基本ノウハウ
CSを向上させたいが、どのように取り組むべきか迷っている方も多いのではないでしょうか。CSを向上させるためには、CSを調査する方法や、ITツールを活用する方法、ESを向上させる方法などさまざまな方法があります。
本記事ではCS向上とはどのようなものか、具体的な方法や取り組み事例まで紹介します。
CSとはどのようなものか、概要や向上させるメリットについて解説します。
CS(顧客満足度)とは、「Customer Satisfaction」の頭文字を取ったものです。商品やサービスに対する顧客の満足度を数字化しています。CS向上とは、現状のCSをより高めるために行う施策です。
CSを高めることで、顧客のリピート率を高め再来店を促せます。
CSを向上させることのメリットは、以下のものが挙げられます。
・商品や店舗へのリピーター増加
・口コミによる新規顧客の獲得
・企業価値そのものが上がる
既存顧客からの良い口コミが新規顧客に伝わることで、新規顧客の獲得につながることもメリットです。このような良い循環が生まれた結果、ブランド力の向上にもつながります。
顧客満足度が高いほど、顧客が再度サービスや商品を利用する可能性が高まり、長期的に商品を購入してもらいやすくなります。
長期的にサービスを利用し続ける顧客が増えることで、安定した売上の確保が可能です。また、既存顧客が競合他社に流れにくくなり、優位性を確保しやすくなります。
CS向上のメリットは、口コミにより新規顧客が獲得しやすくなる点です。近年ではSNSでの口コミの影響力が高まり、口コミによる評判は新規顧客の獲得しやすさに大きく影響します。
口コミによる効果は広告費を必要としないため、CS向上は余分な広告費の削減にもつながります。
CSが向上することで、企業全体のブランド力があがる点は大きなメリットです。ブランド力が上がることで、競合他社よりも優位に立ちやすくなり、価格競争にも巻き込まれにくくなります。
新規採用や離職率にも影響します。企業としての価値が高まることで、企業に所属することでの満足感を得やすくなり、優秀な社員が確保しやすくなる点も利点です。会社に対する愛着が高まるため、離職率低下にもつながります。
CS向上とは、具体的にどのような取り組みをすれば良いかイメージできない人もいるでしょう。ここではCS向上のために、どのような取り組みができるか解説します。
CS向上のためには、顧客のCSを把握できる指標を使い、現状を確認する必要があります。その指標としては、以下のものが挙げられます。
・NPS
・CSI
・JCSI
これらの指標から改善点を洗い出し、顧客への期待以上のサービス提供を目標にし、マーケティング施策などに反映させましょう。
NPSは「Net Promoter Score」の頭文字を取ったもので、会社の商品やサービスに対する愛着や忠誠心を意味する「顧客ロイヤルティ」を測定する際に使われる指標です。
この測定方法では、対象の商品について「誰かにおすすめや紹介をしたいか」という指標を0〜10までの数字でアンケートを取り、高い回答者と低い回答者の比率の差をスコアとして算出します。
CSIとは「Customer Satisfaction Index」の頭文字を取ったものです。顧客期待値、顧客不満度、顧客忠実度、知覚品質(顧客の商品への評価)、知覚価値(顧客の価格に対する満足度)などの観点から評価してもらい、平均値を測定します。
JSCIは「Japanese Customer Satisfaction Index」の頭文字で、CSIに日本特有の要素をプラスした指標です。CSIの5つの指標に加え、「推奨意向」という指標を加えています。
CSを測定するためのツールとして、CRMやSFAのようなツールを利用する方法もあります。
CRMとは「Customer Relationship Management」の頭文字を取ったもので、顧客情報を管理するシステムです。CMAでは、顧客の役職や購買履歴、閲覧履歴などを総合的に把握できます。
SFAとは「Sales Force Automation」を意味し、営業活動を見える化できるツールです。営業支援を目的とし、営業活動を通した顧客管理や、顧客情報分析が行えます。
CRMやSFAを利用することで、顧客に対しての行動や顧客情報を効率的に管理できます。CRMやSFAの中には行動履歴からCSを数字化できる機能がついたものもあり、CSの分析に役立てることも可能です。
ES(従業員満足度)は間接的にCSに関わる要素です。ESが低い従業員は業務に対するモチベーションも低くなる傾向にあり、従業員のモラルの低下や勤務態度の悪化を通して、顧客満足度を下げてしまう可能性があります。
ESを上げるためには、福利厚生を整えることや、コミュニケーション活性化などの方法がありますが、会社内の課題に合わせて取り組むことが大切です。
ESを計測する方法としては、アンケートやヒアリングなどの方法があり、これらへの回答から、会社に抱えている不満の要素や、満足度を定期的に計測します。また、不満要素や課題を発見したら、それらへの対策を具体的に検討しましょう。
従業員教育を行い、業務内容の質を高めることで、CSを高めることができます。業務の質が悪いことで、顧客に不満が残り、CSを下げる要因になってしまいますが、従業員研修を施すことで、そのような事態を回避可能です。
研修に合わせて、業務内容やワークフローの見直し、従業員の習熟度のチェックを合わせて行うことで、会社全体としてのサービス向上につながります。従業員のスキルアップにより、ESの向上にも効果的です。
CS向上のためには、従業員の営業スキルの向上が欠かせません。特にBtoCの接客業では挨拶や接客態度がCSに大きく影響します。
業務量過多により、サービスの質が低下している場合には、業務効率を上げることで、サービスの質を向上させられる場合もあります。現状の業務効率に課題を改善すれば、業務への不満が軽減しCSだけではなくESも向上します。
CS向上のための他企業ではどのような取り組みをしたか、BtoCビジネスでの成功例をいくつか紹介します。
スターバックスには「グリーンエプロンブック」と呼ばれる、サービスのビジョンを共有するためのものがあります。
直接的なサービス対応ではなく、ビジョンを共有し、権限を現場レベルに落とし込むことで、CS向上を図ろうとしています。
再春館製薬所は、「初めての方にはお売りできません」とCMを打ち出し、9割の売上を顧客のリピートが支えています。リピート率が高い理由として挙げられるのが、顧客満足度の高さです。
申し込みの多くは電話での注文が支えており、電話応対スタッフは、顧客の購入履歴や誕生日、家族構成、その時の肌の状態、相談内容を記録して、より質が高いサービスの提供に役立てています。
NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社による調査では、『NPS®ベンチマーク調査2018「通販化粧品部門」』において第1位受賞の実績もあります。1位受賞の要因として、「効果・効能」「使い心地のよさ」といった製品の品質面だけでなく、「問い合わせ時の対応の良さ」も評価されていることの要因として挙げています。
ヤクルトスワローズはNPS調査を行い、その結果から顧客満足度の向上に取り組んでいます。NPS調査の結果「ファンクラブでもらえる招待券を使う機会がない」「神宮球場開催のイベントに参加できない」という課題が見えたため、ファンクラブでたまったポイントでもらえる商品を地方発送できるようにするなどの改善を行いました。
以前は記念品を選択できない状態でしたが、選択できるように改善するなどの取り組みを行い、ファンクラブの会員数は2年前の2.5倍、より愛着が強い「プラチナ会員」の会員数も飛躍的に増加したそうです。
ソニー損保はサービス後の満足度の評価を公表することで、安心して利用できるサービスであることをPRしています。「自己解決アンケート」では96%の人が「満足」または「やや満足」と回答し、「ロードサービスアンケート」では、98.9%の人が「とても満足」または「やや満足」と回答しています。
参考:みんなの満足度
J.D. パワー ジャパンが実施した調査によると、「2021年自動車保険事故対応満足度調査」第1位、「2021年自動車保険契約者満足度調査」(ダイレクト系部門)第1位、「2021年コンタクトセンターサポート満足度調査(金融業界編:ダイレクト系損害保険会社部門)」第1位を取得しています。
ソニー損保は「お客さま本位の業務運営方針」を定め、継続的にお客様の声に耳を傾け、サービス向上に取り組んできたことが要因であるとしています。
セイコーマートは2021年度JCSI(日本版顧客満足度指数)の第4回調査で、6年連続で顧客満足度1位を獲得しています。その大きな要因としては、「大手がやらないことをやる経営」を重視し、北海道ブランドを重視した商品を展開し、アイスの在庫量は全コンビニの中でも圧倒的な1位となっています。
「ホットシェフ事業」と呼ばれ、店内で調理された暖かい食事が多くの顧客に指示されている点も特徴です。「ホットシェフ事業」は、効率面では良いとはいえませんが、このサービスによって北海道では多くの顧客の支持を獲得しています。
BtoBビジネスにおいて、CS向上に役立つサービスを提供している企業の事例を3つ取り上げて紹介します。
Slackは、ビジネスチャットツールで、高い顧客満足度を誇るサービスです。オリコンの顧客満足度ランキングで2020年には1位、2021年には2位を獲得しています。ハッシュタグによるチャンネルの整理やTwitterなどのSNSサービスとの連携ができ、「ツールの使いやすさ」、「チャット機能の充実さ」が評価されました。
参照:オリコン顧客満足度「ビジネスチャットツールランキング・比較」より
富士通Japan株式会社はSFAやCRMの導入を通して、業務効率化や、顧客満足度の向上に貢献している企業です。
ある企業では、富士通Japan株式会社が提供するSalesforceにより、顧客に関する会社の情報が一元管理され、社内の他部門との情報共有や、商談に関するデータ分析が可能となる体制を5ヶ月で構築することに成功させました。営業活動の質が上がったことで、顧客満足度に関しても良い影響を与えていると考えられます。
株式会社RECEPTIONISTはクラウド受付システムのRECEPTIONISTにより、業務効率化や対応品質の向上ができるサービスを展開しています。
ある企業では、移転時のセキュリティ強化と課題解決のためにRECEPTIONIST導入したことで、1日100件あるお客様を待たせ取次できたとしています。導入前は固定電話での対応で、取次に時間がかかってしまい、顧客を待たせてしまう事態が多数あったのが、お待たせすることなくご案内できるようになりました。
この結果顧客とのコミュニケーションの質も向上し、顧客満足度の向上にも貢献しています。
CS向上のためには、CSの現状を測定し、発見した課題に対して、解決策を実施する必要があります。CSを分析する手法はさまざまですが、これからのCS向上には情報収集や分析のためにツールの利用がおすすめです。情報収集だけではなく、業務効率の改善にも役立ちます。
情報収集や分析のためのツールを導入し、CS向上にぜひ取り組んでみてください。