基本ノウハウ
クロージングはBtoCのみならず、BtoBでもよく聞かれる言葉です。しかし、「クロージングとは、どのような意味の言葉か?」「クロージングを成功させる方法はあるか?」と疑問に思う方も多いでしょう。
本記事ではクロージングの意味はもちろん、成約率を高めるクロージングテクニックやコツを解説します。クロージングへの理解度を深めたい方や効果的な商談の進め方を知りたい方は、ぜひご覧ください。
クロージングとは、「close(クローズ)/閉める」という言葉が語源のビジネス用語です。簡単に言い換えると「契約の締結」であり、案件の終了を意味することもあります。
例えば、「〇〇会社とのクロージングが完了する」という文章では、クロージング=契約です。一方、「〇〇会社の案件をクロージングする」という文章では、クロージング=終了を意味します。
クロージングの意味について、自分と相手で認識の違いがあると会話が噛み合わないことにもなりかねません。会話の中でクロージングが出てきたらどのような意味で使っているか、前後の文脈から読み解きましょう。
クロージングが重要な理由は、商機を逃さないためです。適切なタイミングでクロージングしないと、次のようなデメリットが生じます。
例えば、「返事は後日聞きます」と商談を切り上げてしまうと、次にアプローチするまでの間に「買いたい」「使いたい」という気持ちが薄れてしまうでしょう。いかに良い提案であっても、クロージングしなければ自社製品やサービスの購入・利用にはつながらないのです。
商機を逃さず確実に収益を上げるためにも、クロージングは必要不可欠な手続きになります。
自社製品やサービスの購入・利用を促す上で、クロージングが必須です。しかし、残念ながらクロージングを100%成功させられる必勝法は存在しません。
そこで、クロージングを成功に少しでも近づけるために、さまざまなテクニックを駆使しながら臨機応変に対応することが大切です。ここでは代表的な7つのクロージングテクニックについて、具体的な例とともに解説します。
【1】単純接触効果(ザイオンス効果)
【2】テストクロージング
【3】ゴールデンサイレンス
【4】アッシュの同調効果
【5】ifクロージング
【6】松竹梅の法則(3択の心理学)
【7】損失回避性の原則
単純接触効果とは、何度もコンタクトを取るうちに相手の気持ちが良い方向へ変わる心理効果です。はじめは断られても、諦めずにアタックし続けることで「断ってばかりで悪いな」と相手が前向きに検討してくれる可能性が高まります。
特に、同じ担当者が何度もコンタクトを取れば親密度がアップし、信頼関係の構築にも役立つでしょう。この点は、後述の「クロージングのタイミングは顧客の反応を見て判断する」においても大切になってきます。
ただし、しつこ過ぎると逆効果です。恋愛と同じように、BtoBの場でも相手の表情や態度から気持ちを読み取り、適度な距離感を保ちながら接触を重ねましょう。
テストクロージングとは、Yes/Noで応えられる質問や確認を段階的に投げかけ、合意を得ながら商談を進めるテクニックです。例えば、次のような質問や確認の言葉がテストクロージングです。
「ここまでの説明で、ご不明点はございませんか?」
「お客様にはこちらのプランがおすすめですが、詳しく内容をご説明してもよろしいでしょうか?」
テストクロージングでは、相手がどれほど自社製品やサービスに興味があるか、契約に意欲的かが分かります。最終的なクロージングで成功しやすいのは、質問や確認の答えでYesが多いときです。クロージングのタイミングをはかる上でも、テストクロージングは有効な手段になります。
ゴールデンサイレンスとは、見込み顧客が思案中に起きる沈黙時間です。沈黙が流れると気まずくなり、どうしても声をかけてしまう方も多いでしょう。
しかし、ゴールデンサイレンスのときは見込み顧客が自社製品やサービスを購入すべきか否か、じっくり考えています。間髪をいれずに「いかがでしょうか?」と声をかけてしまうと、相手に答えを急がせて不快な気持ちにさせかねません。
そのため、見込み顧客が考え抜き反応を示すまでは下手に口を挟まず、相手の表情や態度を観察しながら沈黙を貫くことが大切です。考えが煮詰まってきた様子であれば、「どのあたりで悩んでいますか?」と助け船を出すと良いでしょう。
アッシュの同調効果とは、自分だけ他の人とは違う選択をすると違和感を覚える心理効果です。ダチョウ倶楽部の鉄板ネタである「どうぞ、どうぞ!(2人が手を上げると最後の1人も手を上げてしまう)」が、最も分かりやすい例でしょう。
BtoBであれば、他の企業が使っている中、自社だけ使っていないと仲間外れ感を感じるのがアッシュの同調効果です。例えば、「他の企業も活用している(検討している、備えているなど)」と伝えると、自社も活用すべきなのでは?と前向きに購入を検討してくれる可能性が高まります。
特に、活用している他の企業として、誰もが知っている有名企業の名前を挙げるとより効果的です。同業他社や同規模の企業も、より身近な例として見込み顧客の心に響くでしょう。
ifクロージングとは、「もし~だったら」とイメージさせることで購買意欲をかきたてるテクニックです。ifクロージングが効果的な相手は、自社製品やサービスの購入を前向きに検討している人です。例えば、次のような言葉がifクロージングにあたります。
「もしこのサービスを利用するとしたら、どちらのプランを使いたいですか?」
「仮に、〇〇(製品名)が今より安くなるとしたらいかがでしょうか?」
ifクロージングは相手の考えを知る機会になる上、Yes/Noで応えられる質問であれば大抵の場合Yesがもらえます。つまり、最初に紹介したテストクロージングの一手段として使い、最終的なクロージングの成功率を高められるテクニックでもあるのです。
特に、テストクロージングを重ね、本格的なクロージングに移る前にifクロージングすると、見込み顧客の購買意欲を一層高められるでしょう。
松竹梅の法則(3択の心理学)とは、3択あると大抵は真ん中の選択肢を選ぶ心理を指します。例えば、次のような価格プランがあった場合、どれを選びやすいか考えてみましょう。
この場合、ほとんどの方はプランBを選びます。なぜなら、「10万は高すぎる、1万円は安すぎて不安……なら真ん中の5万円が無難だな」と考えやすいからです。
松竹梅の法則では複数の選択肢を提供し、どれを選ぶかを見込み顧客に決めてもらいます。買う・買わないより決断における心理的なハードルが下がるため、結果的に成約に至りやすいといわれています。
損失回避性の原則とは、何かを決断するとき損しないことを優先する心理です。例えば、当月中は50%オフの製品について商談を進めているとき、次のような言葉をかけると見込み顧客の購買意欲が高まります。
「来月以降ですと通常の料金がかかってしまいますが、いかがいたしますか?」
来月になると半額分も損をすると感じ、見込み顧客は購入の決断を急ぐようになるでしょう。このように、機会を失いかけると、目の前にある機会が非常に価値のあるものに見える心理も、クロージングで有効活用できます。
自社製品やサービスの購入・利用につなげるためには、クロージングのテクニックに加え、前準備やタイミングの見極めが必要です。クロージングを成功させるコツとして以下の5つを紹介します。
商談前や商談中は、見込み顧客のBANT情報を可能な限り集めましょう。BANT情報とは、次に挙げる4つの情報を指します。
BANT情報を把握する理由は、内容によってアプローチ方法が異なってくるからです。例えば、商談の担当者と決裁者が違う場合を考えてみましょう。担当者が提案内容に了承しクロージングに入ったとしても、決裁者からNGが出てしまえば破談になってしまいます。
しかし、担当者と決裁者が違うことをあらかじめ把握しておけば、決裁者からOKをもらうためにはどうすれば良いか、担当者と一緒に考えながら商談を進められます。
また、予算からは顧客の相場感も把握できるでしょう。自社から提案する金額が相手の予算よりも安ければ商品・サービスそのものの良さを紹介し、予算よりも高ければサービス内容の充実度など費用に相当するメリットがあることをアピールすると成約率向上が期待できます。
クロージングに入る前には、次に挙げるような見込み顧客の疑問を先回りして解決しましょう。
例えば、他社との比較資料を提示すると、価格や性能に関する見込み顧客の疑問がいち早く解決し、契約や購入などの決断が促されます。
担当者や企業の信頼については、商談1回きりでは解決できません。複数回に分けてコンタクトを取り続けることで前述した単純接触効果を得られ、少しずつ信頼関係が築かれていきます。
クロージングの成功率を上げたいなら時間と労力を惜しまずにコンタクトを取り続け、商談本番で見込み顧客の疑問を解決することが大切です。
商談では相手が契約や購入に意欲的な場合もあれば、早めに商談を切り上げたい雰囲気を出すなど消極的な場合もあるため、相手の反応、様子を見た上でクロージングに移行しましょう。
商談の途中でも、契約に意欲的な様子ならクロージングへ移ってもOKです。例えば、サポート体制の有無やランニングコストを聞いてきた、決裁者など関係者と相談し始めたなどの様子があれば、クロージングの成功率が高いと推測されます。
一方、提案内容を一通り話したあとでも、良い反応が得られないときはクロージングを控えましょう。特に、テストクロージングでNoが多い場合はクロージングの成功はほとんど望めません。クロージングに移れないような雰囲気の場合は、信頼関係の構築やニーズを正確に把握した上での再提案をおすすめします。
あくまでも顧客企業の視点で考え、売り込むことに必死になりすぎないように注意してください。
クロージングの成功率を高めるためには、見込み顧客に選択肢と決定権を与える意識も必要です。どんなクロージングも、最終的には相手に決断を迫る行為になります。しかし、強引に話を進めると相手は引いてしまい、成約には至りません。
そこで大切なのが、自分で決めたいという顧客の欲求を満たすことです。顧客自身が納得できる結果になるよう、複数の選択肢を与えた上で決めてもらうと良いでしょう。しかし、選択肢が多すぎると、顧客に迷いが生じて決断が先送りになる可能性も出てきます。前述にある松竹梅の法則を踏まえ、選択肢は3つを目安に提示するのがおすすめです。
商談では自社製品やサービスの内容や導入メリットだけでなく、クロージング後の流れも説明しましょう。契約後の流れやサポート体制について説明することで、購入後の不安を払拭できるからです。安心して使い続けられると分かれば、購入を決断しやすくなります。
また、購入後のビジョンを一緒に考えたり、導入事例を見せたりすることで、見込み顧客は製品やサービスの使いどころやメリットをより具体的にイメージすることが可能です。このイメージは前述したifクロージングにも通じるところであり、具体性が増すほど成約につながりやすくなるでしょう。
クロージングとは、契約や終了を意味するビジネス用語です。BtoBの場合、顧客企業との契約や案件の終了を意味します。
クロージングが100%成功する方法は、残念ながらありません。しかし、相手企業との信頼関係を築き、心理学的なテクニックを駆使することでクロージングの成功率は高められます。
また、クロージングを成功させるためには相手企業の情報を踏まえたアプローチ方法の検討や、安心して購入を決断できる商談の進め方も大切です。
BtoBの商談を成約につなげたい方は、今回解説したクロージングテクニックやコツをぜひ実践しましょう。