セミナーレポート
ソフトブレーン株式会社が開催した「負けから学び次の成約につなげる、失注分析からの営業強化術」オンラインセミナーの内容をレポートします。本セミナーでは、営業担当者数30名以上の企業向けに、商談獲得率を上げる失注分析の方法について、ソフトブレーン株式会社 執行役員 関西支社長 井上 裕太 氏が解説しています。
【登壇者】
井上 裕太 氏(ソフトブレーン株式会社 執行役員 関西支社長)
営業及びマーケティング部門の責任者を経て、現在は西日本エリアを管轄。延べ6,372名の方とお会いし250社を超える企業様の営業改革を支援。※2010年に中小企業診断士を取得。
本講演は、大きく3つのテーマで構成しています。
以上について事例を交えながらご説明します。
営業の現場で「失注分析」の重要性が増している理由を、多くの企業様の声を元に、次の3つのポイントにまとめご紹介します。
コロナ禍をきっかけに、多くの企業のパイプラインマネジメントにおける優先度が、量から質へと変化したことが、失注分析の重要性が増している理由の1つと考えられます。
コロナ以前は、大型イベントを企画したくさんの名刺を集めるといったように、リード獲得のための活動量をこなし受注数を増やすという手法が多くの企業で採用されていました。 しかし、コロナ禍で、オフラインでの営業活動が難しくリードの母数を増やしづらいなか、受注数を増やすためには、従来の“打席を増やす”という量の発想から、“打率を高める”という、いかに成約率を上げられるかという発想に転換してきています。
理由の2つ目は、既存顧客へのアプローチだけでなく、新規顧客開拓の重要性が増しているという点です。
新規開拓の際、顧客との接触や案件創出が難しいのはもちろん、案件をクロージングし成約につなげる過程において、競合に負けるなどして失注するという課題があります。既存顧客に対する営業活動から、新規顧客開拓にシフトしていこうという時に、失注をいかに減らせるかという対策が必要です。
3つ目は、現在、「OODAループ」という考え方が注目されていることが、失注分析の重要性が増している理由の1つと考えられます。
OODAループは、観察のObserve、洞察のOrient、意思決定のDecide、行動のActionの頭文字をとり、このサイクルを回すことをいいます。観察して判断して決定して行動するというサイクルを、素早く何度もこなしていくというのがOODAループの考え方です。
新規顧客開拓など、不確実性の高い施策を実行する際、過去の経験がないなかで市場動向や顧客ニーズをいち早く捉えるためには、まずは行動しながら現場の情報を集め、そこから観察をして、そのデータにどういう意味合いを持たせるかという洞察を行い、意思決定をするというサイクルを回す必要があります。OODAループの一環として、失注対策を積極的に行いたいと考える企業様が増えています。
前段で解説したように、多くの企業様がデータ活用の重要性を感じているものの、実際にはデータ活用に課題を感じているようです。弊社が行ったアンケートでは、データを活用した営業ができていると回答された企業様は全体の15%ほどでした。裏を返すと85%の企業様がまだまだデータ活用に課題を抱えているといえます。
なぜデータ活用が進まないのか、次の3つの要因があると分析しています。
データ活用を意識したデータ収集ができていない、そもそも必要なデータが取れていないという問題が、アンケートの回答を通して見えてきました。
データは集まったものの、社内で使用しているデータベースやツールが統一されておらず全社的に俯瞰して見られないという、データ収集の方法に問題があるケースも多く見られます。
データを集めてもデータを管理・分析するノウハウや人材がいない、そもそもデータを分析する文化がないという声も多く聞きます。
これら、データの取得、収集、活用の壁を乗り越えなければ、データ活用は進まないでしょう。
では、データ分析の要諦は何かを次の3つのステップでご紹介します。
「各個人の頭の中にデータがある」「紙の日報に情報を記している」という状態では計測することができません。アナログデータをデジタル化しデータを取得する、データを計測できる状態にする必要があります。
取得したデータが部署ごとにバラバラに保管されていたり、営業活動のプロセスがデータで管理されていなかったりすると、俯瞰的に分析することができません。分散しているデータを集約し全体を可視化することが重要です。
成果につなげるためには、集約したデータを多角的に分析し行動変革を起こす必要があります。しかし、データを集めただけで営業に生かせなかったり、集めたデータをどういう切り口で分析したら良いのか分からないというご相談を企業様からいただくことも少なくありません。弊社では、取得、集約、活用、このステップを踏んでいく必要があるとお伝えしています。
実際の失注分析においては、データを多角的な切り口で分析する必要があります。いくつかの事例を元にご説明します。
1つ目は、ある企業様が、真の失注要因を探るためにデータを深堀りし対策を立てたという事例です。
こちらの企業様が失注要因のデータを取ったところ、機能不足や実績、品質や納期などを抑えて、「価格」が全体の66%を占めていたそうです。「価格」が真の失注要因なのかどうか調べるために、顧客の購買プロセスをベースに調達活動、要件スコープを整理しました。その上で、どのプロセスに問題があるのか分析した結果、失注案件の7割は見積もり依頼起点の案件であるということが判明しました。見積もり依頼が来た時点で、顧客は既に競合他社と要件を固めており太刀打ちできないという状況が見えてきました。
こちらの企業様では、顧客が仕様を決める、初期の仕様設計段階から営業活動を推進していかなければ、アプローチが遅れ「価格」で振り落とされてしまうと分析し、上流工程で誰にどうアプローチすべきかという点を重点的に対策されました。
上記2点を上流工程アプローチの肝ととらえ、失注分析をして対策することで失注を減らしたそうです。
2社目の事例は、失注理由を分析した結果、「その他」という要因が全体の43%を占めていたことが分かりました。「その他」の内容について、過去の顧客とのやり取り履歴や営業担当へのヒアリングを通して調査したところ、「その他」の理由は「辞退」であることが判明しました。 「辞退」をさらに調査すると、辞退理由の9割を、設備・技術・設計という3つの要因が占めていることが見えてきました。
辞退による失注を減らすためには、この経営課題を改善する必要があるため、こちらの企業様は営業情報を主体にして、製造や設計部門の方に情報をシェアしながら、会社として必要なリソース配分や投資の決定を営業の声を聞き改良していくという対策を取ることで、失注を減らしていったそうです。
失注理由を調査し要因を分解することで、営業起点の失注なのか営業外起点の失注なのかという区分けをすることが重要です。失注要因が顧客の経営課題である場合は、営業部門だけでは解決できないため、生産部門や品質保証部門などと連携を取りながら、失注課題を解決する必要があります。
失注分析に際して、データ収集と同時に重要であるのが「どういう切り口で分析をしていくか」という点です。 4WといわれるWhat、Who、When、Whereという4つの切り口で分析する方法をご紹介します。
Whatは、物やサービスに着目して分析する手法です。例えば、商品、サービス、メーカーごとの違いや、価格帯のグレード、リリースされた日付けなどによって特異な点や違いは何か、傾向を分析します。
Whoは、人や組織に着目してデータを分析する手法です。例えば、社内においては、営業担当者、営業組織ごとにどのような違いがあるかを分析します。顧客に対しては、AランクBランクというようにセグメントで分けている場合には、重要度による違いや、新規顧客と既存顧客の違いは何かという点に着目します。
Whenは、時間やプロセスに着目します。時間軸であれば、月・クォーター・年度ごとの違いは何か、プロセス軸では、失注した案件の進捗はどういう段階だったのか、プロセスを俯瞰的に見た場合に最も歩留まりが発生しているのはどこかという点を切り口に分析を行います。
Whereは、場所やチャネルに着目した分析手法です。場所では、都道府県ごとや国ごとの違いは何かという切り口で分析します。 チャネルでは、直販と代理店販売で違いがないかという点に着目します。
このように、さまざまな角度から分析を行い、4Wのどの切り口を特に着目すべきかという視点でさらに調査を行うことでデータ分析の質を高めていくことができるでしょう。
これまでの解説を踏まえ、「あるべき失注分析」とはどのようなものか、3つのポイントで説明します。
失注分析は、文章だと傾向を把握しづらく、また、一時的なデータでは分析精度が上がらず対策を実行しづらいため、定量的かつ継続的なデータ収集を行うことが重要です。
失注の要因を深掘り調査してみると、価格に要因が集中していたり、逆に提案から受注までの成約率は悪くなかったりと、切り口によって可視化される情報が異なるため、多面的な分析が必要です。
データを集めても現場にフィードバックがなければ、現場担当者のデータ入力作業の習慣化につながらず、サイクルを回し続けなければ、常に変化する失注要因を把握することができません。このサイクルをマネジメントにどう組み込むかという点が失注分析の要です。
データ分析の要諦から、あるべき失注分析とは何かという点をご紹介してきました。最後に、営業DXによって営業スタイルをどのように変革できるかというポイントをご紹介します。
不確実性の高い現在においては、収集したデータを元に意思決定を下していくという戦略的な営業への転換が求められています。営業DX推進によって戦略的な営業スタイルへ移行することができます。
個人が持っている情報をチーム全体に共有することで、顧客に組織として向き合える状態を作り、属人的な営業スタイルを脱することがポイントです。
営業担当者が、資料作成や会議に追われコア業務に時間が割けない状態を改善し、顧客業務に専念できる環境を作ることが重要です。
現在の顧客の購買プロセスを考慮した際、行くべき場所に行き、会うべき方に会えているのかという点をデータを活用し管理しながら、いかにプッシュ型の提案営業を行えるかということが重要です。待ち・受け身の営業から、提案営業へのシフトが求められています。
ソフトブレーン株式会社では、eセールスマネージャーというツールシステムを顧客に提供しDX化の支援をしています。eセールスマネージャーはお客様の目標達成に向け、顧客接点活動を加速させるためのプラットフォームです。また、仕事のやり方や課題が何か分からないお悩みを科学的に分析し、再現性の高い組織を構築するための支援も行っています。
DX化に取り組む際のコツを2つご紹介します。
データを収集しようと、データを入力することが目的になってしまっては意味がありません。日々の報告を特定のフォーマットに入力することで、必要なデータを抽出できるというように、インプット先を1つに絞ることで、データを集めやすい状態を作るという点がポイントです。
「何を見るべきか」というプロセスマネジメントサイクルを設計することが重要です。データは集めただけでは意味がありません。観察して判断して決定して行動するというサイクルを、素早く何度もこなしていくことが重要です。
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