基本ノウハウ
VOC分析は、営業やマーケティングの分野で注目度が年々上がっている分析手法です。しかし「VOC分析とは何?」「VOC分析はどんなことに役立つのか」と疑問に思う方も多いでしょう。
本記事ではVOC分析とは何か、メリットや分析方法を解説します。またVOC分析に役立つツールや企業での活用事例もあわせて紹介します。VOC分析をマーケティングに生かしたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
VOC分析とは、顧客の声を企業活動の改善に生かす分析手法です。そもそもVOCとは「Voice of Customer」の頭文字を取った言葉で、意味は「顧客の声」であり、顧客から寄せられた意見や要望を指します。
VOCに含まれるデータの例は、次の通りです。
実態調査によると、BtoBマーケティングにおけるVOC分析の活用は2022年2月時点で43.4%になっています。しかし87.7%の企業がVOC分析は今後のマーケティング戦略として必要になってくると感じており、今後ますます重要性が増していくといえるでしょう。※1
※1出典:CINEMATO|「顧客の声(VoC)活用」に関する実態調査より
VOC分析は次のような多くの部門で有効活用できます。
上記のような部門では具体的にどのような効果やメリットがあるか、次の3点について見ていきましょう。
VOC分析を活用すると顧客と従業員、双方の満足度を向上させられます。顧客満足度は既存顧客数の維持だけでなく、見込み顧客や潜在顧客へのアピールでも重要です。VOC分析を通じて顧客の意見を吸い上げ各部門に反映することで、顧客満足度の向上が期待できます。
またVOC分析では顧客からのクレームや不満だけでなく、ポジティブな意見に触れる機会にもなります。すると従業員のモチベーションアップにつながり、高い満足度の中で働き続けられるでしょう。
VOC分析の活用は顧客満足度がなかなか上がらずリピート率が低い企業や、従業員満足度が低く退職者の多い企業にもおすすめです。
VOC分析で明らかになった顧客ニーズとのズレを解決できれば、自社製品やサービスの品質改善も図れます。顧客から得た生の声からは、社内だけでは気づけなかった自社製品やサービスの課題が見つかるきっかけにもなるでしょう。
顧客の声を製品やサービスに反映し、顧客目線のマーケティングを強化したい企業にもVOC分析の活用はおすすめです。
VOC分析では顧客の本音、つまり本当に欲しい製品やサービスが分かり、新製品・サービスの開発における重要なヒントにもなります。
実際に販売・提供する前に新しい製品やサービスについて顧客へ問いかけることで、改善点や効果的なPR方法の発見にもつながるでしょう。どんなものが欲しいか、あるいはテスト製品を実際に使ってもらい感想を聞くと、販売・提供時点から完成度の高い製品やサービスを効率的に展開できます。
VOC分析は、テストを繰り返しながら新しい製品やサービスを作り上げたい企業にもおすすめです。
では実際にVOCの分析はどのように進めるか、次の2つに分けて解説します。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
VOCの収集方法は、主に次の5つです。
基本的には、複数の収集方法を組み合わせてVOCを集めていきます。ここでは各収集方法の特徴や、注意点を見ていきましょう。
BtoB企業のVOC収集方法で最も多いのが、営業の現場です。実態調査では、実に7割近くが営業現場を通じて、VOCを吸い上げています。※2
※2出典:CINEMATO|「顧客の声(VoC)活用」に関する実態調査より
営業は顧客と実際に言葉を交わす機会が最も多い部門でもあり、コミュニケーションの中で自然とVOCを集められる点がメリットです。とはいえ顧客も初めから、本音で話してくれるわけではありません。何度もコンタクトを取り徐々に信頼関係を構築していく中で、少しずつVOCを集めていきましょう。
営業現場の次に多いのが、インタビューを通じたVOC収集です。インタビューはセミナーや説明会の参加者への対面インタビューのほか、Zoomなどを活用したオンラインインタビューなどがあります。メリットはまだ接点が少ない見込み顧客や、潜在顧客のVOCを集められる点です。
ただし質問項目の検討やインタビュー日時の調整など、準備に時間がかかる点がデメリットになります。効率的かつ効果的なインタビューを実施するためには、何を知り何に生かしたいか目的やゴールを明確にした上で準備を進めましょう。
アンケートは、インタビューとほぼ同率で多いVOC収集方法です。具体的にはセミナーや説明会の参加者、メルマガ登録者などからのアンケートでVOCを集めます。
アンケートはインタビューと同様に、準備に時間がかかる点がデメリットです。しかし近年ではアンケート用紙ではなく、Webアンケートを活用する企業も増えています。Webアンケートであれば作成や集計の手間を大幅に削減できるため、インタビューほど労力はかからないといえるでしょう。
コールセンターはBtoCビジネスでの利用をイメージされる方が多いでしょう。しかし、BtoBにおいても有効なVOC収集方法です。また最近ではメールやチャットなど問い合わせ方法が多様化したことで、コンタクトセンターと呼ぶケースが増えてきました。
さらに自動応答機能がついたチャットボットは、24時間対応が可能なことや、電話も自動録音機能などの技術が発達したことで、VOC分析に必要な情報を効率的に集められるようになっています。
近年ではSNSやインターネットリサーチも、重要なVOC収集方法の1つです。収集先としては、次のようなものが挙げられます。
ただしSNSなどは信ぴょう性が低い言葉も散見されるため、情報の取捨選択が必要です。情報の確度を高めるためにも、他の方法と組み合わせて収集すると良いでしょう。
VOC分析の手順は、次の4つです。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
事前準備では活用するツールを決め、活用体制を整えることが大切です。ツールは分析精度が上がるだけでなく、従業員の負担が軽減し対応数も増加するメリットがあります。ツールは分析機能以外にも、下記のようなものがあると便利です。
ツール名 | できること |
---|---|
テキストマイニングツール | 膨大なテキストの中から欲しい情報を抽出し、可視化する |
自動音声録音機 | 通話の音声を録音し、自動でテキスト化する |
顧客管理システム(CRM) | VOCとひも付けることで分析精度が上がる |
顧客分析ツール | 顧客の属性や行動履歴などの情報を管理できる |
アンケート作成ツール | Webアンケートを簡単に作成できる |
またVOC分析を効果的に活用するためには、A4サイクルの考え方を維持できるような体制が必要です。A4サイクルとは、次のような顧客マネジメント手法を指します。
4Aサイクル | 内容 |
---|---|
Accept | 顧客の声を集める |
Analyze | 顧客の声を分析する |
Acknowledge | 分析した内容を共有する |
Act | 共有内容に基づいて課題を発見し改善策を講じる |
上記のようなサイクルはVOC分析の担当者だけでは、到底実現できません。VOC分析を専門とする部門を立ち上げるか、経営層も含め企業全体で取り組むような意識で取り組むことが大切です。
準備が整ったら、VOC分析を実施する目的を明確にします。顧客満足度向上や売上アップなど分析を通じて得た情報を何に生かしたいか明確にすることで、調査項目や必要な情報が絞られるためです。
このときあらかじめ仮説を立て施策まで検討した上でVOC分析を実施すると、より効率的に分析・施策の実行ができます。例えば顧客満足度の低迷が課題の場合、次のような仮説や施策実行の進め方が考えられるでしょう。
VOC分析の目的が明確になり、ある程度仮説を立てたら、実際にVOCを集めて分析します。ただし人の手だけでは対応しきれない場合も多いため、ツールの活用がおすすめです。
VOC分析で役立つツールについては、次項の「4.VOC分析に役立つツール3選」をぜひ参考にしてみてください。
VOC分析の結果が出たら、【2】で立てた仮説を検証し施策を決定・実行します。施策を実行後も定期的にVOC分析を実施し、継続的なブラッシュアップが大切です。
VOC分析を有効活用するためにも常に4AサイクルやPDCAサイクルを回し、顧客の声をさまざまな部門で生かしていきましょう。
ここではVOC分析に役立つツールについて、3つ解説します。
VOCツールの導入を検討中の方は、1つずつチェックしていきましょう。
Re:lationは、株式会社院ゲージが提供するVOCツールです。2022年12月時点で導入者数は4,000社を超え、うち99.3%以上が継続利用しています。主な機能は、次の通りです。
特にマルチチャネルの一元管理では10種類のチャネルを1画面に集約し、顧客の情報や対応状況を一目で確認できます。費用は初期に15,000円〜、月額料金が12,800円〜ですが、20日間のトライアルではすべての機能を無料でお試し可能です。
複数の問い合わせ窓口から効率的にVOCを集めたい企業に、おすすめのツールになっています。
見える化エンジンは、株式会社プラスアルファ・コンサルティング東証グロース上場のVOCツールです。総データ取り込み数は15億件を超え、11年連続シェア1位を誇っています。主な機能は、次の通りです。
初期費用は60万円、月額料金は15万円~。また見える化エンジンでは、VOC活用に向けたコンサルティング事業も実施しています。VOC分析を社内で効果的に活用できるよう、導入後のサポートも受けたい企業もおすすめです。
QAロボットは、AI CROSS株式会社が提供するVOCツールになります。AI技術のほか、最新の自然言語処理技術が用いられているため、VOCを効率的かつ正確に把握できます。主な機能は、次の通りです。
初期費用は30万円、月額料金は20万円~ですが、無料トライアルも利用可能です。AIを活用した精度の高いVOC分析を進めたい企業は、一度トライアルを受けてみてはいかがでしょうか。
最後にBtoB企業におけるVOCツールを利用した分析事例を、2つ解説します。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
株式会社ダーウィンズは、コールセンターBPO事業などを展開する企業です。ダーウィンズのオペレーターには、決められたトークやキーワードを漏れなく伝えるよう教育されています。しかし、きちんと伝えているか否かを確認するには1日に何百件もの通話記録を調べる必要があり、現実的ではありませんでした。
そこで導入したのが、全通話をモニタリングし内容を可視化・分析するNTTグループのVOCツールです。導入の結果、モニタリングの効率が数倍向上した上、決められたトークの未実施など課題が可視化されました。
また受注成績上位者の通話モニタリングからは、効果的なセールストークを抽出しトークスクリプト(台本)へ反映させた結果、売上が1.5倍になるという試算が出ただけでなく、実際に受注成績が上がって従業員のモチベーションもアップしたとのことです。
株式会社ユニークワンは、Webマーケティング支援事業などを展開する企業です。メールシステムの属人化やブラックボックス化を避けつつ、サービス品質の向上と安定を目指してVOCツール(Re:lation)を導入しました。
ユニークワンでは、VOCツールでメール対応を役割分担させ、現場の従業員がメール内容を作成し、役職者が修正を加えて返信する形を採用しました。その結果メール対応のスピードが2倍近く向上しただけでなく、現場の職員は役職者の修正からお客様対応の方法を学び生かせるようになったとのことです。
VOC分析は顧客の声を集め、自社製品・サービスの品質改善や顧客満足度の向上が期待できる分析手法です。VOC分析を活用しているBtoB企業は約4割にとどまりますが、今後の必要性については強く認識している企業が多くなっています。
VOC分析を有効活用するためには、複数の収集方法を組み合わせて情報を集めること、企業全体で取り組みながら仮説検証を繰り返すことが大切です。時には便利なツールを利用し、VOC分析の効率化を図ると従業員の負担も軽減できます。
顧客目線のマーケティングを強化したい企業は、VOC分析を積極的に実施していきましょう。