セミナーレポート
BeMARKEは2023年1月25日に、「BtoB企業向け マーケティング成果を最大化させる顧客理解の基本と実践」と題した4社共催セミナーを開催しました。本セミナーでは、「顧客理解」をテーマに、なぜ顧客理解が重要なのか、顧客情報やデータをいかにマーケティング戦略や施策企画に活用するかを、各社のエキスパートにご講演いただきました。
株式会社ユーザベース FORCAS事業 SMB Field Sales Leaderの畑佐 拓哉 氏には、「事業の成功を左右する『ターゲティング』とは?−データとテクノロジーの力で顧客を再定義する−」と題して、ターゲティングの重要性と実行方法について解説いただきました。
【登壇者】
畑佐 拓哉 氏(株式会社ユーザベース FORCAS事業 SMB Field Sales Leader)
SEとしてキャリアをスタートさせ、3年の従事後、営業へのジョブチェンジを機にナレッジスイート社へ転職。直販営業と合わせてパートナー営業、関西エリアの立ち上げを実施。その後マーケティングオートメーションベンダーを経て2019年にFORCASにジョイン。FORCASではFORCAS Salesという新サービスの立ち上げも行い、現在はSMB領域のプレイングマネージャーとして活動。自称FORCASで一番プロダクト愛が強い男。
本日は、「事業の成功を左右する『ターゲティング』」について解説します。まずはじめに、「ターゲティングが機能していない組織」と「ターゲティングが機能している組織」を比較しながら、ターゲティングが重要な理由について説明します。
ターゲティングが機能していない組織では、各部署で次のようなことが起きています。
この状況を逆の立場から見ると、営業担当者からは「こんな質の悪い商談を持ってこられても困る。契約など取れるわけがない」という声が聞こえてきます。マーケティング担当者としては、「誰のために開発された製品なの? アピールポイントが分からないからマーケット訴求は難しい」、開発者としては「戦略が粗すぎて誰に向けて開発したら良いか分からない」とそれぞれ不満を募らせる状況に陥ります。
このように各部署で認識合わせができずビジネスを成長させられない状況を回避するためにも、共通のターゲットに向けて各部署が連携する必要があります。
ターゲティングが機能している組織では、経営陣がまず、ターゲットに合わせた戦略立案やリソース配分を行います。プロダクト開発もターゲットのニーズに合わせて開発優先度を決定します。マーケティングもターゲットが関心を持つような施策を実施しますし、営業もターゲットに最適化した営業プランを策定します。
このように、ターゲティングが機能している組織では、どの部署も共通して顧客起点の意思決定ができるのです。
しかし現実には、ターゲティングが機能しない組織が少なくありません。
その理由の1つに、マーケティングファネルで可視化される数値に「顧客」という概念が登場しないことが挙げられます。
例えばSFAやMAでリードを獲得し、育成し、商談を獲得して受注するというファネルがあります。その過程で、SFAやMAを使ってさまざまな数値が可視化されますが、「自社と相性の良い顧客のリードが何件取れたか」「自社と相性の悪い顧客との商談が多い」といった感覚を示す情報は可視化されません。
SFAやMAで可視化される数値は重要であるものの、その数字のほとんどが「受注率が20%なので売り上げを2倍にするには何件商談が必要か」と割り戻しを考えるために使われています。しかし成果につなげるためには、顧客視点が不可欠です。
成長する組織であり続けるには、マーケティングファネルの過程にターゲット(顧客)の概念を取り入れる必要があります。
ターゲットの概念を取り入れるにあたり、「WHO×WHAT×HOW」の考え方を紹介します。最初に「WHO(誰に)伝えたいのか」、次に「WHAT(何を)伝えるか」、最後に「HOW(どのように)伝えるか」という流れで考えることが重要です。
多くの企業は、例えば「テレアポを強化しよう」「広告を出稿しよう」「展示会に出展しよう」というように、「HOW(どのように)」から考えます。
しかし「どんな顧客からリードを獲得したいのか」という「WHO(誰に)」が後回しになってしまうと、「顧客にはどんな課題があり、その課題に対して何を伝えれば良いか」という「WHAT(何を)」の設計ができなくなります。
また、「HOW(どのように)」にあたる「施策がうまくいったかどうか」の検証も難しくなります。このため、「リードは多かったけれど受注は取れませんでした。理由は分かりません」という説明にとどまってしまうのです。
逆に「WHO(誰に)」が明確だと、「受注が少なかった理由は、顧客との相性が悪かったから」「顧客との相性は良かったものの、転換率が悪かった」などの説明ができるようになります。これが、再現性の高いアクションを考える糸口になります。
このように、まずは顧客を定義することが重要ですが、ターゲティング(=顧客を定義すること)はそう簡単ではありません。顧客を定義する唯一の方法は、顧客を徹底的に理解することに尽きます。
顧客にアンケートをとったりインタビューを実施したりするほか、当社のサービスが支援しているように「受注率の正体をブレークダウンする」ことで、既存顧客を分析する方法もあります。
表に示したように、商談が1000件あり受注数が100件あれば、受注率は10%です。当社の「FORCAS」というサービスでは、業界ごとに潜在社数がどれくらいあり、そのうちどれくらいの企業と商談をして、どれくらいの受注数があるかを分析できます。
これはサンプルとなりますが、表に示された「ゲーム・コンテンツ」の商談数は40件しかありません。たった40件なので、営業担当者からすると「売りやすい顧客」とはとらえにくいかもしれません。しかし、潜在社数と受注率もあわせて見ると、「ゲーム・コンテンツ」の顧客が自社にとって理想の顧客であることは明らかです。
このように、業界の情報や従業員の情報など、さまざまな切り口で情報を集め、分析することが、ターゲティングにつながっていきます。
「受注率を10%から20%に上げたい」と考えた場合、単純に受注率20%のセグメントを見つけてそのセグメントに集中的にアプローチすれば、実現しやすいかもしれません。ところが、「受注率20%のセグメント」を見つけることが実は難しいのです。
例えば、どちらも従業員数200人規模で売上げは約10億円、東京にあるIT企業というA社とB社があるとします。
両社の基本情報はほぼ同じですが、深掘りしていくと次のような異なる側面が見えてきます。
サービスにもよりますが、このような情報がなければ「自社にとって良い顧客かどうか」の判断はできません。
自社にとっての理想的な顧客を見つける際の注目ポイントとしては、例えば次のような要素が挙げられます。
そして、これらの多くが、外部データをもとに分析した結果として得られる情報です。
BtoBマーケティングを成功させるターゲティングの秘訣は、外部データと内部データを活用したデータ分析で、徹底的に顧客を理解し、「理想の顧客」を再定義することだと考えます。このようなデータの収集・分析には、当社のFORCASのようなツールを活用してみてください。
そこで、高い成果を出すユーザーに共通するベストプラクティスとして、「ターゲティングを成果につなげるための実践サークル」をご紹介します。
まず、既存顧客のデータを取り込むことで、既存顧客の傾向を把握します。すると、既存顧客と似た傾向の潜在顧客を特定できます。このように、狙うべきペルソナを可視化し、ターゲットをセグメントしていきます。
次に、セグメントごとに具体的な施策を決定します。ペルソナごとに「どんな施策を展開するか」「どんなメッセージを伝えるか」を設計し、最適な手法でアプローチします。
その上で、成果を検証し、「WHO×WHAT×HOW」の視点で「誰に奏功しなかったのか」「何がうまくいかなかったのか」「方法に問題があったのか」を見直します。場合によっては「WHO(誰に)」を見直して別の顧客にアプローチするという選択肢も残しておきます。
既存顧客の傾向を把握する際には業界ごとの情報分析が大切ですが、なかには業界軸では判断できない企業もあります。
そのようなケースでは、「海外進出しているか」「DXを推進しているか」などの定性的な情報で自社の顧客を把握しても良いでしょう。
また、「MAを入れているか」「どんなアクセス解析を入れているか」「どんなWeb接客ツールを入れているか」などの情報をもとに、ポテンシャルの大きい顧客を把握することもできます。
BtoBマーケティングで成果を上げ続けるには、ターゲティングが必要です。ターゲティングによって、マーケティング効率や営業効率を大幅に改善できます。
ただし、ターゲティングにはファクトに基づく顧客理解が重要で、自社にとって「理想の顧客」を再定義しなくてはなりません。理想の顧客を再定義するには、データとテクノロジーを最大限に活用しましょう。
ターゲットを明確化した後は、必ず施策効果の検証と改善を重ねてください。そうすることで顧客理解が深まり、再現性のある事業成長を遂げられます。
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