基本ノウハウ
「営業活動でなかなか成果を出せず、失注ばかりが続いている」と悩んでいませんか。失注の内容を詳しく分析して原因を解明できれば、営業手法の効果的な改善が可能になります。とはいえ、具体的にどう分析すれば良いか分からない方も多いでしょう。
この記事では、失注分析の有効な手法や基本的な手順、おすすめツールについて解説します。適切な失注分析で営業手法を改善し、受注につながる営業戦略を構築しましょう。
失注分析とは、顧客から受注できなかった案件・キャンセルされた案件を分析し、要因を探ることです。営業手法を改善する上で、有効な手法といえます。
営業において失注分析が重視されるのは、失注の要因を知ることで自社の営業活動に何が不足しているのかを見極め、効率的に改善を行うためです。失注したという事実だけで終わらせてしまうと、次の営業でも同じ結果になりかねません。しかし失注の要因が明確になれば、その部分をピンポイントで改善して次回以降の受注率向上につなげられます。
また、失注分析を重ねるなかでこれまで気づかなかったユーザーの新たなニーズが見つかる場合もあります。分析で得られたデータを活用すれば、ユーザーにとってさらに便利な製品やサービスを生み出せる可能性があるのです。
営業活動で失注してしまう要因は、営業手法に問題があるケースと製品そのものに問題があるケースに大別できます。営業手法を改善して受注につなげるためには、どちらのケースにあてはまるのかを的確に判断しなければなりません。
営業先に失注の原因を尋ねると、建前の回答しか得られない場合があります。例えば相手からは価格が決め手であったと言われたものの、実際は営業の説明が十分ではなかったために「費用対効果を正しく認識してもらえなった」というケースがあるのです。そこでさらに踏み込んで、「その原因が改善されていたとしたら、弊社の製品を選んでいただけましたか?」と尋ねてみましょう。踏み込んだ先に得られた回答が本音である可能性が高いため、そこでどちらのケースが要因なのか判断するのがおすすめです。
営業手法に問題があるケースの例として挙げられるのは、以下の通りです。
基本的に、営業部署や営業担当者の力量の低さが根本的な原因といえます。ただ、こうした問題点は営業先にとっても言いにくいため、ストレートに指摘してもらえる機会は多くありません。
失注の際は理由を聞きたいとあらかじめ依頼した上で、上手にヒアリングする必要があります。営業担当者の態度やプレゼンの出来などについては、営業担当者が直接尋ねるより、営業部の上長が尋ねる方が効果的です。
製品そのものに問題があったために、失注に至るケースもあります。具体例は以下の通りです。
上記のような問題は、営業担当者の努力で改善するのは難しいでしょう。失注の要因が製品にある場合は、開発担当の部署へフィードバックして改善を要請するのが近道です。
失注が営業手法によって起こっていた場合は、営業部署内での失注分析が必要です。適切な分析をして原因を明らかにするためには、以下3つの手法のいずれかをとるようにしましょう。
営業活動で競合に負けるのは、失注する原因としてよくあることです。競合に焦点をあてて失注分析を行えば、自社の弱みが分かり、競合と差別化した営業手法を構築できるようになります。
失注した際には「負けた原因」をデータに残しておき、ある程度のデータが蓄積されたら、競合ごとに原因の内訳を算出して比較しましょう。A社と競合した場合はコスト面で負けることが多い、B社との競争では納期で負けているなど、失注の原因が競合ごとに違うと分かるはずです。
競合ごとの失注の原因が分かれば、競合と差別化できるようにプレゼンの仕方を変えたり、コストや納期など自社の弱みを見直したりできるようになります。失注の原因は、自社の弱みであると同時に営業先のニーズでもあるため、うまく改善できれば売上や顧客満足度の向上につなげられるでしょう。
営業活動には「アポイント獲得」「ヒアリング」「提案」「見積もり」「プレゼン」「クロージング」といったプロセスがあり、営業プロセスごとの分析によってどの段階で失注につながったのかを明確にできます。
例えばヒアリング段階での失注が多い場合には、顧客が抱える課題について事前に仮説立てを行う、営業相手に話してもらいやすい雰囲気づくりを意識するなどの工夫によって信頼関係の構築を優先します。プレゼンの段階での失注が多いなら、営業担当者のプレゼンのやり方や資料の作り方、提案の切り口を見直すといった対策がとれます。
やみくもに営業プロセス全体を見直すよりも、失注が多い段階を集中的に改善する方が効率的です。改善を重ねてプロセス別の失注数を徐々に減らし、総合的な受注率を高められるようにしましょう。
担当者の力量に頼る営業活動は、同じ営業プロセスを経ても人によって結果が異なります。そのため営業担当者ごとに失注分析をして比較し、それぞれのクセや問題点を見つけることで、一人ひとりに合った改善策がとれるようになります。
例えばAさんが競合とのプレゼンで負けることが多いと分かれば、プレゼン能力の向上に注力すれば良いでしょう。Bさんが営業先とのコミュニケーション不足で信頼を得られず失注しているようであれば、コミュニケーションに関する指導をするのが最適といえます。
また、営業担当者個人を分析するとともに、チーム単位での分析結果も合わせると、さらに改善の精度を上げられるでしょう。
基本的な失注分析は、以下3つのステップで進めます。
失注原因にある程度の当たりをつけてから分析手法を決めます。営業プロセスに沿ってこれまでの営業を振り返り、失注の可能性が高い部分を探していきましょう。各段階での失注要因の例は以下の通りです。
失注タイミング | 失注要因の例 |
---|---|
ヒアリング後 | 営業担当者が相手との信頼関係を築けなかった |
提案後 | 営業担当者の提案能力が低かった 提案内容に魅力がなかった |
見積もり後 | 予想以上にコストがかかった |
クロージング後 | 営業先の都合で白紙になった |
営業プロセスを振り返るなかで、「プレゼンやコンペでかなり負けていたな」「営業プロセスの序盤で失注することが多かったな」と失注の心当たりが出てくるはずです。最初はすぐに思い浮かぶ大きな要因に焦点を置いて仮説を立て、それに合う分析手法を選びましょう。
仮説立てを行い分析手法を選択できたら、3カ月や半年、1年など一定期間の失注に関するデータを集めて検証し、結論を出してください。営業担当者ごとに比較したのなら、誰が最も失注に関わっていて、どの段階でミスをしているのかをデータを根拠として明確にします。
こうした検証は1回で終わらせずに、定期的に行うのが効果的です。初回の分析から一定期間後に再び分析すれば、前回からどのように失注状況が変わったかが目に見えて分かります。
使用するデータは分析のために用意するのではなく、普段から蓄積しておくようにしましょう。そのためにはSFA/CRMなどの営業に関する情報を蓄積するシステムを導入し、営業担当者に日頃から情報を記録する習慣をつけさせる必要があります。
データの検証により結論が出たら、失注に関係している現場にその内容をフィードバックしましょう。その際は、ただ結果を伝えるだけでなく、失注の要因を改善するための施策も伝えることが重要です。
失注分析の結果、競合とのプレゼンに負けて失注する割合が多いと判明した場合、営業担当者のプレゼン能力を高めることが急務といえます。営業担当者にプレゼンに関する現状を伝えた上で、プレゼンスキルを上げるセミナーを開く、受注率の高い営業担当者のやり方を学ぶといった改善策を提示します。
この3ステップを繰り返し、営業手法をより質の高い内容に磨き上げるのです。
失注分析を効率的に進めるには、ツールの利用がおすすめです。ここでは、特に有効なツールとしてCRM(顧客管理システム)とSFA(営業支援ツール)、加えて多くの企業で導入され汎用性が高いExcelを利用した失注分析について紹介します。
ちなみにCRMとSFAは複数の企業からさまざまな製品が販売されており、「SFA/CRM」とも呼ばれるように一体型となって販売されているケースが多くなっています。自社にとって必要な機能を持つサービスを選びましょう。
CRMとはCustomer Relationship Managementの略で、顧客管理システムのことです。顧客のデータやメールのやり取りなどを一元管理し、顧客を効率的に管理するために使われます。サービスによっては、タスクや商談を管理したりマーケティングを補助したりする機能が備わっている場合もあります。
CRMを使って顧客の購買履歴や問い合わせ状況などの情報を収集すれば、失注しやすい顧客の条件を効率的に分析できるでしょう。失注の原因について素早く仮説立てするためにも、基本となるデータの収集・蓄積にCRMは役立ちます。
SFAとはSales Force Automationの略で、営業支援ツールを指します。SFAはCRMが管理するデータをもとに営業活動を効率化させるツールです。
失注分析においては、営業プロセスの管理や営業担当者の割当といったSFAの機能を使い、営業活動を可視化し体系的に管理することで、どこに問題があるかを見つけやすくなります。
他にも、メールの送信や入力作業などの営業に関するルーチンワークを自動化したり、顧客をスコアリングして分析しやすくしたりすることも可能です。
Excelの関数を利用した売上情報の管理、失注傾向の分析も可能です。「COUNTIF関数」を用いて顧客別に受注件数を数える、「AVERAGE関数」を用いて営業担当者の平均成績を把握するなどの方法があります。
1からフォーマット構築するのに時間がかかることや、情報量が多いと管理が難しくなるといったデメリットはありますが、Microsoft Officeを使用している企業であれば追加費用をかけずに売上管理や失注分析ができます。また、自社に合ったフォーマットを作成しておけば繰り返し利用できる点もメリットといえるでしょう。
失注分析は、営業手法を改善する上で欠かせない作業であり、改善を重ねて売上拡大につなげるためにも確実に実践すべきです。ただし、失注に至る要因はさまざまであるため、適切な手法と手順で分析しなければ受注につながる改善はできません。例えば失注分析をした結果、営業する製品そのものに問題があった場合は開発部署へのフィードバックが重要になります。営業手法が問題であった場合は、さらにその手法のどこに問題があったかを多角的に分析し、改善施策を取る必要があります。
CRMやSFAといったツールを活用すれば、より効率的に失注分析が可能です。この記事で解説した手法や手順を参考にして、効果的なセールスアプローチができるように失注分析を行っていきましょう。