基本ノウハウ
近年のテクノロジーの発展や人口減少にともない、これまで訪問営業や電話営業を中心に営業していた企業も、多様な手法を組み合わせないと成果を出せなくなっています。
本記事では最新事情を踏まえた営業手法を、アウトバウンド・インバウンドの2つに分けて解説します。自社に合った方法の選び方や進め方のポイントも、あわせて紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。
なお新規開拓の営業手法については「新規開拓の営業手法とは?8つのアプローチ方法と成功のポイントを紹介」をご覧ください。
営業手法はアウトバウンド営業と、インバウンド営業の2つに大別されます。アウトバウンド営業とは企業から見込み顧客へアプローチする手法であり、インバウンド営業は見込み顧客から問い合わせなどのアクションを引き出す手法です。
2019年のパンデミック後は社内・社外ともに対面で話す機会が少なくなり、一方でリモートワークが普及しました。その結果アウトバウンド中心の営業スタイルだけでは成果が上がらなくなり、インバウンド営業との組み合わせが重要になってきています。
ここでは6つのアウトバウンド営業と、7つのインバウンド営業、合計13の手法について見ていきましょう。
アウトバウンド営業は、主に次の6つです。
それぞれの概要やメリット・デメリットを解説します。
訪問営業とは企業を直接訪ねる、最もスタンダードな手法です。アポなしで訪問する場合は、飛び込み営業とも呼ばれます。訪問営業のメリット・デメリットは、下表の通りです。
メリット | デメリット |
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・直接顔を合わせて話ができる
・回数を重ねるごとに関係性が深まる(単純接触効果) ・名刺などを受け取ってもらいやすい |
・飛び込み営業の場合はタイミングが悪いと好感度が下がる可能性がある
・移動に金銭的/時間的コストがかかる ・事前準備に時間がかかる |
パンデミック後は、感染予防の観点から対面での商談機会が大幅に減少しました。かわりにオンライン商談が増え、より効率的な訪問営業が可能になっています。リモート環境下での商談は移動にかかるコストが削減され営業の効率化にもつながるため、今後ますます増えていくでしょう。
時代に合った営業手法を取り入れて商機を逃さないよう、オンライン商談に対応可能なツールやWeb環境を整えておきたいところです。
電話営業とは商談のアポイントを獲得するために、担当者へ電話をかけて交渉する営業手法になります。訪問営業と同様に、導入企業が多い方法の1つです。主なメリットやデメリットは、下表のようなものが挙げられます。
メリット | デメリット |
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・訪問営業よりも1日に対応できる顧客数が多い
・商談化の可否がすぐに分かり、効率が良い |
・1回の架電にかける時間が少なく、自社製品・サービスの魅力を伝えきれない可能性がある
・担当者につないでもらえないケースがある ・商談化には質の高いトークスクリプトが必要 |
また電話営業は言葉遣いなど基本的なビジネスマナーが身に付くため、新人担当者の育成にも役立ちます。とはいえ新人といえど実際の顧客を相手にするため、前提として質の高いトークスクリプトの作成と共有が必要です。
なお電話営業ではテレアポリストをもとに架電をしますが、顧客情報の管理をエクセルだけで行っていては効率が上がりません。近年では顧客リストの作成を自動化できる、便利な製品も開発されています。
メール営業とはメルマガやDMを送付し、見込み顧客の興味関心度を引き出す営業手法です。下表にあるメリットのようにメールの型がある程度決まっていれば、新人の担当者でも取り組みやすいでしょう。
メリット | デメリット |
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・定型文やデザインをテンプレート化すると、効率的に作成/送付できる
・見込み顧客の興味関心度に合わせて送信内容をアレンジできる ・押し売り感が少なく、自然と顧客接点を維持できる |
・誤字脱字があると信頼感が下がる可能性がある
・開封率やクリック率を上げる工夫が必要 |
メール営業は訪問営業の前後に、リマインドやアフターフォローの意味合いで行われる場合もあります。また見込み顧客の創出・育成という観点から、メール営業ではマーケティング部門が関わるケースが多くなっています。
レター営業とは郵送DMやFAX DMを送付し、見込み顧客の興味関心度を引き出す営業手法です。主なメリット・デメリットは、下表のようなものが挙げられます。
メリット | デメリット |
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・顧客の手元に残る
・顧客側の意志決定者に直接送付できる ・「自社のために手間をかけてくれた」と誠意が伝わりやすい |
・作成や送付に金銭的/時間的コストがかかる
・限られた範囲に伝えたい内容を分かりやすく書くスキルが必要 |
IT化が進んだ現代では、レター営業は古いと感じる方も多いでしょう。しかし取り入れる企業が減ってきているからこそ、手紙を送ることで競合他社と差別化でき見込み顧客の印象に残りやすくなります。
特に大手企業をターゲットにする場合は、意志決定者と早期に接点を持てるよう直接アプローチできるレター営業を活用すると良いでしょう。
企業のお問い合わせフォームからメールを送付する営業手法です。送信内容はメール営業と大きく変わりませんが、相手は問い合わせ内容を必ず確認するため開封率が高まります。その他のメリット・デメリットは、下表の通りです。
メリット | デメリット |
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・担当者や意志決定者の目に入りやすい
・反応がありそうなターゲット企業からアプローチできる |
・1件ずつサイトを訪問し送付する必要がある
・スパムメールとして扱われる可能性がある |
問い合わせフォーム営業で注意したいのは、クレームです。「営業メールおことわり」の企業に問い合わせフォームからメールを送付すると、クレームが発生するケースがあります。
このような事態を避けるためにも、メールを送付する前にサイトのプライバシーポリシーなどをよく確認し、フォーム営業不可の企業はリスト化して部門内で共有しましょう。またクレーム対応のマニュアルを作成・周知し、迅速に対応できるようにしておくことも大切です。
ABM(Account Based Marketing)とは、特定の企業や団体(アカウント)に対して集中的にアプローチする営業手法になります。主なメリット・デメリットは、下表の通りです。
メリット | デメリット |
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・特定の企業に対して集中的に営業できる
・企業ごとにアプローチを最適化するため、商談化率が高い ・顧客の動きを追跡/分析しやすい |
・新規顧客の創出には向いていない
・営業とマーケティングの連携が不十分だと成果が上がりにくい |
ABMにおけるアカウントの選定やアプローチでは精度の高い顧客情報が必要であり、後述するインバウンド営業との組み合わせが大切になります。ABMはアウトバウンド営業ですが、インバウンド営業と相互に補完するようなイメージで並行して進めると良いでしょう。
インバウンド営業は、主に次の7つです。
それぞれの概要やメリット・デメリットを解説します。
オウンドメディアとは自社が管理するWebサイトで、定期的に情報発信する営業手法です。見込み顧客が自ら情報を検索・比較検討するようになった現代では、スタンダードかつ必要不可欠な方法となっています。主なメリット・デメリットは、下表の通りです。
メリット | デメリット |
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・戦略に沿った柔軟な情報発信ができる
・企業の資産になる ・企業やブランドのイメージを形成できる |
・定期的に情報発信する必要がある
・成果が出るまで時間がかかる |
なお一口にオウンドメディアと言っても、目的やコンセプトによって次の3つに分けられます。
いずれも見込み顧客の目に触れるためには、SEO対策などの施策が必要です。オウンドメディアの成果は実感できるまで時間がかかることをよく理解し、中長期的な視点で設計・運用していきましょう。
LP(Landing Page)とは自社製品やサービスをアピールし、CVへつなげる営業手法です。主なメリット・デメリットは、下表のようなものが挙げられます。
メリット | デメリット |
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・訴求力が強く、CV率の向上が期待できる
・単一ページのため、効果測定の結果に合わせて改善しやすい |
・流入元の広告と整合性の取れた内容/デザインにする必要がある
・制作に金銭的/時間的コストがかかる |
前述のオウンドメディアと混同しやすいですが、2つは目的や集客方法が異なります。LPは自社製品やサービスの魅力や料金プランを伝えてCVにつなげるのが目的であり、集客は検索エンジンよりもWeb広告からの流入が中心です。
ただしSEO対策を施すオウンドメディアと同様に、LPもクリック率の増加や直帰率の低下を目指したLPO対策が必要になります。
インターネット上に広告を掲載し、LPなどへの流入を増やす営業手法です。主な種類は、次の3つになります。
上記のような広告のメリット・デメリットは、下表の通りです。
メリット | デメリット |
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・成果が出るまでの時間が短い
・伝えたい内容、ターゲットによって広告形態を使い分けられる ・効果測定しやすい |
・効果的な運用にはある程度の知識が必要になる
・ジャンルや競合他社の動きによっては、ランニングコストが高額になる |
ただしBtoB企業が広告を運用する場合、BtoC向けよりもリードタイムが長いため、成果が出るまでに時間がかかるケースも少なくありません。売上がなかなか伸びないからといって途中で投げ出さず、定期的に効果測定しながら中長期的な視点で運用することが大切です。
ホワイトペーパーとは見込み顧客にとって役立つ情報をまとめ、CVへつなげる営業手法になります。BtoBではオウンドメディアやメルマガの中にCTAを設置し、ホワイトペーパーのダウンロードを促す方法が一般的です。主なメリット・デメリットは、下表のようなものが挙げられます。
メリット | デメリット |
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・見込み顧客の獲得/育成につなげられる
・ダウンロードの有無によって見込み顧客の検討段階がある程度予測できる ・既存のコンテンツを再利用できる |
・制作に人的/金銭的リソースの確保が必要になる
・ダウンロード後は内容の変更や修正ができない |
ホワイトペーパーは自社のノウハウやソリューションが詰まっている分、ダウンロードだけで満足して問い合わせにつながらないケースも少なくありません。継続的に見込み顧客と接点を持ち信頼関係を深めるためには、メール営業など他の手法との組み合わせが必須となります。
展示会やセミナーは見込み顧客との交流や名刺交換を通じて、顧客情報を集められる営業手法です。企業の営業体制によっては、マーケティング部門が中心となって対応するケースも多々あります。主なメリット・デメリットは、下表の通りです。
メリット | デメリット |
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・受注確度が比較的高い見込み顧客を集められる
・開催後のアンケートを通じて、顧客の声を集めやすい |
・準備に時間がかかる
・開催場所や時間の調整が必要になる |
なおパンデミック後はリモートワークが普及したことで、Web上のセミナーいわゆるウェビナーを開催する企業が急増しています。ウェビナーであれば開催場所を押さえる時間や利用料金が不要です。見込み顧客との交流機会を大切にしたい企業は、ウェビナーも積極的に取り入れていきましょう。
FacebookやTwitterといったSNSを活用し、認知拡大を目指す営業手法です。近年では公式アカウントを作成・運用している企業も増え、SNSマーケティングという言葉を目にする機会が増えました。SNSを活用した営業のメリット・デメリットは、下表の通りです。
メリット | デメリット |
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・ニーズや課題や顕在化していない層にも投稿内容が届く可能性がある
・自社情報をリアルタイムで伝えられる ・口コミやアンケート機能から顧客の声を集められる |
・定期的に投稿する必要がある
・成果が出るまで時間がかかる |
またTwitterなどのDMは、メール営業を進める上でも役立ちます。ただし押し売りが強い文面や頻回な送信は、ブロック(受信拒否)の原因になりかねません。手軽に導入できる分、相手との距離感を見誤らないように注意しましょう。
プレスリリースとは報道機関やWeb配信サービスに向けて自社製品やサービスの情報を提供し、拡散してもらう営業手法です。近年ではオウンドメディアやWeb配信サービスで公開することから、ニュースリリースとも呼ばれています。主なメリット・デメリットは下表の通りです。
メリット | デメリット |
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・低コストで実行できる
・大手メディアで公開すれば、強い拡散力が期待できる |
・提供後は内容を変更/修正できない
・成果が出るまで時間がかかる |
プレスリリースは毎日分刻みで膨大な数が公開されているため、より多くの見込み顧客に見てもらうためには目を引くタイトルや内容の工夫が必要になります。特にBtoB企業のプレスリリースは成果が見えにくいため、継続的に配信と効果測定を繰り返し、徐々に認知を拡大させるイメージで取り組みましょう。
引き合いや紹介営業とは直接問い合わせのあった場合や、お取引先や関連会社からの紹介先に対して行う営業手法です。すでに興味のある見込み先に対して営業を行うため、高い成約率が見込まれます。
メリット | デメリット |
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・低コストで実行できる
・成約に繋がりやすい |
・数字目標などの計画や見込みが立て難い
・成果が出るまで時間がかかる |
関連会社や紹介先へ普段より紹介しやすいように資料を配ったり、インセンティブを設定したりするとよいでしょう。またサイト上で紹介資料がダウンロードできるようにするなど、問い合わせが簡単にしやすい仕組みを作る工夫もおすすめです。
営業手法の選び方や進め方のポイントは、主に次の3つです。
それぞれ詳しく解説します。
営業手法は見込み顧客が持つ、ニーズの顕在度合いに合わせて選びましょう。最も効率的・効果的なのが、顕在層や明確層など受注確度の高い見込み顧客に対する手法から取り組むことです。
例えばすでに受注確度がある程度高まっている場合は、テレアポやメール営業でアポイントを獲得し、訪問営業で商談化します。また潜在層や準顕在層は顕在層以上に成長するよう、インバウンド営業を中心にアプローチすると良いでしょう。
リソースが限られている場合は、明確層や顕在層へのアプローチを優先します。潜在層へのアプローチから始めると、受注まで非常に時間がかかるためです。
営業手法を選ぶ際は「上から下へ」を基本としながら、ニーズの顕在度合いに合わせて臨機応変に変えていきましょう。
営業手法は複数のものを組み合わせると、より効果を発揮します。例えばテレアポだけではアプローチできる見込み顧客の数に限界がありますが、メール営業を併用すれば顧客リストの量を増やすことが可能です。
また別の例として、オウンドメディアだけでは受注確度の低い人から高い人までさまざまな見込み顧客が流入し、商談化率の低下が予測されます。この場合はセミナー開催で興味関心度が高い見込み顧客を集め、顧客リストの質を上げることで商談数や受注数の増加が期待できるでしょう。
このように複数の手法を組み合わせるためには、営業戦略や営業計画を見直しながら人員や資金を確保する必要があります。
各手法の精度を上げて成果につなげるためには、それぞれの方法に特化した営業担当者を育成するのも1つの方法といえます。例えば次に挙げる4つの手法を実践するとしましょう。
手法によって必要な知識やスキルが異なることを考えると、上記すべてに精通した担当者を育成することは困難かつ非効率です。
このような場合営業担当者には訪問営業のスキルアップに注力してもらい、テレアポは営業代行会社に依頼する方法があります。またオウンドメディアや広告運用はマーケティング部門で担当するなど、他部門と役割分担しつつ互いに協力し合う関係性を築くと良いでしょう。
上記のように営業担当者が習得を目指す手法を限定し、内部・外部との連携体制を取れば各手法の精度が上がります。新人や若手の担当者も効率的に育成でき、早期の戦力化も実現可能です。
営業手法はさまざまな種類がありますが、パンデミック以後は特にインバウンド営業を新たに取り入れる企業が増えています。対面での営業が難しくなったからこそ、インターネットやリモート環境を活用した手法への切り替えや組み合わせが大切になってきています。
また営業手法を選ぶ際は、見込み顧客のニーズを正確に把握するところから始める必要があります。手法によっては成果が出るまで時間がかかりますが、途中で諦めずに中長期的な視点で取り組むことが重要です。
時代に合った営業手法を取り入れ、売上目標の到達を目指していきましょう。