基本ノウハウ
メールマーケティングは、BtoB企業の認知拡大やリード育成に有効です。しかし担当者の中には、「なかなか効果を実感できない」「どのように進めれば良いか、よく分からない」という方もいるでしょう。
本記事ではBtoBのメールマーケティングのコツを解説します。KPIの目安や目的別の配信例も、あわせて紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。
メールマーケティングとは、メールを活用して見込み顧客の顧客化を促す手法です。ここではBtoBでメールマーケティングが大切な理由を、3つ解説します。
なおメールマーケティングの種類や基本的なやり方を知りたい方は、下記の記事もあわせてチェックしてみてください。
関連記事:メールマーケティングとは?5つの手法や進め方などこれから始める方へ必須知識を解説
BtoBビジネスでは、製品・サービス購入の検討期間が長く関係者も多いため、見込み顧客の検討段階や興味の度合いに合わせてアプローチを行う必要があります。そのため特定のセグメントやニーズを持つリードに対して、個別にメール配信できるメールマーケティングは、BtoBビジネス推進に欠かせません。
下表に、顧客の段階に応じたコンテンツ配信の例をまとめました。
顧客の段階 | メールマーケティングにおける目的の例 | |
---|---|---|
コールドリード | ・情報収集を進めている段階 ・自社製品やサービスへの興味が弱い |
・自社製品やサービスの魅力を知ってもらう |
ホットリード | ・課題を認識し、解決策を探している段階 ・自社製品やサービスへの興味が強い |
・他社製品との違いを知ってもらう ・説明会や無料トライアルの申し込みへつなげる |
カスタマー | ・実際に自社製品やサービスを利用している段階 | ・自社製品やサービスへの理解を深めてもらう ・成果を実感してもらい、リピートにつなげる ・クロスセルやアップセルを狙う |
ロイヤルカスタマー | ・自社製品やサービスを利用し続け、高い信頼感を持つ段階 ・新規顧客の紹介や口コミの拡散など、自社のマーケティング戦略に好影響を与える |
・満足度の維持や向上を図る ・自社製品やサービスへの要望を教えてもらう ・クロスセルやアップセルを狙う |
幅広い目的やターゲットに合わせて展開できるメールマーケティングは、さまざまな顧客と接点を持ち続けることが大切なBtoBビジネスにおいて効果的な手法といえるでしょう。
BtoBでメールマーケティングを展開するメリットは、リード獲得からアフターフォローまで長期にわたって顧客にアプローチできる点にもあります。
特に導入しやすいのが、リード育成(リードナーチャリング)です。電話やセミナー開催といった他の手法より、人的・金銭的コストを抑えながらも多くの見込み顧客と信頼関係を深められます。
信頼感が購入意欲に大きく影響するBtoBにおいて、定期的かつ継続的にアプローチできるメールマーケティングは売上アップにも大いに役立つでしょう。
BtoBでメールマーケティングを活用すれば、マーケティング全体の効率が上がります。そもそもメールマーケティングでは、保有するアドレスを整理した配信リストをもとにメールを送付します。
アドレスの多くは、メルマガ登録や問い合わせなど見込み顧客が起こしたアクションと通じて得られたものです。つまりその見込み顧客はすでに成約確度が比較的高いため、集中的にアプローチすることで効率的に商談・受注へたどり着けるのです。
また営業部門は既存顧客の対応で忙しく、半数以上の既存顧客が放置状態であり、見込み顧客の対応まで手が回らないケースも少なくありません。メールマーケティングでは、そのような手つかずの既存顧客・見込み顧客へも漏れなくアプローチできます。
見込み顧客の顧客化や休眠顧客の掘り起こし、アップセル・クロスセルなどが狙えるようになり、結果的にマーケティング戦略の効率化と売上アップを同時に実現できる可能性が高まるのです。
BtoBビジネスでメールマーケティングを実行する際のKPI設定について解説します。
BtoBのメールマーケティングでは、主に次のような指標をKPIとして設定します。
KPIの種類 | 内容 | BtoBにおける平均値 |
---|---|---|
到達率(配信成功率) | メールが配信先にきちんと届いた割合 | 約90% |
開封率 | メールが配信先で開かれた割合 | 約15%~25% |
クリック率(CTR) | メール内に設置されたURLがクリックされた割合 | 約1%~3% |
コンバージョン率(CVR) | クリック先で成約にいたった割合 | 約1%~3% |
厳密に言うと平均値は業種によって異なりますが、KPI設定時の大まかな目安にはなるでしょう。これらの指標を定期的に効果測定し、KPIとの差を確認しながら配信内容をブラッシュアップすることが大切です。
A/Bテストを活用することで、件名やコンテンツの違いが開封率やクリック率に与える影響を比較できます。
また、セグメント別にデータを分析することで、特定のリードグループに対する効果的なアプローチを見つけることができます。リターゲティングメールを使用して、一度興味を示したリードを再度訴求する手法も有効です。
さらに、リードの行動履歴やフィードバックを元に、カスタマイズされたコンテンツを提供することで、リードの関心度を高められます。これらの分析と改善のサイクルを繰り返すことでBtoBメールマーケティングを成果につなげられるでしょう。
BtoBメールマーケティングの配信例は、下表のようなものが挙げられます。
配信の目的 | 配信内容の例 |
---|---|
認知度を向上させたい | ・見込み顧客の興味が強い市場調査やレポート ・見込み顧客に想定される課題と解決策 |
信頼関係を深めて成約につなげたい | ・業界のトレンド情報 ・導入事例 ・セミナーや説明会の案内 ・よくある質問と回答 ・自社製品やサービスの開発エピソード |
クロスセル・アップセルにつなげたい | ・オプション機能の紹介 ・既存顧客向けのキャンペーン情報 ・関連製品やサービスの紹介 ・自社のあまり知られていない取り組み ・自社の雰囲気や担当者の紹介 |
メールマーケティングでよく陥りやすい悩みが、「配信のネタがない」というものです。しかし取引する上で相手に知っておいてほしいことは何かを念頭に考えると、アイデアを膨らませやすくなります。
そういう意味では普段から直接顧客と接する機会が多い、営業部門やカスタマーサービス部門の担当者に話を聞くと配信ネタのヒントを得られるでしょう。
最後にメールマーケティングを展開する上で押さえておきたい、BtoBならではのコツを5つ解説します。
BtoBでメールマーケティングを成功させるためには、商習慣を理解した運用が必要です。
例えば決算期が近づくと年度予算の消化を目的に、情報収集が活発になります。そのため短納期が可能な商品の案内で売上アップを狙う、あるいは来期以降の導入検討に関するアンケートで最新の成約確度を確かめるといった活用が効果的です。
またBtoB企業の担当者がメールを確認する時間帯は、平日出社後(8時30分〜10時)や昼休憩前後の時間帯(11時〜12時/13時〜14時)が多いといわれています。この時間帯を狙ってメールを配信すれば、開封率を高められるでしょう。
さらにBtoB企業では取引がない期間に、担当者が変わるケースも少なくありません。継続的に接点を持つためにも、メールの不達が複数回確認された場合は後任の担当者を確認することが必要です。
このようにBtoBのメールマーケティングでは、商習慣に合わせた配信内容やタイミングの調整などが大切になります。
メールマーケティングはマーケティング戦略の全行程に関わるため、マーケティングと営業、カスタマーサービスで協力し合うことが必要です。
例えばメールの配信内容や、営業への問い合わせ内容などの情報を随時共有します。すると見込み顧客から何らかのアクションがあったときに各部門でスムーズかつ適切な対応が可能となり、顧客化のチャンスをものにできます。
最も理想的なのは、リードナーチャリングを専任するインサイドセールスの設置です。ホットリードのみを営業へパスすることで架電や商談の設定までのタイムラグは少なくなり、メールマーケティング全体がより効率的に進みます。
BtoBのメールマーケティングでは、配信の成功率を高めるためにもマルチパートメールの利用がおすすめです。マルチパートメールとは、HTML形式とテキスト形式を同時に配信できるメールになります。
そもそも開封率の効果測定は本文内に挿入された画像の表示回数によって判断されるため、文章のみで構成されるテキスト形式はメールマーケティングに不向きです。しかし企業によっては、HTML形式のメールを受け付けていないケースもあります。
そこで役立つのが、マルチパートメールです。企業の受信体制に左右されないため、メールの不達を防ぎ伝えたい情報をきちんと届けられます。メールを通じて生まれる商機を逃さないためにも、マルチパートメールを積極的に活用しましょう。
ビジネスシーンでのスマホ利用も進んでいる現代では、BtoBのメールマーケティングでもスマホからの閲覧を想定したレイアウトが必要です。
特に外回りが多い業種では、移動中や待機中にスマホでメールを確認するケースも多々あります。SNSマーケティングも普及しており、BtoB企業でもスマホを利用する機会が増えてくるでしょう。そのためスマホからでも見やすい、読みやすいメールの作成が求められます。
例えば前述のマルチパートメールを適用する際は、スマホでの閲覧も問題なくできるかという点も要チェックポイントです。
また1行の文字数はスマホが全角25〜30文字、PCは全角35〜40文字ほどが目安になります。どちらのデバイスでも見やすいレイアウトを考えると、1行の文字数を全角30文字前後にすると良いでしょう。
さらに開封からメール内容の表示まで時間がかかると離脱につながりかねないため、データサイズもなるべく軽くすることをおすすめします。
取引先の母数がそもそも少ないBtoBでメールマーケティングを効果的に運用するためには、配信リストの量と質の確保も重要です。配信リストに載せるメールアドレスの取得方法は、主に次の5つになります。
配信リストが少ないBtoB企業であれば、上記の方法を複数組み合わせて少しずつ増やしていきましょう。
また担当者の異動などがあるとアドレスの変更や消去により、配信したメールが届かないケースも出てきます。すると情報が伝わらないばかりか、効果測定の精度が落ちてメールマーケティング全体に悪影響を与えかねません。
メールの不達を検出した場合は、早めに該当するアドレスを除外し配信リストの質を高めることも大切になります。
メールマーケティングは多様なシーンで活用でき、長期にわたる顧客フォローにも向いているため、BtoBでも有効な手法です。マーケティングや営業、カスタマーサービスといった複数の部門が協力し合うことで、より効率的なアプローチも可能となります。
実際にメールを配信する際には、BtoB特有の商習慣などを理解した上で配信内容やタイミング、送信形式などを調整します。そもそも配信リストが少ない場合は、メールアドレス集めから準備することも必要です。
今回解説したコツを早速実践し、BtoBのメールマーケティングを成功させましょう。