基本ノウハウ
マーケティング施策を立案するとき、データ分析をもとに顧客理解を深めることが大切です。しかしマーケティング担当者になって間もない方にとっては、「どのような手法を使えば良いか」などの疑問があるでしょう。
本記事では顧客データ分析の具体的な方法を、目的別に分けて解説します。契約件数などが改善した成功事例も、あわせて紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。
そもそも顧客データとは自社が接触したことのある、あるいは接触予定の顧客に関する情報を指します。具体的な例は、次の通りです。
なおデータには数字だけでなく文章や画像、音声・動画といったものも含まれます。
ここでは顧客データ分析の手法について、次の3つに分けて解説します。
それぞれの特徴や分析項目などを見ていきましょう。なお顧客分析を効率的に進めたい方は、ツールの利用がおすすめです。
見込み顧客から既存顧客まで、分析対象が幅広いデータ分析の方法は次の2つです。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
セグメンテーション分析とは、顧客データを属性などによってグループ化(セグメント)する方法です。最も基本的なデータ分析手法であり、導入しない企業はほぼないと言っても過言ではありません。
具体的には、どのような企業に自社製品・サービスが売れているかを分析します。見込み顧客も対象になりますが、特に既存顧客は保有する情報が多い分、分析の確度が高まります。
セグメントの切り口は、主に次の4つです。
デモグラフィック (人口統計的変数) |
・業種 ・従業員数 ・担当者の年齢や役職、決裁権の有無 など |
ジオグラフィック (地理的変数) |
・所在地 ・店舗がある地域 ・取引先の所在地 など |
サイコグラフィック (心理的変数) |
・企業が抱えている悩み ・購買方針(量or質など) ・価値観 など |
ビヘイビアル (行動変数) |
・購買経験の有無 ・購買の頻度 ・購買プロセス など |
上記のようなセグメントの仕方からも分かるように、セグメンテーション分析はSTP分析の一部になります。STP分析のやり方や流れについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてチェックしてみてください。
関連記事:「【具体例付き】BtoBのSTP分析とは?やり方や注意点を徹底解説」
VOC分析とは課題発見や顧客満足度の向上に向けて、VOC(顧客の声)を分析する手法です。主な分析対象は、次の3つになります。
VOCの収集方法は、インタビューやアンケートが主流です。例えば以下のような質問を投げかけ、マーケティング戦略の立案や見直しに役立てます。
また過去に作成した導入事例から、自社製品・サービスが選ばれた理由や提供価値を洗い出すのも有効です。VOC分析のメリットや進め方について詳しく知りたい方は、こちらの記事もぜひ参考にしてみてください。
関連記事:「VOC分析とは?手法や手順を解説|BtoB企業での活用事例も」
既存顧客を分析する方法は、次の5つです。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
RFM分析とは購買行動をもとに顧客データ分析を進め、優良顧客の見極めに役立てる方法です。分析項目は、次の3つになります。
特にアプローチを集中すべき優良顧客は、次のような条件がそろった場合です。
さらに詳しく調べると、安定顧客や離反顧客なども把握できます。顧客の状態に合わせて施策を変える、あるいは思い切ってアプローチを止めてコスト削減することも可能です。
なおRFM分析は売上分析の1つです。他の手法も知りたい方は、こちらの記事もあわせてチェックしてみてください。
参考記事「売上分析7つの手法・フレームワークから簡単エクセルでの分析方法まで紹介!」
デシル分析とは購入金額の多い順に顧客を並び替え、かつ10等分にグループ化しながら分析する方法です。RFM分析と同様に、優良顧客を見極める際に役立ちます。
ただしデシル分析では、上位のグループが必ずしも優良顧客とは限りません。購入金額が大きくても、最後の購入日が古い場合、休眠顧客になっている可能性があるためです。したがって、デシル分析を進める際はRFM分析など他の分析方法も組み合わせると精度が上がります。
バスケット分析とは買い物カゴの中身から、一緒に購入されている製品の組み合わせを分析する方法です。
例えば分析結果から、製品AとBを一緒に購入する企業が多いと分かったとしましょう。この場合は次のような販促施策を検討できます。
アップセル・クロスセルの参考にもなるため、ある程度販売数が伸びてきたら一度は実行したい顧客データ分析です。
CTB分析とは興味関心があるものによって、顧客をグループ化する方法です。分析項目は、次の3つになります。
顧客の好みをマーケティング戦略に反映する際に役立つため、バスケット分析と併用すると精度がより上がります。特にアパレルや雑貨など製品数が多く、顧客の興味関心が分かれやすいビジネスで用いられやすい顧客データ分析です。
行動トレンド分析とは購買に至った時期で顧客をグループ化し、共通事項を洗い出す方法です。例えばBtoBの場合、決算時期が近づくと成約率は向上しやすい傾向にあります。そのため次のような戦略を実行すると効果的です。
逆に成約率が低い時期は仕入れ量を減らすなど、コスト削減に向けた施策の検討にも役立ちます。なお行動トレンド分析のグループは、前述のセグメンテーション分析などを併用すると共通事項を洗い出しやすくなります。
いつ、どのような企業に売れているか詳しく分析したいときは、行動トレンド分析と他の分析手法を上手に組み合わせましょう。
見込み顧客を分析する方法は、次の2つです。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
コホート分析とは、同じような条件を持つグループごとに購買行動を分析し、維持率やリピート率改善を目指す方法です。購買行動の分析という点はRFM分析と共通していますが、顧客の分類方法が異なります。
RFM分析は購買の回数や金額で顧客をグループ化する一方で、コホート分析は購買前後のアクションを追跡・分析するものです。
例えばメルマガを通じて、資料をダウンロードした顧客のグループがあったとしましょう。コホート分析では次のようなアクションを追跡し、見込み顧客が離脱しやすいタイミングを分析します。
「資料ダウンロードから○日後にメルマガを解約する見込み顧客が多い」と分かれば、その前に再度アプローチすると良いでしょう。また「無料トライアルを申請したものの、成約に至らない見込み顧客が多い」という場合は、トライアル後に展開する施策を見直すきっかけにもなります。
特にWebマーケティング施策で役立つ顧客データ分析のため、メルマガやオウンドメディアを運用し始めた企業は定期的に実行したい手法といえるでしょう。
パイプライン分析とはWebサイト訪問から購買に至るまでのプロセスのうち、顧客がどのフェーズで離脱しているかを分析する方法です。例えば見込み顧客から既存顧客へ至るまでに、次のようなプロセスがあったとしましょう。
各フェーズの見込み顧客数や離脱率を算出し、改善すべき段階を見極めます。メルマガ登録からセミナー参加の間で離脱者が多い場合は、配信内容の再検討やクリエイティブ面の工夫が必要です。また商談から成約へ移行する顧客が少ない場合は、トークスクリプトや営業資料を見直すなどの改善案を検討できます。
このようにパイプライン分析で離脱率が高いフェーズを抽出し、集中的に改善することで成約率の向上が可能です。なおパイプライン分析は営業分析の1つでもあります。他の営業分析について詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてチェックしてみてください。
関連記事:「【営業効率を上げよう】営業分析の4つの手法を解説 メリットや分析ツールも紹介」
最後に顧客データ分析の活用事例を、2つ解説します。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
NTTコミュニケーションズは、さまざまなICTサービスを提供する企業です。顧客の事業がグローバル化するのにともない、NTTコミュニケーションズも迅速できめ細かな対応が求められるようになりました。
そこでコンタクトセンターやSNSで顧客とのコミュニケーションを強化しつつ、顧客の声を拾い上げていきました。VOC分析の末、顧客によって提案のタイミングと内容をパーソナライズ化することに成功します。最終的には営業活動を効率化させ、顧客が欲しいときに欲しいものを提案できる体制になったとのことです。
株式会社セブンブレンチは住宅型の高齢者施設を運営している企業であり、親会社の売上8〜9割を担っています。このように売上に貢献しているセブンブレンチですが、事業拡大にともない病院などを通した入居者確保の施策を見直す必要が出てきました。
しかし現状を分析しようにも情報が不十分な状態であったため、顧客分析ツールを導入しながら営業情報を蓄積・共有します。その結果見込み顧客の情報をもとに精度の高いマッチングが実現し、契約件数も1.5倍に向上したとのことです。
顧客データ分析は顧客理解を深め、効果的なマーケティング戦略を立案・見直す際に大切な工程です。分析対象によってさまざまな手法がありますが、単体では大きな効果を望めません。複数の方法を組み合わせることで、より精度の高い分析が可能になります。
また近年では課題解決を主眼に置いたソリューション営業が重要視され、顧客の声を活用する動きが強まっています。そのため顧客データ分析の中でも、VOC分析は早期に取り入れたい手法の1つです。
マーケティング施策を通じた売上アップに向けて、顧客情報の分析を進めていきましょう。
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