図るねらいもあります。
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成功要因を分析する受注分析に対して、失敗(失注)した要因を分析する手法が失注分析です。失注要因の分析によって原因や課題を洗い出し、対策を立てた上で次回の営業活動に生かすことを目的としています。
失注要因は、基本的に営業部署や営業担当者の力量の低さが根本的な原因となる「営業手法に問題があるケース」と、製品のコストやランニングコストが高いなどといった「製品そのものに問題があるケース」に分けられます。失注の理由がアプローチ方法などの内的な要因なのか、市場の状況・顧客側の事情などの外的な要因なのかといった視点から原因を突き詰めて考え、分析結果に基づいて対策を講じるのです。
関連記事:失注分析で営業手法を改善するには?基本の3ステップを解説
受注分析を行うことで、業務効率化や成約件数の向上などの効果が期待できます。受注分析が必要である理由について、メリットの面から以下の2点を解説します。
受注にいたった案件のデータを分析し、成功要因を検討することで、自身やチームの強みを自覚できます。チームの強みは競合他社との差別化ポイントでもあるため、営業活動のアピールに利用したり、発見した「強み」に基づいてアプローチ方法や資料を見直したりといった、成果を上げるための施策を新たに選択できるようになります。
分析によって導き出した成功要因は、明文化すればノウハウとして社内に蓄積・共有できます。成功のノウハウがチームに蓄積されれば、自身がそのノウハウを活用できるのはもちろん、チームメンバーも受注率向上のための行動を選択できるようになり、「営業の再現性獲得」につながります。
受注分析を行う際に押さえるべきポイントとして、以下の4点を解説します。
受注分析では、KPIの1つである売上に関する要素を因数分解し分析を行いましょう。要素を分解することで差異や傾向を見える化し、受注傾向を明らかにできます。受注傾向が分かれば、そこから営業活動をどう進めていくべきかの仮説も立てられるようになるのです。
売上を構成する要素としては下記が挙げられます。
そのほか、商談をする際に特定の役割・役職の人物が同席していた、顧客はどの程度競合企業と比較を進めていたのかなど、具体的な売上要素以外の条件をデータ化することもおすすめです。
受注分析においては、営業社員の能動的な働きかけによって顧客からの受注を獲得できたのか、あるいはもともと顧客が自社の商材に興味・関心が高く、働きかけがなくとも受注に至ったのかの判別が大切です。
前者は営業社員の営業力による部分が大きく、後者はどの営業社員が対応していたとしても受注できた可能性が高いと考えられます。受注分析においては前者のパターンを分析する方が効果的です。後者の場合は顧客次第で受注できるかどうかが変わってしまうため再現性が低く、そういったデータの分析結果からはノウハウを蓄積しづらいためです。
ただし、顧客が自社製品・サービスに対して高い関心を持った要因に自社の施策が影響しているのであれば、施策の成果によって受注に至ったと考えられるため、後者も分析の余地があります。
受注分析においては、簡単にでも受注要因を明文化することが重要です。例えばアプローチの方法であれば、「潜在ニーズを拾い上げ的確なアプローチができた」「価格を上回る商品価値(メリット)を具体的に提案できた」などが挙げられます。
さらに、成功要因全体を100点として成功に関与した度合いに応じて配分してみましょう。先ほどの例であれば、前者の「潜在ニーズを拾い上げ的確なアプローチができた」を70点、後者の「価格を上回る商品価値(メリット)を具体的に提案できた」を30点のように配分します。こうした分析を積み重ねる作業が「勝ち筋」を見つけることにつながります。
「勝ち筋」を生かしさらなる営業活動を行い、成約の度に都度受注分析を行っていくと、当然この勝ち筋から外れた成功要因も現れます。これを新しい勝ち筋として蓄積し、戦略のバリエーションを増やしていくことが次のステップです。営業活動を通して個別の案件に応じた多種多様なキーファクターを積み重ねていけば、成約件数のアップにつなげられるでしょう。
営業活動におけるデータ分析では失注分析が主流ですが、「勝ち筋」を見つけて次につなげる受注分析も大切です。なにより、成功要因の蓄積は営業社員にとっての成功体験を自覚し積み重ねる作業でもあり、営業社員やチーム内におけるモチベーション向上にもつながります。ぜひ受注分析を通して、成約件数アップを目指してください。