基本ノウハウ
提案書は、提案内容を分かりやすく伝える上で必要な書類です。しかし、「提案書の書き方が分からない」「提案書を提出しても却下されてばかり」とお悩みの方も多いでしょう。
本記事では、採用される提案書の書き方や記載項目はもちろん、テンプレートや見本を閲覧できる参考サイトもあわせて解説します。魅力的な提案書の書き方を知りたい方や既存の提案書をブラッシュアップしたい方はぜひご覧ください。
提案書とは提案内容を書面化したものであり、社内向けと社外向けの2種類があります。社内向けの提案書に記載するのは、業務改善など社内の課題解決に向けた内容です。一方、社外向けの提案書は営業ツールの一つとして活用され、購入や契約などビジネスへつなげる内容になります。
また、提案書の種類は記載される内容によっても分類可能です。具体的には、主に次の5つが挙げられます。
提案書の種類 | おもな内容 |
---|---|
事業提案書 | 新規事業の立ち上げ、既存事業の活性化に向けた施策など |
マーケティング提案書 | 製品やサービスのマーケティング分析や結果など |
調査・リサーチ提案書 | 現状を知り、仮説検証を進めるための調査など |
営業・セールス提案書 | 製品やサービスを販売するときに使用する資料など |
販売促進・プロモーション提案書 | 製品やサービスの販売促進やプロモーションに向けた施策など |
以上のような提案書を書くには、綿密に情報収集し基本構想を練るといった事前準備が欠かせません。ここでは、提案書の作成前に必要な4つの準備について見ていきましょう。
【1】マーケティング分析を行う
【2】メリットを分かりやすくまとめる
【3】情報収集する
【4】スケジュールと予算を明確にする
マーケティング分析は、企画前に行われていることがほとんどです。しかし、提案書を作成する際に改めて行うことで、描くべきストーリーが明確になります。たとえば、次のようなマーケティング分析が活用できるでしょう。
特にFABE分析(ファブ理論)は、製品やサービスのアピールポイントを考える際に役立ちます。FABE分析とは、次の4項目について分析・結果を相手に示し、最終的に購入の意志決定を促す手法です。
FABE分析で判明した利点や便益は、次項の「メリットを分かりやすくまとめる」の土台にもなります。
提案書で最も伝えたいのは、提案内容を実行することで得られるメリットです。どのようなメリットがあるのか、提案相手の顕在的・潜在的ニーズを満たせるのか、分かりやすく伝える必要があります。
メリットは相手が最も気になる部分でもあるため、インパクトのあるコピーにまとめることも大切です。
手元にある情報量が少なく理解が浅い状態では、信頼性に欠けるだけでなく、顧客の心に響くコピーを生み出せません。正確かつ魅力的な提案書を作成するためにも、次のような項目については細かく情報収集しましょう。
情報源としては、主に次の3つが挙げられます。
情報源 | 情報媒体の例 |
会社の関係資料 | パンフレット、会社案内など |
オリジナルの調査データ | アンケート、販売店調査など |
公開資料やオープンデータ | 市場情報、業界情報が記された資料や書籍など |
特に、会社資料などに残っている過去の成功事例を提案書に盛り込むと、客観的な事実として説得力が増すでしょう。
記載するスケジュールや予算が現実的であればあるほど、提案書の採用確率は上がります。予算は比較検討できるよう、複数の提案書を提示すると良いでしょう。
例えば、次のようなプランがあるとします。
この場合、Aだけ提示すれば「お金がかかるから」と却下する可能性が小さくありません。しかし、AとBの両方を同時に提示することで、Aにおける費用対効果の高さを感じられます。結果として、提案書Aが採用される可能性が高まるのです。
提案書を読む相手は、必ずしもはじめから提案内容に興味を持っているわけではありません。中には、関心が薄く、提案書の中身を確認しない方もいます。そのような方にも提案書を手に取ってもらい、提案内容が伝わるようにするためには、記載内容や書き方を工夫することが必要です。
ここでは、提案書に盛り込む内容の中でも、特に重要な7つの項目について解説します。
【1】タイトル
【2】課題
【3】提案内容
【4】メリット
【5】成功事例
【6】スケジュール
【7】費用
タイトルは、提案書の顔ともいうべき要素です。コピーライティングを上手に活用し、相手の興味を引くような魅力的なタイトルをつけましょう。特に、具体的な数字を用いると訴求力が高まり、提案書を手に取ってくれます。
【例】
○「業務効率化の方法」
✕「1週間かかる仕事が1日で!業務効率化をサポートする〇〇(製品名)のご提案」
提案相手の中には課題があると認識しているものの、具体的な課題の内容まではハッキリしていない方もいます。そのため、提案書では解決すべき課題や背景を整理することが大切です。
課題を明確にすることで、提案内容やメリットの重要性をより強く感じられます。このとき、具体的な数値データや図表などを活用すると相手により伝わりやすいでしょう。
提案内容は提案書の核であるため、他の項目よりもさらに分かりやすさが重要になります。
提案内容で意識したいのは、伝える順番です。はじめに提案内容の概要や全体像、次に詳細という流れで記載しましょう。逆に、はじめから詳しく説明すると要点がつかめず、「よく分からない」と相手は提案書を読み続けることを放棄してしまいます。
次に記載するメリットまで相手を誘導できるよう、提案内容は簡潔かつ流れに沿った書き方を意識したいところです。
メリットには、提案により課題がどう解決されるかを具体的に書きます。メリットも課題と同様に相手が理解しやすいよう、数値データや図表を活用しましょう。
注意したいのは、アピールするメリットが相手のニーズから離れてしまうことです。例えば、自社製品の購入を促す提案書の場合を考えてみましょう。クオリティを求める顧客に対し、大量生産が可能な点をメリットとして挙げても購入につながりません。
メリットは、あくまでも相手の目線や立場を踏まえた内容にしましょう。
自社または他社の成功事例を書くと、実績や信頼性のアピールが可能です。成功事例は、次の3つを記載します。
提案相手は具体的な成功事例を知ることで、提案内容の導入後について具体的なイメージがわきます。自社でも成功する可能性が高いと感じると、提案内容の採用を前向きに検討してくれるでしょう。
スケジュールは、現実的な提案だと感じてもらえるよう詳しく書きます。記載する項目は、次の5つです。
実現に必要な物的・人的リソースやタスクもあわせて書くと具体性が増し、説得力のある提案書になります。
費用は、総額だけでなく内訳も示しましょう。完遂までに複数のフェーズがある場合は、総額が高くなりがちです。あいまいな見積もり内容では、「本当にこの会社に任せても大丈夫なのだろうか?」と不安や疑念を抱かせかねません。
相手が安心して提案書の内容を採用できるよう、費用は内訳まで詳細に明記することが大切です。なお、お見積りや予算など表現の違いは、クライアントや提案内容に合わせると良いでしょう。
提案書は提案相手の興味を引き出し、かつ説得力のある内容が必要だと分かりました。しかし、「どのような文書形式で書けばいいのか?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
そこで今度は、スタンダードな提案書の書き方を解説します。
文章主体の提案書であれば、ワード形式で十分です。ワード形式は図表が入れにくく自由度が低いものの、文書としてレイアウトや目次などを整えやすく、官公庁案件で好まれる傾向があります。
また、「1枚提案書」を作りやすい点もワード形式における大きなメリットといえるでしょう。「1枚提案書」とはA4またはA3・1枚にまとめた提案書であり、「ペライチ」「トヨタ式」などとも呼ばれます。要点がまとまっている分、「自社でも使えそうだな」と相手に安心感を与える効果もある形式です。
提案書はページ数が多いと、そもそも読んですらもらえない事態にもなりかねません。しかし、1枚提案書であれば、提案の核心を早々に伝えることが可能です。全体で数ページにわたる提案書でも、詳細は2ページ目以降にすることで、1ページ目の要点だけでも読んでもらえる可能性が高まります。
パワーポイントを使った提案書は、最もスタンダードな形式です。「課題→提案内容→メリット」といったストーリーをスライドごとに伝えられるため、はじめは提案書への関心が薄い相手も、話に引き込みやすい形式になります。
スライド形式の提案書で重要なのは「ワンスライド・ワンメッセージ」、つまり伝えたい内容を1ページにつき1つにとどめることです。例えば、3つの課題を伝えたいなら、課題を箇条書きしたスライドを1ページ、それぞれの内容について1ページずつ使います。
詳細なデータや分析結果などは、参考資料として提案書の最後に添付すると良いでしょう。そうすることで、よりスッキリとして見やすい提案書になります。
提案書の記載項目や形式が分かったら、次は書き方のコツを押さえましょう。
ここでは、より魅力的な提案書を書くポイントを5つ解説します。
タイトルや見出しは「概要」「まとめ」といった言葉は使わず、具体的かつ簡潔に書きましょう。当該ページで何を伝えようとしているのか、タイトルや見出しを一目見ただけで分かるような言葉を使います。
【例】
✕「メリット」
○「(製品名)を活用する3つのメリット」
(各ページで)「メリット①運用コストが30%低下する」
「メリット②業務効率を20%アップできる」
「メリット③24時間サポートで安心して利用できる」
提案先特有の表現や固有名詞がある場合は、提案書でも積極的に使用しましょう。相手が提案内容を理解しやすいだけでなく、好感や信頼を得やすいためです。
特に、社外向けの営業ツールとして提案書を活用する際は、顧客企業や業界でよく使われる言葉を把握しておくことをおすすめします。
提案先特有の表現や固有名詞をのぞき、難しい言葉や新しいビジネス用語はなるべく使わないか、注釈を入れるようにしましょう。あまり親しみのない言葉を多用すると相手に提案内容が伝わらないばかりか、誤解を生む可能性があるためです。
とはいえ、分かりきったことをわざわざ書くと、相手はわずらわしく感じてしまいます。不快感なく提案書を読み進めてもらうためにも、あらかじめ相手とコミュニケーションを取り、知識レベルを把握した上で提案書を作成すると良いでしょう。
提案相手の興味を引き、説得力のある提案書に仕上げるためには、ストーリーが不可欠です。このとき、読むべき順番を矢印で明確に示すと、パッと見たときの視認性が高まりストーリー展開が伝わりやすくなります。
【例】
✕「○○をすると、次に▢▢であり、最後に△△です」
○「○○→▢▢→△△」
提案書には、起こりうる・考えられる問題点もきちんと書きましょう。デメリットや問題点も記載することで、思考の深さや課題解決に向けた真剣さをアピールできます。
逆に、メリットばかりをアピールすると「デメリットを隠すのに必死なのでは?」と不信感を抱かせかねません。トラブル防止の意味でも、デメリットや問題点はメリットとあわせて記載しておくことが大切です。
最後に、提案書のテンプレートや見本を閲覧・ダウンロードできるサイトを3つ見ていきましょう。
これから実際に提案書を作成する必要がある方や、既存の提案書をブラッシュアップしたい方はぜひ参考にしてみてください。
「[文書]テンプレートの無料ダウンロード」では、ワード形式のテンプレートを多数公開しています。シンプルで実用的なものはもちろん、記載項目を最小限にした超シンプルバージョンも掲載中です。箇条書きや一覧表など視認性を高める様式もあり、文章量が多い提案書でも読みやすいものに仕上げられます。
ワード形式の提案書を作成する方は、ぜひ一度ダウンロードしてみてはいかがでしょうか。
「SlideShare」は、国内外のスライドを多数閲覧できるサイトです。特に、トップページに掲載されている人気スライドはデザイン性の高さが目立ちます。人気スライドは英語が多いものの、数字や図表の使い方は十分参考になるでしょう。
多様なスライドデザインを知りたい、他社の提案書と差別化を図る上でのヒントを得たい方におすすめです。
「alle」では、日本のスライドや企画書をまとめています。閲覧できるスライドデザインのジャンルは、次の5つです。
また、見やすい提案書の書き方をまとめたスライドもあります。デザインを参考にするだけでなく、基本的な書き方やコツを知りたい方にもぴったりなサイトです。
提案書の採用確率を上げるためには分かりやすく、かつ提案内容やメリットに魅力を感じられるような書き方が必要になります。基本的な記載項目を押さえつつ、具体的な数値データや図表などを積極的に活用することも大切です。
最もスタンダードな文書形式はパワーポイントを使ったスライドですが、官公庁向けの提案書であればワード形式が好まれやすい傾向にあります。文書形式のほか、文章内で使う表現やデザインは提案先に合わせると印象が良いでしょう。
とはいえ、はじめから魅力的で完璧な提案書を作成するのは容易ではありません。提案書を作成する際、テンプレートや見本を閲覧できるサイトを参考にするのもひとつの方法です。
分かりやすく質の高い提案書を作成したい方は、今回解説した書き方のコツを早速実践していきましょう。