セミナーレポート

BtoB集客の要!メールマーケティングの基本とは【セミナーレポート】

BtoB集客の要!メールマーケティングの基本とは【セミナーレポート】

アドビ株式会社はこのほど、「エンゲージメントを高めるメールマーケティング基本の『き』」と題したセミナーを開催しました。本セミナーでは、アドビ株式会社 DXインターナショナルマーケティング本部 フィールドマーケティングマネージャーの松井 真理子氏が、メール担当のBtoBマーケターとして成長したい方に向けて、顧客と企業とのエンゲージメントを高めるメールマーケティングの考え方の基本を解説しています。

目次

【登壇者】
松井 真理子 氏(アドビ株式会社 DXインターナショナルマーケティング本部 フィールドマーケティングマネージャー)

メールはBtoB集客の要

マーケターから寄せられる悩みとして、次のような声が多く聞かれます。

  • 繰り返し全体配信しているが、ターゲット数には到達せず配信停止依頼が増えるばかり。
  • とりあえず月1回のメルマガ配信はしているが、このままで良いか分からない。
  • メールを配信できるというだけで、社内からの「このメールを送って欲しい」という依頼仕事で忙殺されている。

私自身20年以上メールマーケティングに携わる中で、実は「このままで良いのか」と感じていた時期がありました。

デジタルマーケティングが主流になった世の中で、「メールというチャネルはもう終わった」というフレーズも耳にします。しかし、本当にそういえるでしょうか。私は、メールは今でもBtoB集客の要だと思っています。

例えば、先日弊社で行ったイベントの集客経路別のウェビナー登録人数を見ると、「メール」「営業」「広告」「その他」のうち、メールで登録した人数が突出しています。

テクノロジーの進化とともに、今後、対話型やリアルタイムメールなど、メールとの関わり方は変化することでしょう。関わり方が変化しても、メールマーケティングには将来性があります。メールマーケティングに携わる皆様は、テクノロジーの進化を取り入れながら成果創出を目指しましょう。

エンゲージメントを高める理由

本セミナーのタイトルには「エンゲージメント」という言葉が含まれていますが、そもそも「エンゲージメント」とはどのようなことを意味するのでしょうか。

エンゲージメントとは?

エンゲージメントとは、端的に「つながる」ととらえると良いでしょう。マーケティングでは、「つながり」や「関与度」という意味でこの言葉を使います。例えば「企業、製品、ブランドと顧客との間にある関与度を高めることがマーケティングの役割として非常に重要である」といった文脈で、「関与度」を「エンゲージメント」と表現します。

顧客との関わりを通して「この企業は私たちのことを理解している」と信頼してもらい、顧客と良好な関係を継続することが、エンゲージメントを高めていくということなのです。

なぜエンゲージメントを高めるのか?

その理由は、次の2つです。

  • 自社の商品やサービスを、顧客の課題解決策の1つとして候補に挙げていただくため
  • 顧客にアプローチすべきタイミングを把握するため。

顧客がある課題についてソリューションを検討する際、解決策の1つとして自社の商品やサービスを候補に挙げていただく必要があります。そのためにも、日頃から顧客と良好な関係を築いておくことが重要です。

また、オンライン上の顧客の行動を即座にキャッチし、自社が顧客にアプローチすべきタイミングを逃さないことも重要です。タイミングをつかめれば、適時に「何か情報をお探しですか」と顧客にメールを送ったり、「ここの企業は何か検討しているよ」とインサイドセールスや営業にアラート通知したりできます。

マーケティングの役割は元々、営業への情報提供でした。認知、興味、サーチ、検討、購入という流れを前提に、マーケティングは興味の段階までを担っていました。マーケティング担当者は、イベントを開催したり資料請求者をリスト化したりして情報を営業に引き継ぎます。続いて営業担当者が、資料提供から提案、契約までを行っていました。

ところが今は、顧客自らがオンライン上で情報収集できます。仕様書や評価サイトも豊富にありますので、Webサイトでおおよその製品検討ができてしまうのです。購買担当者の70%が営業担当者に接触する前に導入要件を固めているというデータもあります。

したがって、もはや「マーケティングは営業への情報提供だけ行えば良い」という時代ではありません。マーケティングのトレンドは、デジタル空間における顧客の変化を察知し、それに応じたアクションを能動的に行うという在り方へと変化しています。

デジタル空間で可能な限り顧客とつながり続けることで、顧客が検討段階に入ったときに自社の商品やサービスが顧客の解決策の1つとして候補に挙がる状態を作ることが重要なのです。

メールマーケティングでまず目指すべきこと

メールマーケティングではまず、エンゲージメントの総量を上げることを目指しましょう。

エンゲージメントの総量を上げる

エンゲージメントの総量を上げるとはつまり、クリックの総量を上げることです。クリックがなければ、顧客がどのような方で何に興味を持っているのか分かりません。

顧客の行動がなければスコアリングもアラートメールの送信もできないので、まずはエンゲージメントの総量を上げることを目指してください。

メールマーケティングは、メールという限られた空間で展開します。メールを送る頻度も限られます。よって、誰に、いつ、どのような表現で、何を送るかが重要です。制限があるなかでいかに顧客の理解に変化を促して行動を起こさせるかを考えましょう。

メールマーケティングで工夫できる3つのポイント

メールマーケティングで工夫できるポイントは、次の3つです。

  • セグメントごとに宛先を切り分ける
  • 仮説を立ててテストする
  • メールプログラムを消費型と資産型に分けて考える

セグメントごとに宛先を切り分ける

セグメントのパターンですが、全体配信のほか、属性情報と行動情報によって宛先の切り分けが可能です。

属性情報

属性情報はまず、契約があるかどうか、契約がある場合は無償ユーザーなのか有償ユーザーなのかで切り分けられます。属性情報には、企業情報や名刺情報も含まれます。企業情報は、従業員数、業種、売上といった要素で切り分けます。名刺情報は、役職、部署、エリアなどで切り分けます。

属性情報の収集・整理なくしてセグメントのパターンは作れませんので、データベース内の情報の収集・整理を積極的に行ってください。例えば、資料をダウンロードする際のフォームやイベントのアンケートに定型項目を設け、取得した情報を追加していくと良いでしょう。企業データベースとの連携もおすすめです。

行動情報

Webサイト訪問、資料ダウンロード、ウェビナー登録、セミナー参加・欠席といったWeb上の行動情報による切り分けもできます。

行動情報を整理する際には、どのチャネルでどのような行動があったのかが分かるようにしておきましょう。あるテーマに関するマーケティングを複数のチャネルで行っている場合は、テーマごと、チャネルごとに分けられる状態にしておきます。

例えば、商材A、商材B、商材Cというテーマ(商材)ごとに資料ダウンロード、ウェビナー、セミナー参加といったチャネルがあるとしたら、商材別とチャネル別にセグメントを分けられるように整理します。テーマとしては、「商材」の他に「悩み」軸も考えられるかもしれません。

セグメントごとに切り分ける際のポイントは、最初から細かく分けるのではなく、大きな塊から定めていくことです。

MAを活用したマーケティングでは、これら属性情報・行動情報を一カ所に集めたデータベースが欠かせません。MAのフィルター機能を使うと、属性情報と行動情報のさまざまな要素を掛け合わせたり切り分けたりといった操作が簡単にできます。

仮説を立ててテストする

大きな塊から定めるといっても、最初は何から分けたら良いか分からないものです。そこで、仮説を立ててテストを繰り返すことが大切です。

セグメントごとにテストして反応を見る

1つ目のテストは、セグメントごとのテストです。

例えば「業種」というセグメントで切り分けて反応が良さそうな塊を見つけます。その塊に対してメールを送信する際には、パーソナライズされたメールを配信することがポイントになります。

全体配信した場合のクリック率と、「製造業」「金融」「教育」と業種で切り分けてそれぞれにパーソナライズされたメールを配信した場合のクリック率を比較すると、「クリック率が倍になった」というようなデータが出てきます。

ABテストを繰り返す

2つ目は、ABテストです。MAではABテストが簡単にできます。件名、日時、メール文面、フロムネームなどを変えてテストしてみてください。

顧客視点の件名とそうでない件名でテストしたり、くだけた文面と硬めの文面でテストしたり、メール配信の時間帯や頻度を変えてみたりします。テストをするとデータが得られますので、テストを繰り返すことをおすすめします。

テストするメリット

テストで得られたデータは、コンテンツ制作のヒントになります。「業種別のコンテンツを作るといいのに」と感じるときなどは、コンテンツ担当者にテスト結果を示すと良いでしょう。ファクトは人の行動を促します。

また、ABテストを繰り返すにつれ、データベース内の顧客への理解が深まります。そうすると、社内で最も顧客の反応を把握している存在として認知されるようになります。

このような立ち位置を確保できれば、「データベース内の顧客全体にこのメールを送って」というような依頼を受けても、データを示して断れるようになります。「このようなメールを全体配信した際、配信停止の数が通常の2倍になるというデータがあります。顧客の信頼を損ねる可能性があります」といえるのです。

以上のように、セグメントごとのテストとABテストで顧客の状態を把握できれば、顧客の役に立つコミュニケーションにフォーカスできるようになります。

メールプログラムを消費型と資産型に分けて考える

メールプログラムの考え方について解説します。

メールプログラムの考え方

Adobe Marketo Engageでは、1つ1つの施策を「メールプログラム」と呼びます。メールプログラムは、「スポット配信-定期的な配信」という縦軸と「全体-セグメント」という横軸とをベースに考えます。

月に1回、第一木曜日の朝10時に全体配信するメルマガは、左下の「定期的に全体に送る」に該当します。一方、月に1回のメルマガでも月によって配信日が異なる場合は、左上の「スポットで全体に送る」にあたります。

よくあるパターンが、右上の「スポットで、ある対象に送る」パターンです。ウェビナーの案内や一部の顧客を対象にしたキャンペーンのお知らせなどは、右上の枠に入ります。

皆さんそれぞれ、ご自身が行っている施策がどこに該当するかをメモしてみてください。

消費型とは

これら4種類のメールプログラムのうち、私は「定期的に、ある対象に送る」ものを「資産型」と呼んでします。それ以外は「消費型」です。

消費型は、いわゆるEmail Blastです。メール配信ツールに見られるように、100人と決めたら100人に一斉配信して終了するタイプのメールプログラムです。皆さんが行っている施策は、ほとんどが消費型ではないでしょうか。

資産型とは

資産型は、メール本文を「Eメールアセット=資産」ととらえて、あるセグメントの方が加わったらプログラムにインプットしておいたEメールアセットをそのセグメントに向けて定期的に送っていくというメールプログラムです。

具体例を挙げると、右下の部分が資産型です。

エンゲージメントの総量を高めるには、パーソナライズされたメールが適しています。そこで、データベースから「製造業」「金融」「大学」「人材」というように業種別にセグメントを分けます。

その上で、製造業向けに必ず2週間ごとに火曜10時半にメールを送ります。金融向けにも2週間ごとに火曜10時半、大学向けに……というように、定期的にパーソナライズされたメールを自動で送信します。

データベース内の50%が業種不明であれば、業種を特定するためのメールも送ります。例えば、メールアドレスは分かるが会社名が分からない方に対して一般的なメールを送信し、資料ダウンロードを促すことが考えられます。コンテンツの中身を練る必要がありますが、このような業種を特定するためのメールも定期的に送信します。

私はスポットでセグメントごとに送るメールを月45通ほど送っていたことがあります。そこでセグメントテストとABテストを繰り返しながら、資産型にしたほうが良さそうなメールを抽出します。このようにして資産型メールを実装してきました。

MAを使えば、Eメールアセットをあらかじめセットしておいて、「製造業の方が加われば自動的に2週間ごとに製造業向けのメールが送られる」というようなプログラムを組めます。エンゲージメントの総量を上げる策の1つとして活用してみてください。

消費型の配信作業ばかり行っていては、それだけで疲弊してしまいます。顧客に役立つメッセージを届けるための時間が取れず、オペレーションだけで疲弊してしまうのです。メールマーケターは、ぜひセグメントテストとABテストを繰り返して資産型を作っていってください。

メール担当者として社内で存在感を出すには

メール担当者として社内で存在感を出すために意識すべきポイントは3つあります。

  • セグメントを把握する
  • 顧客視点と配信頻度のコントロール
  • ナレッジの共有

セグメントを把握する

まず、セグメントを把握して「データベースにどんな顧客がどれくらい居るのか、私が一番知っています」という状態を作りましょう。そうすると、メール担当者として社内で頼りにされるようになります。

顧客視点と配信頻度のコントロール

次に、「顧客の行動を発生させるなら私にお任せください」といえるよう、顧客視点を持って配信頻度をコントロールできるようになりましょう。

社内の期待値に沿った顧客の行動を発生させるには、顧客視点が必要です。メールという限られた手段でいかに資料や動画、ブログを見てもらうか、いかにウェビナーに登録してもらうかが、メールマーケターの腕の見せどころになります。

最適な配信頻度は、業種・業態にもよると思います。テストを繰り返して、最適な配信曜日、時間帯、回数を見つけてください。

ナレッジの共有

最後に、ナレッジの共有です。社内には、コンテンツ担当者やプロダクト担当者など、コンテンツを作る方がいます。その方が、例えばコンテンツのタイトルで迷っていたとします。

迷ったらまずABテストです。「メールでABテストしてみたら、どちらのタイトルが良いか分かると思います」と、ABテストのナレッジを共有することで、社内で頼りにされる存在になれるでしょう。

以上を意識していただければ、社内で活躍できると思います。

まとめ

本セミナーでは、エンゲージメントを高めるメールマーケティングの基本についてお話してきました。

メールマーケティングでは、適切なセグメントを見つけてパーソナライズされたメッセージを届けることが大切です。「この企業は私のことを理解している。何かあれば相談してみよう」と顧客に思ってもらえるようなコミュニケーションを続けましょう。

「とりあえず月1回、メルマガ配信はしている」という方は、エンゲージメントの総量を上げる方向に舵を切ってみてください。また、「依頼仕事で忙殺されている」という方は、ABテストで資産型を作りましょう。

定期的にコミュニケーションがとれるメールプログラムを実装しつつ、顧客のためになるメールマーケティングに時間を使っていきましょう。

今後開催予定のセミナー一覧はこちら>>https://jp.marketo.com/events/seminar/

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