基本ノウハウ
メールは企業同士の連絡ツールとして、多くの場面で活用されています。それはマーケティングの分野でも同様です。しかし「メールマーケティングとは、そもそも何?」「どのように進めれば良いのか」などの疑問がある方もいるでしょう。
本記事ではメールマーケティングの手法や、その進め方を解説します。SNSが発達した現代でも通用する理由や、メリット・デメリットもあわせて紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
メールマーケティングとはその名の通り、メールを活用したマーケティング施策を指します。メールマーケティングとよく混同しやすいのが、メルマガです。
まずはメールマーケティングとは何か、メルマガとの違いを踏まえながら解説します。またSNSが発達した現代において、メールマーケティングが重要とされる理由もあわせてチェックしていきましょう。
メルマガはメールマーケティングの一種ですが、目的や得られる効果などに大きな違いがあります。
メールマーケティング | メルマガ | |
---|---|---|
目的 | 利用や購入など行動意欲の促進 | 有益な情報の発信 |
効果 | 売上の向上 | 認知拡大やファン化 |
効果が出るまでの期間 | 短期~中期 | 長期 |
メールマーケティングの最終目標は、売上の向上です。そのためにはまず、自社や自社製品・サービスを知ってもらう必要があります。そこで役立つのがメールアドレスを保有する見込み顧客に対して、一斉に情報発信できるメルマガです。
メルマガはメールマーケティングの目標を達成する上で活用できる、1つの手段だと覚えておくと良いでしょう。
メールマーケティングはSNSが発達した現代でも、決して古い手法ではありません。たしかに顧客へのアプローチで活用するチャネルは、時代の変化とともに多様化しています。しかしメールの送受信量は増加傾向にあり、主要なチャネルには変わりないのです。
実際にどれくらいのビジネスメールが送受信されているか、1日の平均数を見てみましょう。
1日の送信数(平均) | 1日の受信数(平均) | |
---|---|---|
2018年 | 11.6通 | 34.3通 |
2020年 | 14.1通 | 50.1通 |
2022年 | 16.3通 | 66.9通 |
参照:一般社団法人日本ビジネスメール協会|ビジネスメール実態調査2022
上記の表から送信数が増えており、受信数にいたっては4年間で2倍ほどにも増加していることが分かります。また2022年の同調査では、1日1回はメールを確認していると答えた人が約99.5%にものぼっています。
つまり現代においてもメールマーケティングは有効であり、特に主要なコミュニケーションツールとして活用するBtoBではより重要性が増すといえるでしょう。
メールマーケティングの代表的な手法は、5つあります。
それぞれの特徴や配信内容の例を見ていきましょう。
メールマガジン(メルマガ)は、最も一般的なメールマーケティングの手法です。メルマガで配信する内容の例としては、次のようなものが挙げられます。
メルマガの作り方やコツについて知りたい方は「読まれるメルマガのコツ9選!すぐできる開封率やクリック率を高める書き方を解説」の記事も参考にしてみてください。
ステップメールはあらかじめ設定したシナリオに沿って、メールを複数回、自動配信するメールマーケティングの手法です。例えば資料請求した見込み顧客のCVポイントをセミナー参加とした場合、次のような配信シナリオが考えられます。
ステップメールとよく混同しやすいのが、前述したメルマガです。メルマガとステップメールの違いについて詳しく知りたい方には「ステップメールとメルマガの違いって?使い分け方や効果的な連携方法まで解説」の記事もおすすめです。
セグメントメール(ターゲティングメール)は属性や興味の度合いなどで見込み顧客を分類し、それぞれに見合った内容を配信するメールマーケティングの手法です。セグメントとはセグメンテーションが語源であり、見込み顧客を分類する工程を指します。
例えば興味の度合いでセグメントした場合、次のような分類が考えられるでしょう。
セグメントメールのやり方やメリット・デメリットについて詳しく知りたい方は、「セグメントメールとは?一斉送信との違いや具体的な成功するやり方まで解説」の記事もぜひ参考にしてみてください。
リターゲティングメールは何らかのアクションを起こした見込み顧客に対し、再度行動を促すメールマーケティングの手法です。例えば自社製品やサービスの紹介ページ、つまりLP(ランディングページ)へアクセスした見込み顧客に対しては次のような内容のリターゲティングメールが有効です。
またウェビナーへの参加経験があり、セミナーアンケートでも購入意欲の高さがうかがえた見込み顧客には、期間限定の無料トライアルを案内しても良いでしょう。いずれにしても見込み顧客の検討段階を引き上げて、次の行動を起こしやすくするような配信内容の検討が大切になります。
休眠顧客発掘メールはリピートしてもらえず、そのまま接点を失ってしまった見込み顧客に対して再度アプローチするメールマーケティングの手法です。配信内容の例としては、次のようなものが挙げられます。
休眠顧客発掘メールで大切なのは、休眠顧客に至った原因を分析した上で配信の内容やタイミングを検討することです。主な原因と対処法の例は、次のようになります。
ただし一旦休眠顧客になると、状況が変化するまでにはある程度の時間が必要です。頻繁にメールを配信すると担当者はわずらわしく感じてしまい、場合によっては迷惑メールとして扱われてしまいかねません。
良好な関係で接点を持ち続けるためにも、休眠顧客発掘メールは数か月や半年など期間を空けて配信すると良いでしょう。
メールマーケティングには、主に3つのメリットがあります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
メールマーケティングの運用は高度な技術が不要であり、低コストなため導入しやすい点が大きなメリットです。
もちろん効果的な施策の展開には、ある程度の知識は必要になります。しかしメールマーケティングにおいて成果が出る施策は、業界や業種によって若干異なります。配信と効果測定を繰り返すなかで独自のノウハウが蓄積していくため、はじめから完璧な知識と技術を必要とするものではありません。
また時間や労力がかかり、人の手だけでは対応しきれない作業はツールで代用可能です。特にメールマーケティングを導入しやすいのが、MA(マーケティングオートメーション)などのツールをすでに利用している企業です。同ツール内のメール配信機能を活用できるため、追加コストの発生を抑えられます。
メールマーケティングで役立つツールや導入方法について詳しく知りたい方は、「メールマーケティングツールのおすすめ5選|比較ポイントや導入手順も解説」の記事もぜひ参考にしてみてください。
メールマーケティングのメリットは、費用対効果(ROI)が高い点にもあります。そもそも企業がメールを送信できる相手とは、すでにメルマガ登録や資料請求など何らかの行動を起こしている見込み顧客です。つまり興味の度合いが比較的強く、高い成約率が期待できるといえるでしょう。
またメールマーケティングでは、見込み顧客に合わせてメールの内容や送信頻度を変えます。そのため見込みが低い顧客は除外し、成約確度が高い顧客に絞ってアプローチすることも可能です。
結果として費用対効果が高まり、効率的に成約を得られる点もメールマーケティングの大きなメリットになります。
メールマーケティングのメリットは、効果測定やKPIの検討も進めやすい点にもあります。開封率やクリック率など、見込み顧客の行動を数値化しやすいためです。具体的なKPIの例と計算方法は、下表のようになります。
内容 | 計算方法 | |
---|---|---|
開封率 | メールが開封された割合 | 開封数÷有効配信数×100 |
クリック率 | メール内のURLがクリックされた割合 | クリック数÷有効配信数×100 |
反応率 | メール内のURLがクリックされた割合 | クリック数÷開封数×100 |
配信成功率 | メールが配信先へ届いた割合 | 有効配信数÷配信数×100 |
購読解除率 | メールの購読を中止した割合 | 購読解除数÷有効配信数×100 |
例えば資料請求からセミナー参加へつなげる場合のKPIを考えてみましょう。資料請求後に配信を開始したメールの状況を、次のように仮定します。
配信数:3,000件
開封率:15%
クリック率:2%
上記であれば実際の開封数は450件、そのうちクリックされてセミナー参加に至るのが90人です。ここからセミナー参加者を150人(約1.7倍)へ増やしたい場合、開封数や開封率は次のように算出できます。
【開封数】 | 450件×1.7=765件 |
【開封率】 | 765件÷3,000件=25.5% |
つまり上記の条件でメールマーケティングを展開する際は、開封率25.5%をKPIに設定すると目標を達成できると推測できます。このようにゴールから逆算してKPIを設定し、具体的な数値で効果測定しやすい点がメールマーケティングのメリットなのです。
メールマーケティングには、主に2つのデメリットがあります。
スムーズに導入できるよう、デメリットについてもしっかり確認していきましょう。
なおBtoBにおけるメールマーケティングの重要性については、「BtoBのメールマーケティングのコツ5選!KPIの目安や目的別の配信例も解説」の記事で解説しています。BtoBでのメリットやコツを知りたい方は、あわせてチェックしてみてください。
メールマーケティングのデメリットは、運用体制を整える手間にあります。有益なコンテンツを配信し続けるためには、メールの作成や送信、分析する人員が必要なためです。
運用体制が整っていない状態でメールマーケティングを展開すると、担当者の業務負担が非常に大きくなります。するとコア業務の効率が低下し、売上悪化につながりかねません。
メールマーケティングの導入は人員の確保や、部署内外の協力体制が得られると判断できてから検討すると良いでしょう。
メールマーケティングのデメリットは、新たにツールを導入する場合に別途コストがかかる点です。そもそもメールマーケティングには、下表のようなコストがかかります。
コストの種類 | 例 |
---|---|
メール配信コスト | 各種ツールの導入費用 ・メール配信ツール ・MA ・CRM など |
リスト作成コスト | ・広告 ・セミナー開催 ・LP作成 など |
メール運用コスト | ・メールコンテンツの作成費用 ・送信、分析など実務担当者の人件費 など |
上記のうち、リスト作成コストは既存のマーケティング施策と連携するなかで削減できるでしょう。メール運用コストも、それほど高額にはなりません。
しかしメール配信コストは、ツールによっては導入費用が万単位になるものも多々あります。すでに導入している場合は問題ありませんが、新たに利用する場合は予算や費用対効果を踏まえて十分に検討することが大切です。
最後にメールマーケティングの進め方について、5つのステップに分けて解説します。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
まずはメールを配信する目的やターゲットを明確にします。配信目的の例は、次の通りです。
ターゲットは見込み顧客の属性や、興味の度合いなどによって分類します。すべての見込み顧客に対して情報発信したい内容は、一斉送信メールを活用しても良いでしょう。
次に配信する相手の属性や、メールアドレスなどをまとめたリストを整理します。保有するリストが少ない場合は、メールアドレスを集めるところから準備しましょう。リストを集める方法と、それぞれのメリット・デメリットは下表の通りです。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
Webサイト | ・すでにメルマガ登録など行動を起こしている見込み顧客のため、リストの質が高い ・MAやCRMなどツールと連携しやすい | ・SEO(検索エンジン最適化)の影響を受けやすい |
SNS | ・情報の拡散スピードが速く、リストの数を確保しやすい | ・規約の変更内容によってはリスト集めに支障が出る(アカウント停止など) ・多くのアカウントにリーチするためには、定期的な投稿が必要 |
広告 | ・短期間でリストの数を確保しやすい ・設定によっては興味の度合いが強い見込み顧客に絞れるため、リストの質が高まりやすい |
・広告運用の知識が必要 ・設定が不十分だと費用対効果が大きく下がる可能性がある |
最も理想的なのは、複数の方法を組み合わせて配信リストを集めることです。運用体制によっては始めやすい収集方法から進め、少しずつ種類を増やすのも良いでしょう。
また顧客情報を管理するCRMなどのツールを活用すると、より効率的に配信リストを整理できます。
配信リストが完成したあとに取り組むのが、コンテンツ作成です。配信内容を考える際に大切なのは顧客ファーストの視点、つまり顧客にとって有益な情報かどうかという点になります。
売り込みが強い文面だと購読解除につながりやすく、せっかく時間と労力をかけてメールを配信しても思ったような効果を上げられません。【1】で定めた目的やターゲットに沿ってカスタマージャーニーを設定し、配信内容をよく検討していきましょう。
コンテンツが完成したら、実際に配信します。手動でも送信は可能ですが、メール配信ツールやMAなどを活用するとより効率的です。また下記のような方法でも、メールは配信できます。
配信方法について知りたい方は、「メルマガ配信とは?開封率の高いメールマガジンの作り方やテンプレートまで徹底解説」の記事もあわせてチェックしてみてください。
効果的なメールマーケティングの展開には、開封率やクリック率などの効果測定が必須です。【4】の時点でツールを活用していると、数値の計測や確認が容易になります。
効果測定では文言や挿入画像などクリエイティブ面をABテストで検証し、コンテンツをブラッシュアップすることが大切です。その後は再配信して効果測定と、PDCAサイクルを回すイメージで定期的かつ継続的にメールを配信していきましょう。
A/Bテストとは、異なるバージョンのメールコンテンツや件名を送り、どちらがより良いパフォーマンスを示すかを比較するテストです。これにより、開封率やクリック率を最適化できます。例えば「新商品のご案内」という件名と「限定オファー!」という件名を比較することで、どちらがターゲットに響くかを見極められます。メールマーケティングの成果最大化のためにも、実際のユーザーデータに基づいて最適なコンテンツを作成することが重要です。
受信者の関心が高い内容や情報を個別に送ることで、エンゲージメント率向上に役立ちます。顧客の名前、過去の購入履歴、ウェブサイトでの行動履歴などを基に、カスタマイズされたメールを作成できます。例えば過去に特定の商品を購入した顧客に対して、その商品に関連する新商品の情報を提供することは、再購入を促進する有効な方法です。パーソナライズされたメールは顧客との信頼関係を深め、ロイヤリティを高める効果があります。
メールマーケティングはSNSが発達した現代でも、認知拡大や売上アップに向けて有効な施策の1つです。具体的な手法はさまざまありますが、いずれにおいても見込み顧客の視点に立った配信内容の検討が大切になります。
またメールマーケティングは比較的導入しやすく、費用対効果の高い点がメリットです。一方で運用体制を整える労力や、ツールの導入状況によってはコストが高くなるデメリットもあります。逆に言えば人員を確保でき、予算を捻出できるのであればメールマーケティングに力を入れたいところです。
自社製品やサービスの認知度を向上させたい、売上アップを目指したい方はメールマーケティングを積極的に進めていきましょう。