基本ノウハウ
セグメントメールは、メールマーケティング手法の1つです。しかしマーケティング初心者の中には、「一斉送信メールと何が違うのか」「どのように運用すれば良いのか」と疑問がある方もいるでしょう。
本記事ではセグメントメールとは何か、メリットやデメリットとともに解説します。一斉送信との違いや実際にセグメントする方法、配信時のポイントもあわせて紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
まずはセグメントメールとは何か、その意味や目的について解説します。一斉送信メールとの違いや使い分け方も、あわせてチェックしていきましょう。
セグメントメールとは属性や興味の度合いなどで見込み顧客を分類し、それぞれに見合った内容を配信する手法です。
そもそもセグメントとはセグメンテーション(市場の細分化)が語源であり、同じような傾向を持つ市場や顧客をグループとしてまとめる行為を指します。例えば検討段階で見込み顧客を分類すると、次の3つが考えられるでしょう
具体的な分け方や配信内容は、「4.セグメントメールのやり方」で解説します。
セグメントメールと一斉送信メールとの間にある最も大きな違いは、配信先です。前者はあらかじめ分類した見込み顧客へ、後者はメールアドレスを保有するすべての見込み顧客へ配信します。2つの使い分け方は、下表の通りです。
セグメントメール | 一斉送信メール | |
---|---|---|
配信内容の方針 | 見込み顧客が必要としている情報 | 自社が配信したい情報 |
向いている配信内容 | ・ホワイトペーパーのダウンロード ・事例集の紹介 ・セミナー(ウェビナー)の案内 など |
・業界のトレンド情報 ・新製品、サービスのリリース情報 ・ブログ記事やコラムの更新情報 など |
向いているシーン | ・見込み顧客との信頼関係を深めたい ・特定の見込み顧客から得られる反応を精査したい ・メールからの流入数や成約率を上げたい |
・より多くの見込み顧客にアプローチしたい ・自社の魅力を伝えたい ・さまざまな見込み顧客の反応を確認したい |
一斉送信メールはさまざまな見込み顧客をターゲットにするため、配信内容も多岐に渡ります。その分「自分には関係ない内容だ」と判断される回数が多くなると、メールを読まれなくなる可能性も出てくるでしょう。
購読解除や顧客離反につながらないよう、一斉送信メールは送りすぎないように注意しつつ、上手にセグメントメールを取り入れる必要があります。
メリットは、主に3つあります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
セグメントメールのメリットは、見込み顧客との信頼関係を築きやすい点にあります。そもそもメールマーケティングの目的は、自社製品・サービスの利用や購入といった行動意欲の促進です。
見込み顧客は「この企業なら信頼できる」と感じられるようになると、上記のような行動を起こしやすくなるでしょう。特に1回の購入額が高額になりやすいBtoBでは、信頼感が購入における判断基準の1つになります。
セグメントメールは見込み顧客にとって必要な情報を必要なタイミングで配信するため、「自社のことをきちんと考えた上で配信してくれている」と信頼を得やすい手法です。信頼関係を構築し行動意欲を促進する上で、非常に有効であるといえるでしょう。
セグメントメールには、開封率やクリック率が上がりやすいメリットもあります。見込み顧客の属性や興味の度合いに応じた配信内容になっており、「自分に関係のある内容だ」と感じて開封する読者が多くなるためです。
メール本文内の内容も見込み顧客にとって有益な情報となるように考え抜かれており、CTAが効果的に働きます。その分クリック率も高まりやすく、移動先のページも質が高ければ成約率(CV率)もおのずと高まります。
セグメントメールは開封率やクリック率を上げ、効率的に成約へつなげる上でも重要な手法なのです。
セグメントメールのメリットは、配信にかかる金銭コストをカットしやすい点にもあります。メールマーケティングの効率を上げるためには、ツールの活用が必須です。しかしツールによっては配信数に限りがあったり、配信数の上限を超えると超過料金がかかったりするケースも少なくありません。
一方セグメントメールでは配信先を絞るため、配信数を抑えられます。超過料金がかかる心配もなく、配信上限数の少ない料金プランも利用できることから、金銭的なコストカットも可能です。前述した成約率の向上も同時に実現すれば、費用対効果の改善も期待できるでしょう。
デメリットは、主に2つあります。
効果的な運用のためには、メリットだけでなくデメリットも把握することが大切です。それぞれ詳しく見ていきましょう。
セグメントメールのデメリットは、配信準備に時間と労力がかかる点にあります。通常のメール配信ではターゲットの選定後にコンテンツを作成し、配信するのが基本の流れです。
一方セグメントメールではターゲット選定時に、見込み顧客を慎重に分類する必要があります。コンテンツ作成では分類したグループごとに内容を変えるため、総合的に見ると通常のメール配信より手間がかかるといえるでしょう。
しかし前述したように、セグメントメールは配信企業にとって大きなメリットがあります。リソースをあまり割けないけれども配信を続けたいという場合は、件名だけセグメントごとに刺さる文面に変え、本文は同じものを流用するというのも1つの方法です。
セグメントメールでは見込み顧客の分類方法によっては、効果が出にくいデメリットもあります。細かく分類しすぎると、メール配信数が減り効果測定も難しくなるでしょう。またセグメントの方向性を間違えると、目立った効果を得られないケースもあります。
例えば反応率の違いによって見込み顧客を分類してメールを配信しても、反応の仕方は大きく変わらないでしょう。慣れないうちは興味の度合いや成約確度の高さで見込み顧客を分類し、顧客の情報収集や理解が進んでから新たなセグメントを設定するのも1つの方法です。
ここではセグメントのやり方と、分類した見込み顧客に合わせた配信内容の例について解説します。
セグメントが決定し、配信内容も定まれば通常のメールマーケティングと進め方は同じです。具体的な手順について知りたい方は、「メールマーケティングとは?5つの手法や進め方などこれから始める方へ必須知識を解説」の記事もぜひ参考にしてみてください。
セグメンテーションとは、配信先のグループ(セグメント)を絞る工程です。主に次に挙げる4つの項目を踏まえて、セグメントを検討します。
デモグラフィック(人口統計的変数) | ・産業 ・業種 ・業態 ・企業の人数 ・資本金 ・売上高 ・担当者の年齢や役職、決裁権の有無 など |
ビヘイビアル(行動変数) | ・利用経験の有無 ・利用頻度 ・利用に至るまでのプロセス ・問い合わせ履歴 ・メールの開封率やクリック数 など |
ジオグラフィック(地理的変数) | ・企業の本拠地 ・店舗がある地域 ・取引先の所在地 など |
サイコグラフィック(心理的変数) | ・企業が抱えている悩み ・購買方針 ・社風 など |
この中でもセグメントメールで特によく用いられるのがデモグラフィックとビヘイビアル、つまり属性と行動です。具体的なセグメントと、配信内容を見ていきましょう。
セグメントに応じた配信内容の例は、下表の通りです。
例 | 見込み顧客のセグメント:大分類 | 見込み顧客のセグメント:小分類 | 配信内容 |
---|---|---|---|
1 | 業種 | 運送業 | 同業種の導入事例 |
2 | 従業員数 | 50人ほど | 中小企業の導入事例 |
3 | 悩み | メルマガ分析の進め方が分からない | メルマガ分析のノウハウをまとめた資料の案内 |
4 | Web行動履歴 | 製品ページへの訪問 | 他社との比較データをまとめた資料の案内 |
5 | 問い合わせ履歴 | 見積もり依頼 | 無料トライアルの案内 |
いずれにしても見込み顧客の属性や行動などをよく分析し、興味関心度が強そうなコンテンツを配信することが大切になってきます。
最後にセグメントメールを成功させるコツを、3つ紹介します。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
セグメントメールに盛り込む内容や文面は、顧客目線を大切にして作成しましょう。自社が配信したい内容を送付する一斉送信メールと異なり、セグメントメールは見込み顧客が必要とする情報を配信するためです。あまりに売り込みが強いメールだと、見込み顧客の心は遠ざかってしまいます。
また「あなただけに」という特別感を出せる点は、セグメントメールにおける特徴の1つです。しかし強調しすぎると「他の企業にも同じことを言っているのでは?」と疑念を抱かせ、逆効果になりかねません。
この場合も顧客目線に立ち返り、「貴社限定」ではなく「セミナー参加者さま限定」など対象者が一定数いることを暗に示すのがおすすめです。ほどよい特別感を与えることで、「早めにチェックしておこう」「他に後れを取りたくない」とメールを確認する確率が高まるでしょう。
問い合わせ内容は、セグメントメールの配信内容を検討する際に大きなヒントとなります。問い合わせという行動は、その項目について強い興味があることを示しているためです。
具体的には問い合わせ内容ごとに見込み顧客をセグメント化し、関連したコンテンツを配信すれば、高い反応率が見込まれるでしょう。のちのちセグメントすることを考え、お問い合わせフォームは自由記述欄だけでなく、問い合わせ内容や製品・サービスの種別を選択できる項目を設けるのがおすすめです。
例えば次のような項目をお問い合わせフォームで選択できるようにすると、セグメントや配信内容の検討を進めやすくなります。
セグメントメールの成功には、ツールを活用した効率的な配信体制が不可欠です。デメリットでも解説したように、セグメントメールは通常のメール配信よりも時間や労力がかかります。担当者が疲弊して配信を中断・停止しないよう、相応の運用体制を整えることが必要です。
そこで役立つのが、メールマーケティングツールになります。ツールを活用すれば配信作業はもちろん、セグメントした配信リストの作成や効果測定も効率的に進められるでしょう。セグメントメールの運用で役立つツールについて知りたい方は、「メールマーケティングツールのおすすめ5選|比較ポイントや導入手順も解説」の記事もぜひチェックしてみてください。
セグメントメールは見込み顧客を分類し、それぞれに見合った内容を配信するメールマーケティング手法です。配信準備に時間や労力はかかりますが、見込み顧客との信頼関係を構築しやすく、やり方によっては費用対効果の改善も見込まれます。
セグメントメールの肝であるセグメンテーションは、主に見込み顧客の属性や行動を踏まえて決定します。はじめのうちは成約確度でセグメント化を進め、慣れてきたら新しい分類方法に挑戦してみるのも1つの方法です。
時には便利なツールを活用しながら、顧客目線を大切にしたセグメントメールを配信していきましょう。