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顧客分析とは?データの集め方から活用できるフレームワークまで解説

顧客分析とは?データの集め方から活用できるフレームワークまで解説

顧客分析はマーケティングや、営業の戦略立案や見直しで必要になってくるものです。しかしあまり馴染みがない方からすると、「なぜ必要なのか」「どのように分析すれば良いか」などの疑問があるでしょう。

本記事では顧客分析とは何か、主な分析項目や目的について解説します。データの収集方法や役立つフレームワークだけでなく、成功のコツもあわせて紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。

目次

1.顧客分析とは?

まずは顧客分析の概要や分析項目について解説します。基礎知識を押さえたい方や、既存の分析方法を見直したい方は1つずつチェックしていきましょう。

顧客の購買行動を分析する方法

顧客分析とは顧客の購買行動において取ったアクションや流れなどを分析する方法です。顧客分析を進めるメリットは、顧客理解が深まる点だけではありません。購買行動に至った背景をひもとくことで、回り回って自社の魅力を再発見できます。

例えば顧客が自社のサービスを選んだ理由を調べると、社内だけでは気づかなかった強みが言語化されるでしょう。また競合他社ではなく自社を選んだ背景からは、顧客視点ならではの競合優位性も見えてきます。

なお顧客分析の主な対象は、既存顧客です。しかしターゲットや施策の幅を広げる際には、見込み顧客や休眠顧客を対象とするケースもあります。顧客の種類や使い分け方について振り返りたい方は、こちらの記事をぜひ参考にしてみてください。

参考記事「顧客とは?お客様・取引先との違いや種類を詳しく解説

また将来的にはAI技術の発達により、顧客分析も自動化されていく可能性があります。特に次のような予兆分析は、AIによる精度の高い分析が期待できるでしょう。

  • 市場の変化
  • 購入タイミング
  • 顧客流出 など

AIを有効活用するためにも、今のうちに基本的な顧客分析の進め方を知っておくことが大切です。

主な分析項目

顧客分析で取り上げる主な項目は、次のようなものが挙げられます。

主な分析項目 内容の例
属性情報 ・企業名
・所在地
・規模 など
商談履歴 ・課題やニーズ
・最終商談日
・受注確度 など
取引履歴 ・購入した製品やサービスの種類
・購入日
・購入金額 など
プロセス ・自社製品やサービスを知ったきっかけ
・情報収集先
・意志決定者や検討期間 など
顧客満足度 ・顧客エンゲージメント
・顧客の声
・NPS(Net Promoter Score)※1 など

※1NPS:自社や製品への信頼を示す顧客ロイヤルティを数値化したもの

なお顧客分析で扱う情報は、定量データと定性データの2つです。

定量データと定性データ
定量データと定性データ

精度の高い顧客分析を進めるためにはどちらか一方ではなく、目的に応じて使い分けつつ、互いの情報を補完することが大切になります。

例えば契約数が5件アップしたという、定量データが収集できたとしましょう。そこで既存顧客へ「なぜ自社製品を選んだのか?」などインタビューすると定量データの裏付けが取れる上、今後の戦略に生かすヒントが得られます。

顧客分析を進める際は必要に応じて定性データも収集し、相手の価値観や感情の機微などをとらえていきましょう。

2.顧客分析における3つの目的

顧客分析を行う目的は、主に次の3つです。

  • 戦略立案に役立てるため
  • 自社製品やサービスを開発・改良するため
  • 売上アップを実現するため

それぞれ詳しく見ていきましょう。

戦略立案に役立てるため

顧客分析から得られた情報は、各部門の戦略立案に役立ちます。マーケティング全体の戦略はもちろん、営業戦略やカスタマーサポート戦略への活用も可能です。特に次のような作業を共通認識のもとで行えるため、立案した戦略の成功率アップも期待できます。

  • ターゲットの抽出
  • 顧客ニーズの理解
  • データを元にした建設的な議論
  • 思い込みを排除した多面的な視点での検討 など

売上が伸びないという課題がある企業は、顧客分析に立ち返ってから戦略を見直すと良いでしょう。

自社製品やサービスを開発・改良するため

顧客分析の結果は、自社製品やサービスの開発・改良にも役立ちます。顧客からのニーズが高い新製品を作る、あるいは既存製品の横展開を広げることも可能です。これにより競合他社との差別化が進み、顧客に提示できる解決策も増え受注率アップが期待できます。

また顧客から聞かれた不満点も、既存の製品・サービスを改良する良いきっかけになるでしょう。真摯に向き合って改善を重ねれば、顧客満足度の向上につながります。

さらに顧客の声からは、社内の検討だけでは気づかなかったニーズを発見できます。新たなアイデアの創出機会が増え、企業の成長に一役買ってくれるでしょう。

売上アップを実現するため

顧客分析によって自社製品やサービスの開発・改良が進み、効果的な戦略を立てられれば、最終的に売上アップの可能性が高まります。リピート率の向上や、アップセルクロスセルを狙える機会の増加が期待できるためです。

また顧客理解が深まると、顧客のニーズに対して適切かつスムーズな対応が可能となり、信頼を得やすくなります。特にBtoBマーケティングでは信頼関係が購買行動を後押しするため、企業として成長し続けるためにも顧客分析を積極的に実施したいところです。

3.顧客分析で活用するデータの集め方

ここでは顧客分析で利用するデータについて、次の3点を解説します。

  • データの収集先
  • 活用できる情報ソース
  • データを集める際の注意点

それぞれ詳しく見ていきましょう。

データの収集先

代表的なデータ収集先は、次の通りです。

  • インターネットリサーチ
  • デスクリサーチ※2
  • インタビュー
  • アンケート
  • お問い合わせフォーム など

※2デスクリサーチ:書籍やWeb上などで公開されている統計データを調べる方法

特に自社サイトを保有している場合は、フォームの問い合わせ内容から属性情報や顧客ニーズを簡単に収集できます。また商談履歴や取引内容などはツールを活用すれば、効率的に収集が可能です。

活用できる情報ソース

顧客分析で活用できる情報ソースは、無料と有料の2種類があります。それぞれ詳しく見ていきましょう。

無料の情報ソース

無料で利用できる情報ソースは、下表の通りです。

ソースの種類 ソース名 得られる情報
政府の統計情報 情報通信統計データベース(総務省) ・情報通信の現状
・情報通信の国際状況
・各省庁の統計情報 など
世論調査(内閣府) ・国民生活に関する調査結果
・社会意識に関する調査結果
・外交に関する調査結果
EDINET(金融庁) ・報告書(有価証券、半期、四半期)
・大量保有報告書 など
民間企業のマーケティング関連情報 生活定点(生活総研) ・過去30年1,400項目の生活者観測データ
日本の広告費(電通) ・広告市場の規模や成長
・媒体別/業種別の広告費

無料ではあるものの政府や大手の調査会社による情報のため、信頼性は非常に高いといえるでしょう。

有料の情報ソース

有料で利用できる情報ソースは、下表の通りです。

ソースの種類 ソース名 得られる情報
企業情報や財務情報 TSR REPORT(東京商工リサーチ) ・業界動向
・地域情勢
・倒産リスクスコア など
COSMOSNET(帝国データバンク) ・企業財務
・信用調査報告書
SPEEDA(ユーザベース) ・業界レポート
・ビジネスレポート
・IR/統計情報 など
業界情報やマーケティング関連情報 オリコン顧客満足度(オリコン) ・サービスの満足度ランキング
マーケットレポート(矢野経済研究所) ・市場規模
・企業シェア
・将来予測 など

一部無料のところもあるため、利用したことがない企業は一度調べてみてはいかがでしょうか。また調査会社や総研などは、上記以外にもさまざまなソースを保有しています。欲しい情報がなかなか見つからない場合は、直接問い合わせてみるのも1つの方法です。

データを集める際の注意点

デスク・インターネットリサーチはインタビューなどよりも手軽ですが、場合によっては情報がやや古く、最新の状況とは異なるケースもあります。データを集める際は、下表のように5W1Hに沿って情報の正確性や鮮度をチェックしてみてください。

5W1H チェック内容 要注意ポイント
What 内容 調査目的に合った内容か 大前提として欲しい情報が含まれているかチェックする
Whom 対象者 誰を対象にした調査結果か 記事の内容と引用されている調査の対象者が異なる場合がある
(例:記事の内容が30代の男性、引用されているグラフの調査対象者が30~49歳の男性など)
Who 収集・編集者 誰が調査した結果か 収集・編集者に有利でポジティブな情報が表に出ている可能性がある
Why 目的 なぜ情報を収集・発信しているか 営業や宣伝目的であれば、客観性に欠ける情報が含まれている場合がある
When 時期 いつ収集・編集されたものか 市場規模やトレンドは時期によって大きく変わる可能性がある
How 方法 どのように収集されたか 収集方法によって結果が変わるケースがあるため、信頼できる方法かチェックする

顧客分析は繰り返し行うものであるため、前述したような情報ソースをあらかじめ確保しつつ、調査方法をルール化しておくと効率的に進められるでしょう。

4.顧客分析で役立つフレームワーク

顧客分析で役立つフレームワークは、下表の通りです。

フレームワーク 特徴
セグメンテーション分析 属性などによって顧客をグループ化し、何がどこで売れているか分析する
VOC分析 顧客の声からニーズや課題を把握し、顧客満足度の向上を図る
RFM分析 購買行動を分析し、優良顧客を見極める
デシル分析
バスケット分析 購入製品の組み合わせを分析し、アップセル・クロスセルにつなげる
CTB分析 興味関心によって顧客をグループ化し、マーケティング戦略へ生かす
行動トレンド分析 購買に至った時期によって顧客をグループ化し、共通事項を洗い出す
コホート分析 同じような条件を持つグループごとに、購買行動を分析する
パイプライン分析 顧客がどのフェーズ離脱しているか分析し、成約率の改善を目指す

5.顧客分析を成功させる3つのコツ

最後に顧客分析を成功させるコツを、3つ解説します。

  • 分析の目的をあらかじめ明確にする
  • 分析する顧客を抽出する
  • 市場の成長性を考慮する

それぞれ詳しく見ていきましょう。

分析の目的をあらかじめ明確にする

まずは顧客分析の目的を明確化し、着目すべきポイントを絞ることが大切です。同じ情報を取り扱っても、見るところが変われば分析結果も異なってきます。

例えば顧客の満足度について、自社と競合数社を比較したとしましょう。目的があいまいな場合と「○○について現状を知りたい」と明確な場合とでは、次のように結果の見方や気づきが違ってきます。

目的の明確度 結果の見方 気づき
あいまいな場合 競合他社より満足度が高い、あるいは同じくらいの項目が多い 今の戦略で良いのではないか
明確な場合 ・○○はA社には勝っているが、接戦
・B社やC社には劣っている
将来的にA社に追い抜かれる可能性もあるため、早期の戦略見直しが必要ではないか
分析目的の明確化
分析目的の明確化

つまり分析目的が明確か否かでマーケティング戦略の方向性が変わり、最終的には売上も左右しかねません。顧客分析の結果を有効活用したい方は、あらかじめ目的を明確にすることを意識しましょう。

分析する顧客を抽出する

分析結果は顧客の種類や幅によっても変わってくるため、対象の抽出も必要です。例えば顧客分析のターゲットは、次のように抽出できます。

  • すべての顧客
  • 既存顧客のみ
  • 優良顧客のみ など

分析する顧客を絞ることは、訴求ポイントがより鮮明になるメリットもあります。施策を売上につなげるためにも、抽出したターゲットの心に刺さる訴求ポイントを洗い出しましょう。

市場の成長性を考慮する

顧客分析は市場の成長性も考慮することも大切になります。正確な情報を得て効果的な戦略を立案できても、これから衰退していくような市場で売上は見込めないためです。

市場分析であまり良い結果が得られなかった場合は、次のような選択肢も視野に入れる必要があります。

  • 既存の場所から撤退する
  • 参入場所を変える
  • 市場の変化に適応した自社製品・サービスを開発する

いずれもコストがかかる策であるため、部署内外で十分協議しながら慎重に検討していきましょう。

6.まとめ

顧客分析は顧客のニーズに合わせて、スムーズかつ適切なアプローチを展開する上で不可欠な作業です。分析を進めるなかで顧客理解が深まれば、効果的な戦略の立案や自社製品の開発・改良のヒントにもなります。

ただし顧客分析で活用する情報は信頼できるソースを利用し、正確性や鮮度を確認することが大切です。また目的や対象が異なれば結果も違ってくるため、分析前の思考整理も重要になってきます。

リピート率の改善やアップセル・クロスセルで売上を上げたい企業は、顧客分析を見直していきましょう。


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BeMARKE編集部
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