基本ノウハウ
見込み顧客の行動データからニーズを把握できるデジタルマーケティングの重要性を認識しているものの、デジタルマーケティングの施策にはさまざまな種類があり、何から手を付ければいいか分からないという方も多いようです。マーケティングの効果を最大化するためには、各施策の特徴を把握し、自社にとって必要な施策の取捨選択が重要になります。
本記事では、目的別の代表的なデジタルマーケティングの施策を15個紹介し、取り組む施策の優先順位の付け方を解説します。
デジタルマーケティングとは、顧客のオンライン上での行動データをはじめとするデジタルデータを活用するマーケティングです。Webマーケティングはオンラインでの施策に限定されるのに対し、デジタルマーケティングはIoTやサイネージ広告など、オフライン・オンラインを問いません。
自社サイトのセッション数やサイト滞在時間など従来は確認できなかったデータも取得できるため、データに基づいてユーザーの行動傾向やニーズを推察し戦略設計に役立てられる点や、蓄積したデータを分析して施策の効果検証・改善をスピーディに展開できる点がメリットです。
デジタルマーケティングのユーザーに対する施策は、役割別に大きく4つに分類できます。ここからは、以下の4つの役割を軸に15種類の施策の概要を紹介します。
見込み顧客からの認知度を高め、自社サイトやオウンドメディアなどに集客を行いたい場合に実践するデジタルマーケティング施策を紹介します。
デジタル広告とは、デジタル技術により短時間での出稿・データの計測が可能な広告全般を指します。Webサイトを通じて発信される視覚的な広告以外にも、音楽アプリで流される音声のみの広告や、デジタルサイネージなどの広告を含みます。反対にデジタル広告ではない広告としては、看板広告、電車の中吊りなどの交通広告、テレビ・新聞・雑誌などのマス広告が該当するでしょう。
デジタル広告はスピーディに出稿でき、出稿後も予算やクリエイティブを柔軟に調整できるのが特徴です。また、データに基づいたターゲティングや効果検証が可能なので、費用対効果や精度が高いというメリットもあります。代表的なデジタル広告は以下の通りです。
リスティング広告 | 検索エンジンに出稿する広告。入札額によっては即日で入札キーワードの上位表示が狙える。獲得したい成果に応じてクリエイティブや予算を調整する。 |
ディスプレイ広告 | Webサイトやアプリ上の広告枠に出稿する広告。バナーのビジュアルにこだわることで、CVにつなげる。自社サイトに訪れた人へのリマーケティング広告も可能。 |
SNS広告 | FacebookやTwitter、Instagram、LINEなどのSNSに出稿する広告。ユーザーのプロフィール情報をもとにターゲティングできる。 |
動画広告 | YouTubeなどの動画配信プラットフォームに出稿する広告。テキストや画像よりも豊富な情報を伝えられる。 |
音声広告 | ラジオや音楽配信サービスなどに出稿する広告。音楽配信サービスでは聴取する層の属性などからターゲティングも可能で、現在注目が集まっている。 |
デジタルサイネージ | 駅や電車内、商業施設などに設置されているデジタルサイネージに出稿する広告。設置場所や時間帯によって配信内容を変更すれば、ターゲティングも可能。タクシー内で動画広告を流すタクシーサイネージも市場を拡大している。 |
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SEO(Search Engine Optimization)は、検索エンジンにおいて自社サイトを上位表示させて集客をねらう施策です。良質なコンテンツの発信、サイト構造の最適化、サイト表示速度の改善といった施策を通して検索エンジンとユーザーの双方に評価されるWebサイトを実現し、自然検索からの流入数の増加を目指します。成果が出るまで中長期的な取り組みが必要なため、デジタル広告など他の施策と併用しながら取り組むと良いでしょう。
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自社のアカウントを運用して商品・サービスの認知拡大や自社コンテンツへの集客をねらう手法です。ホワイトペーパーやセミナー情報を発信したり、企業理念に基づいたフィロソフィを発信したりと、活用方法はさまざまです。BtoCであれば親しみやすいキャラクターを全面に出し、ユーザーと交流しながら広報を行ってフォロワーを増やし、SNSの影響力を強めていく方法もあります。ユーザーとの関係性を築くことで、顧客をファン化し育成する手段としても利用されています。
VSO(Voice Search Optimization)は音声検索最適化のことで、音声による検索で自社コンテンツがピックアップされやすくなるための施策です。音声検索は、料理中や運転中など手が離せない場面でも検索の実行が可能になる非常に便利な機能であり、特に海外ではすべての検索の50%が音声検索ともいわれています。国内での市場はまだ大きなものではありませんが、今後国内の人々が音声検索に慣れていくことで、大きく拡大していくことが予想されています。
音声検索では話し言葉が使われる傾向にあるため、分かりやすい単語を用いた会話的なフレーズに対応します。また、スマートフォンやタブレットで音声検索されることが大半のため、スマホ最適化も必要です。
自社の商品・サービスを認知した見込み顧客の情報を獲得し、次の施策につなげるためのデジタルマーケティング施策を紹介します。
市場分析やアンケート調査結果、導入事例、製品比較など、ユーザーにとって有益な情報をPDFにまとめた資料がホワイトペーパーです。ダウンロードの際に企業情報や担当者名を入力してもらうことで、リードの獲得につながります。ホワイトペーパーをダウンロードした担当者は、そのトピックに興味関心があるリードだと判断できます。
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ウェビナーは「Web」と「セミナー」を掛け合わせた用語で、オンライン上で行われるセミナーという意味です。新型コロナウイルスの流行にともない普及した施策で、全国から気軽に参加できるメリットがあります。ウェビナー参加者の情報や回収したアンケート結果は、その後のマーケティング活動や営業活動に役立ちます。ターゲットの悩みやニーズを深掘りした上で企画を立案すると、より多くの人々に参加してもらえるでしょう。
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インターネット上で開催されるオンライン展示会は、バーチャル展示会やWeb展示会とも呼ばれています。新型コロナウイルスの流行にともない普及した施策で、オフラインの展示会では必要だった現地への旅費や運送費、設営費などのコストを抑えられ、国内外から気軽に参加できる点がメリットです。自社サイト上で単独開催するパターンと、主催者が用意したWebサイトに合同で出展するパターンがあります。オフライン展示会では得られない参加者の行動履歴データを得られるため、後追いメールなどの施策に活用できます。
リスティング広告などの飛び先となるLP(ランディングページ)を改善し、最適化する施策です。実際に広告を配信してLPに誘導し、その結果から課題を分析・改善しCVRの向上を目指します。特に重要なのが最初に目に入るLPの上部「ファーストビュー」で、ファーストビューの離脱率が高い場合は広告の文言とファーストビューに齟齬がないかなどを見直す必要があります。そのほか、商品・サービスのキャッチコピーやメインビジュアルを工夫し、問い合わせや資料請求などCVにつながるボタン付近のコピーを改善します。
関連記事:LP(ランディングページ)の改善でコンバージョン率を高める施策
EFOとはエントリーフォーム最適化の略で、入力フォームの使いやすさを改善することで入力途中の離脱を減らす施策です。入力フォームまで至れば、そのほとんどがコンバージョンするのではないかと思われがちですが、実際は70~80%のユーザーが離脱しているともいわれています。EFOの改善によってコンバージョン率を改善できれば、リード獲得に大きく貢献してくれるでしょう。
関連記事:EFOとは?BtoB企業での必要性や対策の例を解説|役立つツールも
リードを獲得した後は、そこから実際に商品やサービスを購入してくれる顧客へと育成していかなければなりません。リード育成に役立つデジタルマーケティング施策について紹介します。
メールマガジンは、商品・サービスの情報やキャンペーン情報など、ユーザーの役に立つ情報を定期的にメール配信する施策です。定期的にメールを送ることでユーザーとの接点を保ちつつ、内容によってはユーザーの興味・関心の育成につなげられます。
関連記事:メルマガ配信とは?開封率の高いメールマガジンの作り方やテンプレートまで徹底解説
ステップメールは、ユーザーのアクションに応じて複数のメールを段階的に自動配信する施策です。メール配信システムなどのツールを利用して行います。
あらかじめ設定しておけばユーザーのアクションに応じて自動でメール配信が行われるため、ユーザーの興味・関心に沿ったメールでリード育成につなげられるだけでなく、配信担当者の業務も効率化できます。ユーザーの行動が起点のため、一度興味を持ったユーザーを取りこぼさずに済み、囲い込みにも有効です。
関連記事:ステップメールとは?作り方・BtoB成功事例・ツールをご紹介【シナリオ例文あり】
オウンドメディアとは、企業が自社で所有・運営しているメディアです。オウンドメディアを通してユーザーにとって有益な情報を発信していけば、商品・サービスや企業そのもののファンを作ることもできます。加えて、SEOなどの施策で露出度を高めれば、リードの獲得にもつなげられます。
関連記事:オウンドメディアの意味とは?運用事例や成功のポイントまで解説
セグメントメールとは、属性や興味の度合いで見込み顧客を分類(セグメント)し、その分類ごとに異なる内容のメールを配信するマーケティング手法です。メール配信システムなどのツールを利用すれば、条件を指定するだけで工数をかけずセグメントの設定が可能です。
個々の見込み顧客の興味・関心に合わせた内容を配信できるため、対象者全員に同じ内容を送る一斉メールよりもリード育成につなげやすく、また個別に逐一メールを作成するよりも時間を必要としないというメリットがあります。
関連記事:セグメントメールとは?一斉送信との違いや具体的な成功するやり方まで解説
顧客満足度を高め、1度受注した後も継続的に利用・購入してもらうためのデジタルマーケティング施策を紹介します。
利便性の高いアプリを用意することで、ユーザーの継続的な利用を推進しつつ、アプリから得られた情報をもとに新たな施策へとつなげていきます。またアプリのプッシュ通知やクーポン配布などの機能を使えば、店舗販売などのオフライン事業との連動も可能です。
チャットボットとは、Webページ上のチャット欄に文章を入力すると、その内容に応じてロボットが自動で返答するプログラムのことです。チャットボットはAIを搭載し臨機応変に対応するタイプと、AI非搭載であらかじめ設定したシナリオに沿って回答するタイプの2種類があります。
チャットボットがあれば、ユーザーからの簡単な質問に人の手を借りずスピーディに回答でき、また大勢の顧客に対して返信の遅れや対応漏れも発生しません。また、チャットボットにより業務を効率化できれば、企業は個別対応が必要な優先度の高い顧客のサポートに人手を割けるようになるため、顧客満足度の向上につながります。
ここで紹介しただけでも、デジタルマーケティング施策には数多くの選択肢があります。ここからは、複数ある選択肢の中からどのように優先順位を付けていくべきかについて解説していきましょう。代表的な優先順位の付け方には、以下の3つがあります。
KGIとは、デジタルマーケティング実施によって達成したい最終的なゴールのことです。このKGI達成に近い施策から着手すると良いでしょう。
例えば売上をKGIに設定したサイトで、500人が閲覧すれば10人がコンバージョンにつながるとします。その場合は、500人から1000人の閲覧数を目指すのではなく、500人の閲覧で20人がコンバージョンするための施策を優先的に実行するのです。閲覧数が増えても、コンバージョンに至る道筋が改善されていなければCVRが下がるだけに終わる可能性もあります。少ない工数で大きな成果を出せそうな箇所から着実に施策を行うようにしましょう。
その上で1000人の閲覧を目指す施策を打つことができれば、さらなる成果が期待できるでしょう。
デジタルマーケティングにおけるそれぞれの施策は、なるべく成果を大きくできるような順序で取り組むことが大切です。
デジタル広告などで大量の見込み顧客を獲得しても、遷移先のページの情報が不十分だったり、資料請求フォームの使い勝手が悪かったりすればコンバージョンには至りません。施策の効果を最大化させるためには、その準備として別の施策を先に実施しておく、今回の例でいえば遷移先の情報を充実させるLPO、EFOを優先的に実施しておく方が効果を見込めるケースがあります。
自社の状況を細かく把握し、どこがボトルネックとなっているのかを分析した上で、どういう手順で取り組めば成果を出せそうかを考えながら実施しましょう。
紹介した各施策は、すぐに効果が得られるものもあれば、成果が出るまで時間を要するものもあります。短期で成果を出さなければならない場合は、あえて長期的な施策は据え置き、短期向け施策に注力した方が良いケースもあるでしょう。
反対に、数年以上にわたって計画的に進められる時間と予算がある場合は、短期向け施策だけでなく長期的な施策も選択すべきです。
自社のリソースと各施策のリードタイムを考慮し、今必要な施策を打っていくという姿勢が大切です。
施策の例 | 着手のコスト | 成果が出るまでの時間 |
---|---|---|
オウンドメディア | 高い | 中・長期向け |
デジタル広告 | 調整できる | 短期向け |
SNS | 安い | 中・長期向け |
EFO | 安い | 短期向け |
メールマガジン | 安い | 中・長期向け |
デジタルマーケティングの代表的な施策について紹介してきました。それぞれに強みや特徴があり、また影響を及ぼす範囲も異なるため、その違いを正しく理解し、適材適所の施策を実行するようにしましょう。