基本ノウハウ
顧客という言葉は、企業に勤めていると必ずと言っていいほど聞く機会があります。しかし、「実は顧客とは何か、いまいちよくわかっていない」「お客様との違いや使い分け方を知らない」という方もいるでしょう。
本記事では顧客とは何か、言葉の意味や種類を解説します。お客様をはじめ、取引先やクライアントなど顧客に似た言葉との違いや使い分け方も解説するので、顧客について正しく理解したい方はぜひ参考にしてください。
顧客とは、自社製品やサービスの販売相手を指します。すでに購入・利用している方だけでなく、これから購入・利用する方も含まれる言葉です。
「顧」という言葉には「振り返って見る」「思いを巡らす」などの意味が込められていることから、顧客は単なる販売相手としてだけでなく、想いに寄り添い、共に課題を解決する相手と考えることが大切です。マネジメントの権威であるドラッカーも、「われわれの顧客は誰か」と顧客の明確化と重要性を説いています。
顧客という言葉を使用する際は、販売相手の気持ちや立場を思いやる姿勢をその都度思い出すと良いでしょう。
顧客と混同しやすい言葉のひとつが、お客様です。顧客とお客様の違いは、次のような基準で使い分けられているケースが多くなっています。
顧客 | 客 | |
使う相手 | 社内 | 顧客本人 |
顧客との接触頻度 | 多い(例:サービス業) | 少ない(例:マーケティング部門) |
自社製品・サービスの購入経験 | あり | なし |
例えば、顧客本人を前にして「顧客のご要望にお応えした製品がこちらになります」とは言いません。この場合は、顧客ではなくお客様を使用します。
企業の顧客として向き合うのは、法人顧客(BtoB)と個人顧客(BtoC)の2つです。それぞれの違いは、次のようになっています。
法人顧客(BtoB) | 個人顧客(BtoC) | |
購入額 | 大きい | 小さい |
判断基準 | 機能性や投資対効果 | 好みや価格 |
決裁者 | 上司や経営トップなど複数の人間 | 本人のみ |
購入サイクル | 長い(商談期間が数年に及ぶ場合もある) | 短い |
BtoBはBtoCよりも1回当たりの購入額が大きく、かつ決裁者が複数いるため、購入までに時間を要すことがほとんどです。その分、効果的で継続的なマーケティング施策を実行する必要があります。
顧客の種類は、大きく分けると次の5つです。
潜在顧客 | 見込み顧客(顕在顧客) | 既存顧客 | 休眠顧客 | リピーター | |
製品やサービスの認知 | △ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
購入経験 | ✕ | ✕ | 〇 | 〇 | 〇 |
継続的な購入 | ✕ | ✕ | ✕ | ✕ | ✕ |
この表から、顧客によって自社製品に対する認知度や購入経験などが異なることがわかります。ここでは、顧客ごとの特徴を踏まえながら、効果的なアプローチの方法や注意点を見ていきましょう。
潜在顧客は、自社の製品やサービスに対する認知がまだまだ薄い段階の顧客です。その分、広告などマーケティング戦略によって認知度が上がれば、見込み顧客へステップアップする可能性が高まります。
自社製品やサービスを認知してもらい、かつ利用にまでつなげるという点では、最もコストがかかる顧客です。しかし、顧客が尽きて売上が頭打ちにならないよう、潜在顧客にも継続的なアプローチが大切になります。
コストを抑えつつ新規の顧客を獲得したい場合は、市場調査などからアプローチする潜在顧客を絞り込むと良いでしょう。
見込み顧客はリードとも呼ばれ、きっかけがあると購入につながる顧客です。一口に見込み顧客と言っても、3つの段階があります。
3つ目の段階にある見込み顧客は、購入まであと一歩です。実際に購入してもらうためには、自社製品やサービスのメリットを感じてもらうよう継続的なアピールが必要になります。
逆に、1つ目の段階にあるような見込み顧客は商談や案件化まで時間がかかるため、デジタルマーケティングを主軸にアプローチし続けることが大切です。顧客の興味・関心に合わせた施策が必要なため、MAの力が最も発揮できる顧客エリアといえるでしょう。
既存顧客はすでに自社製品やサービスを購入しているものの、継続的な購入につながっていない顧客です。リピーターへつなげるためには、1度きりの購入で終わっている理由を探り、アプローチする必要があります。
既存顧客がリピーターにならない理由としては、次のような理由が挙げられるでしょう。
既存顧客からリピーターにつながらないと、次項の休眠顧客になってしまいます。
休眠顧客とは、既存顧客の段階で効果的なアプローチができなかったために、リピートがない期間が長期化した顧客です。既存顧客から休眠顧客への移行を防ぐ、あるいは掘り起こす対策の例としては、次のようなものが挙げられます。
このうち、コストがかかりにくいのはプッシュ通知やメール配信ですが、実は電話でのアプローチも重要です。電話を通してコミュニケーションを取ることで、不満を直接相談してくれる可能性があります。すると、リピートに向けた改善策を早期に検討・実行でき、休眠顧客への移行を防止できるでしょう。
また、休眠前に複数回の購入経験がある顧客は、1回のみの顧客よりもアプローチによる発掘効果が出やすい傾向にあります。どの休眠顧客にアプローチすべきか迷ったときは、購入回数をもとに絞るのもひとつの方法です。
リピーターは繰り返し購入してくれている顧客であり、安定的な経営を実現する上で欠かせない存在です。リピーター自身が広告塔になり、家族や友人などに自社製品をおすすめしてくれる可能性もあります。
そのため、リピーターに対しては他の顧客以上に手厚いサポートを継続的に行い、離反を防止することが大切です。顧客離反とは、顧客が自社に見切りをつけて他社製品やサービスを使い始めることを指します。例えば、次のような行動が見られたら顧客離反に近づいている状態です。
このうち、購入済み製品ページの閲覧は、一見すると顧客離反の兆しには見えません。しかし、契約の更新時期が近づいている場合、他社製品と比較して切り替えを検討している可能性が高いと推測されます。
顧客離反の対策例としては、次の2つを充実させると良いでしょう。
カスタマーサポート | 問い合わせメール/チャットサポートサイト(FAQ)SNS など |
カスタマーサクセス | 導入サポートコミュニティの運営モニタリング など |
特に、既存顧客の満足度向上には、カスタマーサクセスが有効です。既存顧客の疑問や不安を能動的に解決することで、継続的な利用や購入を促せます。
顧客と最も混同しやすい言葉はお客様ですが、他にも似ている言葉が複数あります。ここでは、顧客と似ている5つの言葉について、その意味や使い分け方を見ていきましょう。
取引先は商売上の取引相手であり、顧客も取引先のひとつです。重要な取引先は大口取引先、主要取引先と呼ぶこともあります。
【例】車を製造する企業の取引先
得意先は取引回数が多い(=リピーター)、あるいは1度にたくさん購入してくれるなど、企業にとってメリットが大きい顧客です。企業にとって大切な収益源にもなるため、手厚くかつ細やかなサポートが大切になってきます。
【例】車を製造する企業の得意先
仕入先は、販売や加工のために必要な原料や部品などを入手できる取引相手です。主に、製造業者(メーカー)や問屋などを指します。
【例】車を製造する企業の仕入先
クライアントは取引先や顧客とほぼ同義ですが、どちらかというと依頼人という意味合いが強い言葉です。顧客とクライアントは、言葉を使う相手によって使い分けます。クライアントは特定の相手を指すことが多いのに対し、顧客は不特定多数の相手を指すと覚えておくと良いでしょう。
【例】車を製造する企業のクライアント
【例】車を製造する企業の顧客
ユーザーは、自社製品やサービスの利用者を指します。特に、Webサービスやゲームなどの分野でよく使われる言葉です。ユーザーには見込み顧客からリピーターまで、幅広い顧客が含まれます。
【例】車を製造する企業のユーザー
顧客とは自社製品やサービスの販売相手であり、潜在顧客からリピーターまでさまざまな種類があります。混同しやすい言葉にお客様がありますが、顧客本人を目の前にする際はお客様と呼び、会議などでは顧客と使い分けると良いでしょう。
また、取引先やクライアントなど顧客と似たような言葉も多々あります。しかし、取引先の中に顧客が含まれ、さらにその中にクライアントが含まれるというように、理解を段階的に深めるとそれほど難しくありません。
間違った使い方で相手に誤解を与えないよう、顧客の意味や使い分け方はきちんと理解しておきましょう。