基本ノウハウ
ソリューション営業は、多くの企業で採用されている営業スタイルの1つです。しかし、営業担当になって間もない方などは「ソリューション営業とは何?」「どのように進めるのか」と疑問に思うことでしょう。
本記事ではソリューション営業とは何か、目的や必要性を踏まえながら基本戦略を解説します。ソリューション営業で大切なスキルについてもあわせて解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
ソリューション営業は売り手が主体である従来の営業スタイルと異なり、顧客目線が重要になります。顧客目線に立ってソリューション営業を進めるためには、その本質や目的に対する理解を深めることが大切です。
まずはソリューション営業とは何か、なぜ必要なのかについて解説します。
ソリューションは解決策を意味する言葉であり、ソリューション営業は顧客の課題やニーズに対する解決策を提案する営業です。その営業スタイルから、提案型営業とも呼ばれます。
ただし、ソリューション営業は、単に良さそうな解決策を提案するのではありません。課題の本質を捉え、根本から解決する策を提案する、そして顧客に納得・信頼してもらうことが大切です。このように提案側が課題解決に向けて積極的に動く手法を、能動型ソリューション営業と呼びます。
とはいえ、発掘された課題やニーズによっては、自社のソリューションとマッチしないケースもあるでしょう。そのような場合、自社製品やサービスを提案しないケースもあります。
ソリューション営業は、インターネットの普及によって以前よりもさらに必要性が増しました。2012年にHarvard Business Reviewに掲載された論文「ソリューション営業は終わった(The End Solution Sales)」では、インターネットの普及により営業スタイルが変わって行くことを示唆しています。
実際に、インターネットの普及によって売り手と買い手の情報格差が格段に縮まりました。一方で、情報があふれすぎるあまり、「どれが自社にとって最適な製品・サービスなのか」が分かりにくい状況にもなっています。
中には、課題の優先度だけでなく、課題が何かすら不明瞭な企業も少なくありません。その分、ソリューション営業で課題の抽出から支援できると顧客の満足度が高まり、継続発注につながりやすくなります。
ソリューション営業への理解を深める上では、他の営業手法についても把握しておくことが大切です。営業スタイルは大きく分けるとプッシュ型とプル型の2つがあり、ソリューション営業はプル型に含まれます。
それぞれの特徴や違いは、次の通りです。
プッシュ型 | プル型 | |
---|---|---|
特徴 | 営業の担当者が顧客に対して積極的にアプローチする従来の営業方法 | 顧客の行動を引き出すようにアプローチする営業方法 |
ターゲット | ニーズが顕在化している見込み顧客 | 顕在顧客だけでなく、潜在顧客も |
具体的な手法 | 御用聞き営業(ソリューション営業の反対となる営業方法)、テレアポ | セミナーや展示会、自社Webサイトなど |
プル型のセミナーや自社Webサイトなどは、一見すると営業手法には見えないでしょう。しかし、セミナーなどで顧客の興味・関心を引き出せれば、問い合わせや資料請求などの行動につながります。
また、プル型は顕在顧客だけでなく、潜在顧客もターゲットです。ソリューション営業の相手になりうる課題が不明瞭な企業も、いわば潜在顧客に含まれます。そのため、ソリューション営業はプル型営業に含まれているのです。
ソリューション営業で顧客から企業の課題や悩みを引き出すためには、腹を割って話せるような信頼関係の構築が必要になります。その上で、次に挙げるような基本戦略を順番に進めていきましょう。
【1】顧客分析
【2】仮説立案
【3】ヒアリング
【4】提案
【5】クロージング
顧客分析では顧客の基本情報を集め、次項の仮説立案に役立てます。主な分析内容は、次の5つです。
課題に取り組むことがある程度決まっている、プロジェクト化されている場合はBANT情報も集めてみてください。BANT情報とは、次の4つを指します。
顧客分析はソリューション営業の根幹を担う大切な要素のため、可能な限り詳細な情報を集めて整理していきましょう。
仮説立案では、顧客分析をもとに顧客の課題について仮説を立てます。仮説立案の切り口と手順は、それぞれ次の通りです。
顧客に最適なソリューションを提案するためには、まずどこに課題があるのか想定する必要があります。とはいえ、漠然と考えていては課題が思いつかなかったり、方向性がズレてしまったりしかねません。
どの視点から課題を探ればいいか分からない場合は、次に挙げる課題想定の切り口をぜひ参考にしてみてください。
構成要素 |
・関連部門(開発、製造、マーケティングなど) ・生産管理(品質/コスト/スピード) ・3Cまたは4C |
対立概念 |
・既存事業と新規事業 ・業務改革(内部改革)と市場開拓(外部改革) ・定型業務と非定型業務 |
プロセス |
・要件定義→設計→開発→テスト ・購入→営業→契約→販売→サポート |
仮説立案では、次の5つについて分析します。
最後に上記の分析結果を統合し、前述の切り口を参考に顧客の課題を洗い出していきましょう。
なお、分析時には3C分析やSWOT分析などのフレームワーク(枠組み)が役立ちます。ソリューション営業する担当者はさまざまなフレームワークの知識を得て、実践できるように学んでおくことも大切です。
関連記事:【具体例付き】3C分析とは?目的・やり方を分かりやすく解説
ヒアリングでは実際に顧客から話を聞きながら、前項で立案した仮説を検証します。また、顕在ニーズだけでなく、潜在ニーズやインサイト(隠れた心理)を探ることも大切です。ヒアリングの結果、仮説が間違っていれば軌道修正し、おおよそ合っていれば次項の提案に向けて詳細を詰めていきます。
なお、BtoBでは担当者と責任者(決裁者)とでは課題について認識のズレが生じていることも少なくありません。そのズレを見逃したまま提案を進めてしまうと、商談の最終局面で責任者から却下される可能性があります。
以上を踏まえると決裁者に近い、あるいは決裁に対する影響力が大きいキーパーソンを把握し、ヒアリングの機会を設けてもらえるように担当者へ交渉することが必要です。キーパーソンにヒアリングできれば、より希望に沿った仮説立案・検証ができ、成約率も高まります。
ヒアリング後は、抽出された課題に対する最適なソリューション(自社製品やサービス)を提案しましょう。提案時には、ソリューションコンセプトを記載した提案書の作成が必要です。
ソリューションコンセプトの記載項目は、主に次の7つになります。
提案する際には、ソリューション営業もどきにならないように注意してください。ソリューション営業もどきとは汎用的な解決策を考案し、合いそうな顧客を選ぶ自己中心的な提案です。汎用的な解決策では他社との差別化が図れないため効果はあまり望めず、顧客離反の原因になります。
ソリューション営業の提案は、あくまでも顧客目線を貫くよう心がけましょう。
関連記事:提案書は書き方が7割!1枚にする利点やテンプレートも紹介
提案を受け入れてもらえそうなら契約の締結に向けた段取り、つまりクロージングに入ります。購買意欲の低下や競合他社への流出を防ぐためにも、適切なタイミングでクロージングしましょう。
ただし、BtoBの場合は決裁に関わる人数や工程が多く、承認まで時間がかかるケースがほとんどです。検討時期が長期化するうちに自社や提案内容について忘れられないよう、クロージングした場合は契約の可否についていつ頃回答が得られるか確認します。
商談成立後は顧客満足度の維持・向上を図り、リピートしてもらうためのフォローアップを継続しましょう。
関連記事:BtoBにおけるクロージングとは?今すぐ使えるテクニックやコツを簡単に解説
ソリューション営業では、顧客目線に立った課題の抽出や解決策の提案が必要です。効果的な解決策を立案し、説得力のある提案を進める上ではさまざまなスキルが求められます。
最後に、ソリューション営業で必要なスキルを3つ見ていきましょう。
コミュニケーションはビジネスの基本であり、ソリューション営業でも信頼関係の構築やヒアリングなどを進める上で大切です。コミュニケーションでは顧客の話を最後まで聞き、かつ自分の意見も相手に不快感を与えることなく伝えられる力が必要になります。
商談では相手が思案し口を閉ざす場面もありますが、沈黙もコミュニケーションの1つです。焦らず相手の表情や態度を観察し、必要に応じて声をかけるといった臨機応変な対応力も身につけておきましょう。
ソリューション営業では顧客分析や仮説立案など、ロジカルシンキングが必要な場面が多々あります。
特に、BtoBの営業相手である企業の担当者は、製品やサービスに関する知識をある程度保有している方です。その上、BtoBの購買行動では、経済合理性や信頼性などが重視されます。
そのため、ソリューション営業では担当者が持つ不安や疑念を解消するような論理展開ができるよう、ロジカルシンキングスキルも鍛えておきましょう。
ソリューション営業では他の営業スタイル以上に、プレゼンテーションスキルが大切になります。企業の課題を明らかにした上で、提案する解決策がいかに有効か相手の心に響くように説明する必要があるためです。
プレゼンテーション(以下、プレゼン)は口頭で説明する力だけでなく、分かりやすく文書化する力も求められます。とはいえ、長々として結論が見えない論理展開では、「結局、どういうことなのか?」と相手をイラつかせてしまいかねません。
口頭・文章問わず分かりやすいプレゼンには、PREP法の活用がおすすめです。
P:Point(結論) | ソリューションコンセプトの概要を説明する |
R:Reazon(理由) |
ソリューションコンセプトを勧める理由を解説する ・他の解決策との比較 ・他社製品に対する優位性 ・投資対効果 など |
E:Exanple(具体例) |
導入事例を紹介する ・事例企業が抱えていた課題 ・解決策の内容や提案理由 ・解決策の効果 など |
P:Point(結論を繰り返す) |
ソリューションコンセプトの概要を繰り返し、以下の内容を確認する ・内容への同意 ・キーパーソンへのアプローチ ・詳細な提案を行う際のスケジュール など |
PREP法では最も知りたい結論から述べるため、相手にストレスがかかりません。結論を最初に聞くことで、「それはなぜ?」と続きを知りたくなるメリットもあります。
PREP法は社内会議や報告書など通常業務でも生かせる手法のため、普段から実践して癖をつけておくと良いでしょう。
ソリューション営業は顧客が抱えている課題を明確化し、自社の製品やサービスを使った解決策を提案する営業スタイルです。
自社に課題があることを知りながらも、何が課題か、どうすれば解決できるか分からずに悩んでいる企業も少なくありません。そのような企業に対し、ソリューション営業は顧客目線を踏まえた課題の抽出や解決策の提案を一手に引き受けます。
ただし、効果的な解決策を提案するためには相応のスキルや経験が必要です。今回解説した手順やスキルを参考に、ソリューション営業を成功させていきましょう。